稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第147回 「加藤晶裕の勝てる超速攻浅ダナ両ダンゴ釣り(野釣りVer.)」|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第147回 「加藤晶裕の勝てる超速攻浅ダナ両ダンゴ釣り(野釣りVer.)」

加藤流 超速攻浅ダナ両ダンゴ釣りのキモ その一:ウキの立ち上がり直後に意図的にウケさせ、ナジミ際の早いタイミングで仕留める

例会で勝つためには何より数を釣ることが欠かせない。一般的に浅ダナで釣れるへら鮒の型は深宙を攻めるチョーチン釣りのそれに劣るといわれるが、釣り場によっては必ずしも当てはまらないと加藤は言う。実際に三名湖では表層近くにも良型が多く、数に加えて型も期待できるとなれば狙わぬ手はない。これこそが加藤が浅ダナを狙う真の理由なのだが、浅ダナにいるだけで釣ることができなければ画餅に帰すことになる。数を釣るためにはヒット率はもちろんのこと、エサ打ちの回転数やアタリをだす(取る)タイミングも重要な要素となる。なかでもアタリをだすタイミングにこだわりを持つ加藤は、あらゆる手を尽くしそれを果たそうとして努力を惜しまない。

「自分が目指している理想的な早いアタリをだすためには、それを可能にするウキの存在が欠かせません。私が愛用している『忠相T-APEX VS(ティーアペックス ヴァーサス)』はウキの立ち上がり直後にウケがでやすい構造になっているので、エサさえ間違えなければ必然的にナジミ際に食いアタリがでるようになります。もちろん毎投ウケるわけではありませんが、ウケが現われたらすぐにアワセの態勢がとれるので遅れをとる心配はありません。さらにナジんだ後にもヒットチャンスが残されていますので、そこまで持つエサに仕上げることも重要なキモだといえるでしょう。」

この釣りに最適と思われる「忠相T-APEX VS(ティーアペックス ヴァーサス)」で何とか理想的と思われるウキの動きをみせてくれた加藤だが、やがてこの日のへら鮒のコンディション不良を確信した彼はとりあえずアタリをだすことが先決と判断し、途中でウキを2度交換してその目的を果たしてくれた。まずはウケがでない状況には、浅ダナ両ダンゴの釣りの基本スペックを備えた「忠相 TOURSPEC Arrow G(ツアースペック アロウ ジー)」へと、さらにいかに手を尽くしても早いアタリがでにくい状況には、完全ナジませ釣りに特化した「忠相T-APEX DD(ティーアペックス ディーディー)」へと、へら鮒の状態に合わせてウキを交換。辛うじてアタリを維持したテクニックはいぶし銀の輝きを放っていた。また稀な食い渋りに見舞われたため数多くのアタリはだせなかったが、それでも朝時合いの一時にスタート時に使用していた前述の「加藤推奨ブレンドパターン」で、わずかな時間ながらも理想的なアタリで釣れ続いたときもあり、ウキの性能に加えてエサの重要性も確認することができた。なお動画に収められたアタリのなかには「アレでアワせるの?」と思えるような動きもあるが、この釣りに慣れた加藤だからこそ手を出せる食いアタリであることを付け加えておきたい。

「基本といわれるツンやズバッと強く入るアタリだけを狙っていたのでは、決してたくさん釣ることはできません。特に早いタイミングの食いアタリはハリスがまだ弛んだ状態であるため、強く明確なアタリとしてウキに伝わらないことがあることを理解しておくことが必要です。当然ながら小さく押さえたり返したりといった微妙な動きの最中に食いアタリがでているので、慣れないうちはそうした動きに繰り返し聞きアワセをしてみて、どれが真の食いアタリなのかを見極めることが肝心です。」

もちろん加藤はその豊富な経験値から真の食いアタリを識別しているわけだが、記者が見たアタリの中にも「?」と思うような動きで見事に食わせるシーンがあったことが印象的であった。

加藤流 超速攻浅ダナ両ダンゴ釣りのキモ その二:へら鮒に警戒心を抱かせずにアタリを持続させる竿の長さ(フラシの存在を考慮)

話は前後するが、タックルにおいて竿の長さにも重要な意味が含まれていることを伝えておかねばなるまい。一般的に盛期の管理釣り場における浅ダナ両ダンゴ釣りの場合、使用する竿は規定最短尺で十分勝負になるが、野釣りにおけるボート釣りの場合、釣ったへら鮒をストックしておくフラシが目の前にぶら下がることで、投餌点までの距離があまりに近いと他のへら鮒が警戒して近寄らなくなるリスクがあるという。

「こうしたケースは結構あるようなので、自分は中尺竿を使うことで若干沖めを狙うようにしています。また表層のへら鮒はハリ掛かりした瞬間一気に沖走りすることが多く、ハリス切れを起こすことも少なくありません。それに対して余裕をもって堪え、確実に取り込むためにも若干長めの竿はこの釣りに欠かせないアイテムなのです。」

管理釣り場で盛期に中尺竿で浅ダナを狙うのはペレ宙釣りか、もしくはシーズン最初の新べら狙いの釣りくらいで、慣れていないと馴染みにくい印象は否めない。しかしこれも〝野釣りあるある〟として頭の隅に留めておきたいテクニックのひとつだ。

加藤流 超速攻浅ダナ両ダンゴ釣りのキモ その三:ストレスフリーで釣り込むためのタナ合わせ

この日実釣をスタートしたときのタナはウキ下約80cm。これは加藤の経験値から導きだされたものであり、事前情報で釣況が思わしくないことに加え、できるだけ早くアタリをだして取材の進行に支障をきたさないようにという彼なりの配慮も含まれていたようだ。ちなみにこの釣りの最盛期(8~10月)であればもっと浅いタナから始めてもすぐにアタリはでると言い、タナに関してはスタート時の設定はそれほど重要ではないとも付け加えた。

「肝心なことは釣りながらベストのタナを探り当てることであり、ウワズったらウワズったなりにタナを浅くし、タナが下がったら下がったなりに深くして、アングラー自身がストレスを感じることなく釣れ続くことが、結果として高釣果に結びつくキモだと思います。そうしたなかでも折り返しのタナで長く釣れるときがベストの時合いで、ウキが立った直後にアタリがで高ヒット率で釣れ続く状況がこの釣りの醍醐味だといえるでしょう。」

加藤はこの日、記者がカウントできないほど幾度となくタナ調整を繰り返した。それほど時合いが不安定で釣り難しかったという証であるが、やればやっただけの効果が得られたことも事実であり、彼自身のさらなる引きだし増につながったことであろう。

加藤流 超速攻浅ダナ両ダンゴ釣りのキモ その四:アタリのでるタイミングを早め、さらに集魚力を高めるエサ付け

エサのタッチに関しては、この日は練ったものに対する反応が極端に悪かったためエサ幅が狭く苦労させられたが、通常のへら鮒の状態であれば先に参考資料として記した「加藤推奨ブレンドパターン」を基エサとし、手水と押し練りを加えて得られるヤワネバタッチで決まることが多いという。ただし、特徴的だったのがサイズと形状を含めたエサ付け方法だ。

「野釣りなので浅ダナの釣りにしては大きめであり、へら鮒を寄せ続けるためにややラフ付けを心がけていますが、実は肝心なことがもうひとつあって、エサを摘まんでハリに付けるまでにできるだけいじらないようにしているのです。この釣りで大事なことはへら鮒を水面直下にキープし続けることであり、そのためにはへら鮒のエサへの反応(興味の度合い)をできるだけ長く強く維持させ続けることが肝心です。私自身はどちらかといえばたくさん手を加えることでエサ合わせをするタイプなのですが、タッチこそヤワネバであっても麩が立った(生きた)状態で使いきるために、ボウルの中のエサを摘まみ取った後で過剰にエサを揉んだりしないよう、またできるだけ指先でクルクルと転がすことをしないように心がけています。」

アタリが極端にでにくいときや、たとえでたとしてもアタリが遅いとついエサを摘まんだままいじり続けてしまうが、これが無意識のうちにエサをダメなタッチにしてしまう元凶であり、アタリを喪失させてしまう主たる要因だと加藤は厳に戒める。また野釣りならではの問題点として、アタリを維持するために一定以上の集魚量を保つことが求められるが、この点に関してもエサの取り扱い方次第でバラケ性は担保されクリアーできる問題だと加藤は断言する。

加藤流 超速攻浅ダナ両ダンゴ釣りのキモ その五:ハリスワークはこまめに、タックルチェンジは思い立ったら即実行!

前述のタナ調整同様、ハリスワークに関しても調整を数え切れないくらい頻繁に行った加藤。短いサイクルでは5投程度で見切りをつけて、次から次へとアタリが続く最適な長さ・段差を探るべくハリス交換を繰り返した。

「悪いとは聞いていたのですが、正直ここまで食いが渋いとは想像していませんでした(苦笑)。ハリスの長さに関しては特別長くも短くもありませんが、アタリが続き、それが早いタイミングで持続する長さを探り当てることを心がけています。またカラツンに関してはあまり気にしないようにしています。肝心なことは毎投アタリがでて、たとえヒットしなくてもアワセでフィニッシュすることであり、これさえできていればカラツンはそれほど気にしなくてもやがて収まることが多いように感じます。」

この言葉が証明するように、カラツンに悩まされたのは最後の最後に竿を振るのが加藤ひとりになったときのこと。それまでエサ打ちポイントに寄せきれなかったへら鮒が投餌点に集結すると、食い気に乏しいへら鮒の口数ばかりが増えてウキが不規則に動き始め、アワセてもアワセても竿は空を切るばかりでカウントは一向に進まない。やがて使っていたエサが無くなってしまったところで、先にアタリがでずに一旦使うことを止めていたエサを再び使い始めると、それまでのカラツンが嘘のように、アタリはおろか大量に寄っていたへら鮒の姿が水面直下からひとつ残らず見えなくなってしまったのである。それほどへら鮒の状態が良くなかったことの証であろうが、まるでこの日の釣りにとどめを刺すような光景を目の当たりにした加藤は、ようやくここで竿を納めた。

記者の目【勝負師ならではの着眼点で釣り場の変化を見抜き、見事結果に結びつけた先駆者】

新たな釣り方や攻略法はやった者勝ちというか、早くやればやるほどその恩恵を大きく長く享受することができるのがへら鮒釣り。新たな釣法で大勢のアングラーに繰り返し攻められれば自ずとそれに慣れてしまい、やがて見切られてしまうとその威力は半減してしまう。こうしたことは多くのへらアングラーの知るところだが、実際に新たな釣り方の先駆者となるためには卓越した釣技に加え、そこここに散りばめられたヒントやチャンスを生かすための着眼点が必要不可欠だ。加藤はまさに野釣り例会師としての勝負魂と着眼点により、見事これを結実させたまさに野釣りの浅ダナ攻略法の先駆者といえよう。最後に予期せぬへら鮒のコンディション不良とはいえ、幾度となく食い渋りによるアタリの喪失に見舞われても決して諦めることなく最後の1投まで粘り強く真摯に取材に臨んでくれた加藤に感謝すると共に、これからのさらなる精進と益々の活躍を期待したい。