稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第145回 「萩野孝之のマッシュ系両ダンゴ釣り」|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第145回 「萩野孝之のマッシュ系両ダンゴ釣り」

今年も本格的なシーズンを迎えたダム湖の野べら釣り。エサ使いはもちろん今も昔も変わらぬマッシュ系両ダンゴ。今なお根強い人気を誇るダム湖の釣りも、昨今はお手軽に楽しめる管理釣り場の釣りに押されやや人気薄の感は否めないが、へらアングラーの間ではひとつの目標でもある〝尺半〟を超える巨べらを釣るためには決して避けては通れない道でもある。しかし野べらの大型を仕留めることは決して容易ではなく、その装備や釣行のタイミングをはじめとした諸々の難易度の高さゆえに、上級者といえども二の足を踏むアングラーが少なくない。そこで今回の「釣技最前線」では管理釣り場並みにお手軽に楽しめるダム湖の釣りを紹介するべく、マルキユーインストラクター萩野孝之を誘い千葉県君津市にある巨べらの聖地、亀山湖を訪れた。同湖でのへら鮒釣りはボート釣りがメインだが、今回は気軽に楽しめるマッシュ系両ダンゴ釣りと銘打って、「亀山湖ボートハウス松下」の桟橋に常設されたへら鮒釣り専用ボートに乗っての桟橋釣りをチョイス。ようやく明るくなりはじめた桟橋に記者が降り立つと既に同胞の姿がチラホラ。桟橋周辺にはひと目で良型と分かるモジリがそこかしこに見られ、へら鮒の活性の高さと魚影の濃さにいやがうえにも釣り心を掻き立てられるが、そこは難攻不落と称される亀山湖。果たして萩野は狙いどおりにサクッと巨べらを仕留められるだろうか?

野べらの嗜好にマッチしたマッシュはダム湖の釣りのマストアイテム!

取材はゴールデンウィークまっただなかの4月末。混雑を予想し、早めに集合したスタッフ一行であったが、へら鮒を狙うアングラーは先釣者を含めて数名と少なく、この状況を喜ぶべきか憂うべきかと思慮しているうちに萩野が到着した。まずはマッシュ特有のリアルなウキの動きを見ていただくべく、彼の提案で桟橋際狙いの釣りでスタート。カメラのすぐ前にウキが立つという今までの取材ではあり得なかったシチュエーションに戸惑いながらも、本格的に釣れ始まる前に早速マッシュ系両ダンゴ釣りについて、そのシステムやメリット・デメリットについて解説してもらおう。

「ダム湖などの野釣り場でマッシュ系ダンゴエサを使う理由はおもに2つあり、1つは集魚材を含まないエサでへら鮒以外の雑魚を寄り難くすること、もう1つはいわゆる尺半を超えるクラスの野べらが常食していると考えられる、植物系プランクトンの大きさにマッシュの微粒子が極めて似ていること、つまりターゲットである野べらの嗜好に合わせるためのエサ使いです。もちろん麩系ダンゴエサでも釣れるのですが、より大型のへら鮒が釣れる確率を高めるためには、今も昔もマッシュ系ダンゴエサが有効であることに変わりはありません。もっとも50cmクラスの巨べらのみを狙うのであれば昔ながらのコテコテのマッシュベースの大エサで、数は釣れなくても型だけは揃うという狙い方がセオリーですが、今回私が紹介する釣り方は数を釣りながら型も期待できるという欲張りなアプローチであり、しかも遠くまでボートを漕ぐことなく手軽に桟橋で野べら釣りが楽しめるという、初中級者でも気軽にチャレンジできるところを見ていただきたいと思っています。」

そうこうしているうちに早くも萩野のウキには微かな魚信が…。スタート直後のタナはウキ下約1.2mと、ダム湖の釣りとしてはかなり浅めのタナ設定である。どうやら釣果情報によるとへら鮒は1~2mのタナに居着いており、アタリが少ないからとタナを深く取るとコイやマブナが多くなるらしく、こうした情報を既に入手していた戦略であろう。やがてへら鮒らしき強いアタリがでるようになったもののスレや空振りが目立ち、ボウル1杯のエサを打ちきってもまだ釣果には恵まれない萩野。2ボウル目に入るとエサのタッチをさらに幅広く探りながらタナを上下させたり、オモリを飛ばしたりと次々と策を講じるがいずれも効果なく、名手萩野をして八方塞がりの状態に陥ってしまった。

野釣りはポイント第一といわれるが、同じ桟橋の外向きを狙う先釣者が既に釣果を得ていることを萩野に伝えると、躊躇することなく場所移動を決意。先釣者に移動したい旨を伝え、ふたりの間に入れていただくことの承諾を得た萩野は手早く道具を移動先に移し替えリスタート。そして3投目のアタリで惜しくもバラしてしまったが、6投目に深ナジミしたトップが水中に突き刺さるアタリにアワせてファーストヒットを決めると、ようやく落ち着きを取り戻した。力強いアタリはその後も続いたが、しばらくはワタカが連続してハリ掛かり。それでもテンポ良くエサ打ちを繰り返していると再びナジミ際の消し込みアタリで42cm級の美べらがヒット。良型に気分を良くしてさらなるサイズアップに期待をしていると、数投後に同じくナジミ際に「ダッ、ダッ、ズドン」と水中に突き刺さるアタリが…。「これはちょっと型が良いんじゃない?」と身を乗りだし、浅ダナ特有の強烈な沖走りを両手で堪えながら幾度となく引いては伸され、伸されては引くを繰り返し、ようやく玉網に収めた巨べらは検寸の結果45.3cm。まさにタイトルどおりサクッと尺半超えをクリアーした萩野は、場所移動を快く受け入れてくれた先釣者からの労いと祝福の言葉に対しお礼を述べると同時に、「どうだ」といわんばかりの表情をカメラに向けながら、

「これが亀山湖のポテンシャルですよ!ようやく釣りらしくなってきましたから、これから数も型もさらなる上を目指しますよ(笑)。」

と、声高々に宣言。結果は後ほど紹介するとして、早速この日の釣りをクローズアップしてみよう。

使用タックル

●サオ
シマノ「飛天弓 頼刃またたき」8尺

●ミチイト
オーナーばり「ザイト へら道糸」2.0号

●ハリス
オーナーばり「ザイトSABAKIへらハリス」1.0号 上=40cm、下=60cm

●ハリ
上下=オーナーばり「サイト」15号

●ウキ
一志「ダム湖マッシュ用プロトタイプ浅ダナバージョン」
【ストレートPCムクトップ21cm/11.0mm径四枚合わせ羽根ボディ7cm/カーボン足5cm/オモリ負荷量≓2.8g/エサ落ち目盛り=全7目盛り中5目盛りだし】

取材時決まりエサブレンドパターン

「1:1粉末マッシュ」200cc+「マッシュダンゴ」200cc+「カルネバ」200cc+水500cc

ザッとかき混ぜ、全体に水をゆきわたらせたら放置して吸水を待つ

この日は手水でやわらかくする方向で決まったことから水量を500ccとあらかじめ多めにしたが、カタボソ系が良いときは水量を400ccとし、全体を掘り起こしてエアーを噛ませて使う。基本的には基エサに手水と押し練りを加えながらヤワネバタッチで釣り込んでいくが、調整が行き過ぎてエサの開きが悪くなり、へら鮒の反応が鈍くなったときは「藻べら」を適宜加えてバラケ性を蘇らせるのがマッシュ系ダンゴエサを扱ううえでのコツだという。

なお、エサ付けサイズは寄せ重視のボソエサタッチの場合、最大で縦3cm×横2cm。釣り込む際のヤワネバタッチで縦2cm×横1.5cm。マッシュ系両ダンゴエサは総じてヤワネバタッチが良いことが多いので、さらなる大エサが良いときはエサ持ちを考慮し、単なるエサ付けのサイズアップだけではなく、同時にハリのサイズアップを図ることも重要なポイントだという。