稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第158回 「貞尾 剛の短竿、短バリスのチョーチン両ダンゴ釣り」|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第158回 「貞尾 剛の短竿、短バリスのチョーチン両ダンゴ釣り」

貞尾流 短竿、短バリスのチョーチン両ダンゴ釣りのキモ その一:いずれが主役か脇役か 6種ブレンドはもはや完成された単品エサ!?

両ダンゴ釣りにマッチした「カクシン」の登場以来、ダンゴのブレンドは2種もしくは3種程度で完成させるのが流行(事実それで十分釣れる)しているが、そんな現代へら鮒釣りにおいて近頃稀にみる多品種ブレンドエサが、今回の取材ではなんといっても記者の目を惹いた。もちろん貞尾自身、闇雲に混ぜているわけではないだろうが、まずはその辺りのところを訊いてみた。

「自分が理想とするアタリをだそうと試行錯誤した結果、なんとなくこのブレンドに辿り着いたというのが正直なところです。いずれも私自身扱いやすく実績のある好きなエサなのですが、あえて個々のエサに求めるものをあげるとすれば…」

と貞尾が語りだした各エサの特性(狙い)についての解説をまとめると概ね以下のとおりとなる。

⚫︎カクシン:アタリ負けしないしっかりしたエサの芯を作る

⚫︎コウテン:カクシンとの相性が最も良く、バラケながらも芯が残る理想的なエサができる

⚫︎グルバラ:ウワズリを抑える適度な重さとタナに届いてからの膨らみに期待

⚫︎BBフラッシュ:個性的なネバリがボソタッチを維持しながらエサ持ちを強化

⚫︎浅ダナ一本:硬さと膨らみのコントロールに欠かせない逸品

⚫︎凄麩:独特のボソタッチと芯持ちがタナに入ってからの理想的なアタリを引きだす

読者諸兄のなかには「なにもそんなに混ぜなくても……」と思われる向きもあるだろうが、貞尾とっては何ひとつ欠けてもこの釣りが成立しにくくなるという、いわば彼の釣りの心臓部。そんな貞尾に「このなかで最も重要なエサは何か?」と、記者はあえて意地悪な質問を投げかけてみた。すると、

「いずれも代用が効かない大切な麩材ですが、へら鮒にアタックされても確実にエサを送り込み、狙ったタナでの狭いレンジのなかで的確に各麩材のポテンシャル(おもに膨らみ)を引きだすという意味では、最も比重が大きく膨らむタイミングの良い『グルバラ』が司令塔の役割を担っているかもしれません。」

との答えが返ってきた。連続ヒットを重ねる貞尾のウキの動きを見ていると、なるほどこれはアタリ同様「ズバッ」と的を射た回答だと記者もうなずいた。突出した個性のエサが無いことで軸がぼやけてしまうブレンド例も少なからずあるなか、貞尾の6種ブレンドのなかでは確かに「グルバラ」が重要な役割を果たしているように感じるが、おもに手水とわずかな押し練り程度ではしゃぐへら鮒を完全に支配下に置き、時合をコントロールする様を見ていると、もはやこれは完成された単品エサに思えてきた。個々の麩材すべてが水中落下中にはその機能を抑えつつ、タナに入った途端、的確に膨らみながらも確たる芯をもって食い頃になるまで激しいアタックに耐え、やがてへら鮒が我慢しきれずにエサに食いつくといったシステムが確立されているのだ。

貞尾流 短竿、短バリスのチョーチン両ダンゴ釣りのキモ その二:ときには水中アタリも厭わない、徹底した深い位置でのアタリを狙え!

一見すると入れ食い状態。傍目にはイケイケでカウントを重ねているかのように見える貞尾の釣りも、その裏では慎重に慎重を期した緻密できめ細やかなテクニックが間断なく繰りだされていることは容易に想像できた。なかでも極めて重要だというアタリの取り方に対する徹底した姿勢は、大いに見習うべきところがある。実際に動画を見て頂ければ一目瞭然だが、立ち上がったウキがナジミきるまで、またナジミきってからも「なぜあのアタリにアワせないの?」と不思議に思えるほどに良いアタリがでているにもかかわらず、当の本人はいたって涼しげな顔で当然のごとく見送り、これがラストチャンス(ベスト)というギリギリのところでアワせている。

「早いアタリでも釣れますが、それを続けているとやがてエサがタナに入らなくなりウキがナジまなくなってしまいます。多少遅くなっても深い位置でヒットさせ続けることで時合が安定し、たとえ空振ったとしてもウワズリによる悪影響を最小限に抑えることができるのです。」

 

ひと言に深い位置といっても、ナジミきるまでの動きが少なく、すんなりナジミきってしまってはヒットするアタリにつながらないと貞尾は言う。肝心なのはエサ落ち目盛りを過ぎた辺りから間断なく見られる小刻みな上下動。これはタナに入ったエサが機能している証で、膨らみだしたエサにへら鮒が興味を示し、隙あらば食いつこうというサイン。この動きが明確に現われているときはエサ玉の大きさも適度に削られ小さくなっているので、トップが深くナジミきっていれば直後にでるアタリには迷うことなくアワせていく。一方で動きに満足がいかないときには沈没したトップが返してくるくらい待ってからの強いアタリを狙っていくが、やはり一旦ぶら下がってからのアタリはヒット率がやや低下する傾向で、そうした投が続いたときはわずかにエサ付けの圧を弱めて打ち込み、ナジミきるまでに理想のアタリに連動する前触れの動きを演出することを怠らない。

「たとえエサがタナに入っても膨らみの悪い(遅い)エサでは食いアタリにつながりません。あくまでタナで機能する生きたエサでなければならないのです。そういう意味ではこのエサ(6種ブレンド)は、その働きを十分に果たし機能するエサだと思います。」

貞尾流 短竿、短バリスのチョーチン両ダンゴ釣りのキモ その三:ウキ&ハリのアジャストでコンプリート!

この時季の天神釣り池の標準的セッティングでスタートした貞尾。1投目からヒットさせたり、開始間もなく早々にダブルヒットを決めたりするなど、勝手知ったる釣り場でやりたい放題のパフォーマンスを披露するが、さすがに釣り人が少ない平日の実釣取材。釣っても釣っても湧き上がるへら鮒の群れに、徐々にタナまでエサが持たない投が目立ち始めると、開始からわずか1時間足らずでウキをワンサイズアップ。ハリを「バラサ」7号から軸太の「セッサ」7号としエサ持ち強化に打ってでる。結果的にはこの変更だけでほぼトータルバランスが整ったようで、時折激しいウキの突き上げに見舞われながらも、毎投繰り返される丁寧なエサ付けに加え、静かな打ち込みによってタナまでエサが持つようになると、ダッダッズバッと豪快に消し込むアタリで良型が次から次へと水面を割ってでる。

「この釣り方におけるタックル調整は、おもに食うエサをストレスなくタナに送り込むことを目的として行います。エサだけの調整でも持たせることはできますが、大抵は硬さで持たせるとカラツンになってしまいますし、強いネバリで持たせようとするとへら鮒にスルーされてアタリにならない投が増えてしまいます。あくまでその日そのときのへら鮒が好んで食うエサをタナまで持たせることが肝心なのです。普段の釣りではハリスを少しだけ短くするところから始めてひとつずつタックルを煮詰めていくのですが、今日は釣り場の状況も十分に分かっていましたし、何より遠くから取材に来られている記者さんやスタッフの皆さんに遅くまでお付き合いさせるのは忍びないので、今回はウキとハリの同時調整で〝時短〟を図らせていただきました(笑)。」

シンプルかつわずかな調整であったが、これで完全に釣りが決まるとヒットペースもさることながら、釣れてくるへら鮒の型もひとまわり大きくなるのがチョーチン両ダンゴ釣りの醍醐味。ヒットのたびに身を乗りだして豪引に絶える貞尾は、ここまで整えられたら1日150枚超、60~70㎏の釣果になると断言。恐るべし貞尾!恐るべし天神釣り池!ここでコンプリートだ!

記者の目【短竿、短バリスがマストのネオ・ナジませ釣り!】

実釣時のウキの動きを見ていたら、かつて一世を風靡したアタリ返しを狙うナジませ釣りが脳裏に浮かんだ。もちろん当時の釣り方とは大きく異なる点もあり、その象徴がハリスの長さとエサのタッチだ。かつてのナジませ釣りはここまで短くハリスを詰めることはなく、エサのタッチも「バラケマッハ」を主体としたネバリの少ない大きめのカタボソタッチが主流であった。イメージとしてはやや長めに遊びを持たせたハリスで硬めのエサを意図的に削らせながらタナに送り込み、狙いのタナに溜まってくるボソエサ好みの良型のへら鮒を一網打尽に仕留めていた。今回貞尾が魅せてくれたアプローチは現代のへら鮒が好む、どちらかといえばボソッ気を抑えた軟らかめのエサを絶妙なタックルセッティングでストレスなく狙いのタナに送り込み、リスクを最小限に抑えるべくアタリを送り気味にしてアワせるという、いわば貞尾流ネオ・ナジませ釣り。関東の管理釣り場では近年あまり目にすることのないアプローチだが、早速記者も試したくてウズウズしながら関西の地を後にした。このコンセプト、なにやら面白そうだ!