稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第114回 内島康之の長竿チョーチン両ダンゴ釣り|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第114回 内島康之の長竿チョーチン両ダンゴ釣り

オールシーズン様々なアプローチで楽しめるへら鮒釣りだが、記者にはこの時季だからこそお届けしたい釣り方がある。それは深場を狙った長竿チョーチン両ダンゴ釣り。秋の深まりと共に少しずつタナを下げ始めるへら鮒をストレスなく狙えるこの釣りは、チョーチン両ダンゴ釣りの醍醐味を味わうには打ってつけの釣り方といえるだろう。その魅力や詳しい釣り方についてはぜひこの男の力を借りねばなるまい。自他共にこの釣りの名手と認めるマルキユーインストラクター内島康之だ。スタッフは理想のウキの動きを求め、筑波山麓から降りてくる、秋の朝のキンと冷えた空気が漂う筑波湖に集結。続々と詰めかけるバコべらファンの入釣を待ってから、内島は空いていた4号桟橋中央やや奥寄りに釣り座を構え、深場に落ち始めた大型べらを狙うべく18尺を継いだ。

「カクシン」+「コウテン」、アプローチを異にするふたりが同じ基準エサ!?

チョーチン両ダンゴ釣りの名手といえば、内島と同じくこの釣りを最も得意とするマルキユーインストラクター西田一知を思い浮かべる読者諸兄も多いだろう。対局ともいうべき異なるアプローチを得意とする両者。しかしながら今回スタート時のエサが奇しくも同じブレンドパターンとなった点に記者は大いに興味をそそられた。知ってのとおり西田の釣りは硬ボソタッチのエサを大量に寄せたへら鮒に削らせながら食い頃にするというアプローチ。方や内島のアプローチは…

「そうですね。私の釣りは標準的というのでしょうか、あらかじめ食い頃と思われるいわゆる耳たぶくらいの硬さに仕上げたエサを、タナに寄せたへら鮒に無理なく追わせて仕留めるといった感じのアプローチです。私自身こうした釣りの組み立て方は以前と変わらないのですが、かつて『凄麩』をベースとしていたボソタッチのブレンドでは、現在主流となっているヤワネバタッチに調整するのに手間がかかり、多少なりとも難しさや煩わしさを感じていました。ところが『カクシン』が登場してからは食い頃のタッチに仕上げやすくなり、ブレンドパターンが一変しました。」

月日の経つのは早いもので、内島には7年前にチョーチン両ダンゴ釣りを披露してもらっているのだが、確かに当時はいわゆる硬ボソタッチの基エサから幅広くタッチを探るエサ合わせが主流であった。しかし近年は明らかにヤワネバもしくはヤワボソタッチのエサをへら鮒が好む傾向が見られるため、難解といわれるエサ合わせのプロセスをできるだけ簡素化・容易化するためには、基エサの段階からそうした傾向を加味したものが必要になることは必然であろう。

「ひとことに両ダンゴの釣りといっても、深場を狙ったチョーチン両ダンゴ釣りはある程度トータルバランスがとれていればそれほど難易度は高くありません。極論するとエサさえ決まれば、ハリス調整やエサ付けなど他のことに集中できるので、そうした意味では『カクシン』+『コウテン』の基本ブレンドが現代両ダンゴ釣りのトレンドであることは間違いありません!」

使用タックル

●サオ
かちどき「S」18尺

●ミチイト
オーナーばり「ザイトSABAKIへら道糸 フラッシュブルー」1.0号

●ハリス
オーナーばり「ザイトSABAKIへらハリス」0.5号 上=50cm、下=70cm

●ハリ
上下=オーナーばり「バラサ」8号

●ウキ
旭舟「吟グリーン(PCムクトップ)」7番
【オモリ負荷量≒2.7g/エサ落ち目盛り=全13目盛り中9目盛り出し】

●ウキゴム
忠相 Foot Fit (S)パープル

●ウキ止め
木綿糸

●オ モ リ
フィッシュリーグ絡み止めスイッチシンカー0.8g+0.3mm厚板オモリ

●ジョイント
オーナーばり「回転サルカン」24号

基本エサブレンドパターン

①スタート時の基準エサ

「カクシン」400cc+「コウテン」400cc+水200cc

五指を熊手状に開き、30~40回まんべんなくかき混ぜる。

②当日の決まりエサ

「カクシン」400cc+「コウテン」200cc+「ガッテン」200cc+水200cc

作り方は同上。基準エサに対しやや軽く、まとまり感が強い仕上がりとなる。なおエサの特性を変えずにエサ持ちを強化する際、「浅ダナ一本」を適宜加えて硬さを増す方法が有効であった。

内島流チョーチン両ダンゴ釣りのキモ:その一 「カクシン」を軸としたシンプルなエサ合わせのプロセス

今回使用したダンゴエサの主役はもちろん「カクシン」だが、先にも述べたようにこのエサの登場で内島自身のブレンドパターンは大きく変わったという。

「明確な違いはエサに加える手数が激減したことです。以前は比較的バラケ性が強めのブレンドパターンを常用していましたが、へら鮒そのものを含めた釣り場の状況が年を追うごとに変化してきたことで、以前よりもエサ合わせの過程で練ったり手水を加えて戻したりといった調整が頻繁に必要になり、やや釣り難さを感じていたことは確かです。そうした折り、昨年発売された『コウテン』、さらには今年登場した『カクシン』により、必要最小限の調整で釣りが成立することに気づいたのです。それもシンプルかつ簡単に。」

へら鮒釣りでは時代によって明らかに異なる傾向が見られる。もちろんそれは1~2年といった短いスパンで切り替わるものではなく、長い年月を経るうちに大きな変化を遂げるものだ。ふと気づくと周りのアングラーが使っているエサの袋が皆違っているなどといった、まるで浦島太郎のようなアングラーは読者諸兄のなかにはいないと思うが、こうした時代の流れに乗り遅れないこともトップアングラーの資質であろう。

さて、この日いつもどおりの基準エサでスタートした内島は、まず直径20mmほどのやや大きめのラフ付けといったエサ付けで深場のへら鮒をタナに集めることに専念。まだへら鮒が寄っていないうちに狙ったタナまでエサが持ち、ウキがしっかりナジむことを確認しておくことが大切だとアドバイスを送りながらハイペースで打ち込み続けて行く。10投ほどで小さなアタリがで始めたところで最初の手水調整を行いシットリタッチに調整。これでウキに現われる反応が強まり、明らかにエサへの興味が高まったことが分かる。さらに10投後に2回目の手水調整を加えるとナジミ際に明らかなトメがみられ、直後にダッと強いアタリがでて良型がヒット。次投も同様のアタリで連チャンを決めるが、その後強いアタリがことごとくカラツンとなり、同時にウケ・トメがキツくなったところでようやく釣り込むチャンスが到来。ここでエサ付けをひとまわり小さく、形も球形に近く丁寧にまとめ上げたものを打ち込み始めると、この好時合いをキッチリとつかみ最初のヤマ場を見事に捉えた。

ところが一時的に実釣の手を休めた後に再開するとへら鮒の反応が著しく鈍化。同じエサではウケ・トメをだすことが困難と判断した内島はブレンド変更を決断。前述の「②当日の決まりエサ」に替えて軽さとまとまり感を強調するとへら鮒の反応が復活。その後はそれが途切れないよう適宜「浅ダナ一本」を加えながら時合いを維持し、最後まで安定感抜群の釣りを披露してくれた。

「エサ合わせのプロセスは基本的にこれだけです。今日は手水と押し練りでまとめたエサに対するへら鮒の反応が悪かったため、ブレンドの変更とタッチ調整のみで釣ることができましたが、練ったエサが良いときもあるので必ず試してみることが必要です。こうした簡単なプロセスでエサ合わせができるのも『カクシン』があるからこそ。芯持ちの良さに対する安心感と信頼感は何ものにも代え難く、今後もダンゴエサの軸となることは間違いないでしょう。」

内島流チョーチン両ダンゴ釣りのキモ:その二 ヒットパターンは力づくではなくナチュラルバイトに任せる!

チョーチン両ダンゴ釣りのアタリは大小様々でヒットパターンも多岐に渡る。特に深場を狙った釣りではトップの長いウキや長いハリスを用いるため、アタリを一定に保つことは至難の業といわざるを得まい。しかしチョーチン両ダンゴ釣りを得意とするアングラーのなかにはこのヒットパターンを強引に絞り込んだり、同じパターンにはめ込んだりしようとする人が少なくない。ところが内島のアタリに対するアワセ方を見ているとそうした無理な意図はみられない。

「へら鮒の状態が良く、食いアタリが自然にパターン化されるのであればそれに越したことはありませんが、無理に同じところでアタリがでるようにすることは困難であるうえにあまり意味があるとは思えません。そもそも長めのPCムクトップに加えて50cm/70cmといった長いハリスを使って追わせながら食わせようとしているのですから、その分ヒットチャンスが広がることを考えればアングラーは無理にアタリを絞らずとも、比較的しっかりしたアタリにアワせれば釣れ続くと思います。現時点ではウキが立った直後からナジミ始める間に必ずウケ・トメといった動きがでたときにアタリがでやすく、またヒット率が高いことが分かりましたので、アタリにアワせることに集中するというよりも、この適度なウケ・トメがでるようにエサのタッチとエサ付けに注意を払っています。」

内島の解説を受けて記者がウキの動きに注目していると、確かにボソ感が強過ぎるとウケ過ぎてしまいウキもナジみにくくなっており、手水と押し練りでまとまり感を強調し過ぎるとウケ・トメがなくすんなりナジんでしまい、アタリがでたりでなかったりと不安定になるうえにアタリのほとんどがカラツンになってしまうといった悪循環がみられた。そうしたなかでもエサ付けを的確に使い分けながら好調を維持し続ける内島。中盤の時合い落ちの際にはブレンドを先の「②当日の決まりエサ」に替えると再び適度なウケ・トメがほぼ毎投続くようになり、その動きに連動するように小さな振幅を繰り返しながらナジミ始め、エサ落ち目盛りを過ぎた辺りで鋭くチャッと入るアタリで連チャン。そこでアタリがでないときはさらに深くナジんだところでダッダッと大きく刻むアタリにほぼパターンが絞られると、内島自身が無理をすることなくへら鮒の意思というべきいわばナチュラルバイトによって良い時合いを招き入れることに成功したのである。

内島流チョーチン両ダンゴ釣りのキモ:その三 混雑時でもチャンスあり。底ギリギリを狙う長竿チョーチン両ダンゴ!

基本的にはサンデーアングラーの内島。自らが主戦場として身を置く例会やトーナメントシーンでも、この時季になれば深場を狙った長竿チョーチン両ダンゴ釣りは大いに期待できる選択肢となるという。両ダンゴ釣りとしては終盤を迎えるため、短竿派のなかには早くもセット釣りに移行するアングラーもいるだろう。しかし長竿でしか届かないディープレンジではこの時季でなければ味わうことができない異次元ワールドが待っていると内島は言う。

「現在の管理釣り場では真冬でも短竿で釣れるので、あえて長竿で深場を狙うアングラーが少ないのが実情です。しかしこれは非常にもったいないこと。この時季に深場、それも水深がある釣り場で底ギリギリのタナを攻めると、それまであまり口を使わなかったコンディションの良いへら鮒が釣れるので、これを見逃す手はありません。実際混雑した日曜日の釣りでもよく釣れるので、短竿セットで手堅く釣るのも悪くはありませんが、一年に一度の秋の荒食いのチャンスですので、ぜひ長竿チョーチン両ダンゴ釣りにチャレンジしてみてください。」

ちなみにこの釣りが有効なのは水深がある管理釣り場。もちろん魚影の濃い準山上湖やダム湖などでも有効だが、ときに21尺以上の深ダナにへら鮒が落ちてしまうこともあるので、キッチリ型も数も狙うのであればやはり管理釣り場で試すのが良いだろう。常に安定した釣果が期待できるのは底から離れても1~2尺以内のレンジで、動いているエサに対するへら鮒の追いが悪く食いが渋いときは、ウキがナジミきったら下バリが底に着くくらいの、いわば底舐め舐めのタナが有望だという。周囲が短竿ばかりで長竿を振るアングラーがいたとしても、それが底釣りであるようなときにはビッグチャンス。良型べらの独り占めといった荒食いも決して夢ではないだろう。

記者の目:秋のディープレンジを「カクシン」でストレスフリーに楽しむ

秋はその深まりと共にへら鮒が自然と深場へとタナを変えていく季節。気温・水温が下がるほどに食い気旺盛なコンディションの良いへら鮒がタナを下げ、ときを同じくして長期間に渡り上層で働き過ぎたやや食傷気味のへら鮒の動きが鈍化することで、軟らかめのエサを長ハリスで深いタナに送り込みやすい環境が整う。こうなればもはや長竿チョーチン両ダンゴ釣りの独壇場。内島はこうした諸条件が揃うことを今や遅しと期待に胸を膨らませて待ち構えている。とかく長竿の釣り・深ダナの釣りというと力技というイメージがつきまとうが、彼自身が言うようにその釣りには一切の力みや無理強いが感じられず、まさにストレスフリーで楽しむ自然体。それを陰ではなく主役級の存在感で支えるのは紛れもなく「カクシン」ブレンドの両ダンゴであり、共に迎える初めての秋の絶好シーズンを内島とチョーチン両ダンゴ釣りが席巻するに違いない。