稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第108回 都祭義晃の超攻撃的ドボンの底釣り|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第108回 都祭義晃の超攻撃的ドボンの底釣り

流れ川では定番のドボン(オモリベタ)の底釣り。その名の通り「ドボン」と水音を立てて打ち込み、シモリながらも流れに耐えてアタリを伝えようとするウキをジッと見つめ続けるそのスタイルは「待ちの釣り」といったイメージがあるが、今回登場いただくマルキユーインストラクター都祭義晃のドボンはひと味違う。千葉県香取市に居を構え、霞ヶ浦水系の野釣り場をホームとしている都祭にとって、流れ川の釣りはいわば日常生活のルーティーン。へら鮒が動き始める春ともなれば、仕事前にチャチャッと竿を一振りということも珍しくないという。ならば精通する流れ川攻略法を披露してもらおうではないかと、釣り場を一任して連絡を待った。すると念入りなリサーチを経た後、桜が満開となった3月下旬、釣り場は茨城県南東部に位置する潮来市から神栖市にかけて流れる常陸利根川に決定!琵琶湖に次いで大きな霞ヶ浦に端を発し、外浪逆浦を介して利根川に流れ込む同川の中流から下流域にかけては、例年春になると抱卵した良型のへら鮒が集結する好ポイントが点在する。一行は先導する都祭のジープに続いて常陸利根川の土手へと車を進めると、南岸に位置する十番揚排水樋管前で車を停めた。

素早い判断で次から次へと繰り出される〝技〟こそ都祭流攻めのドボンの底釣りの真骨頂!

車から降りた記者の目に驚きの光景が飛び込んできた。雨上がりの川面にはそこかしこに良型のへら鮒のモジリが現われては消え、他のポイントとは明らかに異なる魚影の濃さがうかがえる。
ポイントには目印となる水門があり、都祭はその左手上流側に釣り台をセットした。

「野釣りはポイント選定が何より重要だといわれますが、数日前からこんな状態なのですから、この周辺にへら鮒が接岸していることは誰の目にも明らかです。今日はこの居着きのへら鮒を朝の好時合いのうちに攻略できるかが最初のテーマですかね。」

と、自らに課題を課しながらも支度の手を休めない都祭。釣りは既に準備段階から始まっており、まだハリスも結んでいないウキを何気なく打ち込むと基本バランスのエサ落ち目盛りを決めるためのオモリ調整を進めながら、

「かなり上流方向に向かってウキが流されます。これではバランスの底釣りでは止まりそうもないので、始めからハリスオモリにした方が良いかもしれません。」

そう言うと基本バランスがとれた状態で2B(約0.8g)のガン玉オモリを下ハリスのハリから5cmほど上にかませると、タナ取りゴムを付けることなく打ち込んだ。

「改めてタナを計ることはしません。自分が使うウキのことは誰よりも分かっているつもりですので、流れのなかでもトップが沈没することなく、また基本バランスで決めたエサ落ち目盛りが水面上にでない範囲でアタリがでるタナ(ウキ下の長さ)を探っていくのが自分流ですから。」

一応のタナ調整を終えたところで改めて打ち込むとさらに流れが強まっており、思うようにウキが止まらないことを確認すると1投もエサ打ちすることなく一旦ガン玉オモリを外し、代わりに0.3号の外通しオモリを装着。これでも止まらないとみると、さらにオモリを0.8号にしたところでようやくウキは止まるも徐々にトップが水没。改めてウキ下を深くしてトップが水面上に残るようにすると、タナはバランスのときに比べて1m近く深くなっていたが、これでようやくスタート態勢が整った。

まずはへら鮒を寄せるために「ダンゴの底釣り 芯華」単品の両ダンゴで打ち込み、数投繰り返した後バラグルセットを試す。そして僅かなサワリを見てとると、満を持して「野釣りグルテン ダントツ」の両グルテンで打ち込み、トップが2目盛り水面上にでたところで静かにアタリを待つ都祭。僅かにシモリ始めたトップを水面上にキープしようとして竿尻を送りだした直後、刻むようなアタリでファーストヒット。水深が浅い流れ川特有の沖走りを巧みなロッドワークでいなしながらゆっくり引き寄せると、やがて大きな水飛沫を伴い玉網に収めた。さあ都祭流攻めのドボンの底釣りの開幕だ!

使用タックル

●サオ
がまかつ「がまへら幻将天」18尺

●ミチイト
サンヨーナイロン「バルカンイエローへら道糸」2.0号

●ハリス
サンヨーナイロン「クレバー」0.8号 上=-30cm、下=40cm

●ハリ
がまかつ「改良ヤラズ」 上=8号、下=7号

●ウキ
「水幸作プロト 野釣りスペシャル(仮称)」
【1.6-1.2mm径テーパーパイプトップ17.0cm/6.8mm径カヤボディ11.0cm/1.2mm径カーボン足5.5cm/基本オモリバランスでのオモリ負荷量≒2.4gでエサ落ち目盛りは全6目盛り中4目盛りだし】

●ウキゴム
オオモリ「一体式ウキゴム」

●ウキ止め
市販ウキ止めゴム

●オモリ
マルキユー「絡み止めスイッチシンカー」0.8g+厚さ0.3mm板オモリ
※基本バランスを取ったうえで流れの強弱に応じて重さの異なるガン玉オモリ(ハリスオモリ)や外通しオモリを装着

●ジョイント
市販スイベル

取材時使用エサ

バラケエサ

「ダンゴの底釣り 芯華」200cc+水100cc

ザックリかき混ぜ、全体に水が行き渡ったら数分間放置して完成。当日はほぼ手つかずのまま打ちきった

くわせエサ

「野釣りグルテン ダントツ」1分包+水35cc(標準)

水を加えたら手早くかき混ぜて放置し、硬さが安定したら完成。常時流れがある釣り場なので1投ごとにしっかり手揉みを加えると共に大きめ(直径11~12mm)にエサ付けする

都祭流 攻めのドボン釣りのキモ:其の一 起こりうるすべての現象をアプローチに結びつけるアクティブさ

都祭の釣りに注目していると、とにかく対応が早くその精度というか正解率が極めて高いことがよく分かる。精度については彼自身の経験値の豊富さが大きく寄与していることは疑うべくもないが、対応の早さという点においてはメンタル的な要素が極めて大きいことは明らかだ。

「自分がポジティブであることについては否定しません(笑)。特に野釣りに関しては自ら動くことで状況が改善されることが多いのは経験上分かっていますし、何よりウキが動かない空白タイムが長い野釣りでは、余程意識していないとついまったりした時間を過ごしてしまいがちです。自分はジッとしているのが苦手なタイプなので自然に身体が動いてしまいますが、1枚でも多くいいへら鮒に出会いたければとにかく〝動く〟ことが大切です。なぜならたとえそれが正解ではなくても、結果は必ず経験値としてアングラー自身の引き出し(財産)になりますから。」

この日の都祭は、まずウキが流されるのをみてハリスオモリの底釣りからスタートしようとしたが、自分のイメージどおりにウキが止まらないことが分かると躊躇することなく0.3号の外通しオモリを装着してエサ打ちを開始。ところがアタリがでる前にさらに流れが強まりウキがシモるようになるとすぐさま0.8号の外通しオモリに交換。当然ながらその都度ウキ下の長さも調整を余儀なくされるが、決して億劫がらずにこまめなタナ調整を怠らない。そして間もなくウキに気配が現われると、これを見た都祭はへら鮒が寄ったことを確信。エサ使いを両ダンゴから両グルテンに切り替えると、直後の小さく刻むアタリで良型の美べらをヒット。その後毎投のように気配を感じるなか、同様のアタリで数枚立て続けに釣り上げたところで一旦アタリが消失。このとき流れも弱まったことから再び0.3号のオモリに交換してウキ下も浅く調整すると再びウキが動き始め3枚を追釣。そしてトドメは余裕でアタリを送っての40cm級のダブルヒットで朝の好時合いを見事にものにしてみせた。

エサ打ち開始からここまで50分と、この僅かな時間のうちにこれだけ濃密かつ数多くのテクニックを繰り出し、しかも結果をだしてもらえれば既に取材は成立したも同然なのだが、こうした流れはもはや都祭にとっては朝のルーティーンでしかなく当然と言わんばかりの表情で、

「どうです、これが常陸利根川のポテンシャルなのです。毎年釣れるポイントは異なりますが、今シーズンはこの辺りが比較的安定して釣れているようなので、朝の出勤前や仕事終わりの夕方にチャチャッと釣って楽しんでいます(笑)。もちろんこれだけへら鮒が接岸していれば何もしなくても釣ることはできますが、自ら動くことでさらに良い時合いをものにできるとなればやらない訳にはいきません。おそらくこれでモーニングサービスは終わりですから、この後は回遊系のへら鮒の待ち釣りになるでしょう。しかしそれはそれで面白さがありますし、さらに大型のチャンスもあるのでぜひ見ていてください。」

自信とも確信ともとれる言葉を残し、その後予想通りに悪化した時合いと真摯に対峙し続けた都祭。アタリがなければ両グルテンからセット、さらには両ダンゴとエサ使いをこまめに変えたり、流れの強弱によって外通しオモリの重さを変えたり。さらに流れが弱まったときにはハリスオモリで見事短時間の午後の好時合いをものにしたり、まったく気配を失ったときには野釣りの必須テクニック「床休め」を適宜繰りだしながら竿を振り続け、やがて陽も大きく傾きかけた夕刻、数度竿の長さを変えるなどの策を経て、この日の釣りの集大成となる42cm超級の肉厚美べらを見事仕留めて魅せた。

都祭流 攻めのドボン釣りのキモ:其の二:〝変化〟をチャンスと捉えるポジティブさと再現性を生み出す緻密さ

永く野釣りをやっていると分かるのだが、釣れ始まるときも釣れなくなるときも何らかの変化が身の回りで起こっていることに気づく。たとえば風が吹き始めたり止んだりしたときとか、風向き自体が変わったときとか。また流れが強くなったり弱くなったり、流れ自体の方向が変わったりしたときとか。もちろん都祭自身もそうしたことは百も承知なのだが、良くも悪くもそうした変化をポジティブに捉え自らの釣りに生かしているのがいかにも彼らしい。

「気象の変化や混雑度、流れや水位の増減といった様々な要素の影響を受けやすいのが野釣りの定めであり醍醐味でもあるのですが、実際にこうした変化の直後に釣れることがよくあるので、これらすべての要素の変化をチャンスと捉えています。管理釣り場では流れを嫌うアングラーが多いのですが、野釣りではむしろ流れはウェルカム。もちろん流れが強過ぎてウキが止められなければ始まりませんが、流れに合せてオモリを交換したり釣り方を変えたりしながら釣りを組み立てていれば、ときに思いもかけない良型のへら鮒に出会えることがあるので、例年この時季はジッとしては居られないのです(笑)。」

ときとしてドボンの底釣りはへら鮒任せの釣りとか偶然性の高い釣りと思われがちだが、都祭の釣りを見ているとそのようなことは微塵も感じられない。先に述べた通り攻略しようとする攻めの気持ちはいうまでもないが、それは決して力任せ勢い任せの釣りではなく、綿密に計算され、緻密に組み立てられたロジカルな釣りであることが見てとれる。その代表的な事例が再現性を生みだすアタリの取り方だろう。

「アタリの取り方は人それぞれ異なるかもしれませんが、私の経験則によるとドボンの底釣りの場合トップのだし方によってアタリの出方が変わると考えています。それには一定の決まりがあるわけではないので釣行の都度確認しなければならないのですが、具体的には釣れ始めの時点でトップの目盛りをどの程度水面上にだせばアタリがでやすいのかを確かめるのです。今日の場合最初は1~2目盛りだしでアタリを待っていたときに食いアタリがでたのですが、以降思ったよりもアタリがでなかったことから3目盛り、さらに4目盛りと多めにだしてみたところ、4目盛りだしにしたときに最も良い感じでアタリが続きました。こうした傾向が分かってからはこれを基準としつつ若干の調整を加えながら釣りましたが、結果を見る限り今日のところは概ねこのパターンが正解であったと言って良いと思います。」

都祭流 攻めのドボン釣りのキモ:其の三:野の底釣りのツートップ「ダンゴの底釣り 芯華」と「野釣りグルテン ダントツ」に太鼓判!

都祭自身「偶然かも」と言いながらも、奇しくも今回の決まりエサがバラケもくわせも単品使いとなった点について、両エサのポテンシャルについて改めて太鼓判を押した。

「昨今は野釣りでもブレンドエサが主流になっていますが、既に『野釣りグルテン ダントツ』は単品使いが広く知れ渡っており、実績の面でも高評価が数多く寄せられています。さらにこの春は発売されたばかりの新エサ『ダンゴの底釣り 芯華』も加わり、ここ常陸利根川はもちろんのこと多くの野釣り場から好評の声が伝わってきています。私自身も釣れるエサであることは実感していますが、できるだけ道具やエサをコンパクトにまとめたい野釣りではこれだけ釣れるエサがあれば十分自信を持って臨めますね。」

野釣り場にはへら鮒以外の数多くの魚種が棲息しており、こうした魚たちとも上手く付き合うことが野釣りのコツともいえよう。総じて魚影の薄い野釣り場ではへら鮒を寄せようとしてバラケ性が高く集魚性に富んだエサを使いがちだが、当然ながらへら鮒だけを選別して食わせることは不可能だ。ならばできるだけ他魚種を刺激せずにへら鮒だけに興味を惹かせるエサがあればという話になるが、この両エサに関してはそうしたイメージに一歩近づいている感がある。もちろん釣り場や釣り方によっても差が生じるだろうが、タイミングと場所を選び、さらに都祭流の攻めのアプローチを組み合わせれば、必ずや理想の底釣りに近づけるに違いない。

記者の目【キャラクターが呼び込んだラストチャンス!?終了間際に大型美べら乱舞!】

今回は特別に都祭のエピソードをひとつご披露させていただこう。記者が野釣り場で彼と初めて出会ったのは3年前の初夏の芦ノ湖。元箱根の観光船発着桟橋近くで取材をしていた記者ら一行がそろそろ撤収しようとしていた夕刻、同湖の他のポイントでひとしきり釣りを終えた都祭が帰り際に様子を見に来た。もちろん記者らが取材をしていることなど知るよしもなかったが、着くや否や挨拶もソコソコに釣れていることが分かると21尺竿1本とエサボウルだけを抱え湖畔に立ち、タナもろくに計りもせずにいきなり釣りを始めたのだ。そして間もなくサクサクッと数枚釣り上げて見せ、周囲を驚かせると同時に呆れさせもしたのだが、話はこれだけで終わらない。それは2年前の春、釣り場は今回と同じ常陸利根川で、やはり記者が取材をしている最中に突然現われ、このときも長竿1本とエサボウルを携えて護岸に立ったと思う否やエサ打ちを開始。手竿のまま数投打ち込みアタリをだすと、あれよあれよという間にヒットを重ね、何事もなかったように去っていったのだ。あのときの光景を思い出すたびに漫画「釣りキチ三平」のワンシーンが脳裏に浮かび、野釣りが彼自身の生活の一部として溶け込んでいるのがよく分かる。こうした武勇伝(?)を持つ都祭だが、その大胆かつ大雑把とも映る行動とは裏腹に、意外と言っては何だが想像以上に緻密で繊細な釣りであることがお分かりいただけたであろうか。タイトルにもあるポジティブさとアクティブさはいわば彼のキャラクターそのものだが、朝の好時合いをものにした計算高さもさることながら、読者諸兄にぜひお目にかけたいという強い思いから、取材終了間際に42cmオーバーの常陸利根川の大型美べらを呼び込んだのは、へら鮒釣りをひたすらに、そして純粋に楽しむ彼ならではのフィッシングスタイルの賜ではないだろうか。