稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第140回 「杉本智也の段差の底釣り」|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第140回 「杉本智也の段差の底釣り」

杉本流段底タナ取り手順

手順①:空バリ状態でオモリバランスをトップの付け根にとる(今回ウキは11目盛りトップ)。

手順②:上バリのみを付けて再度オモリバランスを確認すると8目盛りだしとなる。つまり上バリの重さは3目盛り分であることが分かる。この目盛りはくわせエサを付けた下バリの重さが消えた状態の目盛りと一緒なので、バラケが完全に抜けた状態でここまで戻せば確実にくわせエサが地底に着いていることを保障することになる。

手順③:さらに下バリとくわせエサ(「力玉ハード(L)」)を付けてオモリバランスを再確認すると6目盛りだしとなった。つまりくわせエサを含めた下バリの重さは2目盛り分であることが分かる。杉本流の段底において下バリの重さがトップに乗り切っている6目盛りをエサ落ち目盛り(下バリトントンのタナ)に設定する。

手順④:フロートは使わずに粘土タイプのタナ取りゴムを付けて水深を計測。

このときのタナ取りゴムの大きさ(重さ)はウキがゆっくり沈むくらいのもので、ウキが立つ位置(釣ろうとしているポイント)の前後左右40~50cm四方を測りながらトップの先端1目盛りが水面上にでるようにウキ下を調節する。くれぐれもミチイトが斜めに張った状態で計測しないこと。

手順⑤:水面上にでたトップの位置に目印のトンボを合せる。

手順⑥:エサ落ち目盛り(先端から6目盛り目)+7cm分のズラシ幅のところをトンボに合せる。

手順⑦:改めて下バリにくわせエサを付けて打ち込み、くわせエサを含めた下バリの重さが消えた状態の目盛り(=上バリのみを付けた状態のオモリバランス)である8目盛り目が水面上にでればタナ取りは完了。

※なお穂先には十分な余裕を持たせて過剰にテンションがかからないようすることが大事。目安としてはウキ2本分くらい離れた位置にウキ止めゴムが位置するくらいがベスト。

杉本流 段差の底釣りのキモ その一:くわせエサを底から離さず安定させてこその段差の底釣り

取材冒頭、厳寒期に段底を選択するのはどのようなときか杉本に訊ねると、

「段底唯一の弱点といわれる流れがなく(あってもシモリがでない程度の緩やかな流れ)、確実にへら鮒が地底に居着いていれば常に選択肢の上位に入ります。それだけ手堅く自分自身勝負できる釣り方だと思っていますが、その理由は釣りのシステムが至って明確で簡単だからにほかなりません。さらに大切なポイントが2つあり、1つはくわせエサを確実に底に着けて離さないこと。そしてもう1つはバラケをチリチリ降り注がせて集魚力を高めると共にウワズリを招かないことです。特にくわせエサを安定した状態で底に置くためにはある程度のズラシ幅が必要です。下バリトントンのタナで上手く釣る方がいることも事実ですが、多少底が掘れてもくわせエサが底から離れないようにするためには、保険を含めてスタート時点で7cm程度ズラした状態で始めるのが自分流です。」

タナ取りは各々自分に合った慣れ親しんだ方法でよいだろう。ただしズラシ幅に関する考え方については杉本の考え方を推奨したい。彼流の基本は7cmとやや大きめのズラシ幅だが、そのウキの動きは思いのほかキビキビとしており、食いアタリは小さいながらもキレがある。さらにはこれが10cmでも15cmでもアタリは消えることはなく、食いアタリとしてウキに現われると杉本は言い、むしろアタリがでない(だせない)で悩んでいる方の多くはズラシ幅が少な過ぎて、何らかの原因によりくわせエサが底から離れてしまっていることでへら鮒がエサを食いにくくなっている可能性が高いのではないかと推察する。そして、何よりくわせエサを底から離さず安定させてこその段底なので、たとえ時間がかかったとしても、まずは確実なタナ取りを行うことが肝心だとアドバイスを送る。

杉本流 段差の底釣りのキモ その二:キレよく抜けて直下に降り注ぐ「ヤグラ」がウワズリの不安を払拭!

ここで実釣開始直後に話を戻してみよう。この日の初アタリは開始から15分が過ぎた頃で、その少し前には何となく気配を感じていたという杉本はサワリから連動したこの微細なアタリを見逃すことなく瞬時に捉えたが、残念ながらこれはスレアタリ。気を取り直して次投を打ち込むとナジミが浅くなり、明らかにへら鮒がエサの周囲に寄り始めたことを示していた。するとエサ落ち目盛りが水面上にでた直後に小さく「ムズッ」と押さえるアタリがでて初ヒット。この1枚を合図にわずか1時間足らずで一気に7枚を釣り込んでみせた。いずれも深ナジミからスタートする一連の動きのなかででたアタリでヒットを重ねたが、戻し際の早いアタリあり、長いサワリが続くなかでのサソイ直後のアタリありと、ヒットパターンは一定することなく様々であった。

「できれば同じヒットパターンをみつけて釣り込みたいのですが、今はへら鮒の活性が高く、動きがよすぎるためなのか一定しません。とりあえず釣れてはいますが、連チャンを含めて短時間で一気にカウントが伸びた後は穴が空くことが多いので、少しでもサワリが減ったときは再び寄せる意識を強くして組み立て直すことが肝心です。」

この言葉どおり、その後はウキの動きが弱まり一時的にアタリが途切れたためPCムクトップの先端近くまで深くナジませる投を繰り返した杉本。再びサワリが現われると戻し際の早いアタリにも積極的にアワせ始め、これが乗らないとみるとややアタリを送り気味の攻めにシフトチェンジ。それでもまだ上バリにバラケが残っているであろうタイミングのアタリでも臆することはない。

「バラケのキレがいいので、どこででたアタリでも食ったと思えば行きます(笑)。もちろん何でもかんでもアワせているわけではありません。根拠となるのはサワリの現われ方で、それまでのヒットパターンを参考にヒット率の高いナジミ幅がでていて、戻し際から抜ける直前に至るまでの間に意図するアタリがでれば迷わずGO!これも『ヤグラ』の働きのおかげでしょう。」

底に着いたくわせエサを食わせる段底の禁忌といえば〝ウワズリ〟に尽きるだろう。それを懸念することなくバラケが残ったタイミングであっても食ったと見るや、ためらうことなくアワせられるのは大きなアドバンテージ。このプラスαは大きく、これあればこその進化形段底といえよう。

杉本流 段差の底釣りのキモ その三:バラケ保持と情報伝達機能。いずれにも優るPCムクがマストアイテム

バラケの重さを保持する力だけならパイプトップに優るものはなく、活性が低下したへら鮒の動きやエサの状態といった情報を伝えるのには高感度なグラスムクが有利とされているが、杉本が段底で使うのはどちらでもなくPCムクトップウキ一択である。

「段底はアングラーがやったことの答えがダイレクトに釣果に反映されやすい釣り方ですので、自らコントロールできる幅(範囲)が広い方が扱いやすいことはいうまでもありません。バラケを持たせようとしてしっかりエサ付けしたらトップが沈没してしまったとか、底が掘れてタナが深くなっているにも関わらずその変化がトップに現われないようでは困りますし、さらに厳寒期はへら鮒の動きそのものが鈍く弱々しいので、わずかな動きでもそれがトップに現われてくれた方がアングラーとしては優位に事が進められます。これらのことを総合してベストのウキは?と問われれば、バラケの重さを支えられる十分な浮力を持ち、微細なへら鮒の動き(水の動き)もトップに伝えられるPCムクトップウキがベストだと断言できます。」

いうまでもなくPCムクトップは機能性の面でも表現力の面においても、実に優れたパフォーマンスを発揮してくれるウキである。盛期の激しいへら鮒の動きにも耐えてエサをタナに送り込む性能にも、厳寒期の食い渋ったへら鮒の動きや微細な食いアタリを伝える能力にも長けている。

「もちろんPCムクは段底特有の小さな食いアタリを捉えるのにも有利に働きます。極めて小さく弱々しい食いアタリを識別するには、アタリそのものだけを見ていてはアワせるべきアタリを見極められません。ナジミきったウキの戻し際から続くサワリを読むことが肝心で、そのためにはサワリが現われやすいウキが必要不可欠であり、PCムクがマストであることは当然のことなのです。」

記者の目:攻めてヨシ!守ってヨシ!近未来をリードする杉本流速攻段底

段底は良くも悪くも〝守り〟を固めた手堅い釣り方といわれて久しいが、近年このセオリーが通用しない場面が目に見えて増え、そうかといってアグレッシブに攻めても、かえって事態を悪化させてしまうケースも少なくない。そんな状況下にあって段底の未来を切り開くであろう、攻めてヨシ!守ってヨシ!の速攻段底。表現力豊かなPCムクトップウキを駆使し、一連の動きのなかに現われる水中のあらゆる情報を読み解き、アプローチに生かすテクニックは、まさに杉本ならではのものだろう。堅く守ってばかりではジリ貧状態に陥る局面において、「ヤグラ」を司令塔としたニュータイプのバラケエサを駆使し、攻めの段底で挽回を図ることができる可能性があることを改めて知ることができた今回の「釣技最前線」。さあブラッシュアップされた杉本流段底を試すのは、今だ!