稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第171回 「楠 康一の浅ダナウドンセット釣り/Summer Ver.」|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第171回 「楠 康一の浅ダナウドンセット釣り/Summer Ver.」

楠流 『粒もじ』浅ダナウドンセット釣り/Summer Ver.のキモ その一:同じレシピなのによく釣れる その秘密はエサのいじり方にあり!

昨今、多くのアングラーに愛用されている『粒もじ』は極めて完成度の高いバラケエサである。おそらくこのバラケを使い、それまでよりもウキの動きが良くなった(増えた)と感じたアングラーは少なくないはずだ。もちろん記者もそうした実体験をもつひとり。それだけに誰よりも抜きんでて釣れる楠の釣技には興味津々で、今回はその秘密を探るべく鵜の目鷹の目で彼の一挙手一投足に注目し続けたわけだが、何より着目すべきはバラケエサのいじり方(扱い方)であろう。一般的なセット釣りにおけるバラケエサは、その集魚力をはじめとした機能性を損なわないよう、基エサのままできるだけ手を加えずに使いきることを旨としているが、楠のこのエサのいじり方はまるで逆。両ダンゴで使う麩エサのようで、基本的には吸水が済んだ基エサを40回ほどエサボウルの縁に擦りつけるように練ることから始まる。しかしそのエサを触らせてもらうと意外なほどネバリは少なく、まとまり感こそあれ「粒戦」によりホロホロと砕ける感触が残っている。楠はこれにさらに押し練りを加えて使っていくわけだが、その狙いとは?

「練るのは落下中の開きを抑えるため。なぜならこの時季、基エサのまま打ち込むと想像以上に広範囲にバラけるため、結果的にウワズリや過剰な寄りを招いてしまいます。私は現代セット釣りのキモは寄せ過ぎないことだと考えています。特に椎の木湖や筑波流源湖のように大型べらが多い釣り場では、常に“適量”のへら鮒をタナにキープし続けることが肝心で、これが多過ぎても少な過ぎてもコンスタントに釣ることはできません」

楠を悩ませたのは、このへら鮒の寄りを長時間適度に保てなかったことであろう。この日のへら鮒の寄りは総じて少なく、それを補うために一時は浮力の大きなウキで普段使うことない位の大きなバラケを打ち込まざるを得なかったが、通常であればバラケのサイズは直径12mm程度のものを中心に、大小±1mm程度の変化で十分へら鮒の寄りをコントロールできるという。さらにエサ付けの形状や圧加減にも変化を加え、状況に応じたベストのバラケをタナに送り込むことで自ずと食いアタリは増えてくる。

「今日はどうしても寄せる方向にならざるを得ませんでした。このためバラケをいじり過ぎたと思ったら『ほどき』をパラパラと追い足して開きを促進させるケースが目立ちましたが、逆に好調なときはそのまま打ちきることが多く、練ったエサでも寄り過ぎるときはさらに落下中の開きを抑制するために『浅ダナ一本』を適宜追い足すこともあります」

エサ付けの大きさや使用している麩材を考えると意外に思われるかも知れないが、盛期のへら鮒の動きは想像以上に激しく、寄り始めると水中ではかなり広範囲にバラケが拡散しており、釣れなくなる最大の要因は大抵がバラけ過ぎによるものだと楠は言う。一方でタナに滞留する粒子など微々たるものだということも認識し、ハイテンポかつコンスタントなエサ打ちは現代セット釣りにおいて必須テクニックだとも付け加えた。

楠流 『粒もじ』浅ダナウドンセット釣り/Summer Ver.のキモ その二:シンクロ無用!? 浅ダナ両ダンゴ釣りを凌駕するハイテンポな釣り

冬季における抜き系のセット釣りでは、ウキの直下に位置するくわせエサにバラケの粒子を被せることで構築される、くわせとバラケのシンクロモーションが重要だといわれるが、どうやらそのセオリーは『粒もじ』セットでは考える必要はないようだ。

「自分はセット釣りというよりも、浅ダナ両ダンゴ釣りに近いイメージで釣りを組み立てています。もちろん完全にバラケ(ダンゴ)だけを食わせようとしているわけではありませんが、できるだけ上バリにアタってくるようバラケ主導でへら鮒にアピールすることが肝心で、下バリを完全にバラケの直下にナジませようとは考えていません。へら鮒が興味を示すタッチに合わせたうえでナジミきる直前から上バリから抜けるまでにバラケを食わせ、その間に下バリのくわせエサをやや遠巻きのへら鮒が食えば儲けもの程度に考えていますので、いわばくわせエサは自分的には“オマケ”のようなものなのです(笑)」

浅ダナ両ダンゴ釣りをイメージしているだけあって、楠のエサ打ちテンポは驚くほど速い。ヒットしたときを除き、アタリがでずに打ち返すケースや、アタリがでても空振りで終わったケースでは、その所要時間はなんと1投約40秒。3分で4~5投打てる計算だ。この速い打ち返しの狙いは、上バリは落ち込みアタリを、下バリは倒れ込みにでるアタリのヒットチャンスを増やすことにほかならない。抜き系セット釣りのようなバラケとくわせエサとのシンクロを主眼に置かない楠流『粒もじ』セット釣りでは、打ち込まれたエサが上下共にナジミきるまでが勝負。このため基本的には待ちの釣りは存在しない。ちなみにウキの動きが良く好調に釣れるときは、エサボウル1杯を約40分で打ちきるという楠。これが盛期におけるこの釣りのひとつのバロメーターだ。

なお速さに隠れて目立たないが、その裏でへら鮒の興味を惹きつける絶妙なエサ付けが存在していることを忘れてはならない。それを支えているのが、なんと竿を持つ右手である。このエサ付けについては前回楠に登場していただいたときにも紹介したが、勝負がかかる重要なシーンになればなるほど、この右手によるエサ付けが活躍するケースが増えるという。

「この時季の釣りではエサの開き具合や持たせ加減が重要になるケースが多いので、その際きめ細やかでバリエーション豊富なエサ付けができるのがこの右手なのです。従って格好の善し悪しはともかく、私自身にとってはなくてはならない存在です(笑)。」

楠流 『粒もじ』浅ダナウドンセット釣り/Summer Ver.のキモ その三:上バリでも下バリでも同じ、浅ダナ両ダンゴ釣りのようなキレのあるアタリ!

楠自身少ないとはいいながらも、取材時に幾度となく現れた理想的な食いアタリ。それは練り込みによって開きを抑えたバラケでタナ付近のへら鮒の量をコントロールし、水中落下するエサに惹きつけられたへら鮒がフリーフォール中にエサを食ったときにのみでる、さながら浅ダナ両ダンゴ釣りのようなスピーディーでキレのある食いアタリだ。一般的なセット釣りの場合、上バリのバラケを食ったときにでるアタリは比較的早く、しかも大きく力強く入るアタリとなることが多い。この点についてはこの釣りのアタリも同じなのだが、特筆すべきは下バリを食ったアタリもまた、上バリの食いアタリと遜色ないほど早く力強いことだろう。

「自分なりの基準としては、上バリを食う確率が概ね3~4割になるときがこの釣りが決まっているときで、トーナメントで勝てるときほどそうした時合になっています。またバラケを食ったときは自ずと明確なアタリとなりますが、どうしても小さくソフトな動きになりがちな下バリを食ったときのアタリも明確にだす必要があります。具体的にはウキの立つ位置にエサを落とし込むのではなく、流れを考慮したうえでウキが立つ位置を中心にやや離れた位置(その距離30~40cm)にバラケを打ち込み、さらに下バリのくわせエサができるだけ弛まずに張りきった状態で着水し、そのまま水中落下するような振り込みを心がけています」

目に見えぬ水中で起きていることなので断言はできないが、楠自身による解説と記者が目の当たりにしたウキの動きから読み解くと、麩エサを好んで食いたがっているこの時期のへら鮒に対し、最も食い気が旺盛で積極的にエサに接近してくるへら鮒にダンゴ(タッチのバラケ)を食わせるのがメインターゲット。そしてスルーされるかバラケでは捕らえきれなかった場合、やや離れて遠巻きにいるへら鮒を下バリのくわせエサで根こそぎキャッチしようというのが、この釣りの根幹を成しているのだろう。

記者の目【楠流『粒もじ』は、現代へら鮒釣りにおける最強釣法だ!】

もはや“神バラケ”ともいえる『粒もじ』を駆使する多くのトーナメンターのなかにあって、常に頭ひとつリードし続ける楠 康一の浅ダナウドンセット釣り。今回の取材を通して記者が感じた他者との決定的な違いは、見た目はセット釣りでありながら、その実態は両ダンゴ釣りのアプローチに極めて近い点であろう。一般的な浅ダナウドンセット釣りでも積極的にバラケを食わせることはある。しかしそれは状況の変化に応じた一時的なものであり、終始一貫バラケをメインに食わせようとするセット釣りの概念を、いまだかつて記者は聞いたことがない。しかも“おまけ”といいつつもバラケで逃したへら鮒を下バリで、それも両ダンゴの釣りに負けない早いタイミングで食わせようとするしたたかな戦略は、決して容易に思いつくものではない。無駄に寄せず無駄にウキを動かさず、最短ルートでバラケをタナに送り込み、高活性のへら鮒を上下いずれかのエサで仕留める楠流『粒もじ』。間違いなく現代へら鮒釣りにおける最強釣法に違いない!