稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第47回 セット釣り専用バラケの新境地「セットアップ」使いこなし術|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第47回 セット釣り専用バラケの新境地「セットアップ」使いこなし術

現代ウドンセット釣りはバラケの使い方で勝負が決まるといっても過言ではない。しかし近年その肝心のバラケを扱いきれない現状が、この釣りの難しさを助長している最大の要因ではないだろうか。かつてのようなパワー系の抜きバラケの釣りは鳴りを潜め、変化の激しい時合いに対しバラケを抜いたり持たせたりと、こまめに調整を加え続けなければアタリを出すことが困難な状況が続いている。

そんな現状を見るに見兼ねて立ち上がったのが、ご存じマルキユーチーフインストラクター横山天水。セット釣りの名手として知られる氏が目指したのは、誰が使っても持たせやすく、しかも的確に抜けるバラケエサ。開発に着手してから丸一年、徹底したフィールドテストを繰り返して、ついに新境地ともいえる超自在性バラケエサ『セットアップ』が完成した。その名に込められた横山の願いは、ズバリ“セット釣りの再構築”。組み立てることすらできなかった難解なセット釣りを理想のスタイルに組み立てられる、夢のようなバラケエサが今ここに誕生!これでステップアップは間違いない!?

釣れる人だけ釣れるエサでは未完成。目指したのは誰もが操れる自在性!

「今のウドンセット釣りは確かに難しい。だからといって僕らは手をこまねいていた訳じゃない。現実に難しいと言われながらも釣る人は釣っているのだから、そこには何か理由があるはずと考え、現在のウドンセット釣りの傾向と今釣れている人達の釣りを分析してみると、あることに気がついたんだ。」

そう言って横山が話してくれたのは、概ね次のような内容であった。

1.最近釣れている人達のバラケには、現代ウドンセット釣りの“三種の神器”「セットガン」「粒戦」「とろスイミー」が必ずといって良いほどブレンドされている

2.近年管理釣り場のへら鮒は“三種の神器”に代表される粗い粒子のバラケに好反応を示す傾向がある。しかし、そうしたタッチのバラケを自在にコントロールすることは難しい。逆に言えば、バラケを自在に操れれば確実に釣果が上がるはずだ

3.名手といえどもバラケエサを完成させるためには“三種の神器”に加え、さらに3~4品種の麩材が加えられており、トータルすると6~7品種となり明らかに多過ぎる。当然ながらそのエサ調整やエサ付けは複雑化を極め、容易く真似をすることはできない。いわばトップアングラーだけの専売特許のようなものになっている感は否めない

「実際釣れている人達のバラケのブレンドを見ると、そのほとんどで『セットガン』『粒戦』『とろスイミー』の3品種が使われている。この3つはある意味これでひとつのエサと考えられるが、これに加えるエサが最低でも2種類。多いときには3種類4種類と増えていっている現状に、セット釣りの難しさを助長するひとつの要因があるんじゃないかと考えたんだ。現在マルキユーには『セット専用バラケ』や『パワー・X』、『セットガン』など数多くのセット釣り用バラケエサがある。特に『セットガン』は完成度も高く、数多くの実績を上げている。先に述べた3品種とこれらに共通するのは粒子が粗いこと。つまり現代ウドンセット釣りのキモは、粗い粒子のバラケをいかに使いこなすかにかかっていると言っても過言ではないだろう。 口で言うのは容易いが、実際にやってみるとこれが実に難しい(苦笑)。硬くしたりネバリを強めたりすると肝心のバラケ性が失われたり、それを緩和しようと調整を加えると途端にバラケが持たなくなってしまう。肝心なことは適度にバラケさせながら持たせたうえで、釣り手が意図するタイミングで抜けること。これができなければバラケとしての体をなさず、この自在性を限られたアングラーだけではなく誰でも手にすることができなければ、本当の意味で良いエサとはいえないと考え、新エサの開発に着手したという訳だ。」

さらに横山は『セットアップ』の開発経緯についてこう続けた。

「これだけ『セットガン』『粒戦』『とろスイミー』がポピュラーに使われているということは、紛れもなくこうした素材に対してへら鮒が良い反応を示していることの証であり、これらをブレンドの核にすることが絶対的に釣れるエサに仕上げるためのポイントであることは明らかだ。そのため、まとまり難い粒状素材の長所を最大限引き出すことができる、いわばまとめ役(組み立ての指揮をとるコンダクター)のエサがどうしても欲しかったんだ。 当たり前のことだが粒状バラケはまとめ難い。まったく持たせることを意図しない水面直下の抜きバラケならばいざ知らず、多少なりとも水面下に沈めてから抜かなければアタリを出さない状況であれば、そのタイミングを常にコントロールし続けなければならない。その際、持たせようとしてバラケに強い圧を加えてガッチリ固めてしまうと、確かにバラケはタナまでナジむだろうが、狙ったタナに寄せることもクワセに誘導することもできない。よってバラケに加える圧は程々に止め、むしろフワッとしたソフトタッチの圧加減でもしっかり持ってタナで抜け、反対にギュッと押さえてエアーを抜いた強めの圧加減でも、へら鮒の寄る量がキープできる程度のバラケ性を失わないエサが理想的なバラケなんだ。ウドンセット釣りが得意なアングラーは、こうしたエサ付けのコントロールやタッチ自体の調整を自在にできるが、一般のアングラーではかなり難易度が高い。今回は苦労の甲斐あって、悩める多くのアングラーがバラケの粒子感を損なわず、しかも扱いやすいタッチにセットアップ(※組み立てるという意味)ができる画期的なバラケエサができたと確信しているよ(笑)。」

使用タックル

●サオ
合成竿「白道」 9尺1寸

●ミチイト
0.8号

●ハリス
上=0.4号-8cm、下=0.3号-25cm

●ハリ
上=がまかつ 角マルチ6号、下=がまかつ 角マルチ2号

●ウキ
『覇王天水』浅ダナセット用PCムクトップ仕様
【1.0-0.8mm径PCムクトップ11.5cm/6.2mm径二枚合わせ羽根ボディ6.0cm/1.0mm径カーボン足7.0cm/ オモリ負荷量≒0.82g】
※エサ落ち目盛りは空バリで全9目盛り中6目盛り出し(『感嘆』を付けると5目盛り出し)

●ウキゴム
ゴム管+自作松葉

●ウキ止め
細めの刺繍糸

●オモリ
ウレタンチューブ装着板オモリ1点巻き

●ジョイント
極小サルカン

タックルセッティングのポイント

■サオ
現代セット釣りでは釣り場規定最短尺が基本だというが、今回は岸からの固定桟橋であったため9尺を選択。また今後新べらの放流が始まると、やや沖めに居着く傾向のある釣り場では13尺くらいまでは使用するという。ただし竿は長くなるほどバラケを持たせることが難しくなるので、そんなときこそ『セットアップ』の出番だと横山は言う。

■ミチイト
季節やへら鮒の型によってこまめにセッティングを変える横山だが、今回は標準的な状況を想定して0.8号を選択。

■ハリス
まだ麩系ダンゴエサへの反応が強い時期なので、あわよくばバラケも食わせられるセッティングとして上ハリスは0.4号/8cmとした。また下ハリスは0.3号/25cmを基準とし、ウキの動きを見ながら微調整を加えていたが、最も感じが良かったのはやはり25cmで、時合いをつかむとナジミ際の早いアタリでも確実に下バリを食わせていた。実はこれも『セットアップ』の効果なのだが、詳しいことは後ほど紹介することにしよう。

■ハリ
この時期の標準セッティングいうことで、上バリはがまかつ「角マルチ」6号。今まではバラケの持ちが悪くなるとハリを大きくして対応することもあったが、『セットアップ』をブレンドすることでハリはそのままでも十分持たせられるようになったという。また下バリはくわせエサとのマッチングを考慮し同2号で完全固定。もちろんこれからは軽めのくわせエサが良くなる時期なので、下バリはクワセの種類によって使い分ける必要があるという。

■ウキ
いつもながら横山の使用するウキはやや大きめである。もっとも取材時のへら鮒のコンディションであれば丁度良いくらいなのだが、これは横山の釣りがタナをしっかり作って釣り込むスタイルであることの証でもある。特に今回しようした浅ダナセット釣り用のウキは出来上がったばかりの新作で、PCムクトップながらエサの重さをしっかり支えるので、上層で揉まれてもエサをタナに入れやすく非常に扱いやすいと絶賛だ。

横山天水が推奨する「セットアップ」使いこなしのポイント 其の一:安定的に釣るためにはバラケを持たせウキをナジませること!

ウドンセット釣りにおいて、抜きセットは確かに釣れるアプローチのひとつだ。しかしセット釣りの基本ではないと横山は考えている。

「セット釣りの基本はバラケを持たせてウキをナジませること。これはウドンセット釣りに限った話ではなく、すべての釣り方に共通するへら鮒釣りの基本だ。しかし実際にはウキがナジむ前にバラケを抜いてしまう釣り方で釣果をあげているアングラーも決して少なくなくない。そのため、抜かなければ釣れないものだと思い込んでしまう人もいるようだ。確かにバラケを抜いてからアタリが出ることもあるが、肝心なことはナジませたうえで最もアタリが出る抜き方を探り、そのタイミングに合うように毎投エサ付けを調整することなんだが・・・。釣り場で見ていると、セット釣りで上手く釣れない人には共通点がある。それはバラケがタナまで持っていないこと。もちろん意図的に抜いている訳ではなく、持たせようとしても持たずに、結果的に抜きバラケになってしまっている。なぜこうしたことになるのかといえば、それは粗い粒子で構成される現代のバラケがまとめ難く、エサ付けし難いからに他ならない。しかしそれも『セットアップ』があれば解消されるだろう。」

実釣での横山は推奨される標準ブレンドでほぼ釣りきったのだが、エサ付けを見ていても手もみをしたり強い押し練りを加えたりすることはまったく無かった。常にバラケの表面を滑らかにしつつも、強い圧を加えない粒子を生かしたいつも通りの丁寧なエサ付けで、しっかりウキをナジませながら次々と竿を絞り続けた。

「今日は朝のうちへら鮒がはしゃいでいたときに抑え気味にしただけで、その後は基エサのままほぼ釣りきれたね。これこそが『セットアップ』の最大のメリットなんだ。使ったブレンドは抜き系のパターンだったが、エサ付けの際に僅かに強めに付けるだけで簡単に持たせることもできる。とかく早いアタリを出そうとするあまり、ついあまいエサ付けにしてしまうことが多いが、たとえ浅ダナの釣りであっても丁寧にエサをタナに入れて行けば次第に強いアタリが増えて、やがて安定した時合いが訪れる。このときガッチリ釣り込むためにも、バラケをナジませること大切なんだ。」

当日は南の風が吹いたときに川なりの流れが生じウキが流されたが、こうした状況になったときこそナジませ釣りが効果を発揮すると横山は言い、周囲の釣り人がアタリを失うなか、失速することなくコンスタントに絞り続けたのである。

横山天水が推奨する「セットアップ」使いこなしのポイント 其の二:扱いは自由自在!ポテンシャルを信じて打ち抜くべし!

水中でのバラケの開き具合を見ると良く分かるが、「セットアップ」をブレンドしたバラケはエサの塊の中から「粒戦」や粗めの重い麩・さなぎ粉といった粒子が適度なタイミングでポロポロと抜けて直下に沈んでいく。試しに練ったり強く揉んだりしたものも試してみるが、多少開き始めるタイミングが遅くなるだけで、これもまたしっかり粒状バラケの特性が生かされたバラケ方を示した。横山のバラケの扱いを見ていると、一般のアングラーに比べては手を加える頻度が少ないのだが、もしその対極となるエサをいじり過ぎる扱い方をするアングラーに対してのアドバイスは?と訊ねてみると、

「元々ネバリの出にくい粒状バラケであり、『セットアップ』自体もまとめ役を果たすだけで、エサの開きを阻害するようなネバリは出ない。だから腫れ物に触るような神経質な扱い方は必要なく、各自のクセや好みのままで構わないから、とにかくブレンドパターンを参考にして思ったように手を加えて使ってみて欲しい。そしてポテンシャルを信じて打ち抜いてもらえれば、きっとこのエサの真価が分かってもらえるはずだから。」

実際に記者もバラケの調整をやらせてもらったのだが、まず基エサの時点で自身が従来使っている粒状バラケよりも遥かにまとまりやすいので、使い始めの時点での手もみが一切必要ないことに驚きを隠せなかった。横山がやっているようにボウルの隅に寄せて軽く抑えたものを摘み取るだけでエサの形になるので、エサ付け時間の短縮にも大きく寄与しそうな感じだ。さらに手水を加えたり、あえてこすり付けるように練り込んでみたが、そのエサを付けてもしっかりナジんだウキがゆっくり返してくる。しかも途中で割れ落ちしないので、バラケを上バリに残していないとアタリが出ないときには極めて有効なタッチといえるだろう。

横山天水が推奨する「セットアップ」使いこなしのポイント 其の三:ポテンシャルを生かしきれればカラツン抑制効果のボーナスも!?

さらに横山の釣りを見ていて気がついたことがあった。それはへら鮒が湧くほどの状態でもバラケを食うことが極めて少ないことだ。

「これこそがバラケが的確に開いている証拠だよ。誰しも経験があると思うが、バラケを持たせようとして硬くしたり練ったりして開きを抑えると、明らかにバラケへのアタックが強まることがある。するとカラツンが多くなるし、場合によってはへら鮒の寄りが減ってしまうこともあるんだ。こうした現象を起こさないようにするためには、タナに入った時点でバラケが適度に開くことが肝心で、これさえできればバラケにアタックされることなく、へら鮒と一定間隔の距離を保ちながら、食い気のあるへら鮒をタナまで誘導できるようになるんだ。」

気温・水温が下がってくれば自ずとバラケへの反応は弱まるが、それでも経時変化により開きが悪くなってくると途端にカラツンが増えることがある。そうしたケースでも、今回横山が推奨する「セットアップ」ブレンドのバラケは、常にバラケ本体の塊から粒状素材が的確に抜け落ちるので、むしろバラケ本体よりも落下する粒状ペレットやさなぎ粉に引きつけられる形で、直下に位置するくわせエサへと誘導されるという。こうした水中でのシステムが構築されれば、我々アングラーは下ハリスの長さ。即ちくわせエサとの距離を調整することに専念することができるので、バラケのタッチに次いで難解とされる下ハリスのアジャスティングも容易になるに違いない。さらに横山はこう続けた。

「開きの良いバラケを上手くタナに入れられれば、無理にバラケを抜く必要はなくなる。ただしコンスタントにアタリを出すための持たせ方やバラケさせ方には幅広い調整が必要で、特に浅ダナの釣りでは“決まり”を見つけるのが難しく、また見つけられたとしても長時間持続させることが難しい。だからこそこ常にこまめな調整が必要となる訳で、そうした意味では浅ダナで使ってもらった方がより『セットアップ』の扱いやすさと効果のほどをリアルに感じられるかも知れないね!」

総括

新エサの仕上がりに絶対の自信を持つ横山。多くを語らずとも実戦で『セットアップ』の効果のほどを示してくれたが、最後にこう言って締め括ってくれた。

「複雑に釣ろうと思えばいくらでも複雑にできるし、一般のアングラーが理解できないほど難しいテクニックを駆使して釣ることも可能だが、それではへら鮒釣り本来の楽しさを味わおうとする人達に壁を作り、ステップアップを図ろうと一生懸命頑努力している未来のトーナメンターに対してハードルを上げてしまうことになる。こうした現 状は僕らにとって決して看過できないことであり、純粋にへら鮒釣りはもっと簡単に楽しく釣れなければいけないジャンルの釣りだと思っている。今回完成した『セットアップ』は現在のへら鮒釣りの中で最も難しいといわれるウドンセット釣りに照準を合わせたバラケ専用エサだが、今まで上手くコントロールできなかった、抜いたり持たせたりといった調整が簡単にできるよう工夫してあるので、是非一度手に取ってその仕上がり具合を実感して欲しいね。絶対に期待を裏切らないはずだよ!」