稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第165回 「杉本智也の新べら狙いの両グルテン」|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第165回 「杉本智也の新べら狙いの両グルテン」

杉本流 新べら狙いの両グルテンの釣りのキモ その一:グルテン個々の特性を生かした新べら好みの〝膨らむ〟エサに仕上げる

グルテンエサはブレンドの比率や水量、さらにはかき混ぜ方ひとつで仕上がりのタッチに大きな差が生じてしまう。バラケにグルテンのセットの釣りであればバラケの良否が釣果を大きく左右するが、寄せもくわせも1つのグルテンエサで行う両グルテンの釣りは、宙・底問わずに状況に適したエサに仕上げることが何よりも重要だと杉本は説く。

「両グルテンの釣りではエサの〝膨らみ〟が重要です。硬軟でいえば硬めの方が水中での膨らみが早く、大きく、とりわけ新べらの興味を惹き付けるためには『グルテン四季』の膨らみが有効だと思います。また『グルテン四季』はエサ持ちも良いエサです。この特性を最大限生かすためには小さなハリを使うことをおすすめします。ハリは小さいほど水中での沈下速度が遅くなるためアピール力は高まり、アワせた際のエサ離れ(エサ切れ)もよいためウワズリにくいというメリットがあります。さらにマッシュが抜けやすいようにホクホクしたタッチに仕上げることも忘れてはいけません」

人が見てホクホクしたジャガイモが美味しそうに感じるのと同じで、へら鮒にとってもホクホクしたタッチのグルテンは口当たりがよく、美味しいエサに見えているのだろうか?

作り方の詳細は動画を参照していただくとして、さらに大切な要素としては釣り方や状況に応じてその都度ブレンドを合わせることも必要だと杉本は言う。この日も宙層のへら鮒の寄りが悪いときに集魚性を高めようとしてマッシュの抜けが良い「新べらグルテン」を加えて寄りを増やそうとしたシーンがあった。また完全な底釣りまでには至らなかったが、もし新べらが数多く底に居着いていたら「もちグル」を軸としたブレンドがマッチするという。

杉本流 新べら狙いの両グルテンの釣りのキモ その二:エサ合わせの総仕上げは〝エサ付け〟にあり!

練ったり、素材を追い足したりと、麩エサのように自在に幅広く調整ができないグルテンエサのエサ合わせ。これに対しての杉本の考えは、基本的なところは水量を含めたブレンドに軸を置くとしたうえで、それだけではきめ細やかなエサ合わせは不可能であることを理解しており、以下に挙げるテクニックを実践していた。それをここで披露しておかねばなるまい。

❶エサ付けの準備段階において、つまみ取ったエサ玉内部のエアーを抜き過ぎないこと

❷丁寧なエサ付けでもバラケ性を損なわないよう形状は吊り鐘型を基本とし、エサ付けサイズ(エサ玉ひとつの量)は球形にすると直径12mm程度の量とする

❸エサ付けの際はハリのフトコロに引っ掛ける(抱えさせる)のではなく、ハリのチモトにまとわり付かせる感じで行うとエサ持ちが良くなる

❹エサ付け時の形状パターンは丁寧・いびつ(ラフ付け)・扁平(平たく伸ばす)の概ね3パターン

「新べらがいるタナを探り当てられたとしても、新べらに食いたいと思わせるだけの魅力がエサにないと、決してヒットにはつながりません。基本的なところは基エサのタッチで決まってしまいますが、さらにエサのアピール力を増すためには的確なエサ付けが欠かせません。とりわけ肝心なのが、へら鮒のアオリに耐えうる持ちの良いエサ付けと、へら鮒に飽きさせないだけの水中での動きを演出する形状バリエーション。毎投同じ付け方をするよりも、反応が鈍くなりかけた時点で変化を付けると直後に食いアタリにつながることが多いので、ぜひ試してみてください」

杉本流 新べら狙いの両グルテンの釣りのキモ その三:集魚力に劣る釣りをカバーする正確無比なエサ打ち

話は前後するが、実釣開始直後に杉本が言い放ったことがある。それがエサ打ち精度の重要性だ。

「両グルテンの釣りで自分が最も大切にしていることがあります。それは、ほかの釣り方よりもエサ打ちの精度を高いレベルで維持すること。集魚力に劣るグルテンエサでアタリを持続することは想像以上に難しく、運良く新べらがいるエリアやタナを探り当てられたとしても、肝心のエサ打ちポイントが前後左右にブレていたのでは新べらを捉えきれません。」

一般的に両グルテンの釣りは中尺・長尺竿を用い、沖宙・沖底に居着く新べらを狙う釣り方だ。従って操竿テクニックは短竿の釣りよりもハイレベルなものが求められることは必定。実際、杉本のエサ打ちにはほとんど着水地点にブレ(ズレ)が見られない。ならばエサ打ちのコントロールをよくするコツはないかと訊ねると、

「コントロールが定まらない人の多くに、使用しているウキが小さい傾向が見られます。オモリを背負わない小ウキは遠くに飛ばす(打ち込む)ことが難しいので、最も簡単な方法としてオモリ負荷量の大きなウキに交換することをおすすめします。1cmボディが長い番手のウキに替えるだけで格段にコントロール性能が高まり、また狙ったポイントに打ち込みやすくなることに気づくはずです」

との明快なアドバイスが返ってきた。冬の釣りだからといって無用に小さなウキで繊細さを強調するよりも、むしろエサ打ちの精度を上げるだけで、ハリの怖さをまだ知らない新べらの口を開かせることは可能だと杉本は明言する。

杉本流 新べら狙いの両グルテンの釣りのキモ その四:明確な狙いに基づくウキのチョイスとアタリの選別

宙・底いずれかの釣りで決めきれない時合に遭遇したことで、奇しくも繰りだされた杉本の釣技。その釣りを支えていたのは、途中で交換したトップの仕様が異なるウキとアタリの選別だ。当初宙釣りで決めようと目論んだ杉本は、新べらがいるタナをウキの位置を上下させることで探り当て、エサをぶら下げ気味にしてアタらせようと、PCムクトップ仕様の『TOMO C-1 #10』でスタート。その後宙・底同時攻略の方向に舵を切ったところでグラスムクトップ仕様の『TOMO C-3 #10』に変更したのだが、この狙いは宙のへら鮒に対してより長くエサが動く時間を確保することで、ナジミ際にでる速攻の食いアタリを狙いやすくすると同時に、下バリのエサが着底したタイミング(動き)が明確に分かるグラスムクトップの特性により、底で食うへら鮒のアタリを完全掌握するためだ。

「グラスムクトップの『TOMO C-3 #10』にした時点で改めて下バリでタナ取りを行い、トップ先端5目盛りだしのところまでナジんだところで下バリが着底するタナに設定しました。実際にエサを打ち込むと5目盛り残しで一瞬ナジミが止まり、そこから上バリのエサが完全にナジミきって、さらに2~3目盛りナジむといった動きがよく分かるようになりました。これがグラスムクトップの効果であり、着底前のタイミングでアタリがでれば上バリ、着底後のタイミングでは下バリというように、上下どちらのエサを食ったアタリなのかある程度判断できるため、宙釣り特有のナジミ際のアタリや、底釣り特有の戻し際のアタリが絞り込みやすくなる点もこのウキあってのことなのです」

理想とする両グルテンの釣りのアタリは、トップのナジミ際からナジミきった直後までにでるカチッと小さくも鋭く入るアタリ。底釣りのアタリであってもウキが戻してくるまで待つことはほとんどなく、長時間待たなければアタリがでないような状態であれば、そもそも両グルテンでのこのマルチアプローチも、完全な底釣りも成立しない時合だと杉本は言う。

記者の目【動きも食いも渋いときだからこそ気持ちの強い釣りを心掛けよ!】

今回の取材にあたっては「両グルテンで新べらを狙う」以外に縛りはなく、宙か底かは状況に応じて釣れる方で〝落しどころ〟を探るものと勝手に決め込んでいた記者にとって、宙・底両用の隙のない杉本流マルチアプローチは、まさに意表を突かれた感があった。片ズラシの底釣りはへら鮒釣りの黎明期から存在する釣り方ではあるが、当時はバラケにグルテンを併用したセットの底釣りのひとつとして、共ズラシよりも大きな寄せ効果を期待しての、ウキの浮力を活用した「戻し重視」のセッティングとして確立されたものであり、いわば段差の小さな〝段底〟のようなイメージの釣り方である。一方、両グルテンで実践した杉本の狙いは明らかにこれとは異なり、メインはあくまで宙層のへら鮒であるが、これを狙いに行って捉えきれなかったエサ打ちを無駄にすることなく、底に寄った(予め居着いたものも含め)へら鮒を捉える術を残しておくといった、極めて合理的な戦略に基づいたアプローチなのだ。ただし本文でも彼が言っているように、あくまで中途半端なつかみ所のない時合下でこそ有効なのであり、宙なら宙で、底なら底で釣りきれる時合ならば、普通の宙釣りや底釣りで臨む方が釣りやすいことはいうまでもない。とはいえ、近年こうした釣り難しい時合に遭遇することは決して少なくない。そんな釣況に見舞われた際には、ぜひ試してみたい両グルテンの釣りであった。