稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第142回 「内島康之の中尺チョーチンウドンセット釣り」
内島流 チョイ掛けバラケのチョーチンウドンセット釣りのキモ その一:食い気のあるへら鮒が居着くタナと使用する竿の長さのマッチング
今回の取材で改めて感じたことは、厳寒期にアタリをだそうと思ったら、何より動きがあり食い気のあるへら鮒がいるところにエサを送り込むことが重要であるということ。先にも述べたが昨シーズン内島がみせてくれた沖宙エリア狙いの釣りしかり、今回のミドルレンジ狙いの釣りもしかり。放流量の差こそあれ、現在の多くの管理釣り場においてへら鮒がいないポイントはないといっても過言ではないが、そうした魚影密度の濃い管理釣り場といえども、こと厳寒期に限っていえば、低いなりにもウキを動かすだけの活性と食い気を維持するへら鮒がいなければ、決してまともな釣りをさせてはもらえない。当然ながらそんな稀少なへら鮒がいるところ(レンジ)は極めて限られる。短過ぎてもダメ、長過ぎてももちろんNGだ。
「今回は今シーズンの釣り場の傾向と直近の釣れているタナを参考にして攻めるタナ(竿の長さ)を決めましたが、ウキの動きを見る限り概ね合っていたようですね。もし1時間以上エサ打ちを繰り返しても変化がない場合は竿を長くするのがセオリーです。目安としては1~2尺。水深が深く使用竿の長さ制限がない釣り場ではさらに深い(長い)方が良いこともあります。」
逆に短い方が良いときはウキのナジミ際のサワリが極端に多いときや、バラケをタナまで持たせることが難しいとき。これから動きの良いへら鮒が居着くタナは徐々に上昇傾向に転じるが、そうした状況下においてもなお的確にタナ(竿の長さ)を合わせて好釣りを楽しんでいただきたい。
内島流 チョイ掛けバラケのチョーチンウドンセット釣りのキモ その二:深いタナでも「ふぶき」ブレンドバラケで持たせ加減を意のままにコントロール
パッケージに書かれた〝接近バラケ〟というキャッチが目につくが、誰の目にもハッキリとへら鮒がバラケに接近して来るには、今少し季節が進まないと実感が沸かないかもしれない。
「下ハリスの長さが65cmと長いので、接近させて食わせているというイメージとは程遠い感じがしますね(苦笑)。しかし上バリから抜けたバラケに含まれる『ふぶき』が長時間滞留することでへら鮒をタナに留めているので、常にへら鮒の気配を感じながら良いリズムの釣りができています。これこそが重要なポイントではないでしょうか。」
内島が言うように、むしろこの季節においては接近させる性能よりも沈下中の開きを抑制してバラケを確実にタナに送り込み、さらに開いた後で軽く細かな粒子がタナに漂うことで、冬のレスポンスの鈍いへら鮒に対しての集魚効果が実感できるであろう。
ミドルレンジのチョーチンウドンセット釣りは季節的にみて実に理にかなった釣り方であるが、タナが深くなる分バラケのコントロールにおいて難易度が増すことは否めない。それが故にこの釣り方を避けていたアングラーにとっては今回の内島の釣技はもとより、新エサ「ふぶき」がこの釣りに欠かせない重要な働きを担っていたことがお分かりいただけたであろう。
「バラケエサにブレンドされた『ふぶき』の優れた特性を実感できるのは、エサ付けの容易さと抜けのよさでしょう。おなじ微粒子バラケでも『BBフラッシュ』や『カルネバ』といった粘りでまとまる麩材をブレンドしたバラケエサは、扱い方によってはどうしても持ち過ぎてしまうことが多く、今回ベストな持たせ加減であった〝チョイ掛け〟を維持するには繊細なタッチ調整に加え、高度なエサ付けテクニックが必要不可欠でした。しかし『ふぶき』の特性であるエサ付けのしやすさ、さらにはタナでの開きのよさを活用すれば、この釣り方に不慣れなアングラーでも精度の高い〝チョイ掛け〟が可能になり、たとえ『粒戦』を多く含んだバラケであっても厳寒期におけるミドルレンジの釣りを楽しむことが可能になるでしょう。」
内島流 チョイ掛けバラケのチョーチンウドンセット釣りのキモ その三:適度なウワズリ状態がベスト!? 早いアタリを演出する内島マジック!
ウワズリは禁忌といわれているが、適度なウワズリこそベストな状態であると信じ、自らが理想とする早い食いアタリをだし続けるためには欠かせない状態と断言する内島。その真意とは……
「ウワズリは絶対に起こしてはダメ!と思っている方が多いようですが、実際釣果が伸びるときには適度なウワズリ状態であることが多いことは確かです。水中のへら鮒の状態を判断するのはいうまでもなくウキの動きです。適度なウワズリ状態とはトップにシモリ(ジワッと沈み込む動き)とアオリ(フワッと浮き上がる動き)のいずれの動きも現われているときで、シモリだけでは狙いのタナよりも上に多くのへら鮒がいる状態を示し、アオリもでないような状態ではタナが下過ぎる、いわゆるシタズリ状態と判断できます。」
この日の釣りでは序盤からシモリが見られたため竿の選択を誤った(竿が長過ぎた)かとも思われたが、「ふぶき」に包まれた「粒戦」を的確にタナに送り込み続けると徐々にへら鮒のタナが下がり始め、中盤以降は昼食休憩を挟んで時合いが安定し、彼が理想とするナジミ際の早いアタリも頻繁にでるようになった。さらにそうしたなかでも内島は、吸い込む力が弱い厳寒期のへら鮒の微細な食いアタリが確実にウキに伝わるようにと、長い下ハリスが弛まずに適度なテンションを保ったままナジミきるよう、オモリの着水地点からできるだけ離れた位置にくわせエサが着水するよう丁寧な打ち込みを怠らない。
「苦労してナジミ際に食わせたとしても、その動きがウキに伝わらなくては意味がありません。食いが渋いへら鮒にエサの存在をアピールするため、またバラケの中心部分から離れたまま一定距離を置く厳寒期のへら鮒にアプローチするためにも長ハリスは欠かせません。その一方で長いハリスの欠点はテンションがかかり難く、弛んでいるときに食われると折角の食いアタリがウキに伝わり難いこと。それを避けるためにはナジミきるまで適度な張りをキープし続けることが肝心なのです。」
記者の目:近づかない厳寒期のへら鮒には自ら接近し〝離さない〟ことが肝心!
今回の釣技最前線の主役はアングラーである内島自身であることはいうまでもないが、新エサ「ふぶき」がこの釣りに欠かせない重要な働きを担っていたこと、また類い希なる特性で彼の釣りを強力にバックアップしていたことがお分かりいただけたであろうか。巷では〝接近バラケ〟というキャッチの意味を理解しかねているアングラーが多いようだが、明らかにへら鮒がバラケに接近して来ることで得られる効果を実感するには今少し先のこと。現在はまだそのポテンシャルの一部である「粒戦」を多く含む冬のバラケエサの新たな司令塔として、狙ったタナまで意図する量を持たせ、意図するタイミングで抜く(開かせる)働きに大きな期待が寄せられている。今回、内島の釣りを通し、たとえ深いタナであっても狙ったタナにへら鮒を寄せ、一定のレンジに留まらせておく特性は軽量微粒子が持ち味の「ふぶき」ならではの効果であることは理解していただけたものと信じている。現代セット釣りには欠かすことができない「粒戦」や「粒戦細粒」を易しく包み込んでタナに送り込み、アングラーの意図するところで的確に開いてへら鮒をくわせエサへと誘導。さらには自らタナに滞留することでつかず離れずへら鮒の足を引き留める効果は今までのエサには見られない特異なポテンシャル。まだまだその力の多くがベールに包まれたままの新エサ「ふぶき」。春、そして夏の訪れが今から待ち遠しく感じた今回の取材であった。