石井忠相の「瀑麩」インプレッション　chapterⅡ　その一：まとまり良くエサ付けしやすい特性が、ストレスフリーの深ナジミをサポート！

釣り方やタナの深浅にかかわらず狙ったタナに分厚い集魚層を構築し、力強い明確なアタリを連発させて釣り込むのが石井スタイル。取り分けチョーチンウドンセット釣りにおいては、トップ先端が沈没するくらいの深ナジミを繰り返し、タナにへら鮒が入った合図であるサワリやそれに続く前触れの動きが現われると、直後にでる力強い消し込みアタリで良型が次々にヒットする。

「ウキを深くしっかりとナジませるためには、何よりもバラケを上バリに残した状態でタナまで送り込むことが絶対条件です。そのためにはバラケを大きく付けたり圧を強めたり、また比重の大きな重い麩材を多く加えたバラケを使ったりすることも一手ですが、普段どおりのエサ付けで楽にナジませられればそれに越したことはありません。おそらく初めて『瀑麩』を使った人はそのまとまりやすさやエサ付けのしやすさに気づくでしょう。これが結果的にはウキの深ナジミにつながり、何よりもタナの安定に繋がるのです。」

チョーチンウドンセット釣りで高釣果を得るためにはタナの安定が何より重要だと石井は言うが、ウキを深ナジミさせることはその第一歩に他ならない。またセット釣りではバラケの持たせ方がアタリの有無に直結する。セオリーとしては夏場の高活性期はバラケを持たせたままで、厳寒期の低活性期は完全にバラケを抜いた後。そしていずれかの端境期となる春や秋には変化する時合によって抜いたり持たせたりと、そのコントロールテクニックが必要不可欠であることは多くのアングラーの知るところだろう。

「指先ひとつの圧加減でそれができるのも『瀑麩』のポテンシャルのひとつです。今日も持たせた方が良い場面と、抜かなければアタリにならない場面が入り交じった端境期特有の時合でしたが、変化するへら鮒の状態に合わせてストレスフリーでバラケ加減をコントロールできるポテンシャルは、アングラーにとって大変ありがたいことだと思います。」

石井忠相の「瀑麩」インプレッション　chapterⅡ　その二：抜けた後の働き（機能）が実感できる、シン直下型バラケで安定時合を構築！

さらに石井は続ける。

「バラケのコントロールが簡単にできることは、セット釣りにおいてアタリをだすために必要不可欠な要素ですが、さらに重要なポイントとしてタナで働く（機能する）こと、すなわちタナに寄せたへら鮒にくわせエサを食わせることを忘れてはなりません。従来のバラケではブレンドする麩材を含めた仕上がりのタッチや、その後の手水や押し練りといった調整によるタッチの変化、さらにはエサ付けを含めたアングラーのテクニックに頼っていましたが、『瀑麩』をブレンドすることによりその機能の多くをバラケエサ自体に委ねることができることも新エサの大きなメリットでしょう。」

働く（機能する）という石井のこの言葉の意味は、実際にウキの動きを見るとよく分かる。バラケが抜けた後、しばしの間があってからフワフワとしたサワリ（前触れ）がトップに現われた直後にズバッと水中に突き刺さる食いアタリが幾度となく見られたが、これこそがバラケの粒子が直下に降り注ぐことで、タナに寄ったへら鮒をくわせエサへと導いている証（あくまで記者のイメージだが）にほかならない。

「自分のイメージもこれに近いものですが、さらに『瀑麩』には水中で横に広がらずに直下に落下する粒子が多く含まれるため、長時間水中に漂う粒子が少なく常に綺麗な状態が保たれます。これにより無用なへら鮒のウワズリが抑えられ、安定した時合が長続きする効果も見逃せません」

先にも紹介した石井のエサ付けは、ハリのチモトだけをしっかり押さえることで落下中の無用な開きを抑えつつも、押さえていない下部から開いた粒子が糸を引くようにバラケながら繰り返しタナに送り込まれる。するとこれに引き寄せられたへら鮒が徐々にタナに溜まり始め、さらに上バリに残ったバラケが抜けた際にはこれを追って直下に位置するくわせエサへ導かれるという、まるでセット釣りの理想形のような釣りが目の前で繰り広げられた。

石井忠相の「瀑麩」インプレッション　chapterⅡ　その三：ＴＰＯに合わせたベストの〝相棒〟で、「瀑麩」の株も爆上がり!?

前述の「ベストブレンドパターン」で初めての釣り場を難なく攻略してみせた石井。これ以上ない釣りを見せつけられた記者は、ひとつ意地悪な提案をしてみた。「ブレンドを替えても同じように釣れるのか試して欲しい」と。すぐさまリクエストに応えてくれた石井は「ヤグラ」と「セットアップ」を入れ替えたブレンドでリスタート。するとその直後、明らかにウキの動きに変化が現われた。その動きを比較するとそれまでよりも明らかにナジミきるまでの時間が長く、ナジミ際にでていたアタリが激減するとともに、バラケが抜けた後もコンスタントにでていたアタリが途切れがちになり、カラツンも目立ち始めた。誰の目にも〝エサが合っていない〟ことは明らかだ。

「バラケが開き過ぎています。エサ打ちポイントに見え隠れしている水面直下のへら鮒の数が明らかに増えましたし、典型的なウワズリ症状もみられます。感覚的にはもう少し水温が下がり、へら鮒の活性が低くなってからマッチするブレンドだと思いますね。今日の状態では、いささか役不足という感じでパンチが足りません。やはりブレンドは状況にマッチさせることが大切で、合っていないと釣りにくさを感じるばかりか、新エサのポテンシャルも十分に生かすことができません。」

決まっているときのウキの動きとの違いに納得した記者に対し、再びこの日のベストブレンドパターンのバラケに戻して〝復旧〟に努める石井。程なくして釣れるウキの動きが戻ったことはいうまでもないが、いかにハイポテンシャルな新エサといえど、やはりＴＰＯに合わせたブレンドが大切であることを再認識させられた瞬間であった。

石井忠相の「瀑麩」インプレッション　chapterⅡ　その四：「瀑麩」で担いきれない領域をカバーする忠相流縦サソイ術

竿先を大きくシャクったり、そっと小さく上げ下げしたりする縦サソイは、メジャートーナメントやイベントなどでは厳しいレギュレーションが設けられているものの、今ではチョーチンウドンセット釣りには欠かせぬテクニックとなっており、石井自身もその重要性を認め、必要性を説いている。

「考え方は人それぞれですが、近年縦サソイは必須のテクニックであり、その良否が釣果を左右することは皆さんご承知のとおりです。私の場合くわせエサを意図的に動かすことで起こるリアクションバイトにはあまり期待はしていないので、エサを打ち込んだ後で繰り返し何度も行うことはありません。おもに上バリにバラケが残り過ぎてウキが沈没した際、バラケを促進すると同時に再度くわせエサをフリーフォール状態にするために竿先を１～２回シャクる以外は、近くに食いそうなへら鮒がいる気配があるときにのみ、ラインテンションを適正に保つために小さく竿先を動かす程度にとどめています。」

縦サソイ直後に釣れると「これが好手！」とばかりに必要以上に繰り返すアングラーがいるが、バラケを打ち込む回数が必然的に減ってしまう長時間の縦サソイには、やがてタナに寄ったへら鮒が少なくなるというデメリットがあることを理解して行わなければなるまい。上バリにヒットすることがしばしばみられるほどバラケへの反応が顕著であったこの日、石井は前述のとおりバラケの促進を主とした必要最小限の縦サソイを駆使しながら、コンスタントに食いアタリを引きだしながら釣り込んだ。

記者の目【タナを強く意識しなければならないチョーチン釣りこそ「瀑麩」の主戦場！】

バラケのコントロールが難しい現代セット釣りのなかでも、とりわけ攻めるタナが深くなるチョーチンセット釣りにおけるタナの安定こそ直下型バラケの真骨頂であり、今後「瀑麩」が活躍する主戦場となるであろうと強く感じた今回の実釣取材。いうまでもなくセット釣りの基本システムは麩エサ（バラケ）を食いきれない（食おうとしない）へら鮒をバラケで寄せてくわせエサを食わせるという至ってシンプルな組み立て方で成り立っている。ハッキリ言って寄せること自体はさして難しいものではなく、大きなバラケをポンポン打ち込めば良いだけの話だ。ところが寄せたへら鮒が皆くわせエサを口にするかというと決してそのようなことはなく、そこには高いハードルがあって容易に食わないことは周知の事実だ。であるならば、どのようにすれば食うのかといえば、やはりそれはバラケの扱い方次第としかいいようがあるまい。しかしこれが口で言うほど簡単なシロモノではなく、近年はシーズン毎に適不適が猫の目のようにコロコロ変わり、名だたる名手でさえ自身の釣りのブラッシュアップを怠るとアッという間に取り残されてしまうほど難解極まりない。そこへ「瀑麩」の登場だ。もちろんこの新エサがすべての問題を解決してくれるわけではないが、これまで難しかったボソ系バラケを確実に持たせること、そしてこれとは真逆のネバ系バラケを狙いどおりに抜くこと、さらにはいずれのタッチであっても上バリから抜けた後の働き（機能）の点においても、従来バラケ以上の働きを魅せてくれるに違いない。浅ダナ編、チョーチン編と続いたファーストインプレッション。残すはもちろん冬の鉄板釣法「段底」。次回も新エサの新たな可能性に乞うご期待！