稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第150回 「河村大輔のカッツケウドンセット釣り」|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第150回 「河村大輔のカッツケウドンセット釣り」

河村流 カッツケウドンセット釣りのキモ その一:即断即決!豊富な引きだしから間断なく繰りだされるきめ細かな対応策

開始直後から数投単位、分単位で繰りだされた対策の数々。記者がメモをとる暇がないほど次々と変わるセッティングに、朝のお祭り騒ぎともいえる過剰なへら鮒のハシャギによる複雑なウキの動きは少しずつ落ち着きを取り戻す。そして開始から約1時間が経過した頃、タックル調整も煮詰まったところでバラケのブレンドを見直すと徐々にウキの動きは安定方向に向かい、さらに細部に渡りセッティングを煮詰めていく。やがてパターン化されたウキの動きで食いアタリがでるようになると、そこから先はまさに浅ダナマイスター河村大輔の独壇場であった。

「初めての釣り場ということもあって、クセというかへら鮒の状態を早めにつかみたかったのですぐに動き始めましたが、開始早々に両ダンゴでも十分イケるくらいへら鮒の活性の高さがあることが分かり、色々と替えた効果もすぐに確かめられたのが良かったですね。特にタックル面ではベストと思われる下ハリスの長さが早々に決まったことが幸いでした。始めは寄りも多いし動きも激しく、究極の接近戦が挑めるかと思い15cmまで詰めてみましたが、かえってウキの動きが複雑になり思うようには釣れませんでした。そこで一旦20cmに戻して空いたスペースに入って来るかバラケを調整して確かめてみたところ、これに手応えを感じたので改めてバラケを作り替え、適度に保たれたスペースにへら鮒が入って来るように組み立て直しました。」

改めてこの日の釣りの流れを振り返ると、スタートから1時間は釣り場とへら鮒の状態を探るための時間に当てられ、ある程度分かったところでバラケを見直し、それに手応えを感じて以降の1時間がさらなるタックルセッティングとバラケのタッチを煮詰めるために割り当てられた。わずか2時間ほどで初めての釣り場のへら鮒を掌握しコントロール下に置けたことは、なにより河村のセンスの良さに依るところが大きいと思われるが、特筆すべきことはそのための判断材料となる対応策が次から次へと途切れることなく繰りだされたことであろう。ちなみに釣りが決まるまでの策を、順に大きなものだけに絞ってまとめると概ね以下のとおりとなる。

●開始10分後、思ったよりも動きが少ないという理由でタナを5cmほど深くする

●ファーストヒット以降、いきなり寄りが増したことでウキがナジミ難くなり、タナを元に戻す

●ウキに無駄な動き(カラツンを含め)が多くなったことから下ハリスを20cmに詰める

●ヒット率が改善されないことから、さらに下ハリスを17cmに詰める

●タックルでの調整を一旦留め、バラケに「浅ダナ一本」を絡めて開きを抑える策を講じる

●バラケ調整で動きが抑えきれないため、「滅多にやらない」と言いつつ上ハリスを6cmに詰める

●これでもヒット率が改善されないことから、さらに下ハリスを15cmに詰める

●さらにバラケを持たせる方向に調整したため、エサ落ち目盛りを4目盛りだしに修正

●ダンゴタッチに調整されたバラケを食う確率が高まるが、一向に糸ズレの動きが収まらない

●ここで一旦バラケを元に戻し、へら鮒を遠ざけようと下ハリスを20cmに伸ばす

●バラケを食う確率が減少すると共に、バラケが抜けた直後に下バリを食う確率がアップする

●これまでのプロセスからウキの動きを安定させるためにはバラケの直下に適度なスペースが必要と判断。わずか1ボウルでバラケの変更を決断し、バラケに寄って来たへら鮒を確実にくわせエサへ誘導するために「粒戦」のポテンシャルを最大限生かすべく「ふぶき」を活用。【詳細はキモ:其のⅡ参照】この時点でセッティングはほぼ煮詰まり、バラケも決まったことから理想とするウキの動きが頻繁にでるようになる。以降は低刺激性の「つぶき」を状況に応じてラフ付けし、適度に刺激しながらへら鮒の寄りをキープしつつ、ヒットゾーンに見立てたスペース維持に努めた。

カッツケ釣りは動作のスピード感も大切だが、それ以上にアングラーのやったことが即座に結果として現われるので、思ったことは迷わずすぐに行動に移すことが肝心だと河村は言う。活性が高い時季の釣りなら、なおさらのこと早めの対処が必要で、手をこまねいていてはすぐに状況が変わってしまうことは火を見るよりも明らかだ。もし結果が悪ければ、それは求めているものではないというへら鮒からの答えなので、すぐに別の対策を施す習慣を身につけておくことが重要だ!

河村流 カッツケウドンセット釣りのキモ その二:砕ける「粒戦」と持たせる「ふぶき」 ふたつの相乗効果が「つぶき」の真髄!

標準的な時合いであれば河村が普段使い慣れているという「GTS」ベースのバラケで十分対応できたであろう。ところが今回のようにハシャぐ割には食ってこない(河村の分析では寄るには寄るが、肝心の食うへら鮒がタナに入ってこない)状態では、アングラーのバラケ調整&エサ付けテクニックだけでカバーしきれないこともある。いかに端境期とはいえ、こうした難しい時合いになること自体、河村自身はもちろんこと記者を含めたスタッフ誰ひとり想像した者は居なかったに違いない。しかしそうした状況下にあって、個々のエサの特性を生かすだけではなく組み合わせの妙というべきか、お互いの相乗効果によって狙いどおりの展開に持ち込んだ河村の選球眼には唯々脱帽するしかない。

「水中ではわずかな差かもしれませんが、上バリのバラケから降り注ぐ粒子の量や速度の違いによっては、寄って来たへら鮒を下バリのくわせエサに上手く誘導できたりできなかったり、その正否が決まることが少なくありません。特に今日のように水面直下には寄るだけ寄って肝心のくわせエサになかなか誘導できないときには、粗めの麩が多く含まれた『GTS』で過剰に刺激するよりも、微粒子系の『ふぶき』のような低刺激性の麩材を軸に、さらに不足する誘導力に関しては『粒戦』を増量することで期待できるクラッシュ効果により、『ふぶき』で持たせて『粒戦』で開かせる方がタナは安定し、イメージどおりの理想的なウキの動きに持ち込めるのです。」

奇しくも河村自身が普段使い慣れたバラケよりも好結果を残した今回の実釣取材。決してこれは偶然によるものではなく、麩材個々の特性を熟知したうえで機能性と相性を鑑み、さらにはそれらが生みだす相乗効果を予測できなければ得られなかった結果だといえるだろう。今回の釣りの決め手となったのは紛れもなく「粒戦」と「ふぶき」であり、それぞれを絶妙のバランス(配合比率)で組み合わせたことに加え、より一体感を増すというバラケの作り方にも注目しなければなるまい。「粒戦」はその類い希なる集魚力&誘導力とは常に背中合わせの、いわば〝じゃじゃ馬的〟な扱い難さがネックになることもしばしばある。その舵取りを「ふぶき」の優しくも強固なホールド力&包容力に委ね、無駄にバラケさせることなく狙いのタナまで送り込むことで、花火の如く爆発的な開きと誘引力を引きだしたことが秀逸であった。

河村流 カッツケウドンセット釣りのキモ その三:動き続けるウキに現われる一瞬の〝間〟が誘う理想の食いアタリ!

この日の不安定なへら鮒の動きは、単に両ダンゴからウドン系固形物のセット釣りに移行する端境期という要因以外に、陽が差したり曇ったり、雨が降ったり止んだり、風によってさざ波立ったりベタ凪になったりという天候の変化がもたらしたものだろう。そのため目まぐるしく変わる時合いにウキの動きはもちろんのこと、肝心要の食いアタリも途中で大きな変化が生じた。

「この釣りにおける自分が理想とする食いアタリは揉まれながらもバラケがタナに入り、ナジミきったウキが間髪入れずアオリによって戻した直後、一瞬静止するような〝間〟に連動してズバッと入るパターンです。自分は単に釣れれば良いというわけではなく、ウキが立ち上がった瞬間から続くこの理想的なウキの動きで釣ることを目指しています。なぜならこれが最も安定的に釣れるからに他なりません。しかし今日の序盤戦ではどうしてもハシャぐへら鮒の動きをコントロールしきれませんでした。こうした状況はしばしば起こりますが、こうした場合は不規則かつ激しいウキの動きのなかから、比較的強く入るアタリをメインにアワせながら凌ぐよりほかにありません。それでも諦めずにバラケもタックルセッティングもできる限りズレなく合わせる様に心がけたところ、次第にウキの動きが安定しイメージどおり理想的なアタリに近づきました。」

河村の言うとおり、この日最も安定して釣れたときには時間当たり20枚を超え、そのヒットパターンも全投ほぼ似たような動きでのヒットが続いた。このとき彼からこれが理想のアタリだと解説をしてもらったが、記者でも分かるような一瞬の静止時間がウキに現われており、こうした動きは序盤戦にはほとんど見られなかった動きである。もっとも不安定な序盤戦とはいえ、この時間帯でも15枚前後は釣れていたので決して悪い釣況ではなかったのだが、特筆すべきは安定したウキの動きで食ってくるへら鮒の型だろう。総じて良型が多く、中小型のへら鮒であってもコンディション抜群のヒレピン元気べらばかりであったことが印象的であった。

記者の目:接近バラケ「ふぶき」の新たな可能性を引きだした絶妙バラケ

今年1月の発売以来、好評を博している新エサ「ふぶき」。従来品にはなかった超微粒子によってへら鮒をエサの近くへと引き寄せ、サスペンドしている時間を長く維持させる効果でより多くのアタリが期待できると、多数のアングラーから賞賛の声が伝わってきている。そこへ今回の河村の新たなバラケ使いだ。分量的には間違いなく主役なのだが、あえて「粒戦」をタナに送り届けるための脇役に据えることで、「粒戦」が持つくわせエサへの誘引力を爆発的に高める効果に寄与しているところに記者は注目した。イメージとしては「ふぶき」の滞留する微粒子でへら鮒をタナ付近に足留めしておき、そのなかからハイレンスポンスの食い気旺盛なへら鮒だけを、砕けたバラケから降り注ぐ「粒戦」で直下に位置するくわせエサに強力に引き寄せる。これこそが「ふぶき」の新たに明らかになったポテンシャルであり、初釣り場での実釣に怯むことなく臨んでくれた河村大輔のお手柄であろう。この取材を通してさらなる「ふぶき」の可能性を感じたわけだが、「ふぶき」にはまだまだ奥深い秘めた力がありそうだ。そしてさらなるポテンシャルを引きだすのは読者諸兄、貴方かも知れない!