稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第168回 「西田一知の『ほどき』で詰める浅ダナ両ダンゴ釣り」

西田一知流「ほどき」を用いた浅ダナ両ダンゴ釣りのキモ その一:たかが1杯されど1杯 わずかなブレンドの違いで劇的に変わるウキの動き!!
この日西田は3つめのブレンド(ボウル3杯目)で当日のへら鮒の嗜好に合った決まりエサを探り当てた。彼曰く「その日1杯目のエサでできる限りの情報をかき集めることが大事!」だと力説するが、ここでいう情報とはいうまでもなく一連のウキの動きを指す。
「最初のひとボウル目は決して先入観を持たず、あらゆる方向に動けるように偏りのないニュートラルなブレンドでスタートすることが肝心です。今回スタート時のエサは私自身通い慣れた弁天フィッシングセンターでの定番ブレンドパターンですが、それでも一発で決まらないのが現代両ダンゴ釣りの難しさであり面白さなのです。エサを合わせるために必要なのは何よりへら鮒の状態を知るための情報。我々アングラーはその情報をウキによってのみ知ることができるので、へら鮒が寄っていない状態からのウキの動きの変化、特にひとボウル目のエサでできるだけ多くの情報を引きだし、正解への足がかりとすることが大切なのです」
ある意味このプロセスが省けてしまうほど簡単にエサが決まってしまうことは、へら鮒釣りの奥深さを味わうことができないことを意味する。従ってある程度無駄な道のりだと分かっていても経なければならない過程と割り切ることが肝心だ。実際にこの日もわずか1杯麩材を入れ替えただけで劇的にウキの動きが変わる局面があり、そうした情報も加味しながら徐々に詰めていったところ、最終的には最初のブレンドの「カルネバ」1杯(100cc)を「ほどき」に替えたことで両ダンゴらしいウキの動きに変わり、動画でも分かるように盛期並みに力強いアタリが連発するようになったことに、改めてブレンドを合わせることの重要性・必要性を気づかされた。
西田一知流「ほどき」を用いた浅ダナ両ダンゴ釣りのキモ その二:必要なのは“バラける”ではなく“ほどける(ほぐれる)”芯!
両ダンゴの釣りにおけるエサの芯は、この釣りになくてはならないまさに核心であるが、今この芯の善し悪し、出来不出来が釣果を左右する極めて重要なファクターとなっていることに注目しなければならない。“芯をほどく”といった考え方は今まであまり注目されていなかった新しい考え方であるが、端的にいえば残ったエサ玉の芯に至るまでコントロールし、その日その時々のへら鮒の嗜好に合わせる必要性が高まったというわけだ。
「こうした傾向は今に始まったわけではありませんが、ここ数年は芯を持たせただけでは思うように釣れなくなっていることは確かです。従来のエサ合わせはそうしたときであっても基エサを加えるとか、バラける麩材を追い足すなどの手法で対処できていましたが、まとまり感が強くネバる特性を持つ麩材が中心となった現在、そうした手法では十分な効果が期待できず、またできたとしても一部のテクニシャンだけのものとなっていることは決して放置することはできません。そこでネバる麩材のなかにあってもその働きを十分に発揮すると共に、両ダンゴエサの天敵ともいえる経時変化の少ない麩材が求められるなか、今回『ほどき』が生まれたのです」



また西田は“バラける”と“ほどける”を混同してはいけないと力説する。“バラける”とはエサ玉の表面が水中落下中に粒子状に剥がれるイメージで、扱い方を一歩誤るとウワズリを助長させかねない。一方、“ほどける”は落下中の開きはほとんど見られないためウワズリにくく、タナ近くに来たときに適度に小さくなったエサ玉の中心部分が吸水により膨らみ、へら鮒が吸い込んだ際に違和感のない食感になるイメージと捉えれば良いだろう。
「従来の麩材のなかにも似たような特性を持つものもありますが、『ほどき』は比重が軽いため、ほかの麩材の特性を損なうことなく、むしろ相乗効果により食い頃のエサ玉をへら鮒に届けることができる点も秀逸です。使い方としては基エサ作りの時点で最初からブレンドに加えるもヨシ、途中で小分けしたエサに生麩状態で加えても効果を実感できる点も見逃せません」
西田一知流「ほどき」を用いた浅ダナ両ダンゴ釣りのキモ その三:“この動きがでれば釣れる!”食いアタリにつながる必然の動きに注目!
取材時、幾度となく西田の口をついてでたこの言葉。すると必ず明確なアタリでフィニッシュし、かなりの高確率でヒットするシーンが数多く見られた。両ダンゴの釣りはいわゆるびっくりアタリ(何の前触れもなくいきなり強くでるアタリ)で釣れることは少なく、高釣果がでるときほどパターン化された前触れの動きに連動して食いアタリがでるものだ。このとき西田が目指していたウキの動きとは、軽いウケがでた後に小刻みな上下動を伴いながらナジミきり、そのままもしくは軽く煽った直後にズバッと入る動きだ。


「両ダンゴの釣りではこの動きが現われた時点で勝負あり!それはアングラーの勝ちを意味する動きであって、へら鮒がとても興味を抱いてエサに向かっていることを示す動きです。そのためにはブレンドを基本としたエサ合わせはもちろんのこと、ウキを中心としたタックルアジャスティングを含めたトータルバランスが必要不可欠です。今日のポイントはもちろんエサのブレンドに『ほどき』を加えたことありますが、ウキの浮力(オモリ負荷量)と密接な関係にあるハリスの長さがうまく決められたことに加え、エサの大きさと重さを生かしきるためのハリのサイズを合わせたことが勝因だと思います。仮にエサが決まったとしてもタックルがうまく噛み合わないと釣れませんし、そうしたトータルバランスが整っているか否かが判断できるのがこの前触れの動きなのです」
ここ弁天フィッシングセンターはいわゆるハコ(釣り堀)のカテゴリーに属するため、以下のような細かな規定が定められている。
⚫︎宙釣り8~13尺 底釣り8~15 尺 ⚫︎タナ、宙釣りは第一オモリ上部より浮子止めゴムまで1m以上 ⚫︎ハリ6号以下 ⚫︎ハリス50cm以内 ⚫︎ウキ全長18cm以上 ⚫︎生エサ禁止
今回西田がまとめたあげたトータルバランスは、こうした規定のなかで当日の釣況にマッチしたベストの状態に仕上げられていたことはいうまでもなく、その甲斐あっての釣れて当然の理想的な前触れのウキの動きであった。
記者の目【へら鮒が口にする瞬間のタッチを演出する「ほどき」】
西田の両ダンゴ理論、そして最先端の実釣テクを見聞きしたなかで、エサの芯を持たせれば釣れるという“両ダンゴ神話”が既に過去の遺物になりかけていることをおぼろげながら実感した今回の実釣取材。記者も両ダンゴフリークを自認するへらアングラーのひとりだが、「カクシン」や「カルネバ」によってやわらかいエサであってもその芯を持たせる(残す)ことが容易い現在、持ち過ぎによるカラツンやへら鮒のエサへの興味の喪失が感じられることがあることに違和感を覚え始めていたのだが、この日西田の“芯”に対する考え方に触れたことで「なるほど!」と腑に落ちた。いま、時代が求める真のエサ合わせとは、アングラー自身の手触りに頼った感覚的なエサ合わせではなく、あくまでへら鮒が口にするその瞬間に芯が食い頃になる「ほどき」によるエサ合わせ。へら鮒のグルメ化も「ついにここまで来たか!?」と驚かされると同時に、そうした変化に遅れることなく市場投入された「ほどき」。果たして超難解な両ダンゴのエサ合わせのもつれた糸を見事ほどいてみせてくれるのか、そのポテンシャルに注目だ!