稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第77回 吉田康雄のペレ宙2018|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第77回 吉田康雄のペレ宙2018

今年もペレ宙の季節がやってきた。大型べらの多い釣り場からはペレ宙での大釣りに沸く便りが届いているが、本格的なシーズンはむしろこれから。強烈な寄りと激しいアタックに見舞われても持ち堪えるペレット系ダンゴエサと長竿のコラボレーションにより、他の浅ダナ両ダンゴ釣りとは一線を画する大型べらの強い引きを堪能できるこの釣りは、多くのアングラーを魅了して止まない。そんなペレ宙も近年大きく様変わりし、かつてのような大量のペレットを含む重く大きなボソエサを打ち切るだけでは釣りきれなくなっている。それでも決まったときの爆発的な釣果は依然として大きな魅力であり、近代的なアプローチに興味を抱いている方も大勢いることだろう。そこで今回は全盛期のペレ宙を知り、また変化を遂げた近代ペレ宙にも精通したマルキユーフィールドテスター吉田康雄に白羽の矢を立て、2018年バージョンの最先端アプローチを紹介してもらう。彼流の理論に裏付けされたエサの重さとタックルバランスのマッチングによる絶妙のアプローチをとくとご覧あれ!

強さだけでは釣りきれない現代ペレ宙 決め手は〝フレキシビリティー〟

ペレット系ダンゴエサを用い、沖の浅ダナに居着く良型のへら鮒を狙うペレ宙釣り。長竿+大エサ+大ウキを駆使し、湧き上がる中小べらには目もくれず激しく踊るウキを力づくでナジませると、やがてメインターゲットの大型べらがタナに入り、ドッカンドッカンと突き刺さるようなダイナミックなアタリを出して食い始める。この釣りで釣れるへら鮒は明らかに他の釣り方で釣れてくるものとは異なり、なかには一度もハリ掛りしたことのないような、肉厚の大型べらの数釣りを経験されたアングラーも少なくないだろう。

「確かに良く釣れましたね。こう見えても実は僕もペレ宙釣りが大好きで、一般に広く知れ渡る以前からやっていましたから、当時はかなり良い思いをさせてもらいましたよ(笑)。」

こう語る吉田は、知る人ぞ知る〝強い釣り〟を身上とするトップアングラー。一見繊細なセット釣りを好みそうに見えるのだが、実は管理・野釣りを問わず大型のへら鮒を釣ることに情熱を燃やし、たくさん釣るテクニックを持つことは言うに及ばず、たとえアタリすらない状況下の野釣り場であっても何日でも通い続けることができる辛抱強さ、忍耐力を兼ね備えたマルチアングラーなのである。そんな吉田が愛して止まない釣りのひとつに挙げるのが今回紹介するペレ宙であり、この釣りの黎明期から今日までの変遷を知り尽くした彼流のノウハウが詰まった最先端のペレ宙を、実戦を通して分かりやすく解説してもらった。

「昔のペレ宙はとにかく強い釣りが主流でした。特に日曜日などの混雑時に規定一杯の長竿で攻めると、セーフティーゾーンに逃れていた大型べらがペレットに刺激され、手がつけられないほどバクバクに釣れた思い出があります。現在はそうした釣り方では釣りきることはできませんが、それでも幾度となくマイナーチェンジを繰り返してきたペレ宙ならではのアプローチを駆使することで、一般的な両ダンゴの浅宙釣りでは釣ることが困難な大型べらを数多く混じらせることができるので、僕自身やはりこれからの時期は真っ先に選択肢に上る釣り方であることには変わりありません。現在のペレ宙の決め手は、ひとことで言えば柔軟性です。それもかなり幅広い柔軟性を求められるので、かつてのような強さ一辺倒のアプローチでは通用しません。たとえばエサはカタボソからヤワネバまでどこで決まるかはそのときのへら鮒次第なので、ペレ宙の軸をブレさせることなく、しかも釣況に応じてどの方向にも動けるフレキシビリティーさが必要なのです。さらにつけ加えるとすれば、それは我慢強さ、辛抱強さです。ある一定ラインまでは柔軟に構えてへら鮒に歩み寄りますが、それを超えてまで近づき過ぎるとペレ宙が成立しなくなってしまうので、不調なときほど大型べらが口を使い始めるまで我慢をし、これで食わなければ仕方が無いというボーダーラインと割り切り方を持つことは、ある意味テクニック以上に重要だといえるでしょう。」

取材は春の乗っ込み気配が終息しつつあった5月下旬の筑波流源湖。吉田が歩みを進めたのは広大かつ変化に富んだポイントを有する同湖のなかでも浅場といえる最奥部。平均水深が3m程の東オンドマリ桟橋中央南向きに釣り座を構えた。

使用タックル

●サオ
シマノ「飛天弓 閃光P」16.5尺

●ミチイト
東レ(プロトタイプ)1.0号

●ハリス
東レ「将鱗へらSUPER PROプラスハリス」 上0.5号-40~52cm/下0.5号-52~57cm

●ハリ
上下ハヤブサ「鬼掛 軽量ダンゴヒネリ」7号

●ウキ
吉田作 ペレ宙用プロトタイプ 二番~四番
【テーパーパイプトップ(元径1.6mm、先径1.2mm) / カヤボディ(最大直径6.8mm)/ カーボン足(直径1.2mm)/エサ落ち目盛り=全サイズ6目盛り出し】
①二番=トップ13cm/ボディ7cm/足8cm/オモリ負荷量≒1.2g
②三番=トップ14cm/ボディ8cm/足8cm/オモリ負荷量≒1.5g
③四番=トップ15cm/ボディ9cm/足8cm/オモリ負荷量≒1.8g

●ウキゴム
鬼掛「ウキゴム」

●ウキ止め
市販品(タナキーパー)

●オモリ
0.35mm板オモリ一点巻き

●ジョイント
鬼掛「軸付サルカン」(ウレタンチューブ付き)

タックルセッティングのポイント

サオ
ペレ宙における竿の長さは、すなわち釣り座からエサ打ちポイントまでの距離であり、この釣り方の重要な要素となっている。吉田自身「竿の長さは最重要ポイント」と言ってはばからず、それに伴うエサの振り込み精度の重要性を力説する。当日は混雑感もなくこの長さでも問題なく釣ることはできたが、空きなく釣り座が埋まるようなときにはさらなる長竿が必要になるだろう。

ミチイト
現代ペレ宙では大型ばかりがターゲットではなく、従って使用するウキのオモリ負荷量についても必ずしも大きなものばかりではない。実際に取材にも使用したような比較的小さなウキがメインとなることもあるため、その動きを干渉しない太さのものを選ぶことが肝心だという。

ハリス
浅ダナの釣りであっても比較的長めのハリスを使うのがペレ宙の特徴であり、吉田自身この長さを基準としており、取材時はこの長さでスタートしたうえで、状況に応じて5cm程度の長さのアジャスティングを行っていた。

ハリ
かつてのような硬く大きなボソエサを使うことはほとんどなく、どちらかといえばシットリとしたなかにもまとまり感(良い意味でのネバリ具合)のあるタッチのエサをメインとするため、ハリのサイズは一般的な浅ダナ両ダンゴ釣りよりも大きめを使うのがポイントになっている。なお強めのセッティングが良いときにエサ持ちを強化させたいときには8号とすることもある。

ウキ
通常ウキのサイズはへら鮒の反応が鈍い(弱い)時ほど小さく、エサに対するアタックが激しくなるに従ってサイズアップするのがセオリーであり、吉田のアジャスティングも例外ではなく、基本的にはセオリーに従い必要だと判断すれば積極的に交換して釣況に合わせて行った。ちなみに取材時は二番でスタートし、徐々にサイズアップさせることで活性の高まった良型の食いにアジャストしていった。

吉田流最先端ペレ宙のキモ 其の一:竿の長さ(エサの振り込み精度)

この釣りの最大のポイントは?という記者の問いに、吉田から返ってきた答えは意外なものだった。

「もちろんエサやウキといったものも大切なのですが、あえてペレ宙という釣り方でいえば竿の長さでしょう。なぜなら口を使うコンディションの良い大型のへら鮒を釣るためには、一般的な両ダンゴの浅宙釣りで使用する8~9尺といった短竿ではどうしても無理があるからです。多少の違いは見られますが、多くの管理釣り場では13尺以上の竿で良いへら鮒が居着くエリアに届きます。ときには21尺といった長竿が良いときもありますが、いずれにしても中尺以上の竿が必要であることは間違いなく、これに伴い高度なエサの振り込みテクニックが求められることになります。チョーチン釣りならばいざ知らず、13尺以上の浅ダナの釣りでは意外にエサ打ちが難しく、毎回ピンポイントで同じ位置にウキを立たせるのは至難の業。エサの振り込み点のバラつきはエサ持ちにも大きく影響を及ぼすので、長竿での精度の高い振り込みは現代ペレ宙において極めて重要な要素なのです。」

かつてのペレ宙は極端なカタボソエサをナジむ途中でへら鮒に削らせるアプローチであったため、それほど正確なエサ打ちではなくても成立したものだが、最先端ペレ宙ではそれほど極端なエサは使わず、どちらかといえば品の良い(?)おとなしめのタッチで決まることが多いため、あえて吉田は竿の長さというキーワードを真っ先に挙げたのであろう。事実、取材時に使ったエサのタッチは至極扱いやすいもので、途中から切り替えた「ペレ道」入りの重めのエサでさえ、ビギナーであっても無理なく使える標準的なタッチのものであったのが印象的であった。それだけにペレ宙ならではの持続性のある重厚な時合いを構築するためには、食い頃のエサを持たせることができる、高度な振り込みテクニックが必要不可欠であるということだ。

そんな話を聞き出していた取材中盤、徐々にアメ色に輝く良型地べらが釣れ始め、いよいよ好時合い到来かと思った直後に強い南風が吹き出すと、あっという間に吉田をしてもエサ打ちポイントがままならないほどの強風に変わってしまった。取材スタッフはこれ以上の続行は困難と判断し、風を背にする釣り座に移動することを吉田に勧めたのだが、残念ながら移動後は好時合いには恵まれず、あらためてポイントの大切さも痛感した取材であった。

吉田流最先端ペレ宙のキモ 其の二:比重(ペレット濃度)とネバリ(エサ持ち)で持つエサに仕上げる

吉田のペレ宙用エサ作りのベースは「ペレ軽」であることに間違いは無い。基本ブレンドパターンでも重めのブレンドパターンでも中核を成しており、最先端ペレ宙に無くてはならないエサであることは明らかだ。さらにエサ使いを紐解くと、バイプレーヤーとして「ペレ道」、そして今回は裏方に徹した「カルネバ」の存在も見逃せない。

「確かに『ペレ軽』は僕のペレ宙には欠かせないエサですが、他のどれひとつが欠けても成立させるのが難しくなるため、すべてが揃ってこそのエサだと思っています。重過ぎず軽過ぎず、ペレット濃度も現代ペレ宙に適した『ペレ軽』をブレンドの柱にすることは理に叶っていることですし、これに濃度と重さを増すための『ペレ道』と、ペレ宙に無くてはならない特性としてのボソっ気と開きを担う『もじり』、そしてエサ全体にエアーを含ませながらまとまる『カルネバ』を過不足ない分量でブレンドすることで、現代のペレ宙にマッチしたエサになることは間違いありません。さらにこのブレンドは手水と撹拌により持ち具合の調整がしやすく、また手を加えてもタッチが変化し難いところが気に入っていますね。」

余程自信があるのだろう。吉田の解説には説得力があり、これに実際のウキの動きを見せつけられると、見ている記者までもが簡単に釣れそうな気がしてくるので不思議だ。

「エサに関して言えば〝持つエサ〟であることが絶対条件です。しかも、ただ持てば良いというのではなく、狙ったタナに良型のへら鮒を呼び込みながら食うエサであることが求められるので、硬軟やネバリは極端には偏らず、開きながらも芯持ちの良さが必要になるのです。」

今回紹介したブレンドパターンはあくまで吉田自身のタックルセッティングを基にマッチングさせたものなので、人によっては各麩材のブレンド比率を変えた方が良いケースもあるので、自分流のベストブレンドパターンを探り当てるのも面白そうだ。

吉田流最先端ペレ宙のキモ 其の三:釣況に合わせた大胆なウキ交換!

この日、吉田は何度ウキを交換しただろう。スタート直後は比較的軽めのエサに合わせてオモリ負荷量の小さなものから始め、エサがナジミ難くなったところでサイズアップを図り、反対に釣況が悪化したところではサイズダウンさせながらコンスタントに釣り続けてみせた。自身「吉田作」のウキの作り手としても活躍する吉田は、今回の取材にあたり最先端ペレ宙に適合させたプロトタイプのペレ宙用ウキを持ち込んだ。基本的なコンセプトはエサのナジミを阻害することなくタナに送り込め、ナジミ際の早いアタリからナジミきった後のアタリ返しを含めた、実に幅広いヒットチャンスに対応できる設計となっている。

「好みの問題もあるでしょうが、ペレ宙では大型べらがたくさん釣れる好時合いほどアタリを送り気味にした方が強いアタリが出やすく、またアタリ返しのヒット率が高いという傾向がありますので、やはりパイプトップウキの方が適していると思います。また多様に変化する食いのタイミングに合わせ、ヒットゾーンを広く取れるトップバランスも重要になると思います。太過ぎず細過ぎず、また長過ぎず短過ぎないものがペレ宙用としては適していると思います。」

勿論ウキ交換だけで釣り切れるほどペレ宙は甘くない。それでも吉田の対応はシンプルで、ウキの大きさに合わせたエサのマッチング以外はハリスを5cm伸ばしただけで、他のタックルにはほぼ手を加えることなく釣りきってみせた。当日の方向性としてはへら鮒がエサに向かって積極的に向かって来ているときは、強いアタリを出すために強い方向にセッティングを変えることでカラツンを減らし、反応が鈍くなってからはライトな方向に変えることでアタリを引き出していた。

「食うエサに仕上げることができたら、それをいかに持たせるかがポイントになります。エサに手を加えて持たせる方法もありますが、これでは釣れたとしてもやがてエサを嫌われてしまう恐れがあるため、できればエサへの調整は必要最小限に止め、他の手段で持たせるようにした方が時合いは長続きすると思います。またボソっ気の残るエサの方が釣れるへら鮒も大きいような気がしますので、やはり手の加え過ぎは禁物ですね。」

さらに吉田はへら鮒の大小の釣り分け方にも言及した。

「管理釣り場のへら鮒の大型化が進んだ現在、昔のように完全に中小べらと大型べらのタナを二分して釣り分けることはできませんが、食いが立ったときにウキを大きくして強気に攻めることで、かなりの確率で良型の含有率をアップさせることは可能ですので、そうした意味でも的確なウキのアジャスティングは必要ですね。」

総括

取材の冒頭にも語っていたが、どんな釣り方でもへら鮒にエサを食わせるための調整は必要だが、ペレ宙においては口を開かないものに無理矢理食わせようとして、弱いセッティングに変えるのはむしろ逆効果。たとえ目先の1枚は釣れたとしても、いざ食いが立ったときには釣り難さばかりが先立ち、折角ペレ宙で釣れるチャンスをみすみす見逃してしまう恐れがあると言って、安易にへら鮒に歩み寄ることを戒める。

「釣りの技術とは異なりますが、ペレ宙では辛抱や我慢といった強い気持ちを持つことも必要ですね。いつでも釣れるという保証はありませんが、型の良いへら鮒ほど食い出しが遅い傾向があり、朝一から釣れ続く方が珍しいといえるかもしれません。いつでも強い釣り方に変えることができる準備と心構えがあれば、どうしてもウキの動きが悪い時間帯にはライトな攻め方でしのぐことも悪くはないと思います。ただし、このとき釣れた釣り方をいつまでも続けることには賛成できません。事前の情報収集で釣れる確信があるのなら、たとえ後半型になろうとも大型の食い気のスイッチが入ったらチャンスを逃さず、それらに負けない重いエサ、強いタックルで一気に釣り込む気概が必要ですね。」

スタートダッシュが明暗を分ける短時間勝負のトーナメントだけではなく、一日を通して時間をかけて臨む釣りにも長けた吉田ならではの考え方だが、明らかにペレ宙は時間をかけて時合いを構築する釣り方であり、一旦釣れ始まれば比較的難しいテクニックは必要としない釣り方でもある。従って多少釣れ出しが遅くても動じない強い気持ちに加え、良型のへら鮒が口を使い始めるまで辛抱、我慢ができるといったメンタル面のトレーニングも必要なのかもしれない。