稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第170回 「内島康之のチョーチンヒゲトロセット釣り」|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第170回 「内島康之のチョーチンヒゲトロセット釣り」

内島流 チョーチンヒゲトロセット釣りのキモ その一:ハイレスポンスのへら鮒がいるタナを探り当てる!

無難に実釣取材を遂行するのであれば、事前に池主から聞いた「やや深めのタナが良い」という情報を最優先すればよかったのかもしれないが、天候や混雑状況から自身が導きだした答えに基づき、あえて9尺でスタートした内島。結果として池主のアドバイスに軍配が上がったわけだが、自らは新たな経験値として今後の競技の釣りに生かせる引き出しになったと前向きだ。

「ヒゲトロセット釣りに限らず、どんな釣り方でもチョーチン釣りは釣れるタナを探り当てることが肝心です。これが決まらないと釣りにくさを感じるばかりか、決して良い結果を得ることはできません。特に短竿の場合1尺違うだけでガラッと釣況が変わることもあるので、日頃の釣行から常にベストを目指し、意識的に替えることを習慣づけておくことが大切です。」

放流量の減少による魚影密度の低下によるのか、はたまた魚体の大型化による警戒心によるものなのか、その原因は定かではないが、かつては1~2尺違ったタナでも多少時間をかければ十分な数のへら鮒を狙いのタナに集めることができたチョーチン釣りも、近年は釣れるレンジが極端に狭くなっている。この日自らの判断で竿を長くし、釣況を好転させるということを見事に実践してみせた内島。一旦釣りが決まった後半戦の途中、釣況が上向き明らかにへら鮒のタナが上がった(ウワズリではなく生理的にタナを変えた)兆候を察知したタイミングで9尺に戻して釣況を比較してみたところ、やはり10.5尺一杯のタナの方がアタリは安定しており、釣れるへら鮒の型も良かったことが示されたことは実に興味深かった。

「やはりタナ(竿の長さ)は大事ですね。今回の取材では改めてタナの重要性を痛感させられましたが、タナが合っていると釣りが簡単になるばかりか釣果もグンと伸びることは明らかです。当然勝負で勝つためにはこのタナを探り当てることが肝心であることはいうまでもありませんが、では「どんな長さが良いのか?」と問われると実際にやってみなければ分からないというのが正直なところです。自分流の基準としては9尺を中心に、状況に応じて±1~2尺を使い分けていますが、これは私自身多くの釣り場で通用すると感じている方法なのでオススメです。」

内島流 チョーチンヒゲトロセット釣りのキモ その二:狙ったタナに一点集中させるための深ナジミ。エサ付けに一切の妥協無し!

「タナが決まれば釣りが決まる。」内島の持論だが、さらに正解と覚しきタナでより多くの釣果を得ようとするのであれば、狙ったタナにできるだけ圧縮したイメージでへら鮒を寄せきることが必要だと内島は力説する。

「この釣りで何が一番大切なのかを問われたら、それは水中落下中の開きを極力抑えながらバラケをしっかり持たせてウキを深ナジミさせること。これを繰り返すことで狭いレンジに数多くのへら鮒を集められるからです。もちろん、単に持たせるだけではへら鮒は集まってもとろろを食わせることはできません。肝心なのはタナに届いてから膨らみ、近くに寄ったへら鮒の摂餌を刺激しながらとろろに誘引すること。そのためにはバラケのエサ付けには十分な配慮が必要で、タナに寄ったへら鮒の数や動きによってサイズや圧加減を調節し、常に過不足のない適度な膨らみ(バラケ性)を維持しなければなりません。」

 

読者諸兄に問いたい。盛期のセット釣りにおけるバラケの主役は「バラケマッハ」であることに異存はないだろう。自身“バラケマッハマニア(ヘビーユーザー)”を公言する内島もこのエサを主役として捉え、使いこなすことで勝負できる釣りを下支えすることが可能になると確信している。しかし、マルキユーのへらエサのなかでも最高傑作のひとつに数えられる「バラケマッハ」のポテンシャルは、扱い方によってはじゃじゃ馬のような手に負えない扱いにくさを垣間見せる。今回そんなじゃじゃ馬の手綱役として「コウテン」をブレンドに加えた内島の狙いは一体どこにあるのだろう。

「それは『コウテン』が持つまとめる力を生かして、難易度の高い『バラケマッハ』主体のバラケエサのエサ付けを容易にすると共に、状況変化に応じた的確なバラケコントロールを可能にするためです。ヒゲトロセット釣りでは、バラケが上バリに残っていないとほぼアタリが期待できません。だからといって石のように硬い塊状のバラケでは寄りも悪く、到底食いアタリは期待できません。上層のへら鮒に弄ばれても上バリから抜けることなく、確実に膨らみながらも食うまで芯が崩れないバラケが理想であり、それを可能にするのが『コウテン』の働き。そのポテンシャルを最大限生かしたフレキシブルなエサ付けこそが好釣果につながる秘訣なのです。」

なお、動画でも紹介しているが、内島のエサ付けは大きく分けて2パターンある。ひとつは形状や圧加減をきめ細かく変化させることが可能な、片手で行う通常モードのパターン。もうひとつはエサ持ちを最優先に考え、両手の指を使い片手よりも強い圧をかけて確実に持たせるパターン。エサ付けの重要性を知る内島だからこその、一切の妥協を許さぬ姿勢には脱帽するしかない。

内島流 チョーチンヒゲトロセット釣りのキモ その三:ムリ・ムダ・ムラなく攻める、へら鮒の食い気に寄り添うアプローチ

盛期のセット釣りを代表する“ホタチョー”と混同されてしまうのだろうか、大きなボソタッチバラケを無理矢理タナにねじ込み、縦サソイを駆使する釣りと誤認されることが多い現代チョーチンヒゲトロセット釣り。しかし、内島流の釣りはそれとは真逆のアプローチ。打ち始めこそ大きめのバラケであったが、極端に大きなバラケを打ち込むこともなく、ウキが沈没したときのみ軽く竿先をアオってバラケを促進させることはあっても、決してリアクションバイトを狙う縦サソイは加えない。無駄な動きを極端に抑えたアプローチは、見ている者も釣れることが分かるような整然としたウキの動きでヒットを重ね続けるのだ。

「勝負にこだわらずに楽しむだけの釣りや、トップを目指す釣りでもそれなりの好条件が揃うのであれば、大バラケを使った極端な決め打ちのアプローチも面白いかもしれませんが、トーナメントに限っていえば、やはりその日そのときのへら鮒のコンディションに寄り添ったアプローチが欠かせません。またチョーチンヒゲトロセット釣りは食いが良いときも悪いときも、どちらにも通用する汎用性が魅力の釣り方なので、近年、ダンゴでも釣れるという状況であっても、自分自身最優先に選択する釣り方になるほど確実性・信頼性共に高い釣り方として位置づけています。」

タナさえ合わせればそれほど難しい釣りではないというが、やはり内島がコンスタントに釣るのにはきめ細かなテクニックがあることを忘れてはなるまい。今回は竿の長さの変更以外目立ったタックル調整は行われなかったが、これはスタート時のセッティングが当日のへら鮒の状態を加味した精度の高いものであったことを裏付ける証であり、状況によってはウキの番手をはじめとしてハリスの長さやハリのサイズ(タイプ)を替えることも多いという。さらに、今回はへら鮒のコンディションが本調子でなかったことから、意図的に待ち気味の釣りにシフトすることで普段よりも遅れてでる食いアタリを捉えるシーンも数多くみられた。

「理想の食いアタリはナジミ際に適度なサワリがみられ、これから食うぞ!という前触れに連動してズバッと消し込むアタリですが、どちらかといえば今日はナジミきったウキが少し戻し始めたくらいのタイミングででるアタリが多く、このことからも食いがやや渋かったことが分かります。そうしたなかでも手堅くまとめられ、しかもキロ級の大型が時折混じるチョーチンヒゲトロセット釣りは、今シーズンも自分がエントリーした大会で活躍しそうです(笑)。」

記者の目【丁寧なアプローチが生みだす手堅さと力強さ

大バラケを駆使し、ときに驚異的な釣果を叩きだすパワー系ヒゲチョーとは一線を画する内島のアプローチ。パワー系でもライト系でもない、あえて表現するならばミドル系ヒゲチョーとでもいえようか。今回紹介した釣りは彼自身既に勝負できる釣り方として手の内に入っている釣り方だが、食い渋り時も好食い時も通用するというこの万能釣法は、トーナメントのような勝負に参加するだけではなく、常に“勝てる”釣り方としてもその優位性は内島のみならず多くのアングラーに支持されている。しかし体系立ててしっかりした軸を持った釣り方をしているアングラーは意外に少なく、両ダンゴでは釣りにくく、アタリがでないといった状況下において「とりあえず下バリにとろろを引っ掛ければ、バラケもとろろもどちらでも食ってくる便利な釣り方!」程度に捉えられている向きがある。盛期の釣りはもうすぐ。この機会に内島流の骨太で手堅いチョーチンヒゲトロセット釣りで勝負してみてはいかがだろうか。