稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第96回 内島康之の沖宙狙いの浅ダナウドンセット釣り|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第96回 内島康之の沖宙狙いの浅ダナウドンセット釣り

ただでさえ食いが渋い厳寒期。釣り人が多い週末にはいかに魚影が濃い管理釣り場であっても、アタリどころかサワリすら維持することが難しい。そんな難時合いの打開策のひとつとして、今回の釣技最前線では「沖宙狙いの浅ダナウドンセット釣り」を取り上げた。アングラーは土日祝祭日の釣行が多く、この釣り方を得意とするマルキユーインストラクター内島康之。彼は自他共に認める「バラケマッハ」マニアで、盛期の両ダンゴ釣りはもちろんのこと、厳寒期におけるセット釣りのバラケエサのブレンドにも「バラケマッハ」は欠かせないというほどのヘビーユーザーだ。取材のためにスタッフが用意したフィールドは千葉県白井市にある芦田湖水光園。内島にとっては始めての釣り場だというが、厳寒期のタフコンディションも加わった高いハードルをどのようにして攻略していくのだろうか!

目先の1枚を獲りに行かずしっかりタナを作り、時合いを作って釣り込む!

「思っていたよりも広いですね。なるほど、こうした形状の釣り場であれば沖宙狙いの釣りが効くのもうなずけますね。」

ようやく明るくなり始めた釣り場を見渡し、初めて目にするフィールドを前にこうつぶやいた内島。一度も竿を出したことのない釣り場での取材ということもあり、彼なりに事前のリサーチは行ってきたようだが、実際に釣り場を目の当たりにして、改めて今日の釣りのイメージが沸いてきたようだ。同園は左右両岸からの対面打ちの細長い釣り場で、ここと似たような形状の釣り場では新べらはもちろんのこと、旧べらのなかでも比較的大型のへら鮒が池の中央部に居着く傾向があり、ここ芦田湖水光園もそうした傾向が顕著に見られる釣り場である。スタッフは撮影がしやすく陽当たりの良い西岸中央付近に釣り座を構えるよう内島を誘い、このエリアで使用可能な竿の長さが最長18尺であることを伝えると、

「確かに混雑すれば18尺がベストかもしれませんが、今日はそれほど釣り人が入っていませんし、風が強く吹く予報ですから、できる限り精度の高いエサ打ちと幅広いバラケ使いを可能にするため、とりあえず15尺で始めてみましょうか。」

釣り支度を始めた内島に、早速この釣りのメリットと釣り方のコツについて訊ねると、

「最大のメリットは周囲と竿の長さを揃えないことで、より多くのアタリが期待できることです。加えてこの釣り方は新べらを含めた沖めに居着く良型のへら鮒がターゲットなので、自ずと釣果が伸びる点ですね。釣り方のコツとしては焦って目先の1枚を釣ろうとはしないで、的確にバラケをコントロールしてしっかりタナを作り、安定した時合いのなかで釣り込むことです。その際『バラケマッハ』をブレンドしたバラケがタナ作りに効果的に働きますので、ぜひ参考にしてみてください。また竿が長くなる分慣れないとエサ打ちの精度が低下しがちですので、積極的に長竿を使う練習をしておくことも必要ですね。」

こう言うとウキ下を1.1mとややタナを深めにとってスタートした内島。まずはこの日のタックルとエサについて紹介しておこう。

使用タックル

●サオ
かちどき「匠絆」15尺

●ミチイト
オーナーザイト「フラッシュブルー」0.6号

●ハリス
オーナーザイト「サバキ」上0.5号-8cm/下0.3号-55→65cm

●ハリ
オーナーばり 上=「バラサ」7号/下=「サスケ」3→2号

●ウキ
旭舟「拓」PCムクトップ4番
【PCムクトップ10.0cm/一本取り羽根ボディ6.0cm/カーボン足6.5cm/オモリ負荷量≒0.70g/エサ落ち目盛りは全9目盛り中4目盛り出し】

●ウキゴム
HX-JAPAN へら用ウキゴム「Foot Fit」グリーン SS-0.5

●ウキ止め
木綿糸

●オモリ
ウレタンチューブ装着0.3mm板オモリ1点巻き

●ジョイント
オーナー「へら丸カン」SS

内島流沖宙狙いの浅ダナウドンセット釣りのキモ 其の一:「バラケマッハ」の微粒子でへら鮒を引き寄せ、タナに長時間留める

内島のバラケで目を引くのが、盛期の両ダンゴ釣りで主役を張る「バラケマッハ」がブレンドされていることだ。彼曰く「一年を通してタッチもポテンシャルもこれ以上のものはない。絶対に手放せないへらエサだ!」と言ってはばからないほどのマニアというか、信者と言っても過言ではないほど「バラケマッハ」に惚れ込んでいる。

「オールシーズンどんなシチュエーションでも使えるへらエサはほかにありませんし、とにかく凄いエサですよ『バラケマッハ』は。今回はウドンセット用のバラケとしてブレンドに加えていますが、特に厳寒期のセット釣りでは『バラケマッハ』に含まれる微粒子がタナに長時間滞留するので、不安定になりがちな浅ダナの釣りでも安定した時合いを構築しやすく、また活性が低下して動きが鈍くなったへら鮒の興味を惹きやすいと感じています。近年の傾向としては、高活性時は粗めで比重の大きな粒子を主体としたバラケで、ウワズるへら鮒を上から押さえつけるようなイメージでタナに寄せますが、低活性時でこうしたバラケを使うとシタズる危険性が高く、うまくタナに寄せきれないと感じています。」

内島がイメージする水中の様子は別途イラストの通りだが、厳寒期の浅ダナセット釣りでは沈下速度が遅い軽めの微粒子を生かすことで、レスポンスの鈍いへら鮒であっても確実にタナに引き寄せ、しかも長時間タナに留めることが可能になるという。

「実際には寄せることと食わせることは別問題です。寄せたへら鮒をくわせへと誘導したり、食い気を刺激するのはバラケの持たせ方や抜き方で決まります。その際ポイントとなるタッチの調整やエサ付けの加減が『バラケマッハ』をブレンドすることで簡単になるのです。特にエサ付けにおいては持たせるためのエサをブレンドに加えずとも、適度なまとまり感が繊細なコントロールを可能にしてくれるので、常に自分の狙い通りのイメージで組み立てられますね。」

汎用性に長けた「バラケマッハ」の特性に助けられているアングラーは数知れず、内島ほどではないにせよ「バラケマッハ」無くしては釣りが成立しないといった方も少なくないだろう。しかし両ダンゴ釣りのベースエサとして使われることが多いこのエサをバラケのブレンドに加えることで、集魚性・安定性・制御性といったポテンシャルを高め、厳寒期のへら鮒を完璧に支配下に置いているところは、さすが「バラケマッハ」マニア内島の面目躍如といったところだろう。

内島流沖宙狙いの浅ダナウドンセット釣りのキモ 其の二:ウキのナジミ、戻しを自在に操る〝内島流エサ付け〟の極意!

エサ付けはセット釣りの生命線といえる重要な要素のひとつである。両ダンゴ釣りの場合はタナまで確実にハリに持たせ、へら鮒がエサを食うまで決してハリから抜けないことが絶対条件だが、厳寒期におけるセット釣りとなるとそうはいかない。

「厳寒期のセット釣りでは〝抜き〟一辺倒の方もいるようですが、私は必ずタナまでバラケを持たせてウキにナジミを入れるようにしています。ときにアタリだしが遅いときもありますが、より多くの食い気のあるへら鮒をタナに寄せるためにはこの方法が最も確実で、安定した時合いを構築できると確信しています。とはいえ、コンスタントにアタリを出すためには的確な抜き方が必要不可欠ですので、厳寒期の浅ダナウドンセット釣りでは短竿エリアを攻めるときはもちろんのこと、沖宙狙いの釣りでも一投ごとにナジませ方と抜き方(主にタイミングと戻し方)を状況によって変えることが肝心です。」

こう解説しながら、実際にエサ付けの違いでウキのナジミ幅や戻し方に変化をつけてみせた内島。実際のエサ付け方法については動画を見て頂ければ一目瞭然だが、思ったほど大きな違いが無いことが分かる。つまりその程度のわずかな違いでアタリがでたり、でなかったりする訳で、いかに厳寒期のセット釣りがデリケートであるかが分かるであろう。

「今日はドップリナジミよりも2目盛り程度ナジませたところで少しだけ静止し、その後一気にハリから抜けてウキが戻し、くわせだけが付いた状態のエサ落ち目盛りのところで小さなサワリがでた直後にアタるパターンが多かったですね。肝心なのはこのパターンを見つけることと、それが変化したときにすぐに対応できるよう、微調整ができる技術を磨いておくことです。」

ちなみに内島の基本エサ付けサイズはハリのチモトを押さえた直径15mm強の縦長の水滴形で、より持たせたいときは球形にまとめ、ウキの動きが停滞した際に反応を引き出すときには角張らせ、全体的に強めに圧をかけてまとめたものを打ち込んでいた。

内島流沖宙狙いの浅ダナウドンセット釣りのキモ 其の三:我慢もテクニックのひとつ!? 厳寒期にバラケの打ち込み過ぎは厳禁!

「厳寒期の釣りでバラケの開き過ぎやエサの打ち込み過ぎは厳禁です。無造作にポンポンと打ち込んでしまうと食い気のないへら鮒は肝心のくわせから離れ、いわゆる遠巻き状態で一向にくわせに近づいて来ようとはしません。ただし、待ち過ぎてもへら鮒はタナに呼び込めないので、ウキの動きをよく見てサワリがなければ早めに打ち返し、わずかでもサワリが見られたときには少しだけアタリを待つといった見極めが必要です。」

こう言って、内島はバラケの打ち込み過ぎを厳に戒める。とはいえ、ウキの動きが少ないと、より多くのへら鮒を寄せようとしてつい大きなバラケをハイテンポで打ち込んでしまいがちだ。

「その気持ちはよく分かりますが、それをグッと堪えて我慢することも厳寒期の釣りでは必要なテクニックと割り切り、平常時よりもやや小さめのバラケを焦らず丁寧に打ち込み、ウキに現れる微細な動きを見逃さず、待つのか打ち返すのかの判断を的確に行うように心掛けています。」

この日のウキの動きを振り返ってみると、スタート直後から20分ほどはまったく変化がみられなかったが、突如何の前触れもなくアタリがでてヒットした最初の1枚を除き、以降は釣れる前には必ず微細な変化がウキに現れていた。その動きは明らかなサワリ(アオリ)であったり、ジワッと押さえ込むようなシモリであったりと様々だが、終始一貫変わらなかったのは、ナジんだウキが戻してから変化がなければ速やかに打ち返し、変化が現れたときには時折サソイを入れながら少しだけアタリがでるのを待っていたことだ。

「焦りは禁物ですが、根拠なくアタリを待つことは良くありません。ウキに現れる変化はすべてがへら鮒からのサインであり、何らかの意味を持つものです。サワリがあれば必ずアタリにつながる訳ではありませんが、何の変化もないときに比べれば確実にアタリがでる確率は高いので、やはり待った方が釣れる可能性は高まるでしょう。これに対して変化がないということはアタリがでる確率は低いので早めに切り返し、変化のでる可能性のあるエサ付けに変えて打ち返すようにしています。」

記者の目【唯一無二のポテンシャルを100%引き出し自在に操るテクニック】

超ロングセラーの「バラケマッハ」が持つ優れたポテンシャル。それは唯一無二といっても過言ではあるまい。両ダンゴ用ベースエサとして使われることが圧倒的に多い「バラケマッハ」だが、盛期の釣り場で当たり前のように目にするこのエサを、厳寒期におけるセット釣り用のバラケエサとして使い、自らの釣りを確たるものに築き上げた内島。その特性を余すことなく引き出し、自在に操る彼の眼力とテクニックからは多くのことを学ぶことができた。取材後、記者も同じブレンドのバラケをレシピ通りに作って使ってみたが、まとめ役として使われる締めエサを加えなくても適度なまとまり感があり、状況に合わせたエサ付けの微調整も極めてやりやすいことを実感できた。是非読者諸兄も試していただき、「バラケマッハ」は両ダンゴ専用エサという先入観から自らを解き放ってみてはいかがだろうか。