稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第141回 「岡田 清の接近戦メーターウドンセット釣り」
岡田 清「ふぶき」ファーストインプレッション その一:超微粒子がもたらす名手のタッチ。仕上がりの均一性に注目!
「特別何も気を遣わずにかき混ぜただけですが、きめ細やかな麩材にも関わらずサラッと仕上がりますね。しかもまとまりやすい。これならバラケ作りが苦手なアングラーでも僕とほぼ同じタッチに仕上げることができますよ。」
記者も仕上がったバラケを手に取り確かめてみたが、手からサラサラとこぼれ落ちそうなほどにダマ無く仕上がっているにも関わらず、指で摘まんでキュッと圧を加えると簡単にまとまることからエサ付けが楽であることは容易に想像できた。一般的に微粒子系の麩材には粘るものが多く、その多くがほかのブレンドエサのまとめ役として用いられているが、新エサ「ふぶき」はマルキユー製品のなかで最も細かな麩材でありながら、従来品にはない新感覚のタッチだといえるだろう。
「最近では当たり前のように動画でエサ作りを紹介しているので、以前ほどバラケエサの仕上がりに差が生じることはなくなりましたが、それでもまだコツが分からず所々にダマが残っているとか、水分が均等にゆきわたらずにタッチがまばらになっている方も少なからずいるようです。しかし今回初めて作ってみた感じでは驚くほど均一にサラッと仕上がるので、これなら下手に作れというほうがむしろ難しいのではないでしょうか。」
仕上がりもさることながら、さらに肝心なことはバラケのコントロール性だと岡田は強調する。つまり折角いいバラケに仕上げてもエサ付けのテクニックが伴わないとその効果は100%引き出せないというわけだが、この「ふぶき」は毎回同じようなエサ付けを繰り返してもへら鮒の方が間合いをある程度一定に保ってくれるので、適宜エサ付けを変えるよりもむしろ同じエサ付けを確実に行う方が、新エサのポテンシャルを引き出すことができるものと記者は推察する。
岡田 清「ふぶき」ファーストインプレッション その二:落下中の開きを抑えつつも狙ったタナで的確に開花しへら鮒を誘引!?
釣り進めるなか圧を変えたり手水でタッチを変えたりしながら、時折開き具合を確かめようと池に投下したバラケの様子を伺う岡田。実際の水中でのバラケ方の変化をチェックすることで、自らのイメージとのギャップを埋めているようだ。
「まだ十分使い込んだわけではないので断言することは控えますが、今日1日を通して感じたことは粒状バラケを用いた抜きバラケの釣りでへら鮒との間合いをはかる釣りよりも、むしろある程度上バリにバラケを抱えさせた状態で接近してくるへら鮒を狙った方が良い感じに釣れました。」
この言葉の背景には従来の沈下速度が速い直下型粒状バラケが、図らずもバラケ本体に接近してくるへら鮒を遠ざけてしまう負の効果があることを意味しており、強力な集魚力と誘引・誘導力が逆に作用してしまう、いわば〝諸刃の剣〟といった現象が起こることを示している。さらに目の前の水面にエサ付け寸前のバラケエサを投下した岡田はその粒子の漂い方を見て、
「このとおり直下に沈んでいく粒子は少なく、表面から剥がれるように開いたあとはそのまま一定時間タナに留まる状態であることが分かります。こうした特性によりへら鮒がバラケ本体に接近しやすくなれば、従来型の粒状バラケを使ってハリスワークを駆使しながら変化する間合いをはかるよりも、タッチやエサ付けを一定にしたうえで間合いを詰めた接近戦に持ち込んだ方が、そのポテンシャルを生かせると思います。さらにある程度のサイズのバラケでも沈没しないこの軽さは、厳寒期の小ウキを使った浅ダナの釣りでは大きなアドバンテージになると思います。」
そう解説を加えると、その言葉どおりに毎投バラケを持たせウキをナジませるアプローチに徹し、上バリ下バリいずれにヒットしても構わないといったスタンスの接近戦を演じてみせた。
岡田 清「ふぶき」ファーストインプレッション その三:現代セットの主役は接近戦。「ふぶき」の誕生はもはや必然だった!
セット釣りにおける間合い(距離感)を語るうえで切っても切れない要素がハリスワークだ。適度なサワリを保ちヒット率の高いアタリをだすためには、くわせエサを付けた下ハリスの長さを的確に合わせなければならないが、現代セット釣りのハリスワークには容易に正解に辿り着けない難しさがある。一般的にはへら鮒の活性が低いほど下ハリスを長くしなければアタリがでにくく、活性が高くなるに従い短くしないと無駄なウキの動きばかりを誘発し、結果としてスレや空振りばかりが増えて釣りにくくなってしまう。コンスタントにアタリがでている状況では、基本的に下ハリスは短い方がウキの動きが簡素化され高いヒット率が維持される。そのためにはへら鮒をできるだけバラケに惹きつけておく必要があるのだが、そのキーワードこそが新エサ「ふぶき」の最大の特徴である軽量&超微粒子バラケなのである。粒状バラケとは対極に位置するといわれる微粒子系のバラケエサの有効性については、かねてより盛期におけるホタチョーやヒゲチョーにおいて象徴的ともいえる「バラケマッハ」ベースのバラケエサでも既に実証されている。最近では、読者諸兄のなかにもご記憶の方が居られるだろうが、釣技最前線の第134回における岡田 清のカッツケウドンセット釣り、さらには第138回の吉田康雄の同じくカッツケウドンセット釣りなどのように、へら鮒との間合いを詰めた超接近戦を旨とするアプローチであったが、まさにこれらの釣りが現代セット釣りの今後の方向性を示唆したものであり、新エサ「ふぶき」誕生の背景であることはいうまでもあるまい。
「僕にとってはイメージどおりの接近戦が可能になりそうな感じのエサですね。今日はタナ1mの浅ダナセット釣りでしたが、狙ったとおりのレンジにへら鮒を留めておける感触がありましたし、この時期であってもバラケに惹きつけて積極的に食わせるアプローチができることが分かりました。それが証拠に実際今日の釣りでは試しに下ハリスを20cmまで詰めてみましたが、しっかりアタリがだせて釣れました。そもそも従来のバラケエサではここまで短くしようとは思いませんでしたし、釣れることもなかったと思います。『ふぶき』これはイケるエサですね(笑)。」
記者の目:持たせバラケの接近戦から抜きバラケの遠隔戦まで自在に間合いをコントロール
岡田の的を射た実釣により新エサ「ふぶき」の特性、ならびに接近戦における有効性に大いなる可能性を見いだせたファーストインプレッション。現代セット釣りの実情を見事に捉えた開発陣の着眼点と開発力に敬意を表すると共に、効果的かつ扱いやすいエサがもうすぐ手元に届くことに興奮を抑えきれない読者諸兄は少なくないはずだ。ただでさえ難しいといわれる現代セット釣りにおいて、その難易度が下がり釣果アップに大いなる期待が持てる「ふぶき」の登場は、今後のセット釣りのアプローチそのものを変える可能性をも秘めている。たとえば抜き系バラケのセット釣りが主体となる冬の釣りにおいては必ずしも抜かずとも、また多少抜くタイミングがズレたとしても、アタリにつながれば、渋さに痺れる厳寒期の釣りでも楽しさ倍増。さらに麩系バラケが効果的な盛期のセット釣りでは昨今主役の「バラケマッハ」に取って代わるかもしれない可能性を秘めている。ブレンド次第で持たせバラケの接近戦から抜きバラケの遠隔戦まで、自在にへら鮒との間合いをコントロールできれば釣り幅は無限に広がるわけだが、しかもそれが簡単に手の内に入るのであれば使わない理由はあるまい。苦手分野のみつからない究極のオールラウンダー「ふぶき」。新感覚のポテンシャルをぜひその手で確かめていただきたい。