稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第88回 杉本智也の激アタリ連発ペレ宙釣り
新エサ「グルテンダンゴ」を読者諸兄はもうお試し頂けたであろうか。既にご使用いただき好感触を得られている方も大勢居られることだろう。そこで前回、前々回に引き続き、今回もまた新エサ「グルテンダンゴ」、通称GD(ジーディー、以下「GD」)での実釣レポートをお届けする。今回の釣り方は、両ダンゴのなかでも夏場の最盛期にこそそのポテンシャルを発揮するペレ宙だ。登場していただくアングラーは〝強い釣り〟を得意とするマルキユーインストラクター杉本智也。なかでも盛期のペレ宙は彼の最も得意とするところで、釣るためのプロセスもまた明快であり、しっかりとした骨太の時合い構築術も大いに参考になるはずだ。取材フィールドは茨城県取手市にある管理釣り場、さくら湖。ペレ宙には時期尚早かとも思われたが、杉本の手にかかるとズバッズバッと激アタリが連発。新エサに魅了された良型べらが次々と水面を割って出た!
ペレットとの相性も抜群!さらなる可能性が膨らんだ新エサ「GD」
前回紹介した萩野孝之の浅ダナ両ダンゴ釣り、そして前々回お届けした西田一知のチョーチン両ダンゴ釣り。いずれも新エサの開発段階から関わり、その特性を知り尽くしたインストラクター陣による実釣レポートが続いた訳だが、今回はその第3弾として、これから旬を迎えるペレ宙(ペレット系麩エサを使った両ダンゴの宙釣り)における新エサの効果的な使い方を紹介すべく、杉本智也インストラクターに登場を願った。しかし今回はいささか勝手が違い、実釣における新エサの使用経験がほとんどなく、しかも旬を迎える前にペレ宙の取材をという高いハードルを課すこととなった訳だが、彼に白羽の矢を立てたのには当然ながら理由がある。それは彼自身ペレ宙が大好きであり得意としているからに他ならない。
「両ダンゴの釣りすべてにおいて言えることですが、僕はしっかりウキをナジませてハッキリしたアタリを出す釣り方が好きなんです。とりわけペレ宙はそうした釣り方を徹底しなければ釣れない釣り方ですし、それができれば間違いなく良型のへら鮒が釣れるので、これから夏~秋にかけては意識して選択する釣り方ですね。確かに僕自身まだ新エサにはあまり触れていませんし、ましてやペレ宙用のブレンドなど試したことがありません。時期的にもまだ早いかもしれませんが、さくら湖のへら鮒は活性が高いと聞いていますし、何となく新エサのイメージはつかんでいます。少し時間はかかるかもしれませんが、皆さんの参考になるような釣りをお見せできると思いますよ。」
難しい課題に多少不安の色を見せるのかと思いきや、この男にはプレッシャーというものがないのだろうか。釣り座に着くと落ち着いた表情で笑みさえ浮かべ、あたかも十分練習を重ねて来たかのように躊躇することなく新エサがブレンドされたペレ宙エサを作り始めた。結果的にこの最初のブレンドパターンは当日の決まりエサにはならなかったが、これはこれとして汎用性の高いエサであり、必ずしも高活性時ではなくとも幅広く使えるブレンドだという。(参考として後述)
さて肝心の杉本の実釣だが、結果を先に述べてしまうと大変良い釣りを見せてもらったと記者は感じた。基本的には彼の類い希なる〝エサ感〟によるところが大きいのだが、これだけ短時間の釣りのなかで優れたブレンドパターンに辿り着けたということは、紛れもなく「GD」がペレット系の麩材との相性が良いことの証であろう。前置きはこのくらいにしておき、では早速杉本流の「GD」を使ったペレ宙レポートをお届けしよう。
使用タックル
●サオ
がまかつ朱紋峰「がまへら幻煌天」16尺
●ミチイト
東レ「将鱗へらストロングアイ道糸」 1号
●ハリス
東レ「将鱗へらSUPER PROハリス」 上=0.5号-30〜40cm、下=0.5号-40〜50cm
●ハリ
上下=がまかつ「リフト」7号
●ウキ
忠相「NEXT STAGE(ネクストステージ)」No.11
【パイプトップ14.0cm/二枚合わせ羽根ボディ11.5cm/カーボン足6.0cm/オモリ負荷量≒2.0g/全11目盛り中9目盛り出し】
●ウキゴム
忠相Foot Fit (S) パープル
●ウキ止め
木綿糸
●オモリ
ウレタンチューブ装着0.3mm板オモリ
●ジョイント
ヨリモドシ
ペレ宙における新エサ「GD」の使い方のキモ 其の一:ベタつき感の無い理想のタッチが貴方の手の内に…
一般的な麩系両ダンゴエサは状況によって基エサを練り込んだり、また増粘剤系のネバリを持つ麩材を多めにブレンドしたエサに仕上げないと、満足にアタリを出さないケースに遭遇することがままある。一方ペレ宙で釣れるときにはネバリが少なくボソッ気がありサラッとしたタッチであることが多いので、素材自体のネバリはもちろんのこと、経時変化によるネバリが出難いものが理想だと杉本は言う。
「ちなみに今日最初に作ったエサのブレンドは『ペレ軽』400cc+『GD』200ccに水を200cc加えたものに、締めエサとして最後に『浅ダナ一本』200ccを絡めたものでした。このパターンで仕上げたエサはまとまりが良いのにタッチがサラッとしていて、僕自身としてはこちらの方が好みなのですが、今日のさくら湖のへら鮒は別のブレンド(『基本エサブレンドパターンで紹介』)の方が好みだったようで、明らかに明確なアタリが多く型も良かったですね。こちらの締めエサは『BBフラッシュ』ですが、『浅ダナ一本』で締めたエサよりもボソッ気が強く仕上がるので、こちらの方が盛期向きのブレンドかもしれません。さらに僕が感じたのは、いずれのブレンドも指先で感じるタッチにベタつき感がなく、理想とするタッチに近いということ。ただしひとつ問題があって、こうしたタッチのエサはへら鮒が厚く寄ってくると持ち具合に不足を感じ、ついいじり過ぎて必要以上にネバリを出してしまいがちなのですが、今日の釣りでは大きく手を加えることなく、多少手水でシットリさせる程度の微調整だけで、ほぼ基エサの状態のまま釣りきることができました。これこそが『GD』ならではのエサ持ちの良さであり、しかも従来僕が使っていたエサよりもタナでの膨らみが良い分、アタリを見送ってもアタリ返した投が多かったことも印象的でしたね。」
意図せず出た(出した)ネバリは時として過剰ともいえるカラツンを誘発してしまうが、ネバリとは異質のグルテン特有のまとまり感によってエサ持ちを強化したエサには、持ち過ぎることのない適度な強さを持つ芯が残るので、〝アタリ返し〟がでる時合いを理想とするペレ宙でこそ「GD」の真のポテンシャルを実感できるのではないかと記者は感じた。
ペレ宙における新エサ「GD」の使い方のキモ 其の二:杉本流「粒戦細粒」効果をさらに引き出す「GD」のサポート力
「GD」の〝エサ持ち〟と〝膨らみ〟については再三述べてきたが、この効果がペレ宙における杉本流エサ使いをさらにパワーアップさせていたと記者は見た。それが「粒戦細粒」を無駄なくタナに送り込み、確実にタナで開かせる効果である。
「僕の場合、へら鮒が強くアタックしてくる夏場になると『粒戦細粒』をブレンドに加えることで重みを増し、タナの安定と集魚力アップを図るのですが、今回もウワズリの兆候が見られたときに『粒戦細粒』を加えたところ良い感じの動きになり、最終的にはこのエサがベストブレンドになりました。このとき僕が感じたのは顆粒状の『粒戦細粒』を『GD』がソフトに包み、タナに入ってから膨らみ始めると『粒戦細粒』が少しずつ抜け始めるイメージです。従来のエサよりも無駄に開いて拡散するものが少ない分、タナで集中的にバラケることで強力な集魚力が得られましたね。実際ウキの動きからもそれが実感できましたし、タナにも確実に良型のへら鮒が入ってきた感覚がありました。こうした結果が簡単に得られたのはまさに『GD』効果だと思います。これは今年のペレ宙がますます楽しみになりましたね。」
話は前後するが、このブレンドパターンに辿りつくまでの流れを振り返ると、まず「粒戦細粒」を含まないものからスタートし、最初のウワズリ症状がみられた時点で「粒戦細粒」50ccを含み、さらに「浅ダナ一本」締めたブレンドパターンを試すも、杉本が理想とするウキの動きには至らず、手水や軽い押し練りを幾度となく加えるといった調整を繰り返したが、決して満足のいくものではなかった。しかし、ここまでに杉本はいくつかの重要なヒントをつかんでいた。それは…
1.「粒戦細粒」ブレンドしたエサの方がウキの動きも良く、釣れるへら鮒の型が良い傾向。ただし量が多いとウキのナジミが早過ぎてアタリにならない投が目立つ
2.早いアタリでも釣れるがウワズリやすく、アタリを送りながら一旦ウキを深くナジませ、その戻り際にでるアタリの方がヒット率は良い
3.エサのタッチとしてはシットリ系よりも、ややボソ系の方がコンスタントにアタリが続く
といったものだが、これらの情報を元に辿りついたのが前述のブレンドパターンであり、「GD」ブレンドに加えた初めてのペレ宙というハンデをものともせず、見事な釣りを見せてくれた。このときの様子は動画をご覧になっていただければよく分かるが、ヒットパターンが構築されたときはいたずらに早いアタリを追いかけることもなく、むしろアタリが出難くなった時点からの修正を含めて、ウキをしっかりとナジませて釣り込む杉本らしいストロングスタイルのペレ宙に、「GD」よくマッチしていることがご理解いただけるだろう。
記者の目【新エサ「GD」とペレ宙との相性】
今回記者は杉本のペレ宙を通し、新エサ「GD」がペレ宙で通用するエサであるか否かという点に注目していた。なぜならペレ宙は細かなテクニックが通用し難い、どちらかといえば正攻法というかしっかりとした釣りをブレさせないことで時合いを引き寄せる釣り方なので、当然ながら使えるエサの品種が少なく、新参者の「GD」がそこに割って入れるかに大きな関心を抱いていたからである。目の前で繰り広げられた杉本のペレ宙は、噂通り基本に忠実なオーソドックスな釣り方であったが、決して自分本位の強引なアプローチではなく、変化するへら鮒の状態に合わせてエサや釣り方をアジャストしていくといった、とても柔軟性に富んだ釣り方であった。なかでも「GD」特有の他の麩材を包み込む特性を生かした「粒戦細粒」の使い方は見事であり、今後「ペレ道」をはじめとした他のペレット系素材との組み合わせにも注目していきたいと思っている。