稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第102回 現代版マルチスタイルの〝欲張り〟ペレ宙釣り|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第102回 現代版マルチスタイルの〝欲張り〟ペレ宙釣り

かつて夢のような大型揃いの釣りができたペレ宙釣りも、いまや大きくそのスタイルを変えた。いや「変えざるをえなかった」という方が正しいかもしれない。いわゆるストロングスタイルのペレ宙釣りが席巻していた頃、釣り場には大中小と様々なサイズのへら鮒が混在していた。通り一辺倒の攻め方では容易に釣ることができなかった選りすぐりの大型べらも、上っ面の中小べらが口にすることができないほど硬く重く大きな、まるでペレットの塊のようなエサ玉をタナにねじ込むと、我先にエサへと食らいついたものだが、時は流れて現在、多くの釣り場ではへら鮒の大型化が図られ、普通の釣り方で当たり前のように大型べらが釣れる時代へと変わってしまったのだ。しかし、いまなお型の差が顕著な釣り場も少なくない。そんな釣り場では数も型も狙いたいという欲求が芽生えても不思議ではない。今回はそんなワガママな願いをかなえるべく、マルキユーインストラクター綿貫正義が一肌脱いでくれた。

数だけでも、型だけでも敵わない。「欲張り」こそ現代ペレ宙釣りのキーワード!

数は誰にも負けなかったが型の差で負けたとか、型は良かったが数が釣れずに勝てなかったとか、数や型にまつわる後悔や愚痴は尽きない。ならばどちらも手中にできれば文句はあるまいと、そんな欲張りな釣りを実践している綿貫を追って訪れた今回のフィールドは、千葉県富里市にある富里乃堰。大中小様々なサイズの元気なへら鮒が数多く放流されている釣り場は、彼流の欲張り釣法を披露してもらうにはこれ以上ないフィールドといえよう。

「以前ほど狙いどおりに釣れなくなっている釣り場は多いですね。実際に数・型いずれか一方を追求しても結果は見えていますので〝欲張り〟といえるかどうか分かりませんが、これから先も勝つためには数・型両方を狙うというスタンスは変えられないですね(笑)。」

開始早々、立て続けに竿を絞りながらこうつぶやく綿貫。そのブレないフィッシングスタイルからは自らの釣りに絶対の自信を持って臨んでいることがうかがえる。

「いつも狙い通りに釣れる訳ではありませんが、基本的には数を釣ることを目指すなかで、ある程度重さが稼げる良型のへら鮒が混じるような釣りを理想としています。ペレ宙釣りはそうした狙いを比較的達成しやすいので、ペレ宙釣りが効く釣り場では好んでペレ宙釣りを選択しますね。」

 記者にとって綿貫のペレ宙釣りは、以前からリスペクトに値する釣り方であった。自ら欲張りと称するそのスタイルは極端に走ることなく実に合理的。真似する(手本とする)のも容易で、効果も絶大であった。なかでもかつて彼が定番としていた「ペレ軽」+「BBフラッシュ」のブレンドにしてからは飛躍的に釣果アップが図られ、幾度となく良い思いをさせてもらった記憶がある。しかし、近年型の釣り分けが難しくなったといわれるペレ宙釣りに悩んでいた記者にとって、今回の取材はまさに千載一遇のチャンス。なにかヒントを得ようと鵜の目鷹の目でつぶさにその釣技を見守ったのだが、その偏らないマルチなスタイルの〝欲張り〟釣法は、記者冥利に尽きる大いなるヒントを得られた取材であった。

使用タックル

●サオ
シマノ 普天元「独歩」13尺

●ミチイト
ルック&ダクロン タカモト「ナポレオン」1.0号

●ハリス
ルック&ダクロン タカモト「ナポレオン」0.5号

上=0.5号-25cm→20cm→15cm、下=33cm→28cm→23cm

●ハリ
上下=鬼掛「極ヤラズ」6号→7号

●ウキ

弥介「足長タイプⅡツチノコ」5番

1.2-0.6mm径テーパー細パイプトップ15.0cm/7.0mm径カヤボディ7.0cm/1.0mm径カーボン足8.0cm/オモリ負荷量≒1.6g ※エサ落ち目盛りは空バリでトップ付根に設定。ハリ重さによって変わるが、概ね全9目盛り中5~6目盛り出しの位置となる

●ウキ止め周辺

市販のウキゴム+ウキ止めストッパー

●オモリ

0.25㎜厚板オモリ1点巻き ※内径0.5㎜ウレタンチューブ&クッションゴム装着

●ジョイント

ジョイント:市販ヨリモドシ

当日のブレンドパターン

「ペレ軽」400cc+「カルネバ」400cc+「凄麩」200cc+「BBフラッシュ」200cc4つの麩材を混ぜ合わせてから)+水300cc五指を熊手状に開いてかき混ぜ過ぎないように注意して全体に水を行き渡らせる

エサの調整は、おもに小分けした基エサに手水を加えてから「BBフラッシュ」をひとつかみ絡めるといった手法で行っていたが、現在のペレ宙釣りではほぼこの方法によってより軟らかくエサ持ちを強化する方向で行うのが基本だという。

取材時の釣りの流れ

普段の富里乃堰では朝方へら鮒の状態がかなり上っ調子だと言っていた綿貫だが、7時前にエサ打ちをスタートさせると、開始から程なくしてウキが動き始め、数投後ナジミきった直後のアタリでファーストヒットを決め、立て続けに3連チャン。想定よりも良い釣れだしに彼自身一番面食らっていたようだった。その後、ウキの動きが減ったところで基エサに手水を加えただけの調整を2度行ったところ、再びアタリが続くように。いわゆるモーニングサービスの時間帯に早くも良型べらが混じり始め、開始から1時間もかからずにこの日最初の時合いをキャッチした。

ところが、懸念されていたとおり表層のへら鮒の寄りが増すに従ってアタリが不安定になる。エサ持ちが悪くなったタイミングをみてハリスを上下共に5cm詰めた際に一時的に好調に転じたものの、日射しが照ったり陰ったりを繰り返すようになると水面直下には黒々と多くのへら鮒が群がり、ウキが立たない投も。そこでさらにハリスを5cmずつ詰めて一気に固め釣りを果たすが、減るはずの表層のへら鮒は一向減る気配をみせないため、軟らかくネバる方向に進んでいたエサ合わせを一旦見合わせることに。ここで初めて「ペレ軽」で締めた硬めのエサを試してみると、これには明らかに拒否反応が現われ、ナジミ際に止める動きが激減して、すんなりナジミきるよう投が目立つようになってしまった。しかし、これが大きなヒントとなり、この日の正解は手水と「BBフラッシュ」の追い足し調整によるヤワボソタッチと見きった綿貫は、ハリスをスタート時の長さに戻したうえでハリをサイズアップ。「極ヤラズ」7号にしてリスタートすると、その後は比較的深い位置でのアタリが多くなり、再び黄色味がかった良型がポツポツ顔を出し始めたのであった。

綿貫流〝欲張り〟ペレ宙釣りのキモ:其のⅠ 数を釣り、型も狙えるタックルセッティング

ペレ宙釣りを始める際にまず考えなければならない大切なことは、竿の長さであろう。数を狙うだけなら規定最短尺がベストであり、型を狙うのであれば釣り場や入釣ポイントに適した長さを選択しなければならない。しかし欲張りな綿貫はそのいずれも手にしたいというのだから、竿の長さの選択は徒や疎かにできない要素のひとつだ。

「ここ富里乃堰では、中尺以上の長竿を使って沖めを攻めた方が明らかにアタリを多くもらえます。今日は比較的空いているので、数のみであれば10尺前後でもいけそうですが、ある程度型の良いへら鮒もターゲットに含めるのであれば13~15尺くらいが適当でしょう。以前はそれ以上長い竿でかなり大型が混じったのですが、今日は風も強く吹く予報ですし、取り回しの良さも考慮すると13尺がベストだと思います。ベストの竿の長さについては釣り場のクセが一番影響を及ぼしますので、フィールドによって事前のリサーチは欠かせません。さらにこれからのシーズンは、新べら放流を含めた状況の変化からも目が離せませんね。季節的にも何かをきっかけに既存の大型べらが荒食いを見せることがありますし、大型の新べらが放流されると当然それらの動きにもチェックが必要です。当然ながら、それらに刺激された既存のへら鮒の動きも見逃せませんし、日並みによっての違いはもちろんのこと、1日のうちで最適な竿の長さが変わる可能性も少なくありませんね。」

実際秋のペレ宙釣りでは、周囲の釣況を見ながら竿の長さを変更することも多く、明らかに大型べらが食っているエリアが分かったときは迷わず変えるべきだと綿貫は言う。さらに注目したいのは彼が愛用しているウキである。自身では現在のペレ宙釣りを一般的な浅ダナ両ダンゴ釣りの延長線上にある釣りだと言いきるが、そのウキを見る限り今回取り上げた〝欲張り〟ペレ宙釣りの核心が垣間見える。その特徴は、大きな浮力(オモリ負荷量)と長めに設定されたトップ。短竿チョーチン釣りでも十分に使える1.6gという浮力でタナ1mを狙う意図は明確で、できる限り素早くタナにエサを送り込み、水面直下で邪魔をする中小べらをターゲットから完全に外すことでウキの動きを安定化させ、オモリよりもやや深めのレンジに厚く寄せることで崩れ難い時合いを構築するためだ。加えて、細く長いパイプトップがヒットレンジを幅広くしており、早いアタリで中小べらを拾いつつ、チャンス到来と見ればじっくりアタリを送って良型べらを仕留めていくことを可能にする。アタリの取り方については後述するが、このウキがあればこそ〝欲張り〟ペレ宙は成立しているものと確信する。

綿貫流〝欲張り〟ペレ宙釣りのキモ:其のⅡ 司令塔「BBフラッシュ」で〝欲張り〟タッチ自由自在

エサの特徴については動画で綿貫自身解説しているが、ブレンドを見る限り、唯一のペレット系麩エサである「ペレ軽」の割合が少ないのが特徴で、彼自身が言うように綿貫流ペレ宙釣りは一般的な両ダンゴ釣りの延長線上にあるものだということが理解できよう。

「ペレットの持つ高集魚性は大きなメリットですが、それと同時に高比重が大きなデメリットになっているのが現代ペレ宙釣りの特徴だといえるでしょう。つまり、アタリのでにくい要因が明らかにエサの重さにあるということで、仕上がったエサ自体が重過ぎるため水中を落下していくエサ玉をへら鮒が追いきれず、また一般的な麩エサに比べて早くナジミきってしまうことで動きが不自然になり、普通のコンディションのへら鮒では警戒心が食欲を上回ってしまうのだと考えられます。従って、エサの方向性としてはペレットを含むものの軽めであることが基本で、集魚性が低下する分をエサ付けの大きさでカバーするというのが自分流のペレ宙釣りの基本となるところです。」

ブレンドされている各種麩エサの役割についても動画で言及しているが、どれかひとつが欠けてもダメだと綿貫は言う。なかでも「BBフラッシュ」は基エサを構成する単なる麩材に止まらず、タッチを変化させる際の調整エサとしても欠かせない必須アイテムだと断言する。実際にその調整方法ならびにその効果を目の当たりにすると、主役は「ペレ軽」に譲るとしても、司令塔役は明らかに「BBフラッシュ」であり、それを自在に操る綿貫は名監督といったところだろうか。

「かつて『BBフラッシュ』は主役級の働きをしたこともありますが、現在はあくまで脇役です。しかし扱い方次第で持たせたり開かせたり、またタッチの硬軟やネバリの強弱も変えられる名脇役なので、追い足し追い足しを繰り返しているうちにいつの間にか主役よりも比率が大きくなってしまうこともあるくらい、私にとっては扱いやすく信頼できる麩材なのです。」

綿貫流〝欲張り〟ペレ宙釣りのキモ:其のⅢ 天気に左右されやすい弱点を逆手に取るアタリの取り方

「知ってのとおり、ペレ宙釣りは天候に左右されやすい釣り方です。取り分け太陽が照ったときと雲で陰ったときではウキの動きが大きく異なります。当然ながら日が出ているときの方がウキの動きが良く、日が出ていないときはメリハリがなくなりがちです。実際、いまも目の前でそうした現象が起きていますが、その都度エサやタックルを変えていたのでは釣りになりません。そんなときには上っ調子になった中小べらをそのまま早いアタリで捉えつつ、一時的に口を閉ざした大型べらは無理に狙わず、再び日が照ってヤル気がでたときにウキを深くナジませ、アタリを送り気味にして狙うようにしています。これなら何にも手を加えずにアタリの取り方だけで乗り切れますよね。」

この日の天気は決してペレ宙日和ではなく、風流れに加えて日射しも出たり陰ったりと猫の目のように変わるたびに時合いが目まぐるしく変化し、良い感じで釣れていたかと思うと突然ウキがナジまなくなったり、スレ・カラツンが続いたりと、傍で見ていても安定して釣り続けるには極めて困難な状況であることが分かる。そんなときでも綿貫は慌てず騒がず、それまで時折顔を出していた良型べらを無理に狙うことなく、長めのトップがナジミ始めた直後の早く鋭いアタリで上層の中小べらを的確に釣り込んでいく。そして陽が差し、さざ波が立ったことで活性が上がった良型がタナに入り始めたと感じると、「BBフラッシュ」の追い足しで調整。エサ持ちを強化した軟らかめのエサを打ち込むと、ナジミ際の動きは一切見送り、トップが深くナジんでエサがタナに入ったところででるズバ消し込みアタリに狙いを切り替える。もちろんこれで良型連チャンとはいかないが、明らかにウキの動きが安定し、ポツリポツリではあるが再び良型べらが釣れ始めたのだ。これこそが〝欲張り〟ペレ宙釣りの真骨頂。おそらく数・型いずれか一方だけを狙った釣り方では大きなタイムロスとなり、競技の釣りでは挽回困難な致命傷となりかねないだろう。

記者の目【大中小と根こそぎ狙う〝欲張り〟釣法はペレ宙釣りの新たなトレンドだ!】

かつてのペレ宙釣りはエサを打ち込むほどに良型のへら鮒がタナに溜まり、その結果として中小べらが表層に追いやられることでタナの棲み分けができていたが、以前ほど型の差がなくなった現代ペレ宙釣りにおいてはそうした状況になりにくく、当時と同じアプローチでは釣りきることが困難であることは想像に難くない。記者は当時の釣り方を〝強さ一辺倒の釣り〟とも〝頑固一徹のブレない釣り〟と記憶している。時合いが訪れるまでかなりの時間はかかるものの、その先には大型べらバクバクの至福の時が訪れたものだが、現代ペレ宙釣りにおいては夢のまた夢。むしろ無理に大型ばかりを狙わなくても十分な釣果が得られるため、時間をかけることは無駄な努力と言わざるをえない。こうした状況に一抹の寂しさを感じなくもないが、やはり時代に取り残されないためには自らの釣りを変えなければならないことは明らかで、現代ペレ宙釣りでは無理に型を釣り分けるのではなく、ペレットエサの高集魚性・高比重という特徴を生かしながら〝欲張り〟に根こそぎ釣りきるのがトレンドといえるだろう。いつまでもかつての夢を見続けて再び時代が変わることを座して待つか、それとも綿貫のように時代を切り開くべく自ら動くのかは貴方次第だ!