稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第170回 「内島康之のチョーチンヒゲトロセット釣り」

勝負がかかるシーンにおいては、単に「好きだから」「得意だから」というだけで釣り方を選択することができないことがある。もちろんそうした理由で勝負に臨み、結果はどうあれ潔く散る(?)という選択肢もあるが、とりわけ本戦決勝のステージに立つために越えなければならない予選大会では、むしろトップを目指す強さよりも手堅さ(確実性)を優先すべきだろう。今回はそんなシチュエーションにおいて最も汎用性が高いチョーチンヒゲトロセット釣りを取り上げる。実釣を披露してくれるアングラーはマルキユーインストラクター内島康之。野の釣りも管理の釣りも幅広くオールラウンドにこなす内島だが、彼自身トーナメントシーンにおいてはこの釣りの手堅さを高く評価し、深掘りすると共に積極的に取り入れているアングラーのひとりだ。実釣は茨城県取手市にある管理釣り場さくら湖。平日にも関わらず多くのアングラーで賑わう桟橋を奥へと進む内島はC桟橋の中ほどに釣り座を構え、手際よく釣り支度を始めた。

食い渋りがちなトーナメントシーンでは強弱柔軟な攻め方が必要不可欠!
9尺を継いだ内島は午前7時に実釣スタート。直径が500円玉ほどのバラケをややラフ気味に付けて打ち込むと、9目盛りだしのグラスムクトップは先端1目盛りを残してナジミきる。数秒後、1~2目盛り返したところで打ち返すという早いリズムでエサ打ちを繰り返すと、間もなくナジミ際に変化が現われる。ところが内島は既にこのとき何らかの違和感を覚えたらしい。
「いつものさくら湖であれば数投でサワリが現われ、もう2~3回はアタリがでていても良いはずです。9尺で十分かと思っていたのですが、入場前に池主さんが言っていたように、食い気のあるへら鮒がいるタナはもう少し深いのかもしれません。」
開始から30分。ナジミ幅が少し浅くなり始めたところで、やや強めの圧を加えてエサ付けした内島。するとバラケの重さに耐えかねたトップが沈没。間髪入れずに竿先を軽くアオってバラケを促進させた直後、水面上に1目盛り残ったトップがズバッと消し込み、遅まきながらファーストヒットが決まる。「さあこれからだ!」と思いきや、内島の表情は意外にも冴えない。
「釣れた直後ですが意図せぬ深ナジミが続いているので、やはりへら鮒のタナは深いようです。これがトーナメント本番であればもう少し早めに替えているのですが、ここで竿を交換します。」

こう宣言すると素早く10.5尺に交換。直後からナジミ際のサワリが増え、いかにもアタりそうな気配がウキに現われると、内島は意図的にやや待ち気味にして打ち返しのテンポを遅らせる。するとバラケが抜けずに確実に持っている投では高確率でアタリがでるようになり、徐々に釣況は上昇カーブを描き始めた。奇しくもトーナメントさながらの釣り難しい展開に戸惑いながらも、まめにバラケのタッチを変えてウキの動きの変化を注視する内島。その結果、やわらかめよりも硬め、シットリ系よりもボソ系のエサの反応が良いことが分かった時点で、小分けした基エサに「バラケマッハ」を適宜追い足し、黄色味がかった大型べらを固め釣り。その後もアタリが遠退いたと見るや否や、新たなとろろと交換して粘り強くヒットを重ね、さらにタナでのバラケの開きが鈍化し始めたタイミングで「ほどき」を追い足し膨らみを復活させると、この日一番のヒットペースに到達。曇りがちだった表情にようやく笑みがこぼれた。

取材時使用タックル
●サオ
シマノ「普天元 獅子吼」9尺→10.5尺
●ミチイト
オーナーばり「ザイト へら道糸フラッシュブルー」1.25号
●ハリス
オーナーばり「ザイト SABAKIへらハリス」0.8号 上=10cm、下=17cm
●ハリ
上=オーナーばり「バラサ」9号、下=オーナーばり「サスケ」8号
●ウキ
旭舟「吟」チョーチンセット用グラスムクトップ 三番【エサ落ち目盛りは全15目盛り中9目盛りだし】
取材時使用エサ
⚫︎バラケエサ(当日のヒットパターン)
「バラケマッハ」600cc+「コウテン」200cc+「BBフラッシュ」200cc+水200cc


3種の麩材をエサボウルに取り、軽く混ぜ合わせてから水を注ぐ。五指を熊手状に開いて全体にまんべんなく水がゆきわたるようにかき混ぜたら、ダマが残らないよう丁寧にほぐしておく。仕上がりはボソタッチながら「コウテン」のまとまり感がエサ付けを容易にし、落下途中での余分な開きを抑えることに寄与。なお、使用時は別ボウルにひと握り取り分け、少量の手水でややシットリめに調整したもので打ち始め、以降はウキの動きを見ながらさらに手水を加えたり、経時変化によってまとまり過ぎてしまったときは小分けしたものに「ほどき」を適宜追い足したりし、タナでの膨らみをコントロールすることに注力。


⚫︎くわせエサ
「極上とろろハード」


1分包を開封し、1/3程度切り取ったら長過ぎる繊維を軽くちぎりながらほぐし、お皿に乗せ、表側に水がゆきわたる程度の少量の水を吸水させる。このとき裏側には吸水していない部分が残っているが、徐々に染み渡らせることで経時変化による繊維の劣化を抑制している。なお、残りのとろろは脱気と日照を避けることを兼ねてへらクッションの下に入れておく。



