稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第140回 「杉本智也の段差の底釣り」|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第140回 「杉本智也の段差の底釣り」

今や冬のへら鮒釣りの代名詞ともいえる段差の底釣り(以下、段底)。昨年発売以来、あらゆるセット釣り用バラケとして欠かせない存在となった「ヤグラ」もまた、段底にはなくてはならないアイテムとして多くのへらアングラーに受け入れられている。「ヤグラ」に関する扱い方については昨年来「釣技最前線」で基本編・応用編共に幾度となく取り上げてきたが、今回は段底におけるさらなるポテンシャルをマルキユーインストラクター杉本智也に紹介してもらう。彼には以前早いアタリでヒットに導くポジティブ段底を見せてもらったが、今回の段底は高性能バラケエサ「ヤグラ」のポテンシャルを余すことなく引きだすことで可能になった、いうなればブラッシュアップされた進化形のアグレッシブ段底だ。アタリのタイミングの早さはいうに及ばず、これからのスタンダードにもなり得る杉本流段底はさらに安定感を増し、見るものを魅了する!

〝温故知新〟古典的なアプローチに斬新な切り口で新風を吹き込む杉本流段底!

実釣フィールドは元祖スーパージャンボで有名な埼玉県白岡市にある隼人大池。新池282番座席で釣り支度を始めた杉本の目の前では良型のモジリがみられ、同池のへら鮒のコンディションのよさがうかがえる。タナ取りをルーティーンどおりに済ませた杉本は早くもエサ打ちを開始。毎投確実にウキを深くナジませながら、トップに現われるへら鮒の気配を感じ取ろうと自らの感度を研ぎ澄ます。

「テーマが宙釣りであればこのモジリはウェルカムですが、段底ではへら鮒の活性の高過ぎはむしろ警戒注意報。実際のところ本格的な段底シーズンにはまだ早いので、今日は少々手こずるかもしれませんね。」

柄にもなく(?)気弱な言葉を口にした杉本だが、記者にはこれが自信の裏返しと受け取れた。それが証拠にシーズンインにはやや早い実釣にも関わらず開始直後から段底らしい小さなアタリで連チャンを決めてみせると、すでに手の内に入っている高性能バラケ「ヤグラ」ならではのエサ切れのよいバラケを駆使し、古典的な段底ではタブーとされているバラケを残した状態からも「これは食った!」と判断したアタリには、ためらうことなく瞬時のアワセを決めてみせた。

「エサの進歩には目を見張るものがありますね。まだ1年程ですが『ヤグラ』を手にしてからはエサ付けだけに気をつければウワズリをほとんど気にしなくて済むようになりましたので、以前紹介させて頂いた段底よりもさらに積極的にアグレッシブに攻めることができるようになりました。」

タナに届いてからも割れ落ちすることなく、彼が理想とするチリチリ抜けるバラケは確実に底へとへら鮒を集め、そこにサイズ感的にも食感的にもこの時期のへら鮒の嗜好にあった「力玉ハード(L)」を的確な状態に位置させることでさらなる進化を遂げたようだ。釣れだしたらもう止まらない。早いアタリも待ってからのアタリも、どこから攻めてもヒット!ヒット!ヒット!杉本劇場の開幕だ!

使用タックル

●サオ
がまかつ「がまへら幻皇天」17尺

●ミチイト
東レ「将鱗へらストロングアイ道糸」1.0号

●ハリス
東レ「将鱗へらスーパープロ PLUSハリス」 上=0.5号-12cm、下=0.4号-50cm

●ハリ
上=がまかつ「アラシ」8号、下=がまかつ「角マルチ」4号

●ウキ
TOMO「C-1」No.12
【元径1.2mmテーパーPCムクトップ18.0cm/直径6.0mm二枚合わせ羽根ボディ12.0cm/直径1.0mmカーボン足7.0cm/オモリ負荷量≒2.3g/エサ落ち目盛りは全11目盛り中8目盛りだし】

段差の底釣りバラケエサブレンドパターン

「粒戦」100cc+「とろスイミー」50cc+「セットガン」100cc+「ヤグラ」150cc+「セット専用バラケ」150cc(ザックリ混ぜあわせてから)+水200cc

指を熊手状に開いて大きくかき混ぜ、全体に水が均等にゆきわたったら5分以上放置して吸水を待つ。ポイントは一般的な作り方である「粒戦」や「とろスイミー」を先に吸水させずにほかの麩材と一緒に吸水させること。杉本によると、この作り方の方がバラケに一体感が生まれ、エサ付けがしやすいうえにタナに届いてからも割れ落ちすることなくチリチリとバラケさせることができるという。さらに「ヤグラ」のエサ切れのよさと直下に落ちる特性を理解していれば、ウワズリを恐れることなく、必ずしもバラケが抜けてからではなく上バリにバラケを残した状態ででる早いアタリにも積極的にアワせることができるという。

くわせエサ

「力玉ハード(L)」ノーマルタイプと「さなぎ粉」漬け

サイズ感としては冬の段底には丁度良い大きさだとし、今回は薄らと茶色く色が付く程度に短時間「さなぎ粉」に漬けたものをメインに、へら鮒の反応が鈍くなったときに漬け込まないそのままのものを打ち込むなどして食い気を刺激し続けた。特に厳寒期の段底で注意すべき点として、アタリがでにくいとより軽く小さなくわせエサに手が伸びがちだが、アタリの伝達を考えるとハリスが張りにくくなる分、アタリの識別が難しくなり、場合によっては食いアタリがウキに伝わらないことも考えられる。基本的にエサの重さは着底することで消えてしまうので、むしろある程度のサイズ感を持った目立つフォルムのくわせエサの方が段底向きだといえよう。