稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第156回 「西田一知流『もちグル』くわせのバラグルセットの底釣り」|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第156回 「西田一知流『もちグル』くわせのバラグルセットの底釣り」

ようやく桜の花びらがほころび始めた3月下旬、西田一知マルキユーインストラクターの姿は埼玉県大里郡寄居町にある円良田湖の常管桟橋にあった。狙うはもちろん乗っ込みを間近に控えた野べらの群れであり、発売後初めて迎える春の釣りに大いなる期待を込め、新エサ「もちグル」を携えての釣行だ。今回、西田に課されたオーダーは「春の底釣り爆釣編!」と銘打った、彼一流のバラケにグルテンのセットの底釣り。ところが自然の摂理のなかで生きるへら鮒は、ときとして予測不能な動きでアングラーを翻弄することがある。開始早々究極の待ち釣りに徹せざるを得ない釣況に、西田にしてみれば不本意ともいえる我慢の釣りに終始した取材となったが、今回はそうした稀に見る難時合だからこそ垣間見えた新エサの真のポテンシャルをお届けする。

食い渋る難時合に欠かせないくわせ系グルテン「もちグル」の本領発揮!

新エサを携え期待の膨らむ実釣取材。昨秋放流された新べらの群れが激しくエサにアタックしてくることを想定し、この時期浅場と深場を行き来するであろう緩やかなカケアガリのポイントに狙いを定めた西田であったが、いざエサ打ちが始まるとその狙いを果たすことが極めて困難であることを早々に見抜いていた。

「私の経験上、底釣りで釣れるときは十中八九エサ打ち数投でアタリがではじめ、一旦釣れ始まるとエサを打つほどにへら鮒の寄りが増し、やがてアタリっきりになるものです。しかし今日はアタリがでるのが極端に遅いことに加え、ようやくでたアタリで釣れた1枚目が良型の地べらであったことから、新べらがガンガンアタって来るシチュエーションのなか、メインテーマである激しいアタックに対するエサ持ちの良さを披露するには極めて難しく、従って今回はエサ持ちの良さを〝待ち〟に特化して見ていただくしかないようです。」

豊富な経験に裏付けられた西田の言葉に誤りはなく、エサ打ちのほとんどがノーサワリで打ち返さざるを得ない状況のなか、難しい時合を攻略すべく意図的にスローテンポなアプローチにシフトチェンジ。時折現われるサワリと呼ぶには余りにも僅かなナジミ際のスピードの変化や、ウキが戻すタイミングの遅速といった動きの変化を前触れと読み、その直後に集中力を高め突発的にでるアタリを的確に捉えるといった究極の待ち釣りを披露。ある意味もうひとつの「もちグル」の特徴である〝待てる〟エサであることをリアルに証明してみせた。

取材時使用タックル

●サオ
シマノ「飛天弓 閃光LⅡ」22.5尺

●ミチイト
サンライン「パワードへら道糸 奏」1.0号

●ハリス
サンライン「パワードへらハリス 奏」0.4号 上=42cm下=50cm(段差8cm)、→上=48cm下=58cm(段差10cm)

●ハリ
オーナーばり「バラサ」 上=5号、下=4号

●ウキ
忠相「S Position BOTTOM」No.16
【PCムクトップ200mm /一本取り羽根ボディ165mm/竹足50mm/オモリ負荷量≒2.2g/エサ落ち目盛り=7.5目盛りだし】

取材時使用エサ

バラケ(ダンゴ)エサ

「ダンゴの底釣り 芯華」150cc+「わたグル」50cc(軽く混ぜ合わせてから)+水150cc

水を加えたらよくかき混ぜ、全体に水がゆきわたったら手を止めて5~6分放置。硬さが安定したら小分けしたものに10回ほど押し練りを加え、まとまり感を増したものを直径12mm程に丸めてエサ付けする。

くわせエサ

「もちグル」50cc+水60cc

水を加えたら指を立ててよくかき混ぜ、やや固まり始めたらエサボウルの隅に寄せて5~6分放置。吸水が完了し、硬さが安定したら、小分けしたものに数回押し練りを加えて使用。エサ付けサイズはパチンコ玉(直径11mm)程度。

西田一知流「もちグル」くわせのバラグルセットの底釣りのキモ その一:エサ持ちを担保する確かなナジミ幅がもたらす安心感 !!

エサの重さがダイレクトにウキに現われる宙釣りに比べ、タナのズラシ幅やハリス段差、さらにはエサの着底状態如何によってナジミ幅が変化する底釣りでは、果たしてエサが持っている(ハリに残っている)か否か、その事実を裏付ける証が曖昧になりがちだ。アタリがでて釣れ続いているのであれば問題はないが、一旦釣れなくなると疑心暗鬼の無限ループに陥りかねない危険性を少なからず孕んでいる。マルキユーインストラクターとして各地で釣り教室やエサ教室に勤しむ西田は、以前から底釣りをレクチャーする際に気になっていたことがあると言ってこう語りだした。

「エサの重さがウキに現われやすい宙釣りに比べ、底釣りではエサが持っていなくて釣れない人が思いのほか多いことに驚いています。なかでも底釣りの基本といわれるバラケにグルテンのバランスの底釣りでは、肝心要のくわせエサ(グルテン)がハリから抜けてしまい、アタリをだしきれていないケースが目立つのです。アタリをだすためにはエサを持たせる(ハリから抜けないようにする)ことが大前提であることはいうまでもありません。しかし食い気旺盛な新べらがカチカチと強くアタってくるときや6m以上の水深があるところで底釣りをする際に、グルテンの扱いに慣れていないアングラーが陥りやすい失敗がまさにこのエサ持ちの不備であり、そういった問題を解決してくれるのが『もちグル』の真のポテンシャルなのです。」

この日の西田は得意の長竿を使ってのバランスの底釣りを選択。数釣りを狙ってカケアガリのポイントにエサを打ち込むと、かなりの水深にもかかわらず毎投確実にウキが深ナジミを示し、へら鮒のアタックがないときは長時間そのままの状態を維持。これだけでも従来のグルテンエサよりも重く持ちが良いことが分かる。

「この確かなナジミ幅が、エサが持っているという何よりの安心感につながります。残念ながら今日はへら鮒のアタックでエサ持ちが悪くなるような釣況にはなりませんでしたが、食い気旺盛なへら鮒が束でかかってきても負けないエサ持ちの良さは既に折り紙付きなので、自信をもってお勧めできるグルテンエサであることは間違いありません。」

西田一知流「もちグル」くわせのバラグルセットの底釣りのキモ その二:エサを食うことをためらうへら鮒は、鉄壁の守り(待ち釣り)で仕留める!

例年この時期の円良田湖であれば春を待ち望んだ空腹状態のへら鮒がエサに群がり、エサが持たないほどの寄りをキープしながら大釣りになることも珍しくないのだが、数日前には水深の浅いポイントの底釣りでも高釣果があがっていたとの情報があったにもかかわらず、この日ばかりは西田のテクニックを総動員しても呼び寄せることが叶わなかった。途中ポイント選定ミスも疑われたが、周囲の釣況を見る限り底釣りで釣れたアングラーはひとりもおらず、宙釣りに替えて辛うじて型を見るといった状況から極めて厳しい日並みであったことが分かる。西田はこの異常事態に早くから気づいており、釣り方を当初描いた攻めの数釣りから、いつ食うかも分からないへら鮒に対し鉄壁の守り(待ち釣り)で迎え撃つ作戦に方向転換をしていた。

「守り(待つ)とはいってもエサを打ち込んで漫然とウキを見ていたのでは、オデコの危険性もあるのが今日の状態です(苦笑)。とりあえず1枚は釣れましたが、その後のウキの動きから単なる食い渋りではなく、居着きも含めて回遊そのものが極端に少ないことは明らかです。こうしたケースでは底釣りを諦めて宙釣りに変更するのがセオリーですが、今日は底釣りがテーマの取材ですのでそういうわけにはいきません。何とか1枚でも多く仕留めることを目指しましょう。」

西田はそう言うと、極端に回転数を落としたスローテンポなエサ打ちにシフトチェンジ。数少ないへら鮒を遠巻きにしないよう注意を払いつつもウキが戻してくるのをジッと待つことなく、遅いながらも一定のインターバルで丁寧なエサ打ちを繰り返していく。すると忘れた頃にトップのナジむ速度が一瞬遅くなったり、ナジミきったウキがわずかに早く戻したりと、うっかりしていると見過ごしてしまうほどの変化が現われた直後にでるアタリで1枚、また1枚とカウントを重ねていく。

「これほどの待ち釣りは自分の釣りでは滅多にないことですが、これだけ待ってもアタリがでるということは、エサの近くに寄ってきたへら鮒のアオリによってグルテンがハリ抜けしていない証であり、『もちグル』ならではの効果であると実感できます。」

西田一知流「もちグル」くわせのバラグルセットの底釣りのキモ その三:突出した比重とエサ持ちが新たなエサ使いの可能性を生みだす!?

底釣りでグルテンエサをくわせエサとして使用する場合、余程特殊な状況でもない限り両バリ共に底に着けたバランスの底釣りで使用するのがセオリーだろう。しかし数あるグルテンエサのなかでも突出した比重の大きさとエサ持ちの良さが新たなエサ使いの可能性を秘めていると、これまでの「もちグル」インプレッションを通して実感したと西田は力説する。

「今日の実釣とは直接関係はありませんが、重くエサ持ちが良いという特性を持つことから試しに段差の底釣りで使ってみたところ、ウドン系固形物並みにアタリが待てることに驚きました。しかもウドン系固形物をくわせエサにしたときよりも新べらがヒットする確率が高く、使用する時期や釣り場によっては面白いアプローチの段底が可能になるのではないでしょうか。」

時期的にどうしても待ち釣りにならざるを得ない段差の底釣り。かつてウドン系固形物が定番となるまでは、くわせエサにはオカユやグルテンが使われていた時代もあったが、食いが渋くなればなるほど待つことでアタリが引きだせることが周知された頃から、それはウドン系固形物に取って代わられた。そのおもな原因は重さとエサ持ちの点での不足にほかならないが、「もちグル」はそうした欠点を補えるものと、実体験を通して西田は感じているようだ。

記者の目:くわせ系グルテンの最高峰「もちグル」が誘う究極の待ち釣り!

残念ながら今回の取材では西田一流の爆釣劇を見ることは叶わなかったが、これもまたへら鮒釣りの奥深さの一端であると同時に難しさを象徴するシーンであろう。その代わりといっては何だが、普段滅多に目にすることができない西田の待ち釣りが見られたことは、ある意味貴重なシーンを読者諸兄にお届けできたのではないかとポジティブに捉えたい。もちろん「もちグル」のよさは単なるエサ持ちだけではない。重さによるウワズリ抑制効果に、激しいへら鮒のアタックに当たり負けすることなく堪える性能。さらには深いタナや流れのあるなかでの底釣りにおけるエサ玉の形状キープ力は、ほかのグルテンとは一線を画する新機軸として既に多くのアングラーに受け入れられている。なかでも新エサの有効性をリアルに体感できるのが流れ川での底釣りであり、とりわけエサが持っているのかいないのか、その判断が難しいドボンの釣りでは、自信を持ってアタリを待つことができるだろう。春は底釣りの絶好期。バランスの底釣りにおける確実なナジミ幅で得られる安心感に加え、攻めの数釣りとは対極にある我慢の待ち釣りにも幅広く対応できる「もちグル」の、フトコロの深さを体感してみてはいかがだろうか。