稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第111回 西田一知のチョーチン両ダンゴ釣り|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第111回 西田一知のチョーチン両ダンゴ釣り

発売以来、多くのアングラーに好評価をいただいている「カクシン」。人気の要因はなんといってもエサ持ちのよさに尽きる。当たり前のことだが両ダンゴの釣りではエサがハリに付いていなければへら鮒を釣ることはできない。ところが盛期のへら鮒は容赦なくエサを叩き落とし、容易に釣ることを許さない。まさに夏の釣りはこのエサ持ちを巡るアングラーとへら鮒のバトルステージ。しかしそんなしのぎを削るせめぎ合いのなかにおいて新エサ「カクシン」がアングラーに圧倒的なアドバンテージをもたらしてくれることを既に体感された読者諸兄も多いのではないだろうか。取り分けヤワネバタッチが主流である浅ダナの釣りにおいて、エサの扱いやすさや釣りやすさに驚かれるアングラーの声はあちらこちらから聞こえてくる。ところがどっこい新エサのテリトリーは何も浅ダナばかりじゃないと、カタボソタッチのエサを追わせて食わせるアプローチで孤高のチョーチン釣りを貫く名手マルキユーインストラクター西田一知が「チョット待った!」とばかりに声を上げた。彼に与えられたフィールドは、野釣りにおける魚影の濃さでは一二を争う三名湖の大土手桟橋。一体どのようなエサ使いを見せてくれたのだろうか。

この夏、エサを削らせ食い頃にする西田流〝追わせ釣り〟を体感せよ!

この「釣技最前線」では、過去2回西田にチョーチン両ダンゴ釣りを披露してもらっている。彼の釣りを集約すると、硬めのボソタッチエサを巧みに操り、タナに寄ったへら鮒に上層からエサを削らせ食い頃になったところで食わせる、いわゆる追わせ釣りをアプローチの軸としている。これは野釣り場を主戦場としている西田にとっては必然ともいうべき釣法なのだが、釣っている傍から次々とへら鮒が供給される管理釣り場とは異なり、いかに魚影が濃いといわれる釣り場でも、野釣りでは常にへら鮒を寄せ続けなければ安定的かつ高釣果は望めない。そのため集魚性に富んだボソタッチのエサ使いをアプローチの軸とすることは理に適っている訳だが、ボソタッチのエサ使いは極めて高度なテクニックが要求される難易度の高い釣りであり、容易に真似のできるようなシロモノではない。

「私の釣りは確かに真似のしにくい釣り方かもしれません(苦笑)。しかし『カクシン』を使うことで限りなく私のアプローチに近い釣りが可能になることを知っていただきたいと思い、清水の舞台から飛び降りるつもりで声を上げました(笑)。」

西田流チョーチン両ダンゴ釣りついては既にご承知の読者諸兄も多いだろうが、本題に入る前に改めて主要なポイントについて紹介しておこう。

ポイント:其のⅠ へら鮒に削らせて(揉ませて)も芯が崩れないエサ作り&エサ使い
一般的なエサ合わせのプロセスは基エサを最も硬くバラケるエサと位置づけ、少しずつネバリを加えながら軟らかいタッチに調整しつつ徐々にヒット率を高めていくが、西田流の組み立て方は安易にへら鮒に歩み寄らず、アングラー自身が苦労して食い頃のエサに仕上げるというよりも、自然な流れでへら鮒にエサを揉ませる(削らせる)ことで食い頃のエサにするというスタイル。こうしたアプローチに至った背景には軟らかいタッチのエサは食いが良いが、反面途中で弾かれることも多く、良いエサが作れたとしても釣りきれないことが多いためだ。また管理釣り場のように魚影が濃いところであれば釣れ続いたとしても、ダム湖や山上湖などでは途中で寄りがキープできなくなることが多いので、常に寄せながら釣り続けるためにはエサの開き、つまり〝ボソ〟の効いた「ネバボソ」「カタボソ」といったタッチのエサが必要不可欠となる。

ポイント:其のⅡ へら鮒にエサを削らせやすくするためのタックルセッティング
集魚力に冨み、エサに対して強い興味を抱かせることが可能な軽くボソの効いたエサができたら、それをへら鮒に削らせるための時間的な余裕とチャンスを意図的に作り出す必要がある。そのための主役はいうまでもなくウキなのだが、さらにその働きをサポートする「なくてはならない脇役」がハリスの長さとハリの大きさ(重さ)だ。ウキに関しては一般的なオモリ負荷量のものよりもワンサイズほど小さめのものを使う西田だが、さらにエサを削らせるチャンスが増えるパイプトップウキを使うことも大きなポイントになっている。これは軟らかいエサを常用するアングラーがエサをナジませやすいPCムクトップやグラスムクトップを使うのに対し、ナジませにくいという、いわば欠点とも受け取れるパイプトップの特徴を逆手に取り、揉まれやすくする(削らせる時間を増やす)ための長所として生かすためである。ハリスについてはウキとの相乗効果を狙って長めのセッティングを基本とし、ハリは軽いエサの特性を損なわないようにするため、エサ持ちに支障がでない範囲で軽く小さめのものを組み合わせている。

ポイント:其のⅢ カラツンは無理に解消しようとはせずにアタリの取り方でヒット率向上を図る
たとえカラツンであっても常に強いアタリをだし続け、その一投の締め括りをアワセでフィニッシュさせることを心がけている西田。彼曰く「基本的にボソタッチのエサなのでカラツンを完全に消すことは不可能であり、むしろカラツンがでないようなエサでは良い釣りはできない」とまで言いきるが、そうしたなかでも釣れるアタリにはその前段(前触れ)として特徴的な動きがウキに現われるとも言う。具体的には必ずウキが立ったところでウケ・トメが現われ、そこで適度な間があってからナジミ始め、エサ落ち目盛りを通過する辺りでダッと鋭く刻むようなアタリへと連動する。この一連の動きのなかでもっとも重要なのが、エサがへら鮒によって削られていることを示すトップ付け根付近で見られる小刻みな上下動。これが見られないときは上層でエサが弾かれ、ハリから抜けてしまっている可能性が疑われるので、最終的にトップにナジミ幅がでていたとしても速やかに打ち返し、次投にアタリを期待する方がベターだ。ちなみに水中の様子がリアルに表現できるのもパイプトップウキのメリットのひとつ。ムクトップウキは感度を鈍らせることで無駄な動きを抑え、エサのナジミを良くするために用いるものだが、エサをへら鮒に削らせることを意図している西田流追わせ釣りではナジミ際にどの程度揉まれているのか、どのくらいエサが持っているのかといった状態がトップに表現されることが自信と安心感につながるという。

では釣り方のポイントをおさらいしたところで、早速「カクシン」による西田流追わせ釣りの核心に踏み込んでみることにしよう。

使用タックル

●サオ
シマノ「普天元 獅子吼」13.5尺

●ミチイト
オーナーばり「ザイトSABAKIへら道糸」1.0号

●ハリス
オーナーばり「ザイトSABAKIへらハリス」0.5号 上=55cm→50cm→45cm、下=70cm→65cm→60cm

●ハリ
上下=オーナーばり「バラサ」7号

●ウキ
忠相「ツアースペックF」No.10
【テーパーパイプトップ(元径1.6mm、先径1.2mm)150mm /一本取り羽根ボディ(最大直径6.6mm)105mm/竹足(直径2.0mm)60mm/オモリ負荷量≒1.6g/エサ落ち目盛り=全11目盛り中9目盛り出し】

●ウキゴム
忠相 Foot Fit (S)パープル

●ウキ止め
忠相Dual Hold(M)

●オ モ リ
0.3mm厚板オモリ一点巻き(ウレタンチューブ装着)

●ジョイント
オーナーばり「ダブルクレンヨリモドシ」22号

基本エサブレンドパターン

カクシン」400cc+「コウテン」400cc+水200cc

五指を熊手状に開き、30~40回まんべんなくかき混ぜる(指先に僅かにまとわりつく感じ)

西田流チョーチン両ダンゴ釣りにおける「カクシン」使用方法のキモその一「カクシン」プラス1品で簡単に仕上げる崩れない芯作り

今回、西田はブレンドの軸に「カクシン」を据えることで、従来のエサ使い同様の追わせるチョーチン釣りを披露してみせた。ブレンドパターンで特徴的なのは麩材:水=4:1という割合だ。仕上がったエサをひとつまみ手に取り丸めてみると、タッチは標準よりも硬めに感じられるが単品に比べると明らかにボソ感が強く、従来西田が愛用しているブレンドに比べるといささか心許なく感じられた。

「意外に感じられるかもしれませんが、こんなタッチでも十分強い芯ができているので、いつもの追わせ釣りが機能するのです。もしこれでエサ持ちが不十分と感じられたときには軽く押し練りを加えるだけで、従来品で擦り練りを加えたものと同程度のエサ持ち力を発揮するので、ブレンドした麩材のポテンシャルを100%引き出し、生かしきることができるのです。」

この日、朝の三名湖のへら鮒の活性と食い気は半端なく、1投目からアタリいきなりの連チャンでスタート。そのため想定以上のへら鮒がエサをめがけて群がり、早々の手直しを余儀なくされたのだが、西田は慌てず騒がずボウルの隅に寄せたひとかたまりの基エサに軽く押し練りを加え、いつもどおり丸めてチャッチャッとハリのチモトを押えただけのラフなエサ付けで打ち込み続け、これもまたいつものナジミ際の早いタイミングででる小さくも鋭いアタリにアワせると、ダブルヒットを織り交ぜながら朝の好時合いを確実にモノにしてみせた。この時点で西田はこれ以上ボソッ気を強めたエサは必要ないと判断し、2ボウル目の基エサは「カクシン」600cc+「コウテン」200cc+水200ccとしたよりまとまり感の強いエサに仕上げると、押し練りする回数をさらに減らしても持つようになったエサでナジミ際の早いアタリ、これがでなければナジミきった直後の深い位置でのアタリと変幻自在のヒットパターンで、早くもほぼこの日の釣りの目的を達成してみせた。

「私のブレンドの基本は『カクシン』+1を2:2の同量(水は1)とし、もっとバラケさせたいときにはこの比率を1:3、バラケ性を抑えてまとまり感を増したいときは3:1としていますが、この比率の変化だけでも幅広く釣況に合わせることが可能です。もちろんエサの芯はしっかりと残りますので、安心してへら鮒にエサを削らせることができるのです。」

好釣果、安定釣果のためには良いエサ作りはもちろんのこと、そのエサを繰り返し簡単に作ることができる再現性も求められる。そうした観点からも西田流のエサ作りはその課題をクリアーしており、「カクシン」を既に手の内に入れたことがうかがえる。そして当然のごとく、へら鮒がエサを削り出すと理想のアタリが連発する。その肝心のアタリは次項で紹介することにしよう。

西田流チョーチン両ダンゴ釣りにおける「カクシン」使用方法のキモ:その二 トップ付け根の上下動がエサ持ちを担保!?連動するアタリを狙い撃ち!

おそらく記者を含め、多くのアングラーはウキのトップが示すナジミ幅でエサの持ち具合を確認しているのではないだろうか。これは決して間違いではないが、追わせ釣りに欠かせないナジミ際の早いアタリを的確に捉えるためには、このナジミ幅を確認してからでは遅過ぎる。繰り返しになるが西田が理想としている追わせ釣りのアタリはエサ落ち目盛りを通過する前後ででる鋭いアタリであり、このアタリが果たしてでるのか否か、でるとすればいつなのかを判断する術がウキの立ち上がり直後からナジミに入るまでの間にトップ付け根付近で小さく上下する動きだ。

「アタリに連動するか否かに関しての目に見える部分での判断材料はトップ付け根での上下動なのですが、実は目に見えない部分での判断が既にそれ以前から始まっており、エサを打ち込んでからウキが立ち上がるまでの時間の長短でもエサの持ち具合を計り、さらにトップ付け根での上下動の現われ方を加味することで、アタリがでるか否かから早めの打ち返しが必要か否かといったことまで判断しているのです。この一連の動きがでればへら鮒にエサが削られ、タイミング良く食い頃サイズになっていることが想像できるので、アタリに対するアワセの準備は遅れることなく整えられるのです。」

ウキの動きに関しては動画をご覧になっていただければ一目瞭然だが、このウキの動きを西田は最重要視しており、アタリそのものは必然の結果であることがお分かりいただけるであろう。先にも述べたが西田はエサの大きさに関して食い頃のサイズ感を重要視しており、理想のサイズになっているか否かを連動するウキの動きの要所要所で見きっていたのである。こうしたウキの動きから読み解くことができる水中のイメージは、是非多くのアングラーに見習っていただきたいところだ。

記者の目:「カクシン」があれば孤高の追わせ釣りも可能になる!?

二番煎じと言われることを恐れずに言おう。前回の萩野のエサ使いに続き「カクシン」+1のエサ使いで決してハリ抜けしない強い芯ができれば、西田流の追わせるチョーチン両ダンゴ釣りを貴方の手の内に入れることも決して夢ではないだろう。ただし誤解しないでいただきたい。記者は読者諸兄を萩野流や西田流の信者にするつもりは毛頭無く、「カクシン」を用いることで彼らの釣りの一端を垣間見ることで必ずや自身の釣りの幅が広がり、自らの釣技のレベルアップはもとより、今よりもさらに深くへら鮒釣りを楽しむことができるようになることを望んでのこととご理解いただきたい。そのうえで今回西田の釣りを通して見えた「カクシン」の新たな可能性を述べさせていただくと、タイトルにもあるとおり、ヤワネバタッチのエサ使いばかりが「カクシン」のテリトリーではなく、ボソタッチのエサ使いにおいても抜群のホールド性能と摂餌誘導力を持つエサであることに確信を持てたことに尽きる。改めていうまでもなく、エサを持たせるためには強く練り込んだり、増粘添加材を加えたりすればその目的を果たすことができるだろう。しかしそうした〝加工〟を施すことでアングラー自身がエサのタッチ(多くはペタペタヌルヌルとした手触り)に違和感や嫌悪感を抱いたり、稀にへら鮒に嫌われたりすることでアタリを喪失してしまうことがあることも広く知られている。そうした従来のエサにあった欠点を解消し、単品もしくは+1品に水を加えて混ぜるだけで硬軟問わず一流アングラーのタッチが自在に手の内に入ることは、自身の釣技のレベルアップに直結する革新的なことであり、エサに群がるへら鮒の密度や活性がピークに達する夏場の釣りにおけるエサ持ちの不安という大きな問題をクリアーにしてくれる「カクシン」の登場は、まさにへら鮒釣りにおけるエポックメーキングな出来事といえるだろう。