稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第63回 石井忠相の実戦的リアル段底|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第63回 石井忠相の実戦的リアル段底

この時期に段差の底釣り(以下、段底)をピックアップ?と思われるかもしれないが、ここ数年はへら鮒の活性が高い時期であっても、食い渋りを起こりやすいトーナメントや混雑時には、十分に勝負のできる釣り方であることが実証されている。このことからも分かるとおり、明らかに段底の有効期間が長くなっており、それに伴い釣り方にも一工夫が加えられ、状況に応じてアレンジされた様々なアプローチが生み出されている。しかし、その一方で絶対にブレさせてはならない段底の軸も存在する。それはタナ(底付近)に集めて底にあるくわせエサを食わせること。そのためにはウキを深くナジませ、タナでバラケを抜くことが必要不可欠だが、近年はさらに寄せ過ぎず、かといって少な過ぎず、しかも程良い距離感を保ちながら攻めることが重要だとマルキューインストラクター石井忠相は言い切る。果たしてそれはどのような釣り方なのだろうか?〝論より証拠〟実戦でブラッシュアップされたアプローチをリアルに再現してもらおう。

情報(ウキの動き)を制する者が段底を制す!

ご存知の通り「釣技最前線」では動画でウキの動きをリアルにお伝えしている。アタリはもちろんのこと、エサを打ち込むところから始まりウキのナジミ方や戻し方、そして肝心のアタリ直前のサワリまでつぶさに再現しているが、特に今回はアタリそのものよりも、ウキが立ってからアタリまでの動きに注目し、そのとき水中では何が起きているのかをイメージしながらご覧いただきたい。 冒頭なぜ改めてこうしたことに触れるのかといえば、情報量(サワリ・アタリを含めたすべてのウキの動き)が少ない段底では、いかにウキの動きを出し、それを読み、何をすれば良いのかを判断することが困難なのだが、タックル・エサ・アプローチが三位一体となった石井の釣技により、厳寒期とは思えない〝良い動き〟が再現されているからだ。バラケの抜け方に関しては、ウキが戻し始めるタイミングとスピードから明確にイメージでき、抜けたバラケに対して興味を抱き、やがてくわせエサへと導かれる際にトップに表れるサワリが、やがて食いアタリにつながることを伝えている。すなわちこのサワリこそが水中から発信される情報であり、サワリからすべてを読み解き、良いサワリを持続させた者だけが確実な釣果を手にすることができることを意味している。 釣り場の状況としては朝の冷え込みが続くなか土曜日の混雑も重なり、釣り座移動もままならないタフなコンデジションであったが、8尺という短竿のメリットを最大限に活かした繊細な釣りを披露してくれた石井。まずは彼がイメージする段底について語ってもらった。

「まず確かなことは、段底は冬場の食い渋り時に手堅く釣れる釣り方だということです。さらに近年はへら鮒の大型化によって底に着き難くなっている管理釣り場や、魚影密度が薄い野釣りなどでも活躍する機会が増えています。しかし手堅いといっても、やはり押さえるべきポイントをしっかり理解しておかないと、以前ほど簡単には釣れなくなっているのも事実です。また底近くのへら鮒が冬場段底で攻められ続けたため、ワンパターンな攻め方では一日釣れ続かなくなっていることも確かです。しかし段底に王道はありません。大切なことは基本に基づいた攻めを愚直に繰り返すこと。これさえできれば確実にへら鮒は底に溜まり、やがて口を使ってくれるでしょう。」

今回の取材フィールドは埼玉県川口市にある中の島センター。小規模な管理釣り場だが良型のへら鮒が多く、厳寒期でも活性は高い。水深は2.0~2.5m程と浅く8尺竿で容易に底がとれるので、段底のウキの動きを見るには好都合だ。中央桟橋の事務所向き南寄りに釣り座を構えた石井は、早速タナ取りを始めた。基本通りの手順に沿って水深を計測し、合わせて傾斜や凹凸の有無といった底の状態をつぶさに探り始めると、傍目にもかなり起伏のある不安定な底の状態であることが分かる。隣に空きがあったのでそちらに移ることを勧めたが石井は、

「混雑する土日祝祭日には釣り座の移動もままならない状況も少なくないので、このまま釣り進める方が参考になるでしょう。確かに底の状態は良いことに越したことはありませんが、短竿のメリットを活かせばなんとかなるはずです。」

とキッパリ言い切り、まさにリアルガチの実釣取材が幕を開けた。

使用タックル

●サオ
かちどき「匠絆」8尺

●ミチイト
オーナーばり「白の道糸」0.6号

●ハリス
オーナーばりザイトSABAKI へらハリス 上=0.5号15cm→10㎝、下=0.4号55cm~45cm

●ハリ
上=オーナーばり「バラサ」7号、 下=①オーナーばり「セッサ」4号 ※『魚信』使用時 ②オーナーばり「玉鈎」4号 ※『感嘆Ⅱ』使用時

●ウキ
忠相「S Position BOTTOM」No.9
【1.0-0.6mm径PCムクトップ13.0cm/5.6mm径一本取り羽根ボディ9.0cm/2.0mm径竹足5.5cm/ オモリ負荷量≒1.1g/エサ落ち目盛りはくわせが底に着いた状態で全11目盛り中9目盛り出し】

●ウキゴム
忠相 Foot Fit(S)パープル

●ウキ止め
忠相 Dual Hold(M)

●オモリ
フィッシュリーグ絡み止めスイッチシンカー0.5g+ 調整用0.3mm厚板オモリ(内径0.4mmウレタンチューブ装着)

●ジョイント
オーナーばり Wサルカン(ダルマ型)24号

タックルセッティングのポイント

■サオ
タナ取りの精度は言うに及ばず、今回はくわせの着底位置に凹凸があることから、僅かなズレも許されない状況であったため、最も操作性に優れた規定最短8尺での実釣となった。それでもエサの打ち込みポイントが僅かにズレただけでウキの戻りが悪いケースや、サワリがあるにも関わらずアタリが出ないケースがしばしば見られたが、そんなときには竿先を持ち上げてくわせの位置を正しい位置に置き直すとアタリがでることが多かった。

■ミチイト
今回は比較的浅い水深とサイズの小さなウキとのマッチングを考慮して細めのラインを選択。食いアタリ自体は太めのセッティングでも出るだろうが、肝心の情報(サワリ)を少しでも多く収集するためには、こうしたきめ細やかな配慮が必要不可欠なのである。

■ハリス
基本的に上ハリスの0.5号-15cmは固定するというが、今回はめったにない状況としてウキに無駄な動きをださないこととに加え、バラケとくわせの距離感の精度を高めることが求められたため、途中で10cmに変更した。これにより僅かでもヒット率の向上につながったと石井は言っていたが、こうした基本の積み重ねと遊び(余裕)を持たせたセッティングが貴重な1枚につながるのだ。また下ハリスは最長を60cmとする石井の基準から逆算して、伸ばせる余裕を若干持たせた55cmでスタート。カラツンが続くようになった時点で45cmまで短く詰めた。実はこのハリスワークこそが適度な距離感を保つためのキモであり、たとえタナ取りをやり直す手間があったとしても、良い方向に向かうためには是非実践して欲しいテクニックのひとつである。

■ハリ
バラケの抜き・持たせをコントロールするのは「粘麩」ブレンドのバラケとエサ付けである。段底としては明らかにラフ過ぎると思われるエサ付けでも、肝心なところがタナまで持つのはバラケの特性によるところが大きいが、それを陰で支えているのが上バリの「バラサ」である。ダンゴでもバラケでも使い方を選ばない汎用性は、ありとあらゆるシチュエーションで石井の釣りをサポートする。一方下バリはくわせとのマッチングを最大限考慮している。つまり「魚信」のような大きく重いくわせには軸太の「セッサ」を用い、「感嘆Ⅱ」や「力玉」といった小さく軽いくわせには、その特性を殺さないよう細軸軽量タイプの「玉鈎」を用いている。一般的にはくわせを交換することはあっても、その都度ハリのタイプやサイズまで変えることまでは気が回らないことも多く、こうした繊細さが石井の釣りを下支えしていることは明らかだ。

■ウキ
この冬発売されたばかりの新作ウキで、見事に水中の情報を引き出し、その重要性を知らしめてくれた。現在パイプトップが主流を占める底釣りウキだが、PCムクトップに竹足という組み合わせにより、ムクトップウキにありがちな戻りの不具合を一掃。まるでパイプトップウキのようなレスポンスの良さに加え、PCムクトップの持ち味である微細なサワリがハッキリと表れるので、次の一手に対する無駄が省け、精度の高いアプローチが可能になる。今回はそうした点を動画で確かめて頂き、釣り方に合ったウキがいかに大切なのかを再認識していただきたい。

石井忠相流 段差の底釣りのキモ 其の一:確実なくわせの着底と安定感を担保する「下バリ5cmズラシ」の基本ダナ

石井のタナ取りは極めてシンプルだ。ウキが確実に沈む小さめのタナ取りゴムを下バリに刺し、丹念にエサ打ちポイント周辺の水深と起伏の有無を確認すると、底の形状を頭にインプットしたうえで最も安定したところの水深を基準とし、タナの目印として付けたトンボにエサ落ち目盛りから5cmほどズラした目盛りを合わせてスタートした。寄せるためにややラフにエサ付けされたバラケのナジミ幅は毎投6~7目盛りを示し、数秒の静止の後にジワジワと戻し始める。そして10秒ほどでエサ落ち目盛りが水面上に出ると、待つことなく次投を切り返す。

「タナのセッティングについては色々な流儀があると思いますが、私が下バリトントンから5cmズラしたタナを基準とする理由は、底に多少の傾斜や凹凸があっても確実にくわせを底に着けるためです。これがギリギリ底に着くタナ設定だと、何らかの理由でくわせが底から離れてしまう恐れがあり、それではどんなに待っても食いアタリは出ません。実際水中では流れによりミチイトが大きく湾曲することもありますし、傾斜や起伏の大きなポイントでは僅かなエサ打ちのコントロールミスで、くわせが底を切ってしまうことは往々にして起こります。そうしたことがあっても概ね5cmの余裕を持たせておけば、ほぼ確実にくわせを着底させることができると考えています。」

記者にも経験のあることだが、下バリトントンのタナ設定では必ずしも毎投エサ落ち目盛りがでないことがある。それも比較的フラットな底での話だ。それだけズラシ幅が少ないと底を切れるリスクが高いということだが、そうしたリスクを冒すことなく確実に手堅く拾える環境を整えるための手段が「下バリ5cmズラシ」の真意という訳である。

石井忠相流 段差の底釣りのキモ 其の二:理想的な寄りと距離感を可能にした「粘麩」ブレンドのバラケ活用術

今回の取材における最大のトピックは「粘麩」をブレンドしたバラケであろう。本来両ダンゴのエサ持ちを強化するというコンセプトで開発された「粘麩」だが、石井はこれを段底のバラケに加えることでエサ使いの自在性を高めている。

「ミスマッチと思えるかも知れませんが、適量ブレンドすることで従来の段底では考えられなかったようなバラケのラフ付けが可能になるなど、明らかにバラケの活用域が広がります。私は両ダンゴであってもバラケであっても、エアーを噛ませた(含んだ)エサ使いを心掛けています。なぜならエアーを噛ませたエサは軽く膨らみが良いので、集魚力を最大限に活かすと共に早い食いアタリが期待できるからです。今シーズン好感触を得ているのが今回使用したブレンドですが、先ず『粒戦』はペレットの集魚力に加え、縦方向に確実に落下することでタナを安定させることができます。昨秋リニューアルされた『段底』はタナまで確実に持った後にサラッとバラけて底付近のへら鮒を刺激してくれます。『セットアップ』は現代セット釣りのベースエサで、他の素材との相性が良いことに加え、まとまりの良い手触り感が気に入っています。そして肝心の『粘麩』ですが、ネバリが強い特性を持つエサとしては極めて経時変化が少なく、それでいて適度な重さと強いまとまり感があるので、従来では不可能とされたラフ付けが可能になりました。何気ないようですが、これにより使えるエサ幅が格段に広がり、適度なへら鮒の寄りと程良い距離感をコントロールしやすくなったのです。」

このように「粘麩」ブレンドのバラケに絶対的な自信と信頼を寄せる石井だが、実釣では状況に応じてエサ付けの形状・圧に微調整を加えて常にウキを深くナジませ、それでいて決してへら鮒任せではなく意のままにバラケを操っている様子が見て取れた。しかもそのテクニックは決して難しいものではなく、エサ付けの際にほんの僅か角張らせるとか、表面を指先で転がす回数を増減させるだけで変えて見せたのである。

「唯一コツがあるとすれば、それはエアーを抜き過ぎないことです。ボウルの中のエサにはあらかじめエアーがたっぷり含まれていますので、それを指先で適量つまみ取ったら表面を軽くまとめてハリに抱かせ、最後に指先でハリのチモトを押さえる圧を調整するだけです。こうすれば表面はまとまっているように見えても、中はふんわりとエアーを含んだ状態になるので、あとは水深やへら鮒の寄り具合に応じてサイズや圧加減を調整すれば良いだけです。段底も年々変化をしており、単に数多くのへら鮒を寄せれば釣れるという訳ではありません。もちろん少ないとアタリ自体減ってしまいますが、多過ぎてもウキの動きが複雑になり過ぎてしまいます。とりわけ近年は底ありきでバラケを底に敷き詰めても、へら鮒の量やくわせとの距離感が上手くコントロールできないと釣り切れないのが実状です。特に今回のように水深が浅いところではバラケが一点に集中しがちなので、思い切ったバラケの濃度の調節が必要になります。具体的にはバラケのサイズを大きくしたり小さくしたり、またエサ打ちテンポを速めたり遅くしたり。場合によってはエサ打ちの手を一時ストップすることもあります。よくある例としては、アタリが無いときにバラケを絞る(拡散量と範囲を狭める)と急にアタるようになりますし、カラツンが多くヒット率が上がらないときに意図的にアタリを減らす方向に進むと好転することがあります。こうしたことを実践するのはとても勇気のいることですが、冬場における貴重な1枚を確実に獲るためには、あえてやるだけの価値のあることだと思います。」

この言葉通り、石井はアタリがボケたときやカラツンが連発した際、ハリスを詰め、バラケを小さくして持たせ気味にすることで確実に釣果を伸ばしていった。さらにこうしたことをヒントに、バラケだけでは寄りを制御しきれなくなると意図的にトイレ休憩を兼ねた長めの〝床休め〟を試み、その再開直後にはことごとく連チャンを決めたり、良型の新べらをモノにしていたのだ。

石井忠相流 段差の底釣りのキモ 其の三:ハリスワークも加わり、さらに距離感の精度を高める

石井の釣りを見ていて、段底にも関わらずハリスの長さ調整をマメに行うことに驚かされた。もちろん宙釣りほど頻繁ではないが、彼がいうところのへら鮒との〝距離感〟を適切に保つためには、バラケのコントロールだけに頼るのではなく、違和感を覚えたら躊躇なく交換することの大切さを思い知らされたのだ。

「私の段底の基本的な下ハリスの長さは50cmです。今回は混雑による食い渋りを想定してやや長めの55cmでスタートしましたが、思ったよりもへら鮒の動きが良かったので、最終的には45cm まで詰めてイイ感じて釣れました。万一、ウキの動きが悪くても、下ハリスの長さは60cmをMAXとしています。理由はこれ以上長くすると、へら鮒を交えたバラケとくわせの距離感のコントロールが困難になるからです。確かに下ハリスを長くしてバラケの位置を高くすることで釣れることはあるでしょうが、それをコンスタントに続けることは至難の業です。リスクを冒して目先の1枚を獲りに行くのではなく、地道に攻めて先々の2枚3枚を狙った方が良い結果につながると信じています。 実際のところ底釣りでのハリス交換はタナ取りの手間がかかるので、正直言ってロスが多くなるリスクがあります。そこでお勧めしたいのが、釣っているタナに何らかの違和感を覚えてタナを計り直すのに合わせて交換することです。これは私も実践している方法ですが、これならば無駄な手間が省けるので、時間的なロスも最小限に抑えられるはずです。」

こうまとめてしまうと、何やらハリスワークが最後の決め手のように思えてしまうが、あくまで下ハリスの長さ調整もタックルアジャスティングのひとつであり、決してこれだけに頼っている訳ではない。実際この日、スタート時点から変わったものは数多く、最終的に時合いをものにして決まった時点では、上ハリスは15cmから10cmに、下ハリスは55cmから45cmに、下バリは「セッサ」4号から「玉鈎」4号に、くわせエサは「魚信」から「感嘆Ⅱ」へと変わっていた。さらにその過程においてバラケは手水によりしっとり感の増したタッチに変化し、エサ付けは小さめで4~5目盛りナジませるとすぐに戻すように調整されており、タナの再確認(タナ取り)や微調整は何度行ったか分からない。こうした地道な対応の積み重ねが、容易に口を使わない食い渋ったへら鮒に口を使わせるには有効であることを改めて思い知らされた取材であった。

石井忠相流 段差の底釣りのキモ 其の四:圧倒的な情報量を引き出す新作ウキ 忠相『S Position BOTTOM』

ウキの動きが少ない厳寒期が旬といわれる段底。ただでさえ情報量が乏しいなかでの釣りを強いられるが、そうした状況下においても多くの情報を引き出すためには、ハイレスポンスのウキが必要であることは言うまでもない。今回石井が使っていたのは発売間もない忠相『S Position BOTTOM』。段底に必要なウキの要素がすべて詰まった底釣りウキだ。もちろん盛期の両ダンゴの底釣りでもハイレベルのパフォーマンスを発揮するが、記者が感じた段底に適している点は概ね以下の通りである。

メリット 1:細身ながら強過ぎず弱過ぎず、レスポンスの良い適切な浮力(オモリ負荷量) ※ラインナップはボディ8cm~15cmの8アイテムで、水深に応じて使い分ける

メリット 2:太めの竹足を採用することで浮力(オモリ負荷量)の低下を抑制

メリット 3:細めのPCムクトップがメリハリのあるナジミ・戻しを実現すると共に、微細なサワ リまでも逃すことなく再現し、明確な食いアタリを伝達。さらに今回のような凹凸のある底では、トップに表れる目盛りの違いで凹部に着底しているのか、凸部に着底しているのかがひと目で分かるので、効果的なくわせの置き直しが可能になる

「段底の基本は、一旦ウキを深ナジミさせたところでバラケを抜いてウキを戻し、そこからのサワリに連動する形でアタリをだすことです。これに必要な要素はバラケの重さを支える浮力と、抜けたときの戻しのスムーズさ。そして何より肝心なのがへら鮒の状態を知らせてくれる感度の良さ。つまりサワリを余すことなく表現し、明確な食いアタリを出すレスポンスの良さです。もちろんこうしたウキでなくてもアタリは出ますが、少しでも多くの情報が収集できれば、常に効果的な対策で先手を打つことができるので、手堅さに加えて勝負強さも加わるという訳です。」

段底の食いアタリは総じて小さい。実際取材時のアタリの大半は1目盛り程度のものが多く、なかには半目盛り入るか否がといった微細のものも少なくなかったが、そんな小さなアタリであっても決して見逃すことはないほど鋭さが際立っていたのが印象的であった。

総括

いうまでもなく段底は、冬季において安定感の面で優れた効果を発揮する釣り方である。食い渋ったへら鮒を手堅く釣ることはもちろんだが、食いが良いときには宙釣りを凌駕する釣果を叩き出すことも少なくない。このため近年では盛期のトーナメントシーンでもしばしば見られるようになり、アプローチの多様化も相まって、明らかに適応期が長くなっている。つまり段底は、もはや冬だけの釣りではなくなっているのである。

「年々釣り方が変化するなかで、確かに段底も変わってきました。しかし根本のところでは大きな変化はないと思っています。やはり基本であるウキを深くナジませて釣ることが大切であり、そのなかでい かに多くの情報を得て、それを釣りの組み立てに生かせるかが現代の段底のキモになっているのではないでしょうか。今回はバラケに『粘麩』をブレンドすることで、段底で大切な〝距離感〟のコントロールが容易にできることを紹介しましたが、まだまだ段底の釣り期は続きますし、練習するチャンスもたくさんあります。興味が沸いたら来年まで待つ必要はありませんので、今すぐチャレンジしてみてください。」