稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第164回 「早川稔紘の段差の底釣り」|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第164回 「早川稔紘の段差の底釣り」

「瀑麩」インプレッション chapterⅢ 早川稔紘の塊抜きバラケによる段底のポイントその一:まとまりやすくエサ付けしやすいバラケのタッチが塊抜きの威力を増幅!

段底のアプローチは概ねふたつのパターンに分けられる。バラケを上バリにしっかり残した状態でチリチリとゆっくり粒子を降り注がせ、比較的広範囲のへら鮒にエサの存在をアピールしてくわせエサに惹きつけるパターンがひとつ。もうひとつはタナに入ったところで一気に塊のまま抜いてしまい、それを地底に敷き詰めるように溜めたなかにくわせエサを紛れ込ませて仕留めるパターンだ。取材冒頭、記者から自身の段底の特徴を問われた早川は、ターゲットにならない宙層のへら鮒を刺激せず、バラケを塊のまま繰り返し抜くことで底に留め、誘導可能な底近くに居着く(または回遊してくる)へら鮒を足止めして仕留めるスタイルだと明言した。

「正直どちらか一方で釣りきれるアングラーは少ないと思います。大抵ふたつのパターンを状況に応じて使い分けることが多いようですが、私の場合は後者一択。もちろん多少早めたり遅らせたりといったことはありますが、基本的にはタナに届いたら一気に塊で抜くことでバラケが底に溜まるイメージで組み立てています」

こうしたバラケの扱い方をするためには、ブレンドの段階からそれに適したものにしておく必要があることは記者にも想像ができたが、早川のバラケには今では必須ともいえる「粒戦」が使われていない。このことについて早川は、

「その理由は『粒戦』を加えると水中落下中に砕けてしまうことがあり、段底で私が最も警戒しているウワズリを起こすリスクが高いためです。一方で私が意図するバラケの持たせ方・抜き方がやりやすいのは『粒戦細粒』であり、エサ付けを誤らない限り狙いどおりのコントロールができるのです」

理想とする塊抜きを果たすためには、ブレンドに加え的確なエサ付けが必要不可欠だ。早川のそれは表面を滑らかにしてハリのチモトはほとんど押さえないのが特徴で、具体的な方法は動画を参考にしていただくとして、ここでは昨シーズンまで早川が慣れ親しんでいた段底用のバラケブレンドのうち「サナギパワー」が「瀑麩」に替わっていることにも着目しなければなるまい。

「まだ使い始めて間もないので確かなことは言えませんが、まとまり感と抜け感は従来のバラケと甲乙つけ難く、扱ううえでの違和感はありません。『瀑麩』が発売されて初めて迎える段底シーズンなので、今後はより食い渋った時合い下でのアタリの持続性や安定感に加え、さらに食い渋った場合の摂餌刺激能力といったところにも注目したいですね」

「瀑麩」インプレッション chapterⅢ 早川稔紘の塊抜きバラケによる段底のポイントその二:経験と実績に裏付けされた自信が生みだすタックルセッティング&アジャスティング

へら鮒の活性が下がるほどに釣りやすくなる段底だが、先に述べたように取材当日の朝日池のへら鮒は12月とは思えないほど活性が高く、周囲では季節外れの両ダンゴの釣りで連続ヒットさせる常連氏の姿がみられた。当然ながら早川のウキも動き過ぎるくらいよく動いたが、いつタックル変更に着手するのかと注目する記者を尻目に、理想的なアタリが続けて空振った際に下バリを2号から3号にサイズアップさせたこと以外に大きくタックルを変えることはなかった。もっとも厳寒期を想定した段底の取材なので、いかに想定外とはいえウキを極端に大きくしたり下ハリスを短くしたりするのは本来の趣旨と異なると考えての、心優しき早川らしい気遣いだったのかもしれないが…

「確かにそうした意識はありましたが、私自身段底で大きくタックルを変えることはなく、下ハリスの長さに至ってはスタート時のセッティングである60cmという長さを変えたことがほとんどありません。これは経験上60cmで釣れなかったことも、逆にこれ以外の長さで劇的に釣れたこともなかったためです。もちろん稀にアタリが極端にでにくいときはありますが、そうした場合は底近くにへら鮒が寄っていないものと考え、上ハリスを15cmまで伸ばして落下時のバラケの動きを増すことで、その周辺に居続ける宙層のへら鮒を下へ下へと誘導しています」

タックルのセッティングや釣り進めるなかでのアジャスティングについては各々考え方があるだろう。確かに何かを変えた直後にへら鮒が反応し、運良くヒットにつながることはよくあるケースだが、しかしその後釣れ続くのかといえば必ずしもそうではなく、むしろ堂々巡りをした挙げ句に元のセッティングに戻ってしまうことも決して珍しいことではない。経験と実績に裏付けされた自信も安定時合いを生みだすスパイスとなっているエピソードである。

「瀑麩」インプレッション chapterⅢ 早川稔紘の塊抜きバラケによる段底のポイントその三:〝守り〟に重きを置いた攻守のバランスで、真冬の安定時合いを導きだす

ウキの動きが小さく少なくなる厳寒期においてもなお確実にアタリをだすことができる段底。それでも多くのアングラーを悩ませるのが攻守のバランス、すなわち打ち返しのタイミングとアタリの取り方であろう。取材当日はまだへら鮒の活性が高くエサ打ち開始から数投でアタリがではじめたが、今後徐々にへら鮒の活性が低下し動きが鈍れば、そう簡単にアタリはでなくなる。そうしたケースでの釣りの組み立て方について早川は、

「基本的に段底は〝守り〟の釣りなので、たとえウキの動きが少なくても焦らずじっくり釣ることを心掛けており、むしろへら鮒を寄せ過ぎて必要以上にウキが動くことを警戒しています。私が実践していることは丁寧にエサ打ちを繰り返すことと塊抜きを徹底することで、それでも動き過ぎたときには意識的に打ち返しのテンポを遅らせます。打ち返しのタイミングについては完全にバラケが上バリから抜けきり、ナジんだウキがエサ落ち目盛りまで戻したとき(くわせエサだけになったとき)にサワリがなければ速やかに打ち返し、サワリがあればアタリがでるチャンスと判断してやや長めに待ちます。そして何より数少ない食い気のあるへら鮒をウワズらせないことが肝心で、たとえ真冬であっても新べらが放流されていればその回遊が期待できますし、それらを留めておける下地をしっかりと地底に作っておきさえすれば、チャンスが巡ってきたときに必ず釣り込むことができると信じています」

段底の組み立て方としてはオーソドックスな考え方だが、早川の早川たるゆえんはそれをブレることなく徹頭徹尾やり抜くところだ。実際、他のアングラーとのアプローチの違いを見つけようとしたが、実践していることはこれ以外に見当たらない。強いていえばバラケが抜けてくわせエサだけになった状態でのみ行う縦サソイだろうか。明らかにエサの傍に居る気配があるにもかかわらず、食いアタリにつながる前触れ(サワリ)が現われないときに竿先をわずかに持ち上げる程度のアクションだが、その幅はウキのトップの目盛りにして3~5目盛りなので、実際にはくわせエサは動いていない可能性がある。

「ウキがシモったときにはくわせエサの置き直し的な意味合いも含めて大きめに誘いますが、基本的にはラインテンションを張ったり弛めたりすることでアタリを誘発させたりアタリの伝達を促したりすることが狙いです。また自分の段底の打ち返しのルーティーンにもなっているので、バラケが抜けた後でサワリがないときに2~3回誘ってみて変化がなければ打ち返しています」

大きく動かし過ぎるとかえってへら鮒に警戒される恐れがある段底の誘い。早川の繰りだす誘いは、その大柄な体躯からは想像もできないほどきめ細やかでデリケートだ。

記者の目【安定時合いの構築に不可欠なのは徹底したウワズリ抑制と誘導、そして足止めだ!

中京地区では右にでるものがいないと称される早川稔紘の段底釣技。当日は想定外の新べらの猛アタックに見舞われた(制約のない普段の釣りであれば両グルテンでバクバクになると思われるくらい)ため、早川流段底のポテンシャルを100%発揮することは難しい時合であった。この異常事態を何とか打開しようとあれこれと試みてくれたなかで、ややもするとバラケばかりを食われてしまいやがてウキがナジまなくなってしまうような状況下においてもなおウキをしっかりナジませるテクニック、加えて複雑になりがちなウキの動きを抑制し、ヒット率こそ伸び悩んだものの毎投アワせるアタリをだし続けてフィニッシュさせるテクニックは「さすが」のひと言。安定時合いに必要不可欠なのは、落下途中のバラケの開きを抑えた徹底したウワズリ対策と、寄ってきたへら鮒の足を確実に留めるバラケの扱い方だと再認識させられた今回の取材。おそらくこの新べらの動きが落ち着いた頃には「瀑麩」効果によってさらにパワーアップした早川流段底が炸裂し、朝日池バクバクの釣果情報がへら鮒天国に届くに違いない!