稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第174回 「萩野孝之の浅ダナ両ダンゴ釣り」|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第174回 「萩野孝之の浅ダナ両ダンゴ釣り」

萩野流 浅ダナ両ダンゴ釣りのキモ(秋の中小べらターゲットver.) その一:釣れても釣れなくてもエサ合わせに一切の妥協なし!

久し振りとはいえ、勝手知ったる清遊湖の釣り。今シーズンの傾向に加え、直近の釣況を加味したスタート時のブレンドで早くも時間当たり20枚近いハイペースの釣りを披露してみせた萩野。これがほかのアングラーであれば「今日はこれでキマリ!」となるところだが、彼の目指しているところはまったく別のところにあった。水面が静かだったのは開始直後だけで、釣れ始めてからは無数のへら鮒がエサの着水地点に黒々と群がり続ける。そうした状況下で「これはエサが持っただろう」と思ったアタリで空振りが散見されるなか、エサのバラケ過ぎにより芯が負けていると判断すると、早くも2ボウル目にはエサの芯を強化すべく新たなブレンドパターンを試行。これによりアタリを見送ってもさらにアタリ返す動きが増え、エサが持たずに空切りして打ち返す投は明らかに減少した。さらなるペースアップに拍車がかかったが、このエサでは時間と共に生じる経時変化による持ち過ぎという現象がみられ、アタリ返しを狙っても食い損ないと見られる良いアタリでのカラツンが目立ち始めた。

「今日の清遊湖のへら鮒のコンディションであればもっと釣れるはずです。何より自分が理想とするアタリで空振るのが気に入りません。水面に群がるへら鮒の数も増えて動きも活発化してきましたので、もっと楽にエサが持ってたくさん釣れるブレンドを探り当てたいと思います。」

その後の流れは前述の取材時使用エサの項で明記しているが、この日のキモとなったのは明らかに「GD」。それは変更直後に萩野の口を突いてでた「エサが合い過ぎている(笑)」からも容易に理解できた。ウキが立った直後からナジミきるまでの間の、どのタイミングででるアタリでもヒットし、しかも食ってくるへら鮒の型も申し分ないのだ。

「どんなタッチのエサでもアタリはでますが、それを食うか否かは芯のでき次第といったところでしょうか。今日の釣りを見る限り『GD』による芯の膨らみが清遊湖のへら鮒の食い気に合っていたことは事実ですし、釣況の好転ぶりからもこのブレンドを試してみてよかったと思います。どのくらい釣れれば満足するのかは人それぞれですが、たとえ良いペースで釣れていてもさらに釣れる可能性があると思えば、そこを目指すのが自分のスタイル。『これくらい釣れれば良いだろう』という妥協はしませんし、たとえうまく釣れなくてもあらゆる麩エサの可能性を追求し、絶対に諦めません」

萩野流 浅ダナ両ダンゴ釣りのキモ(秋の中小べらターゲットver.) その二:下から上ではなく上から下!? 追わせるアプローチで良型を仕留める

現代浅ダナ両ダンゴ釣りにおいては、口数が少なくなったといわれる大型べら主体の釣り場はもちろんのこと、清遊湖ほどの魚影密度を誇る釣り場でさえ、タナ規定1m以上という制限された条件下でウキをナジませ、さらに一旦エサをぶら下げて食わせるというアプローチを貫き通すことは困難だ。

「たとえ時間をかけてタナに寄せようとしても、そもそも深いタナに居着いていないため無理があるのは事実です。一方で、多くの釣り場では良型のへら鮒が水面下1mよりも上層に居着いているため、この魚を狙わない手はありません。従って現代浅ダナ両ダンゴの釣りでは、タナ1mよりも上層にいる良型のへら鮒を水中落下するエサで規定のタナに呼び込んで仕留めるというイメージ、すなわち上から追わせるアプローチで組み立てることが肝心なのです。」

この話を聞く以前に記者はひとつの疑問を投げかけていた。それは、この日の釣りの最大のキモであったエサ持ちに関して「エサが持たずにウキがナジまないのであれば、一気にウキのサイズアップ(オモリ負荷量の増加)という手はないのか」というものであった。これに対する萩野の回答は次のとおりだ。

「エサ持ちをよくする手段としては、まずは手軽に行えるハリスの長さ調整(短く詰めること)で様子を見るのが得策です。今日も5cm単位で詰めていくとアタリ数も減ることなく状況が好転したため、それ以降はエサ合わせで釣りきることに主眼を置きました。もちろんウキを大きくすることで好転することもありますが、それによりエサの沈下速度が増すことで上層のへら鮒がエサを追えなくなるリスクがあることも否定できません。今日のところは『Dゾーン』五番と上10cm/下20cm前後の短バリスという組み合わせで程よくエサが持ち、上から追わせるアプローチが成立できたと思います。」

確かにいわれてみればそのとおりで、上層に居着くへら鮒のエサ追いに対するレスポンスを無視したウキ選びは本末転倒。もっとも、釣り場を熟知した萩野が大きく外れたタックルセッティングをするはずもなく、上から追わせることに主眼を置いたアプローチであれば、ウキの番手(オモリ負荷量)選びは最重要事項のひとつ。一般論としては、大きなウキには長めのハリス、小さなウキには短めのハリスという組み合わせがマッチするが、へら鮒がたくさん寄った状況下でも比較的ストレスなくスムーズに立ち上がるオモリ負荷量のウキであれば、後はハリスワークによって追わせるアプローチは実現可能だと萩野は言う。

萩野流 浅ダナ両ダンゴ釣りのキモ(秋の中小べらターゲットver.) その三:エサの位置や芯持ち具合いをイメージしたアタリの取り方

この日萩野の釣りを傍で見ていて、記者には食いアタリと識別できないウキの動きで幾度となくヒットさせていたシーンがあったことを恥ずかしながらご報告せねばなるまい。もちろん彼はこの動きを食いアタリと判断したうえで、100%自信をもってアワせているわけだが、正直申せばこの日の釣果の2~3割はこうしたアタリであって、記者には到底手のでないほど小さな食いアタリで釣っていたのだ。

「食いアタリはその大小で判断するものではありません。確かに大きく鋭いアタリはアワセやすいのですが、そうしたアタリはエサがぶら下がり気味にタナまでナジみ、ハリスが一定程度しっかり張った状態でないと現れないアタリです。釣りとしてはややスローペースにはなりますが、こうしたアタリを中心に狙いながら安定した時合いを構築するアプローチも決して悪くはありません。しかし自分が目指す浅ダナ両ダンゴ釣りは早いタイミングで、しかも上層に居着く良型のへら鮒を追わせて仕留める釣りなので、ハリスがまだ張りきらないうちにへら鮒がエサを口にすることで食いアタリは小さく現れがちで、その動きを的確に見極められなければヒットにはつながりません。」

くれぐれも言っておくが、萩野は早く小さな動きを闇雲にアワせているわけではなく、水中を落下するエサの位置やエサの芯の残り具合を考えながら的確にアタリを捉えている。具体的には、エサが着水した際のへら鮒の量が多く、騒ぎ方が激しかったり、ウキが立ち上がるまでの時間が長かったりしたときは、エサの芯が小さくなることが早くハリスが張る前に食う確率が高まるため、ウキが深くナジむ前の小さいながらも鋭く抑える動きを食いアタリと捉える。一方で、比較的早くウキが立ち上がり、上下動も少なく静かにナジんだときは、エサの芯が大きなままタナに入るため、小さな動きには一切目もくれず、場合によってはアタリを送り気味にしてでも芯が食い頃になるタイミングまでこらえ、やがて誰が見ても「食って当然!」といえるような大きく消し込むアタリで次々とヒットを重ねていった。

萩野流 浅ダナ両ダンゴ釣りのキモ(秋の中小べらターゲットver.) その四:食い頃のエサを送り込むサポートテクニック

繰り返しになるが、エサは単に持てば良いというものではなく、へら鮒が食うタイミングで食い頃のサイズとやわらかさになっていなければならない。とりわけ浅ダナ両ダンゴの釣りは食うタイミングが早いため、着水から程なくしてそうなる必要があることから比較的やわらかめのエサを用いることが多いと萩野は言う。実際、萩野の使っている(釣れている)エサを指先で摘まみ取ってみるとなるほどやわらかく、適度なネバリのなかにもサラッとしたタッチが感じられた。

「今日はやわらかめのタッチのエサを比較的小さめ(直径13mm前後)に付けたこともキモだったといえます。その理由は、エサが大きくなることで増えるへら鮒の寄りを抑制することがひとつ、もうひとつの理由はナジミ際の早いタイミングでアプローチしてきたへら鮒が食い損なうことのないようにするためです。エサを持たせようとするとどうしても大きくしたり硬くしたりしてしまいがちですが、へら鮒が警戒心や違和感を覚えることなくエサを口にするのは総じて小さくやわらかめのタッチなので、そのためには無意識のうちにエサ付けが大きくならないようハリを『バラサ6号』としました。さらに小さくやわらかくてもエサが持つよう『カクシン』を軸としたブレンドで確固たる芯を作り、それを『カルネバ』や『コウテン』『GD』といった脇役で芯のサイズ感や膨らみ加減をコントロールしたことがよかったようです」

とはいえ、これほど小さくやわらかいタッチのエサをタナまで持たせることは容易なことではない。それには萩野ならではの高度なエサ付けテクニックに加え、打ち込む寸前のへら鮒の動きを読み切ったエサ打ちも忘れてはならない。いうまでもないが、エサ付け方法については丁寧付けとラフ付け(この違いは非常に微妙で繊細)を的確に打ち分け、エサ打ちに関してはウキが立つ位置よりも手前に群れが集中しないよう、やや沖めへのエサ打ちを適宜取り入れながら糸ズレのような無駄な動きがウキに現れないよう配慮。さらに隣のアングラーの一挙手一投足にも目を配り、自分のエサ打ちポイントに隣の群れが移動してきたときはできるだけ群れの薄いところを狙い、正面に寄りが集中したときは左右に打ち分けるなどしてエサ持ちをサポート。しかも萩野はそれをエサ付けから振り込みまでの一瞬の間に見切り、打ち込むポイントを一投ごとに変えながら竿を絞り続けた。

記者の目【所変われば品変わる!?型の違いで釣り方も変わるへら鮒釣りの妙味!】

およそ1年前に詳らかにされた、気難しい大型べらをターゲットとした萩野流浅ダナ両ダンゴ釣り。そして今回そのベールを脱いだ、エサに群がる超高活性の中小べらを相手とした萩野流浅ダナ両ダンゴ釣り。同一アングラーによる同じ釣り方ながら、ターゲットによって大きな違いがあることがお分かりいただけたであろうか。細かなテクニックを比較したら彼とは比較にならないことは明らかながら、ウキは動けど釣れないときの対応策のヒントとしては十分なものを魅せてくれたのではないだろうか。昨今、さまざまな事情で釣り場によって違いが見られるようになっているが、むしろ釣り人はそうした差異や変化を選択肢の広がりと捉え、浅ダナ両ダンゴ釣りというひとつのカテゴリーのなかにも豊富なバリエーションを手の内にし、萩野のように楽しんでみてはいかがだろうか。

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