稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第166回 「萩野孝之の沖宙ウドンセット釣り」|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第166回 「萩野孝之の沖宙ウドンセット釣り」

萩野流 沖宙ウドンセット釣りのキモ その一:粒子サイズの違いと沈下速度の時間差を生かした波状攻撃!

この時季のセット釣りにおける萩野流バラケエサの使い方のキモは、総論としてはへら鮒のレスポンスが悪ければ悪いほど粗めのボソタッチを、動きがあり食いが良いときは微粒子系のシットリタッチを基本とし、とにかくウキを動かすこと、アタリでフィニッシュさせることに重きを置いている。今回の取材ではこの時季の定番であり、彼自身ニュートラルな位置づけとしているブレンドパターンでスタートしているが、1日を通してほぼこれが正解という、改めて萩野の読みの確かさを強烈に印象づける結果となった。

「近年バラケの傾向は、時季や釣り場によって決まる接点が狭くなっているのが実状です。たとえブレンドが同じであっても、いじり方ひとつでウキの動きに違いが現われ、さらに釣れているバラケであってもエサ付けの際の圧加減の違いで抜けるタイミングに狂いが生じてしまうと、たったそれだけのことで突然アタリがでなくなってしまうことも少なくありません。今日は先のブレンドで過不足はなかったと思いますが、もし動きが少なければ『セットアップ』を『ヤグラ』に替えるとか、仮に浅ダナの短バリスで勝負できるのであれば『ふぶき』をベースにした微粒子バラケで接近戦を挑むことができたかもしれませんね」

また比較的早めに上バリからバラケを抜ききる、いわゆるゼロナジミを含めた抜きバラケのアプローチが主流となるこの時季、早めに抜くことによるウワズリのリスクを軽減すると同時に、狙いのタナに寄ったへら鮒を的確にくわせエサへと導くためには、バラケの粒子の沈下速度にも配慮する必要があると萩野は言う。

「今日のバラケブレンドでは最も重い粒状ペレットの『粒戦』が最初に沈下し、続いて微粒子系高比重バラケの『瀑麩』がそれを追うように沈下。そして最後に中程度の比重を持つ『セットアップ』の粗めの粒子がゆっくりと漂いながら、直下に位置するくわせエサに被るというイメージで仕上げています。これによりくわせエサには時間差でバラケの粒子が降り注ぐことになり、レスポンスが異なるへら鮒への刺激漏れが回避されるとともに、間断なく降り注ぐ粒子が波状攻撃となり、くわせエサへの優れた誘導効果を発揮するのです」

 

さらに忘れてならないのがエサ付けだ。これはある意味隠れた〝スゴ技〟であり、動画をもってしても伝えきれないテクニック。その動作をつぶさに目で追うと、バラケエサを付ける前に指先で摘まんだ適量のバラケを揉み込み、形を整えエサ付けしやすくする動作は一切みられないことがよくわかる。そして十分にエアーを含んだボソタッチバラケを程良い力加減でまとめると、素早くハリを差し込み絶妙の圧を数回加えて振り込み態勢に入るが、持たせ過ぎてはアタリに結び付かないことがわかってからは、そのエサ付けはさらにデリケートな圧加減となった。それが証拠に、振り込む際に上バリからバラケが抜け落ちること数回。萩野ほどのアングラーが……と思うかもしれないが、それほど繊細な圧加減がこの日の釣りを下支えしていたのだ。

 

萩野流 沖宙ウドンセット釣りのキモ その二:遠隔戦ならではの距離感(水中イメージ)の合わせ方

へら鮒の活性が低く動きが鈍いこの時季は、アタリはおろかサワリすら少なく、必然的に下ハリスを長くしなければならない。このためバラケとくわせエサの位置関係を正確にイメージし、両者をシンクロさせることは高難度のテクニックといわざるを得まい。傍目には萩野がこれをいとも簡単にやってのけているようにみえるが、果たして彼自身綿密な下準備と理論のもと、理想とするイメージになるよう自ら水中を作り上げていることはいうまでもないだろう。下準備とは、すなわち釣り方(アプローチの仕方)、タックルセッティング、エサ合わせの三本柱であり、理論とは「この時季はこうすればこう釣れる」という、へら鮒の生理・生態を知り尽くした彼自身の豊富な経験値に基づく組み立て方にほかならない。なかでもこの釣りで重要と思われる沖め、深めのタナ、長い下ハリスと三拍子揃った、いわば「遠隔戦」ならではのへら鮒とエサの距離感(間合い)の取り方は、エサ打ち開始前の準備段階においてすでに「さすが萩野」と唸らされた。

「いかに食い気のあるへら鮒を狙う釣り方とはいえ、厳しい時季の釣りなのでヒットポイントは思いのほか狭いです。状況によってはナジミ際、いわゆる〝ハリスの倒れ込み〟に食いアタリが集中することもあるので、へら鮒がまだ寄っていないエサ打ち前の時点で、ウキが立ち上がってからくわせエサがナジミきるまでのタイミング(時間)をあらかじめ覚えておくことが肝心です」

そういうと下バリにくわせエサだけを付けて打ち込んだ萩野。ウキが立ち上がり、上バリの重さまでがトップにかかって(ほぼエサ落ち目盛り)から10秒……15秒……。まだくわせエサの重さはトップに現われない。そして20秒を過ぎようとしたところでジワリと半目盛りナジミが現われた。これが下バリのくわせエサの重さがかかったタイミングであり、実釣の際に下ハリスが張りきった状態を示すエサ落ち目盛りである。この時間を思いのほか長く感じた記者であるが、さらにへら鮒が寄ってコンスタントにアタリがではじめる頃にはさらに長くなると同時に、へら鮒の動きで生じた水流によるアオリもウキに現われるようになるため、食うタイミングを計ることはより難しくなる。そうしたことが予想されるため、少なくともアタリのでそうなタイミングをあらかじめ把握しておくことは、数少ないアタリに対するアワセ遅れ防止にも役立つはずだ。

「周囲に釣り人が少なく空いた状態でしたので、下ハリスは70cmから始めました。これが競技本番であれば迷わず80cmからスタートしますので、さらにアタリがでるタイミングを計ることが難しくなります。今日はトップにバラケの重さがわずかにかかる、いわゆる「チョイ掛け」程度の持たせ方でなければ食いアタリがでませんでしたが、この早抜き&長ハリスという組み合わせがこの釣りでの重要ポイントですので、その際の微妙なウキのナジミ方や繊細な動きを知るためにもPCムクトップウキは必要不可欠なアイテムだといえます」

萩野流 沖宙ウドンセット釣りのキモ その三:へら鮒に無理なくエサを追わせる(食わせる)的確なタナ合わせ

この日底から50cmほど離れたタナから始めた萩野。ここに食い気のあるへら鮒が居着いているだろうという読みは見事的中し、午前9時をまわる頃には一時アタリっきりという、この時季としては考えられないような状況を作り上げた。しかしその分無駄な動きもウキに現われるようになり、ウワズリ抑制を含めたへら鮒の動きを落ち着かせる対策が早急に求められた。

「狙いの新べらも数多く混じっていますし、思っていたよりもへら鮒の動きが良いようです。ただし大きく変化させると突然アタリがでなくなる恐れがあるので、ここではくれぐれも慎重な対応が必要です。必要なのはまずはバラケの調整。軽く手水でシットリさせたもので落下途中の開きを抑えつつ、タナで抜くタイミングを若干遅らせます」

この調整で一旦は落ち着きを取り戻したウキの動きであったが、時間の経過と共にさらにへら鮒の活性が上がると、それまでヒットしていたアタリでの空振りが目立ち始めた。これに対して萩野は、躊躇なくウキの位置を30cmほど浅くした。

「この時季、一旦上がったタナを下げることは容易ではありません。ここではタナを浅くするのがへら鮒にとってもアングラーにとっても、最もストレスの少ない効果的な対策です。もちろんへら鮒のタナが下がったと判断したときにはウキ下を深くしますが、あれこれ手をだす前にこれだけでアタリが復活することがあるので、この釣り方ではタナを変えることも有効な対策であることを理解しておいてください」

あらかじめ攻めるタナを深めにとっていたのには、こうなることをあらかじめ想定していたことも理由のひとつとしてあるようだ。タナを浅くしただけで再び落ち着きを取り戻したウキは理想的な食いアタリを連発。と、ここでひとつ〝裏技〟を紹介しておかなければなるまい。実は活発にウキが動き始める前、一時的にアタリが遠のいたシーンがあった。このとき萩野はあらかじめミチイトに付けていたトンボ(最初に計測しておいた水深の目印)を目安にウキ下を深くして下バリを底に着ける策を講じていた。つまり即席の〝段底〟を試していたのだ。このとき釣れることはなかったが、変えた直後にいきなり理想的なアタリがでたことに記者は驚かされた。

「取材で公開してしまったのでもう裏技ではなくなってしまいましたが、どうです?いいアタリがでたでしょう!直前まで上からバラケを打っていたので、へら鮒が底に寄っている可能性は大いにありますし、これで釣れた1枚は1日数枚勝負の競技では大きなアドバンテージになるはずですので試さない手はないでしょう(笑)」

記者の目【釣れるには理由(わけ)がある!改めて知らされた萩野流超絶テクニックの数々】

ここまで代表的な実践テクニックを紹介してきたが、これ以外にも紹介しきれないテクニックが随所に散りばめられた萩野流沖宙ウドンセット釣り。最初にタナ取りを始めたときはテーマを誤って伝えてしまったかと慌てたが、始まってみるとその理由が極めて合理的かつ実践的であることが理解できた。見てのとおり萩野の釣りはすべてが釣るため、勝つために向いており、そこには諦めも一切の妥協も存在しない。もちろん一朝一夕に勝てる(釣れる)ようになることは不可能に違いない。しかし萩野の釣りを参考にし、実践できることから始めることは誰にでも同じように与えられたチャンスであり、ここで一歩踏みださなければ決して未来の勝利につながることはないだろう。競技の第一線から身を引き、ひとりのトーナメンターから勝てるへら鮒釣りの伝道師として日々いそしむ萩野孝之。記者も勝ちたい(釣りたい)と思う読者諸兄の熱い気持ちに応えるべく、これからも彼の釣りを追い続けよう。