稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第110回 萩野孝之のカッツケ両ダンゴ釣り|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第110回 萩野孝之のカッツケ両ダンゴ釣り

昨年発売された「コウテン」、この春発売されたばかりの「ダンゴの底釣り 芯華」。そしてこの夏、満を持して登場した「カクシン」とマルキユーの新エサラッシュが止まらない。今回取り上げる最新アイテム「カクシン」も発売直後から釣り場で目にすることが多く、人気のほどがうかがえる。本格的な両ダンゴシーズンに突入したいま、新エサの効果的な使い方を紹介するには絶好のチャンスと、マルキユーインストラクター萩野孝之に実釣をオファー。既に多くの動画で実釣シーンが配信されているので、それらを見られた読者諸兄も多いだろうが、クローズアップされているのはなんといっても新エサ最大の特徴でありウリでもある〝芯〟の強さ。今回は、その特徴を生かした超簡単!超明快なエサ合わせのテクニックを紹介する。

強烈な個性を武器にすると、難解なエサ合わせがここまで簡単になる!

現代両ダンゴ釣りのキーワードはエサの〝芯〟であるが、さらに付け加えるとすれば食い頃のソフトな〝芯〟であることが必須条件であろう。実際高釣果が上がっているエサのタッチはほぼ間違いなくヤワネバタッチである。つまりこうしたタッチのエサが簡単に作れ、しかもそれを自在に操ることができれば高釣果間違いなしという訳だが、実際のところは〝言うは易く行うは難し〟であり、多くのアングラーがギリギリのところでエサが持たなかったり、ネバリ過ぎたエサでカラツンに悩んだりアタリを喪失してしまったりと実に悩ましい限りだ。

「新エサ『カクシン』については〝芯〟の強さばかりが一人歩きしてしまった感がありますが、実は既存製品には例を見ないこの強烈な個性を利用することで、両ダンゴ釣りの最難関テクニックともいうべきエサ合わせがとても簡単になるのです。今回はそうした新エサの付加価値をぜひ見ていただきたいので、ウキの動きの違いがすぐに現われるカッツケ釣りでやりましょうか。」

新エサのポテンシャルを確かめるべく、スタッフが用意した実釣フィールドは茨城県笠間市にある友部湯崎湖だ。一般の釣り人が落ち着いたのを見はからい、萩野が歩を進めたのは風を背にする4号桟橋220番座席。釣り座に着くとすぐに新品の仕掛け作りに取りかかる。特徴的なのはカッツケ釣りに特化した萩野オリジナルの直結仕掛け。第101回目の釣技最前線で岡田 清インストラクターが使っていたものと同じ仕様だが、実は萩野直伝のタックルであり、彼こそが本家本元というわけだ。

まずはウキ下を10cmほど開けたセミカッツケでスタートした萩野だが、数枚を釣ったところでギリギリまでタナを浅くするとハリスカッツケに切り替えた。ところが思うように動かないウキに浮かない表情を浮かべる萩野。このとき記者を含めたスタッフ一同は簡単に釣れそうもない状況に、内心「シメシメ」とほくそ笑んだ。なぜならすぐに釣りが決まってしまったらエサ合わせも何もあったものではなく、今回の取材の狙いが果たせないからだ。10投、20投とハイテンポでエサを打ち込んでも一向に上向く気配を見せないへら鮒の動きに、開始30分が経過した頃「ヨシ!エサを作り替えます。」と言い放つ萩野。いよいよ本気モードのスイッチが入った。

使用タックル

●サオ
シマノ「普天元 獅子吼」7尺

●ミチイト
オーナーばり「白の道糸」0.8号

●ハリス
オーナーばり「ザイトSABAKIへらハリス」0.5号 上=25〜30cm、下=35〜40cm

●ハリ
上下=オーナーばり「バラサ」5号

●ウキ
一志「カッツケ用プロトタイプ」2番
【パイプトップ仕様一本取り羽根ボディ5.0cm/エサ落ち目盛り=全6目盛り中4目盛り半出し】

取材時決まりエサブレンドパターン

カクシン」500cc+「コウテン」200cc当日はこれを+1として様々な麩材を試した+水200cc(五指を熊手状に開いて十数回ザックリかき混ぜて全体に水を行き渡ったら放置) 

エサ作り最大のポイントは水を加えた後のかき混ぜ方であり、萩野が強調するのはかき混ぜすぎないこと。なぜなら「カクシン」は添加されている増粘剤の効果により練らずとも十分なネバリがあるからだ。実際、ボウル全体に水が回る程度にとどめても指先で簡単に丸められるまとまり感を生むため、必要以上に練ってしまうと自らの個性を主張し過ぎてしまい、ブレンド相手の特性を十分に引き出せなくなる恐れがあるので、このあたりの加減には注意が必要だ。なお「コウテン」をブレンドしたものが当日の決まりエサとなった訳だが、この結果はたまたま取材当日の結果であって、日並みによってはほかの麩材がベストになることもある。萩野によれば盛期における平均的なへら鮒のコンディションであれば「バラケマッハ」であった可能性が高いといい、状況によっては彼自身思いもよらない意外な麩材がベストパートナーになる可能性もあるという。

萩野推奨 新エサ「カクシン」をベースとしたエサ合わせのコツ:その一 唯一無二の強靱な〝芯〟を信頼せよ!

両ダンゴ釣りにおけるエサ合わせはエサ作りの段階から既に始まっている。その日その時々のへら鮒の状況を的確に読み、どのような特性を持つエサを組み合わせればそのときのへら鮒に気に入られエサを口にしてくれるのか、アングラーはそれだけを考えブレンドを思案し手の入れ方に工夫を凝らす。そしていつ果てることのない難解なエサ合わせワールドに没頭していく訳だが、萩野はそうした難しいエサ合わせをいかに分かりやすく簡単にすることができるのかを考え、多くのへらアングラーの一助となることを願って日々努力を惜しまない。

「近年へらエサの性能は飛躍的に進歩しています。かつては不可能ともいわれた経時変化によるネバリが驚くほど軽減され、また個性が際立つエサが数多く出回るようになりました。我々アングラーはそうした高性能なエサの恩恵にあずかっている訳ですから、その性能を信じトコトン使いきることを目指すべきで、そうした意味でも『カクシン』の〝芯〟を信じたエサ作りは近年の、そして今後のエサ作り・エサ合わせの方向性を明確に示してくれていると思います。ポイントは手を加え過ぎないことに尽きますが、このエサの唯一無二の強靱な〝芯〟をもってすれば、それが誰でも可能になることは間違いありません。エサの方向性が分からずついついエサをいじり過ぎて失敗してしまうケースをよく目にしますが、ハッキリ言ってこのエサが作り上げる〝芯〟は異次元です。ぜひエサの特性を信じ、迷うことなく釣れるエサ合わせを心がけていただきたいと思います。」

具体的なエサ作りについては動画を見ていただければ一目瞭然だが、彼自身がポイントとして述べている手の入れ方(かき混ぜ方)については「こんな程度で大丈夫なのか?」と思うほど少なく、あまりにもアッサリと終わってしまう。ところが実際ボウルのなかのエサを手に取って確かめてみると、あまりのまとまり感に驚愕するに違いない。しかも、水を加えてから数分も経たないのに、すぐさま打ち込めるタッチに仕上がっていることにさらに驚かされる。これは特別な微粒子麩材と増粘剤の成せる技だというが、これこそが「カクシン」の最大の特徴であり、現代両ダンゴ釣りのエサ合わせになくてはならない特性であることに間違いない。

萩野推奨 新エサ「カクシン」をベースとしたエサ合わせのコツ:その二 決まる「+1」を釣況に応じて使い分ける!

今回の取材では想定以上に+1(ブレンド相手)によってウキの動きに違いがみられたため、これ幸いと、テストと称し「カクシン」+1の候補として様々な麩材の組み合わせを萩野にオーダー。基本はすべて「カクシン」500cc+ほかの麩材200cc+水200ccというブレンドパターンとし、+1の違いを評価してみた。仕上がりのタッチとしてはいずれも悪くはなかったが、先に述べたように麩材によって大きな違いが見られたことが驚きでもあった。ちなみに当日の状況下においてのベスト3は「コウテン」「凄麩」「浅ダナ一本」で、それぞれのタッチは硬軟様々であったが、概ね手水でわずかにシットリ感を増したものに良型のへら鮒が好反応を示した。なお、試すことのできなかった麩材も数多く、それらに関しては今後読者諸兄に色々と試していただき、これぞ+1という麩材を発掘していただければ萩野にとって何よりの喜びであろう。

「今回は最もデリケートなエサ合わせが求められるカッツケ釣りだけに、組み合わせた麩材によって明確な違いが見られたことについては、改めて私自身大いに参考になりました。ちなみに今日のような麩エサに対するレスポンスが鈍い地合い下では、たとえ盛期であっても何となくエサ打ちを繰り返していたのではまともに釣れなかったと思います。この日の流れとしてはまず私が現在自信をもって基準としている『バラケマッハ』をブレンドしたもので探りを入れてみましたが、簡単に釣れると思いきや意外にウキが動かず戸惑いました。そこで手水でタッチを変えて硬軟試してみましたが、好転せず、そこでボ~ッとした感じのへら鮒の興味を惹きつけるべく『バラケマッハ』に替えてやや粗い麩材を含んだ『コウテン』をブレンドしてみると、落下中の麩材の開きが促進され、狙い通りウキが動きだしてコンスタントに釣れ始めました。このときのウキの動きが理想に近かったので当日はこれで釣りきれると思いましたが、スタッフからの要望もあってより粗めの麩材を多く含んだ『凄麩』ならばどうなるだろうと試してみました。まず基本となる200ccのブレンドではへら鮒がややハシャギ気味になったので、『カクシン』600cc+『凄麩』100ccにブレンドを替えたところ、こちらの方がウキの動きが安定し『コウテン』ブレンドのエサと同じくらい好感触でしたね。」

エサの違いによるウキの動きは動画でも明らかだが、こうした違いは食いが渋めであったからこそより明確になったものと萩野は言う。実際へら鮒の食いが良いときはどんなエサでも釣れてしまうためブレンドやエサのタッチの違いが釣果の差となって現われにくいが、今回の取材では幸いにも(?)食いが渋いことが「カクシン」+1の違いを証明するのに一役買ったことになる。コンスタントに釣り続け、常に安定した釣果を得るためにはできるだけシンプルなエサ使いが必要不可欠で、エサ感の優れた人であればどんなブレンドであってもへら鮒の気に入るエサに調整してしまうだろうが、平均レベルのアングラーにそれを求めることは酷というものだ。そしてさらに萩野は力説する。

「両ダンゴの釣りではエサ使いをシンプルかつ簡単にすることに加え、再現性を持たせることも重要です。たとえ一時的に良いエサができたとしても、それを使いきった時点で釣れなくなってしまっては意味がありません。そのため繰り返し釣れるエサが作れることも重要な要素であり、+1で状況に応じたエサが作れる『カクシン』は、そうした面でも優れたサポートパワーを発揮してくれるに違いありません。」

記者の目:「カクシン」があれば誰でも萩野になれる!?

あまりにも簡単でアッサリとした基エサ作り。そして確立された「カクシン」+1のエサ使いがもたらす安定的かつ再現性のあるエサ使い。もちろんタックルセッティングやエサ打ちのリズム、さらにはアタリの見極め方等々細かなテクニックの違いは萩野の足下にも及ばないが、少なくとも基エサ作りに関しては誰が作っても萩野のそれとほぼ同じタッチに仕上がることは間違いない。つまり、たとえわずかな一歩ではあるが、名手萩野に近づけたことになると同時に、現代両ダンゴ釣りの基準となるタッチで同じスタートラインに立てたことになる訳だ。今回、釣り方はエサの違いによってウキの動きに差が出やすいカッツケ釣りで臨んだ萩野だが、一般的なタナ1m規定のある釣り場における浅ダナの釣りでも、また長ザオで深いタナを攻めるチョーチン釣りにおいても基本的な違いはなく、同じプロセスを辿ることで釣れるエサ作り・エサ使いができるという。実は記者も昨秋から新エサに触れる機会を幾度となくいただき、その都度単品使いで新エサのポテンシャルを体感させていただいてきた。今回萩野が推奨しているエサ使いとは真逆ともいえる手を加え尽くす調整方法も試してみたが、確実にいえることは同じエサが繰り返し簡単に再現できることと、それまで自身が使っていたものよりもワンランク軟らかいエサでも十分タナまで持ち、釣果的にも上向いてきたことを実感している。読者諸兄も「カクシン」片手に精進を重ねれば、近い将来、萩野のような名手になれるような気がしてきただろうか!?