稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第85回 石井忠相の両グルテンの底釣り(野釣り編)|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第85回 石井忠相の両グルテンの底釣り(野釣り編)

春といえば、巣離れから乗っ込みへと続く野釣りの絶好機。今シーズンはそんな春の野釣りが待ち遠しくてしかたがないというへらアングラーも多いのではないだろうか。去る1月下旬、横浜で開催されたジャパンフィッシングショーで初お目見えとなった「野釣りグルテン ダントツ」。発売を目前に控えた2月末、新エサのポテンシャルを映像に収めるべく、開発者のひとりとして関わった名手、マルキユーインストラクター石井忠相に実釣をオファー。関東屈指の野釣りフィールドびん沼川で記者が目の当たりにしたのは、まだ本格的に動き出す前の早春の野べら達が次々とハリ掛かりする驚きの光景であった。

セット釣りにもひけを取らない集魚力で野釣りが変わる!?

まずはお断りしておきたい。今回紹介する『野釣りグルテン ダントツ』が既存の『野釣りグルテン』のマイナーチェンジではなく、集魚材を始めとした素材の見直しによりまったく異なるエサへと生まれ変わった〝新エサ〟であるということを。取材冒頭、記者は今回の新エサ開発にどのような背景があったのか興味を抱き訊ねてみた。

「従来の『野釣りグルテン』にも集魚力や摂餌持続性に効果のあるニンニクやアミノ酸等が入っており、多くの野釣りファンに愛用していただきました。しかし、どんなに優れたエサでもへら鮒がそうした集魚材に慣れてしまうと、当初ほどの効果はみられなくなってしまう恐れがあります。そのため常にリサーチを行いながら定期的に効果のほどを確認し続ける必要があるのですが、特に今回の開発に際してはエサ慣れとは異なる問題として、ジャミや外道に邪魔されたくないといった野釣りならではの課題もあったのです。どういうことかというと、安易にバラケを使うことなくグルテンそのものの集魚力でへら鮒を寄せ、アタリを出し続けられないかといった、多くの野釣りファンの切実な声が多く上がっていたことが、きっかけのひとつになっていたことは確かですね。私自身両グルテンの釣りでも、バラケにグルテンのセット釣りにひけを取らない集魚力があれば良いなと思った場面は数知れず、この新エサがあれば今後の野釣りが大きく変わる可能性がありますね!」

自身の野釣りにおける豊富な経験を生かして新エサの開発に関わった石井忠相。新エサの特徴については後ほど紹介するとして、まずは取材時の実釣の流れについて紹介しておこう。

使用タックル

●サオ
かちどき 「S-No.18」18尺

●ミチイト
オーナーばり ザイト「白の道糸」0.8号

●ハリス
オーナーばり ザイトSABAKIへらハリス 上0.5号-40cm/下0.4号-50cm

●ハリ
オーナーばり 上=「リグル」6号、下=「リグル」5号

●ウキ
忠相S PositionBOTTOM No.12
【極細PCムクトップ16.0cm/一本取り羽根ボディ12.5cm/竹足5.0cm ※エサ落ち目盛りは全11目盛り中7目盛り出し】

●ウキゴム
忠相Foot Fit (S)パープル

●ウキ止め
忠相Dual Hold(M)

●トンボ
木綿糸(市販品)

●オモリ
フィッシュリーグ絡み止めスイッチシンカー0.8g+調整用0.3mm厚板オモリ(内径0.4mmウレタンチューブ装着)

●ジョイント
オーナーばりWサルカン(ダルマ型)24号

取材時の実釣の流れ

石井が釣り台を置いたのは砂塚橋下流の北岸、通称「大ケヤキ前」といわれるポイント。まだ日の出前の土手の上に立つと思いのほか冷たい北風にさらされたが幸い川面は穏やかで、繊細なアタリをとらなければならない底釣りでの取材に支障はない。当日は強い冷え込みもなく、比較的穏やかなコンディションのなか始まった石井の実釣。手前の根掛かりを避けるべく継いだ竿は18尺。釣り方はもちろん「野釣りグルテン ダントツ」単品での両グルテンの底釣りだ。直近の釣況はようやく宙釣りでも釣れ始まったところで、石井が釣り支度を始めた直後から春を待ちきれないびん沼ファンが次から次へと訪れ、気がつくと周囲は数十名の釣り人で埋め尽くされていた。釣り方は底釣りが7割、宙釣りが3割といったところだろうか。常連の話では流れがなければ段差の底釣りで数釣りが可能だというが、数はそれほどではないものの型が良いのは両グルテンの底釣りだというから、新エサで数型共に満足のいく釣果に恵まれれば、新エサの力が十分発揮されたことになるだろう。

ポイントの水深はおよそ2.5m。肝心の底の状態は多少の凹凸(石井のタナ取りを見ているとトップ1目盛り程度の起伏あり)があり、右がやや深くなっているものの根掛かりするところはないようだ。実際にエサ打ちを開始すると毎投僅かにナジミ幅の違いがあり、まだサワリも出ない打ち始めの時点で意図的に左右に打ち分け、ナジミ幅が安定するところを探ろうとしていた。そうこうしているうちに早くも鋭いアワセの音が…。「サワッたよ」とつぶやく石井。その言葉に記者も穏やかな水面に立つウキを見つめると、トップが戻す途中で僅かな気配がみられる。早くも何かがエサに寄ってきたようだ。それが何だか分からないと石井は言うが、その後弱いながらも小さなアタリが出始めると石井のやる気にスイッチが入る。比較的ウキの戻りが良い場所にピンポイントで打ち込むと、これぞ底釣りという戻しに連動するアタリであっという間にファーストヒットを決めてみせたのだ。

これにはスタッフも驚いたが「これこそが新エサの集魚力の効果!」と釣った本人は至って冷静に状況を分析していた。さらにエサ打ちを続けるとへら鮒らしいしっかりとしたアタリが続くようになり、「対岸の景色が映り込んでウキが見え難い」と言いながらも、小さなアタリを的確に捉えてコンスタントに竿を絞り続ける石井。途中流れが右に左にと変わるが、へら鮒が傍に居れば多少流してもアタる状況からエサ持ちの良さを再確認すると、改めて新エサのポテンシャルの高さに自信を深めていた。取材後半は予想外に強い東風に見舞われ、完全に動きを止めてしまったへら鮒に手こずる場面もみられたが、周辺に居たアングラーのほとんどが早上がりしてしまう釣況のなか、ネバリの釣りを披露。新エサのポテンシャルを計るには十分な内容の取材であった。

「野釣りグルテン ダントツ」の特徴 其の一:エビ粉+魚粉などの動物性タンパク質配合による集魚力の増強

新エサを慣れた段取りで手際よく仕上げた石井。一体どんなエサなのかとボウルのなかをのぞき込むと、そこには今まで見たこともない薄紅色のグルテンが…。今回の主役「野釣りグルテン ダントツ」の特徴のひとつとして、集魚力の増強に際してエビ粉が使われていることを聞いていた記者は「これがそのエビ粉の色か」と納得はしたが、従来のグルテン製品群ではお目にかかったことのない色に対して意外性と驚きを禁じ得なかった。

「今までにない色なので違和感を覚える方もいるかもしれませんが、この色以上に凄いのが従来品を凌ぐ集魚力なのです。従来品では複合アミノ酸とニンニクが集魚力と摂餌持続効果をもたらしていましたが、新製品ではこれらに替わってエビ粉や魚粉等の動物性タンパク質を配合するといった新たなアプローチで、従来品以上の集魚力と食欲増進効果を狙ったのです。お陰様で威力抜群、文字通り〝ダントツ〟の集魚力を手にすることができたのです。こうしたエサが求められる背景には野釣りならではの問題があります。それは麩系バラケエサを使えない(使いたくない)場面が少なからずあるためです。ご存じの通り、野釣り場にいるへら鮒の数は管理釣り場に比べればかなり少ないと言わざるを得ません。従ってへら鮒を寄せるためには集魚力に優れたバラケエサが必要不可欠なのですが、使い方を誤るとへら鮒以外の魚種が集まり過ぎることもあり、また流れが強い河川などでは拡散するバラケによってかえって遠ざけてしまうことにもなりかねません。そんなときに両グルテンというエサ使いが有効になるわけですが、一般的なグルテンでは集魚力の不足は否めません。『野釣りグルテン』はそうした状況を打開すべく開発されたエサですが、今回さらにパワーアップを果たして、まったく新しい『野釣りグルテン ダントツ』として生まれ変わったという訳です。」

集魚力を比較するためには様々な条件を整えたうえで行わなければならないが、今回石井の釣りでは明らかな〝ダントツ〟効果が見られた。決して良いとはいえない釣況ながら、周囲よりもいち早くウキに動きが現われ、アタリが出始めると最もコンスタントに竿を絞り続け、ときには連チャンも決めて見せたのだ。もちろん野釣り場なのでへら鮒以外の魚がウキを動かしている可能性は否定できないが、たとえ釣れなくてもアタリが出てその一投が終わることがテンポの良い釣りを可能にし、結果コンスタントな釣況や好釣果につながることを考えれば効果絶大といえるだろう。

「野釣りグルテン ダントツ」の特徴 其の二:オリジナルブレンドのマル秘スパイスによる食欲増進&持続力アップ

マル秘とあるくらいなので当然その内容を明らかにすることはできないが、その効果のほどは新エサを使っていただく読者諸兄が間もなく実感するに違いない。石井の釣りのなかで目の当たりにしたアタリが出始める早さは、エビ粉+魚粉等による集魚力増大の効果であることは明らかだが、食欲増進やその持続力を高める効果を確かめるには釣況がやや厳しかった。なぜなら序盤は北風によりポイント周辺の流れは弱かったが、後半になると風向きが完全に東に変わり、しかもその強さを増すほどに流れが強くなったため、最後は「ハリスナマリ」で流れを堪える状況になってしまったためだ。それでも周囲の釣り人が完全にアタリを消失し諦めて早帰りをするなか、シモるトップに時々アタリが出ていたことを考えると、やはりマル秘スパイスの効果ということになるだろう。

「東風は釣りでは禁忌。風向きが変わってから完全に時合いが落ちましたね。とりあえずハリスナマリで止まる程度の流れであればなんとかアタリは出せましたが、納竿間際くらいの強い流れになるとドボンでなければ無理でしたね。」

実は途中ドボンの底釣りに切り替える提案が石井からあったのだが、それを制止したのは記者であり、悪条件のなかバランスの底釣りでどこまで踏ん張れるか、またアタリが持続するのかを見たかったためであることをご理解いただきたい。

「新エサが発売される頃になれば水温も上昇しへら鮒の動きも良くなるので、そうなればもっとアタリが続くようになると思います。実際テスト段階では中だるみになりそうなときでもコンスタントにアタリが続くことが多く、よほどへら鮒の魚影が薄い釣り場か、また回遊コースから大きく外れない限り、マル秘スパイスの食欲増進効果や持続力を高める効果を実感することができると思いますので、お楽しみはそれまでお預けとしておきましょう(笑)。」

「野釣りグルテン ダントツ」の特徴 其の三:高比重さつまいもマッシュ&グルテン繊維の強化によるエサ持ち性能向上

野釣りに流れはつきものである。従ってこの流れによってエサが持たないといった不具合が生じるようでは、野釣りエサを名乗る資格はないといえるだろう。当然ながらこうした問題にも新エサは突出したポテンシャルで応えてくれる。それが高比重さつまいもマッシュと増強されたグルテン繊維の効果である。今回の取材フィールドであるびん沼川でも常時緩やかな流れがあり、また風向きにかかわらず不定期に流れの向きが変わる。もちろんびん沼川とは比べようもないくらい強い流れがある釣り場はごまんとあり、そんなフィールドでも流れが弱ければバランスの底釣りで、強くなればハリスナマリもしくは中通し・外通しといったドボンの底釣りでなければ流れに耐えることはできない。たとえ仕掛けが止められても肝心のエサがハリから抜けて流されてしまっては元も子もなく、そうした野釣りならではの問題解決策として必要不可欠な要素が重さとハリへの残り(絡み)具合である。今回新エサでは重さについては厳選されたさつまいもマッシュを増量して比重をアップし、確実にハリに残すためにグルテンを増量して繊維を強化している。試しに石井が作ったエサを丸めて水中で溶かしてみると、微粒子のマッシュがサラサラと溶け出すも、最後には驚くほど大きなグルテン繊維の塊が残ることが確認できた。

「魚影密度の薄い野釣り場では、我先にエサに飛びついてくるようなエサの食い方をすることはなく、大抵はじっくりアタリを待つ釣りになってしまいます。それに輪をかけて流れが強い釣り場では、このくらいエサ持ちを強化しないと簡単にハリからエサが抜けてしまうのです。特にドボンの底釣りのようなエサの残り具合が分かり難い釣り方では、確実にエサが持っているという安心感のなかで釣りをしないと疑心暗鬼になってしまいます。新エサではそうした心配は完全に払拭されますので、今年の春の野釣りは相当エキサイティングなものになりますよ!」

総括

この日初めて新エサに触れてタッチを確かめ、また石井の実釣を通してその効果のほどを目の当たりにした記者は「これは実戦向きの釣れるエサだ!」と率直に感じた。そして例年通っている大好きな野釣り場で、一日も早く使ってみたいという気持ちがふつふつと沸いてきた。基本的には大きめのマッシュフレークを開かせてへら鮒を寄せるタイプのグルテンではなく、明らかにモッチリとしたくわせタイプのグルテンでありながら優れた集魚力とホールド力を持つことは特筆すべきポイントであり、エサ付け時のハイレベルなテクニックを駆使せずとも扱える容易さは、今後多くのアングラーに支持される使いやすいエサであることを明示している。既存グルテンエサの中にあってまさに〝断然トップ〟の力を秘めた新エサ「野釣りグルテン ダントツ」。今年の春は熱くなりそうだ!