稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第76回 西田一知のチョーチン両ダンゴ釣り|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第76回 西田一知のチョーチン両ダンゴ釣り

旬の釣り方にスポットを当ててお届けしている「釣技最前線」だが、今日までチョーチン両ダンゴ釣りにこの男の登場が無かったのはキャスティングミスなのか?そこで今回満を持してお届けするのは、マルキユーインストラクター西田一知のチョーチン両ダンゴ釣りだ。釣り場として選んだのは、鮎川湖の桟橋。盛期になるとリクエストが多くなる西田のチョーチン釣りだが、そのスタイルは長竿を軽々と操るパワー系のイメージとは相反する、緻密な計算に基づいたロジカルフィッシングを旨とし、一旦型にはまると誰をも寄せつけない無類の強さを発揮する。さらに彼の釣りを紐解くと見えてきたのは、名手ばかりではなくビギナーにこそメリットが大きな「カルネバ」効果。今回は西田の釣りを支える大胆な「カルネバ」活用術を含め、チョーチン両ダンゴ釣りに悩めるアングラー必見のプログラムをお届けしよう!

両ダンゴの宙釣りほどトータルバランスが求められる釣り方はない!

へら鮒釣りではエサ・タックル・アプローチ等々、釣りに関するすべての要素をバランス良く組み合わせるトータルバランスを求められるが、取り分け両ダンゴの宙釣りはその良し悪しによって釣果に大きな差が生じてしまうことが多い。なかでも深宙レンジを攻めるチョーチン両ダンゴ釣りは、その釣りの特性上、エサ(主に持ちと開き)に関して最も重要性が高い釣り方と考えられており、事実バランスを崩してしまうとウキがナジまなくなってアタリを失うか、反対にウキが沈没するくらい深ナジミしてアタリを出せなくなってしまうかの、いずれかのケースが圧倒的に多く見受けられる。

「以前にはボソ系の硬めのダンゴエサが流行した時期がありましたが、ここ十数年は明らかにヤワネバ系のエサが良い傾向です。近年ややボソ感があった方が良いような場面も見られますが、相変わらずネバ系は主流であるように感じます。しかも必要とされるネバリはかつてのように練り込んで目を詰まらせた(麩の粒子をすり潰したような)ものではなく、ネバリがあっても適度にエアーを含んだ軽いものでなければへら鮒が興味を抱いてくれず、たとえエサが持ったとしても目の前をスルーしてしまうのですから、実に厄介な釣況と言わざるを得ません(苦笑)。」

現在の釣況をこう解説してくれた西田だが、すべての釣りをオールラウンドにこなすなかで盛期のチョーチン両ダンゴ釣りを得意とする彼のエサ使いも、時代に合わせて変化を遂げてきた。そして現在、チョーチン両ダンゴ釣りに求められるエサの特性はズバリ〝軽さとネバリ〟だと断言する。かつては「バラケマッハ」を駆使した超カタボソタッチでチョーチン両ダンゴ釣りの一時代を築いた西田だが、現代のへら鮒に口を使わせるためには、ネバリを生かして食い頃にしたエサを供給しなければ、決して釣りきることができないことを痛感しているという。

「エサは単にへら鮒が好むタッチに仕上がっていれば釣れるというものではありません。特に最近ではへら鮒の寄りが増えたときやタナが変わったときに、それまで釣れていたエサが急に持たなくなったり、連続して釣れると寄りが減少して突然ナジミ過ぎてウキが沈没してしまったりと、安定性に欠けることが多い様に感じます。自分はエサを打つほどに寄りが増してきて、たとえ連続して釣れても寄りが減ることなくアタリ続けるなかで、ウキをガンガン動かすへら鮒を根こそぎ釣りきるつもりで臨んでいます。従ってエサ付け時点では明らかに食いきれないくらいの硬めのネバボソタッチを打ち込み、タナに寄ったへら鮒にエサを削らせて(揉ませて)エサを食い頃にするようなイメージですね。そのためにはエサのタッチだけではなく、それを生かすためのウキ・ハリスワークといったタックルセッティングやアタリの取り方といったすべての要素をマッチさせないと、返ってエサが持ち過ぎてカラツンになったりウキが沈没したりしてしまいますので、今回はその辺りのトータルバランスを含めてウキの動きやヒットパターンを見て頂けたらと思います。」

使用タックル

●サオ
シマノ 特作「天道」13尺

●ミチイト
オーナーばり 『ザイトへら道糸フラッシュブルー』1.0号

●ハリス
オーナーばり 『ザイトへらハリス』0.5号 上55cm、下70cm

●ハリ
オーナーばり 上下『バラサ』 7号

●ウキ
忠相『ツアースペック F』-No.10
【テーパーパイプトップ150mm/一本取り羽根ボディ105mm/竹足60mm/ オモリ負荷量≒1.6g/エサ落ち目盛り=全11目盛り中9目盛り出し】

●ウキゴム
忠相 Foot Fit (S)パープル

●ウキ止め
忠相Dual Hold(M)

●オモリ
フィッシュリーグ絡み止めスイッチシンカー0.8g+ 0.3mm厚板オモリ

●ジョイント
オーナーばり『ダブルクレンヨリモドシ』22号

タックルセッティングのポイント

サオ
チョーチン釣りではタナ(サオの長さ)が釣果を左右する大きなポイントになることが多い。「今日は○○尺で釣りたい」などと好みを優先してしまうと、そのタナにへら鮒が十分に寄り切らない場合、思わぬ貧果になりかねない。かつては深いタナほど良型が良く釣れた時代もあったが、大型化が進んだ現在、必ずしもそうとは限らないと西田は言う。長竿を駆使したチョーチン釣りが彼の代名詞のように言われているがそれはあくまで結果であって、仮に食い気のある大型のへら鮒が上層に居る場合、そのタナを的確につかんで無駄に長竿を振ることはない。まずは直近の釣況を見て最も釣果の上がっている竿の長さを参考にスタートし、その日のウキの動きを見たうえでアジャストの必要性の有無を判断するのだが、上層でのウキの動きが激しいときには短く、アタリが少ないうえに大半のアタリがナジミきってからという状況であれば長くするのがセオリーだという。ちなみに取材時は釣果記録ノートを見た結果から13尺を継ぎ、その後のウキの動きもこのタナでほぼOKという感じで釣れ続いたため、その後竿を交換することはなかった。

ミチイト
大きな負荷のかかるチョーチン釣りでは、強度と耐久性に優れたラインが求められるが、西田愛用のラインは伸縮性に富み、無理なく大型べらとのやり取りを楽しむことができると全幅の信頼を寄せている。ちなみに1.0号という太さはこの釣りでの標準仕様だ。

ハリス
太さはミチイトとの兼ね合いにより決まるものだが、0.5号であれば良型の数釣りにも十分耐えられると太鼓判を押す。長さについてはこの長さが西田の標準仕様であり、また基準となる長さでもある。この長さでストレスを感じることなく釣り続けることができれば大釣りになる可能性大。ただし多くの場合は途中で長さの調整を余儀なくされる。当日も沈下途中でエサがもてあそばれる時間が突然長くなった時点で上下5cmずつ短くし、一時は入れ食い状態にして見せたが、比較的長い昼食休憩後は一旦元の標準仕様の長さに戻し、同じプロセスを踏みながら釣り進んだ結果、後半は短くする必要がなくストレスフリーのチョーチン釣りを堪能していた。このことからも分かる通り、それまで釣れていたからといって必ずしも同じセッティングで釣れ続くという保証はなく、大切なことは常に基準となる長さから始め、ウキの動きによって長さの調節を行うことである。

ハリ
硬めのネバボソタッチのエサを打ちきるスタイルの西田流チョーチン両ダンゴ釣りだが、「へら鮒にエサを削らせて食い頃にする」という基本コンセプトを実現するためにはエサの軽さは必須条件となる。従ってエサを持たせるためだけにハリを大きくすることはなく、標準のサイズを6~7号としてへら鮒の寄り具合や釣れる型の大小、さらには効果的なエサのサイズに合わせて使い分けている。

ウキ
トータルバランスを語るうえで、ウキが大きな役割を担っていることは間違いない。西田のウキ使いの特徴は、一般的に標準とされるものよりも浮力(オモリ負荷量)の小さなものを使うところにある。これは沈下速度を可能な限り遅くすることでエサの動きをよりナチュラルに見せることと、持ちの良さを担保された硬めのネバボソタッチのダンゴエサをへら鮒に削らせるための時間的な余裕を与え、それにより食い頃のエサにすることを目的としている。そのためには浮力のマッチングはもとより、水中で見せるへら鮒の反応や動きをリアルに表現するパイプトップが欠かせないと西田は言う。彼がまず目指すのは、ウキが立ち上がった直後のウケ・トメの動き。これが十分に出ることがへら鮒の寄りの厚さとエサへの興味の証であり、理想のウケ・トメが表れれば自ずとエサは食い頃となり、アタリへとつながるものと確信している。

西田流チョーチン両ダンゴ釣りのキモ 其の一:へら鮒に削らせて(揉ませて)も芯が崩れないエサ作り&エサ使い

西田流チョーチン両ダンゴ釣りを語るうえで最大のキモとなるのは、紛れもなく「カルネバ」をブレンドの核に置いたエサ作り、ならびにエサ使いであろう。一般的にへら鮒にエサを食わせるプロセスとして推奨されるのは、基エサを最も硬くバラけるエサと位置づけ、少しずつネバリを加えながら軟らかいタッチに調整し、アタリを途切れさせることなくヒット率を高めていくというものだ。おそらく多くのアングラーがこうしたプロセスを経てエサ合わせをしていると思うが、この方法のデメリットはエサを軟らかくする過程で、ある一線(ネバリ加減と硬軟の度合い)を超えたところでカラツンから一転し、急にエサ持ちが悪くなってしまうことであろう。当然ながらそれをカバーするための慎重なエサ合わせが必要だが、加えてエサが弾かれ難くタナまで送り込みやすいタックルへの調整も忘れてはならず、高浮力タイプのムクトップウキを使ったり、ハリスを極端に短くしたり、ハリを大きくするといった対策が必要となる。さらにエサ付けやエサの振り込み方法にもハイレベルなテクニックが求められることとなり、ビギナーはもちろんのこと中級者・上級者であってもエサを持たせる(エサをナジませる)ことに難儀する場面が少なくないのが実情だ。

これに対して西田流の組み立て方は、まったく正反対ともいえるプロセスを経て爆釣モードへと持ち込んでしまうものだ。ひとことで言えばアングラー自身が苦労して食い頃のエサに仕上げるのではなく、へら鮒にエサを揉ませる(削らせる)ことで食い頃のエサにするというものだ。

「確かに軟らかいタッチのエサは食いが良いのですが、反面途中で弾かれることも多く、良いエサが作れたとしても釣りきれないアングラーが多いのも事実です。また管理釣り場のように魚影が確保されているところであれば釣れ続いたとしても、ダム湖や山上湖などでは途中で寄りがキープできなくなることが多いので、常に寄せながら釣り続けるためにはエサの開き、つまり〝ボソ〟の効いたエサがどうしても必要になるのです。ところがこのボソタッチのエサは意外に扱いが難しく、普通に作ったのではエサ付けし難いうえに、寄りが増したときにエサ持ちを強化することも容易ではありません。従って現代チョーチン両ダンゴ釣りに求められるのはネバリのあるボソタッチということになるのですが、折角ボソを生かして仕上げたエサも軟らかくしてしまっては元も子もありません。それでは単なるヤワネバタッチのエサになってしまい集魚力を維持できなくなるので、硬めのまま集魚力を低下させずにネバボソ感を生かしきるために、軽さとネバリを兼ね備えた『カルネバ』をブレンドの軸にしたエサが必要ということになるのです。

ただしこのエサは想像以上に持ちが良いので、通常のタックルセッティングではウキが一気にナジんでしまうでしょう。また多少エサを揉まれてもエサの芯が強いため、硬く大きなエサ玉のままタナに入るのでカラツンになるケースも多いと思います。そこでナジんでいく途中でへら鮒にエサを揉ませてカラツンの少ない食い頃のエサにするために、オモリ負荷量の少ないウキと組み合わせることでエサを削らせるといった工夫も合わせて必要になるのですが…」

と、まずは西田が現在使用しているエサに辿り着いた経緯と、へら鮒にエサを削らせる狙いについて述べてもらったが、次に彼が重要だとするタックルについて解説してもらう前に、もうひとつエサについての大切なポイントについて触れておきたい。それは西田の釣りを見ていて改めて驚かされたエサ付けの速さである。まるで打ち返しのスピードを求められるカッツケ釣りのような速さで、竿を上げハリスをつかむや否やあっという間に両バリにエサが付けられるのである。

「特に速さを意識している訳ではありませんが、エサを打ち込んだ後で次投のエサをボウルの中で丸めて用意しておき、それをつまんでハリに差し込みチモトを軽く押さえるだけなのです。自分のエサ付けは傍目にはかなりのラフ付けに見えるかも知れませんが、自分のスタイルはこのくらいのラフ付けが基本であって、それも含めたエサ作りになっているのです。ブレンドパターンのレシピ通りに仕上げてもらえれば、皆さんが想像する以上に硬めでしっかりしたタッチであることが分かるはずです。これを指先ではなく付け根(人差し指と長指の付け根に摘み取ったエサを位置させて親指を使ってまとめる)で形を整えれば、ハリに付ける際にフトコロに抱かせたりハリスを持って引き抜くように付けたりする必要はなく、摘まんだハリをエサ玉に押し込むだけでも十分持つエサに仕上がります。むしろ丁寧に付けてしまうと集魚効果が半減してしまいますし、へら鮒も水中を落下していくエサに対して興味を示さなくなってしまうでしょう。だからこそラフ付けが必要なのであって、エサ付けの速さよりもむしろこちらの方が大切なのです。」

西田流チョーチン両ダンゴ釣りのキモ 其の二:エサを削らせやすくするためのタックルセッティング

では、いよいよ西田の釣りの核心に迫って行こう。へら鮒にエサを削らせて食い頃にするためにはエサ作り・エサ付けだけでは到底できないことは明らかだが、効率的かつ確実に目的を達成するためには、まずエサに対して強い興味を抱かせる軽くボソの効いたエサを使うことに加え、エサを削りやすくするための時間的な余裕とチャンスを作り出す必要がある。そのための中心的な役割を担うのがウキであり、それをサポートするのがハリスの長さとハリの大きさ(重さ)ということになる。まず取材時のウキに関しては、13尺一杯のタナとしてはワンサイズ大きいものだと断ったうえで忠相「ツアースペック F」No.10をセットしたが、これは直近の釣況からかなり上層でエサを揉まれてしまうことをあらかじめ想定したためであり、揉まれながらもタナに入れられるオモリ負荷量のものがNo.10であると判断したものである。もちろんそうした状況が分からない場合やノーマルコンディションの場合はNo.9ということになる。さらにウキに関しては単にオモリ負荷量が小さいだけではなく、エサを削らせるチャンスが増えるパイプトップウキを使うことも大きなポイントだという。近年チョーチン両ダンゴ釣りでは、軟らかいエサでもナジませやすいPCムクトップやグラスムクトップを愛用するアングラーが多いなか、あえてパイプトップを使うのもこれが狙いであり、ナジませ難いという、いわば欠点とも受け取れる特徴を逆手に取り、揉まれやすくする(削らせる時間を増やす)ための長所として生かしているのである。

「自分は他のアングラーに比べるとウキのサイズが小さいと言われますが、それはウキを中心に考えてエサを合わせているのではなく、この軽くてボソの効いたダンゴエサを生かしきるためのセッティングのひとつとして、このタイプのこのオモリ負荷量のウキが必要なのです。確かにウキはタックルの中心になるものですが、ウキだけでは目指す釣りはできません。さらに長めのハリスでナジミきるまでの時間を長くすることや、軽いエサを生かすために小さめのハリを使うことも必要です。」

取材時のセッティングはウキを除いてすべて基準となるものでスタートした西田。雨により上っ調子になったへら鮒が想定以上に上層に寄ったことを受け、途中で基エサを持ちの良いタイプに変更し、さらにハリスを上下共に5cm程詰めて対応したが、昼食休憩後の天気が急速に回復するなか、再び元のブレンドパターンのエサ・タックルセッティングに戻すとこれが決まり、イメージ通りのウキの動きで次々と竿を絞り続けた。ちなみにエサの追いが悪ければハリスは最大80cmまでは伸ばし、反対にエサ持ちに不安を感じるときは50cmまで詰めることもある。また明らかに小エサが良いときはハリも6号として、積極的に早いアタリを狙っていく。

西田流チョーチン両ダンゴ釣りのキモ 其の三:カラツンはいわば必要経費。アタリの取り方でヒット率をアップ!

西田の釣りを見ていると、たとえカラツンであっても常に強いアタリにアワせてフィニッシュさせようとしていることに気づく。おそらくそうした意識を強く抱いて臨んでいるからなのだろうが、さらに意外に感じたのが、「これは釣れるだろう」と思える良いアタリで続けざまに空振っても意に介さず、「少しばかりエサが持ち過ぎたかな」と言いながら僅かにエサ付けサイズを小さくしただけで、数投の後には同じようなアタリで連続ヒットを決めてみせたことだ。

「基本的にボソタッチのエサなのでカラツンを完全に消すことは不可能ですし、見方を変えればカラツンが出ないようなエサでは良い釣りはできませんので、カラツンは釣るための必要経費と考えています。そんななかでも釣れるアタリは必ずウキが立ったところからナジミ始めるまでの間に適度なウケ・トメが出るので、まずはこの動きが出るまでしっかりエサを打ち込んでいくことが肝心です。先にも述べましたが、釣り続けられるだけの十分な量のへら鮒を寄せるためには『カルネバ』によってエサ持ちを強化された軽くてボソが効いたダンゴエサが必要不可欠です。そしてナジミながらもエサが削られていることを示すしっかりした上下動が見られることも大切なポイントで、これが表れないときはエサが弾かれてハリから抜けてしまっている可能性が疑われますので、この場合はたとえトップにナジミ幅が出ていたとしても、速やかに打ち返さなければなりません。そしてナジミ際に明確な上下動がある場合は、その後食いアタリにつながる可能性が大きいので、直前のウキの動きに注意しながらアタリを待つのですが、ここまで来ると最初のウキの立ち上がりから連動する動きからアタるか、それともアタらないかの判断はおおよそできますね。繰り返しになりますが、こうした水中の様子がリアルに表現できるのがパイプトップウキの最大のメリットです。ムクトップウキは感度を鈍らせることで無駄な動きを抑え、エサのナジミを良くするために用いることが多いのですが、私はへら鮒にエサを削らせることを意図的に狙っていますので、ナジミ際にどの程度揉まれているのか、どのくらいエサが持っているのかといった状態がトップに表現されることが自信と安心感につながっているのです。」

映像からも分かる通り、ウキの立ち上がり直後から理想とするウキの動きが出ているときは「これはアタリそうだ」とか、意に反する動きのときは「これはエサが弾かれ過ぎたからアタらない。アタってもカラツンだ」と呟く西田。多くのシーンでその言葉通りの結果となっていたのだが、こうした流れを見せられると改めてアタリは結果であって、肝心なのはへら鮒がエサを食わざるを得ない状況を作り上げてやることであり、アングラーはそれを伝えるウキの動きに従うだけだということを思い知らされる。やがてエサ・タックルのバランスが整うと、それまでタイミングにバラつきが見られた食いアタリがトップ中ほどを過ぎたところに集中し始め、意図的にアタリを送らなくてもほぼ同じところで強いアタリで高ヒット率をキープする西田。さらに時合いをつかむとダブルヒットも織り交ぜながら、盛期さながらの豪快なチョーチン釣りが繰り広げられた。

総括

いうまでもないが、両ダンゴの釣りはハリにエサが付いていないと始まらない。しかし持たせるために過剰にネバリを強めたり、硬くしたり、重くしたエサに対して、現代のへら鮒は容赦なくノーを突きつける。現代チョーチン両ダンゴ釣りの主流はややボソを抑えた軟らかめのネバボソタッチだが、これを上手く使いこなして釣りきるのことは決して容易なことではない。今回西田が披露してくれたチョーチン両ダンゴ釣りは、そうした現代チョーチン両ダンゴ釣りに一石を投じるアプローチであることはお分かりいただけたと思うが、最後に彼から力強いメッセージを貰っているので紹介しよう。

「両ダンゴの釣りではエサを持たせることを最優先に考えなければなりません。しかもへら鮒がエサを食おうとしたときに違和感なく口にするためには〝食い頃〟というキーワードを無視することはできません。皆さんもこの最終目的に向かって様々なアプローチを試みていると思いますが、エサ付け時点で食い頃に仕上げられたエサをなんとか持たせて食わせるのも、確実に持つが食い頃ではないエサを途中で食い頃にさせて食わせるのも、行き着く先(目的)は同じですので、私のアプローチもひとつの選択肢として捉えていただければ、新たなチョーチン釣りの世界が広がるかも知れません。なにより自分が使っている『カルネバ』ブレンドのダンゴエサは大変エサ付けしやすく、ビギナーでも簡単にまとめられてキープ力も抜群です。しかも軽くてへら鮒に対するアピール力にも優れていますので、是非躍動感あふれるウキの動きで盛期のチョーチン両ダンゴ釣りを楽しんでください。」