稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第146回 「吉田康雄のチョーチンヒゲトロセット釣り」|へら鮒天国

管理釣り場・野釣り場の、最新釣果情報が満載!「へら鮒天国」

稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第146回 「吉田康雄のチョーチンヒゲトロセット釣り」

吉田流チョーチンヒゲトロセット釣りのキモ その一:ヒゲトロセット釣りのバラケに欠かせない機能が「ふぶき」に集約!

まずはチョーチンヒゲトロセット釣りの基本的な組み立て方について吉田に訊ねると、

「タナの浅い深いにかかわらず、ヒゲトロセット釣りではバラケが上バリから抜けたらアタリはほぼ期待できないので、バラケをタナまでしっかり持たせることが大前提となります。そのうえで私はエサを上層から追わせながら、ナジミ際からナジミきるまでのエサが動いている間に食わせるイメージで臨んでいますね。感覚的には短バリスのチョーチン両ダンゴ釣りのようなイメージです。そのためアタリは早く、大半がズバ消し込みの豪快な食いアタリが続きます。」

へら鮒のコンディションがよければ吉田が理想とするウキの動きで大型べらが連続して釣れるシーンをたくさんお見せすることができたのだが、残念ながら今回は好時合い下での理想的なウキの動きは少しだけに留めざるを得なくなってしまった。しかし、そのプロセスは十分理解しやすく吉田に語ってもらっているので、ぜひ動画で確かめていただきたい。

「盛期の釣りにおいてヒゲトロセット釣りは私自身マストではないもの、絶対に欠かすことができない釣り方です。なぜならへら鮒の食いが良いときはもちろんのこと、悪いときでも両ダンゴに代わる釣り方として最優先に挙げられる釣り方ですし、昨年のトーナメントシーンにおいても要所要所で決め手となる釣果がでているからです。こうしたことから今後も必要不可欠な釣り方であることは認識しており、トーナメントで勝つために今まさに自身の釣りをブラッシュアップしている最中なのですが、そのキモとなるのが『ふぶき』ブレンドのバラケなのです。どちらかといえば私の釣りはバラケをいじって合わせるタイプで、そうした自分の釣りに『ふぶき』のまとまり感と、どんなに手を加えてもバラける特性がプラスに働いていることは大きなアドバンテージとなります。そして、なにより盛期の釣りの接近戦を制するためのダンゴタッチに仕上がり、さらに誘導力にも優れる微粒子系なので、この釣りには欠くことができないものとなっていますね。」

なお、今回吉田には時合いに応じて異なるブレンドパターンを紹介してもらっているので、「エサ作り編」の動画もぜひご覧いただきたい。

吉田流チョーチンヒゲトロセット釣りのキモ その二:時合いに応じて攻めと守りのアプローチを明確に使い分ける

へら鮒が活発にエサを追う好時合い下では攻めの釣りが有効であり、エサへの興味が乏しくなる難時合い下では守りの釣りが優位に働くことは想像に難くない。大切なことはそうしたへら鮒の状態の変化にいち早く気づくことであり、さらに気づいたら速やかにアプローチの方向転換に取りかかる行動力が勝負を左右することになる。

「時合いの変化を察知することはウキの動きを見れば一目瞭然ですが、自らが考え得る対策を施したうえで効果無しと判断したときは、速やかにアプローチを切り替えることが肝心です。それは時合いが悪いときばかりではなく、突然食いが良くなりアタリが激増したときも同様で、これに追従できなければたとえ好時合い下であっても釣り難さを感じるばかりでうまく釣ることができません。今回は完璧な好時合い下での釣りはご覧に入れることができませんでしたが、難時合い下での釣りと比較する形でそのアプローチをまとめると概ね以下の通りとなります。」

好時合い下における両ダンゴ感覚の攻めのアプローチ

●ダンゴ(麩系バラケエサ)に興味を示し食いたがっているへら鮒に対し、時合いに適したダンゴタッチのバラケを「ふぶき」ブレンドで構成する
●へら鮒を惹きつける食い頃のエサをタナまで持たせるために、ロングタイプのグラスムクトップウキはマストアイテム
●やわらかめのタッチのバラケが持たないときは、ハリをサイズアップして持たせる
●両ダンゴ釣りのようにナジミ際から意図的に触らせ、ナジミきった直後のアタリをメインとしつつも、エサが動いている間のアタリも積極的にアワせる
●カラツンはあまり気にしないが、どうしても収まらないときは上ハリスを2cm単位で伸ばして積極的にバラケを食わせることも有効

難時合い下における待って仕留める守りのアプローチ

●難時合い下ではへら鮒のエサへの興味が乏しくレスポンスも鈍いため、落下中の動くエサよりもタナでジワジワとゆっくり開くバラケを「ふぶき」で構成する
●集魚性とヒットチャンス(待ち時間)を増すために、大きなバラケを支える浮力を持つパイプトップウキがマストアイテム
●「ふぶき」の特性を最大限生かすため、難時合い下ではできるだけバラケに手を加えないようにして使いきるのがコツ。そのため乾燥を防ぐ「エサボウルケース」の使用を推奨
●動きを止めたバラケの直下に位置するとろろに麩の粒子を降り注がせ、徐々に近づくへら鮒に誤飲させる
●アタリがでにくいときは短バリスにこだわらない(当日は最短20cm~最長35cm)

吉田流チョーチンヒゲトロセット釣りのキモ その三:難時合い下の釣りは新たな釣技を生み、引きだしを増やすチャンス!?

難しい取材になることはある程度想定していたとはいえ、これほどまでに難しい釣りになろうとは吉田自身予想だにしていなかったに違いない。しかし途中で諦めることなく最後まで真摯に難時合いと向き合い、あらゆる手を尽くして椎の木湖の巨べらに挑んでくれた結果、新たな釣技が生まれる可能性が見えてきたと最後までポジティブな姿勢を貫く吉田。

「意外だと思われるかもしれませんが、新しい釣技やここぞというときに役立つテクニックはトーナメントの最中など、どちらかといえば心身共に追い詰められた状況下で生みだされることが多いものです。今回も予想をはるかに上まわる難時合いに手こずり、残念ながら自分が理想とするチョーチンヒゲトロセット釣りをお見せすることは叶いませんでしたが、その代わりに難時合い下でも『ふぶき』が機能するバラケのブレンドやタックルセッティングなど、新たな発見があったことは自分自身の引きだしにもなりますし、多くのへらアングラーの皆さんに参考になったことと自負しています。これからも難しいオーダーには積極的に応えて参りますので、ご要望があれば何なりと仰せつけください(笑)。」

この日吉田が繰りだした対策は一体どれくらいあっただろうか。釣るための準備は既に数日前のプラクティスから始まっていたわけだが、その結果を踏まえやや深めのタナの方がアタリだしは早いという傾向から11尺一杯のタナからスタート。確かに記者が想像していたよりもアタリだし、釣れだし共に早かった一方で、意外に早くバラケの持ちが悪くなった時点で、「もっと早く短い竿に切り替えるべきだった」と反省しきり。さらにウキの選択やハリスワークといったタックル調整に加え、バラケからくわせエサのとろろに至るまで、エサの調整においてやれるべきことはすべてやり尽くしたと言いながらも、この日の釣りを振り返りながら「あのときこうしていればどうだっただろう?もっと早くアプローチを変えれば良かった!」と達成感に浸るよりも反省することを優先し、振り返りを怠らない姿こそが吉田康雄の強みに他ならない。本人曰く「諦めが悪いだけです(苦笑)。」と謙遜するが、こうした姿勢が新たな釣技を生み、今なおトーナメントの第一線で活躍し続ける原動力であることは間違いない。

「釣技向上のためには、思いついたことは何でもやってみることが必要です。へら鮒釣りではトライ&エラーを繰り返すことでしか得られないものが多いので、たとえ1度や2度で良い結果が得られなくても続けることで結果が徐々に表れることもありますし、単なる思いつきでやったことがすぐに良い結果に結びつくことも少なくありません。ダメならやめて、ほかのことを試せばいいだけのこと。ある意味やったモノ勝ちなので、チャレンジ精神は決して忘れないでください。」

記者の目 復活間近!?「ふぶき」で間を詰めるチョーチンヒゲトロセット釣り

かつては爆発的人気を誇った盛期のヒゲトロセット釣り。取り分け短竿チョーチンヒゲトロセット釣りはトーナメントシーンでの実績も目覚ましく、また両ダンゴの釣りよりも比較的エサ合わせが容易であることから、多くのへらアングラーに広く親しまれていた。ところが近年釣り場状況の変化に伴い、以前ほどの容易性や優位性が感じられなくなり、その座をウドンセット釣りに取って代わられた感があるが、今回、難しい時合いであることを承知のうえで果敢に取材に臨んでくれた吉田の釣りを目の当たりにして、夏の接近戦に有利とされる「ふぶき」を自在に操ることで、再びヒゲトロセット釣りが釣り場を席巻する日が来る可能性を感じることができた。へら鮒との間合いを詰めることで成立するヒゲトロセット釣りだが、その機能をあますことなく発揮する「ふぶき」は距離感の難しさを軽減し、接近戦のイニシアチブをアングラーにもたらしてくれる。吉田はその可能性を「ふぶき」に託し、日々精進を怠らない。陽の当たる大舞台で光り輝くトップアングラーほど、見えないところでたくさんもがき苦しんでいる。今回の「釣技最前線」、吉田が懸命に挑んだリアルな釣りは大いに参考になるに違いない。