稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第150回 「河村大輔のカッツケウドンセット釣り」
秋は両ダンゴの釣りとセット釣りの端境期。昨日は両ダンゴでバクバク釣れたのに今日はカラツンをだすことすら難しいといったように、好不調の波が猫の目のようにクルクルと入れ替わる釣り難しい季節である。そんな難時合い下の取材に白羽の矢を立てたのは、浅ダナマイスターとして自他共に認めるマルキユーフィールドテスター河村大輔。なかでも水面直下のへら鮒をターゲットとするカッツケ釣りを得意とする河村を誘い訪れたのは、千葉県野田市関宿にある老舗管理釣り場の弥五郎沼。2面ある池のうち2号池(小池)のタナ規定がなくなり、カッツケ釣りが解禁になったことを受けての釣行だが、同池は「釣技最前線」初登場の釣り場であることに加え、アングラーの河村大輔本人も初登場。しかも彼自身初釣行の釣り場という初物尽くしの今回の実釣取材。初手こそ端境期特有の不安定な時合いに加え、降っては止むを繰り返す秋雨による釣り難しい釣況に翻弄されていた河村であったが、多彩な引きだしから「粒戦」と「ふぶき」がブレンドされた「つぶき」(注:記者の造語である)を繰りだすと、水面直下の気難しい弥五郎べらを完全掌握してのけた。
わずかなズレも命取り。バラケをしっかり持たせてパターン化したアタリを演出!
勝手の分からぬ初めての釣り場で、しかも「釣技最前線」初取材にも関わらず淡々と釣り支度を進める河村に、まずはこの時季のカッツケ釣りのキモについて訊ねてみた。
「総論としては水面直下の狭いレンジの釣りですが、しっかりバラケを持たせて狙いのタナに食い気のあるへら鮒を寄せきることが肝心です。それはタナ1mの釣りより狭い分難しく、それだけにできたときとできないときの釣果に大きな差が開いてしまう怖さがあります。今回は時季的に直結式ハリスカッツケでのイケイケの釣りではなく、折り返しのタナを基準とし、状況をみてタナを変えながらベストの釣りを目指したいと思います。基本的に自分のスタイルは大人しいウキの動きといいますか、できるだけ無駄なウキの動きをださずに分かりやすいアタリで釣ることを心がけています。そのためにはタックルセッティングはもちろんのこと、エサ付けまで含めたバラケのタッチや釣りのリズムに至るまで、わずかなズレも許さない完璧なトータルバランスが求められますので、プレッシャーはありますができるだけ自然体で臨みたいと思います。」
未知の釣り場だけにできるだけニュートラルな状態で臨むことを心がけたいという河村。バラケは常日頃自身が使い慣れた「GTS」ベースのブレンドとし、ウキ止めからオモリまで20cm弱の折り返しのタナで午前7時にスタートフィッシング。古くからある自然の沼を利用した釣り場だけに雑魚も多く、エサ打ち開始直後からウキの動きはみられたが、へら鮒らしきメリハリのある動きが現われるまではナジミ / 切りのハイテンポな打ち返しが続く。開始10分後変わらぬ展開に「思ったよりも動きが少ないので……」と言うと、5cmほどタナを深くした河村。その2投後にトップ先端まで深くナジミきったトップが返した直後、チクッとアタリがでて8寸級がヒット。そして次投も同様のアタリで連チャンを決めると「いきなり寄って来てウキがナジミ難くなったので……」と言い、タナを元の折り返しに戻して追釣。さらに「明らかにハリスが長過ぎて無駄な動き(カラツンを含め)が多いから……」と下ハリスを一気に5cm詰めて20cmに。普段であれば2~3cmずつの調整がセオリーだというが、これは予想外にへら鮒の寄りと動きが激しいことからの対応とのこと。ここまで既にさまざまな策を講じてきた河村だが、あくまでこれは完璧な釣りを目指すためのプロローグに過ぎなかった。詳細については後述するが、わずか1時間ほどでセッティングを煮詰めると、ここまでのバラケに限界を感じていたためブレンド変更を敢行。すると河村が理想と称する「ナジんで、戻して、スパッ!」という無駄のないウキの動きからのパーフェクトなアタリで連チャンモードに突入。見事に初見参の弥五郎べらを攻略して魅せた。
取材時使用タックル
●サオ
シマノ「普天元 独歩」7尺
●ミチイト
東レ「将鱗へら TYPEⅡ道糸」0.8号
●ハリス
上=東レ「将鱗へら TYPEⅡハリス」0.5号-8cm→6cm、
下=東レ「将鱗へら スーパープロプラスハリス」0.4号-15cm~25cm
●ハリ
上=オーナーばり「バラサ」5号、下=オーナーばり「クワセ」4号
●ウキ
達明「オリジナル細パイプ」#4【カヤボディ4cm/オモリ負荷量≒0.37g】※エサ落ち目盛り=全7目盛り中3目盛りだし(後に4目だし)
取材時使用エサ
●バラケエサ(当日の決まりブレンドパターン)
「粒戦」100cc+水150cc+「ふぶき」200cc+「セット専用バラケ」100cc
「粒戦」と水を入れたあと吸水時間を待つことなくすぐに2種の麩材を投入。五指を熊手状にして30回程かき混ぜ、全体に水がゆきわたったら5分程度放置して吸水を待つ。全体に締まりを感じたらダマをほぐして完成。従来のように「粒戦」に完全吸水させる前に麩材を入れる狙いは、仕上がり時の一体感を増すためであり、ダンゴタッチのバラケを駆使する河村らしい個性的な手法である。
●くわせエサ
「感嘆」10cc+水13cc
200ccカップに計量した水13ccを入れておき、そこへ「感嘆」10ccを入れて人差し指でかき混ぜ、特に練り込むことなくある程度均一に固まったところでポンプに詰めて使用。特徴としては比較的やわらかめなのでアルミ製ポンプは不要で、かつて主流であった樹脂製ポンプで楽に押しだせるタッチに仕上げるのがポイント。ちなみに河村は初めて訪れた弥五郎沼の濁り気味の水色を見て「『さなぎ粉』で茶色くなった『さなぎ感嘆』よりも白色が目立つノーマルの『感嘆』の方が良い」と断言し、さらにへら鮒以外の雑魚の存在が分かると白色の「感嘆」の優位性に確信を抱いて実釣に臨んでいた。