稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第81回 綿貫正義の端境期を乗り切る正攻法の浅ダナウドンセット釣り|へら鮒天国

管理釣り場・野釣り場の、最新釣果情報が満載!「へら鮒天国」

稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第81回 綿貫正義の端境期を乗り切る正攻法の浅ダナウドンセット釣り

活性が高く食いが良い時期であれば、迷わず両ダンゴをメインとした釣り方を選択するであろうが、時合いが不安定になる秋から冬にかけての端境期においては、セットか両ダンゴかいずれを選択するのか迷うことも多い。実際途中で釣り方変更を余儀なくされるケースが多いのも端境期の特徴でもあるのだが、確実性を優先するのであれば、多くのアングラーがセット釣りを選択するであろう。取り分けウドン系固形物をくわせにしたセット釣りは、へら鮒の活性が低下してウキの動きが大人しくなった方が釣りやすいといわれる。これは至極当然のことだが、ひとつ問題が残る。それは想定を超える高活性に遭遇したときであろう。今回はそうした端境期の難しい時合いを打破する手立てをマルキユーフィールドテスター綿貫正義に披露してもらったのだが、キモはズバリ「微粒子系縦バラケ」。奇をてらうことなく正攻法で真っ向勝負を挑む彼の釣りに要注目だ!

タナを作って釣り込むためのキーワードは、ズバリ「微粒子系縦バラケ」だ!

所属する複数の釣り会の月例会と、メジャートーナメントの釣りを中心に一年の釣行を組み立てている綿貫にとって、おそらく明確な季節の変わり目などないのかもしれない。当然ながら時合いの掴み難い端境期など気にしている暇などなく、変わり行く季節のなかでもボーダーレスでベストを尽くし挑み続けている。

「目の前に迫った例会やトーナメントに夢中で取り組んでいると、あっという間に一年が過ぎてしまいます。確かに気がつくと釣り方が変わっていたりして、そんなときに季節の変化を感じますね(笑)。時期的にはまだへら鮒の活性が高く、多くのアングラーが両ダンゴで楽しんでいると思いますが、私的には今シーズンの両ダンゴの釣りは間もなく終わりを迎えます。それに代わるのはもちろんウドン系固形物を使ったセット釣りですが、意外にこの時期のセット釣りは難しく、私自身迷路にはまることも少なくありません。それでも手堅く釣る術は持っていると自負していますので、今回の釣りが悩めるアングラーの救いになれば幸いですね。」

柔和な笑顔を見せながら、やや遠慮がちにこう口にした綿貫だが、その眼光は鋭く自信に満ちあふれていた。彼の釣りをひと言で表現するならば「堅実」であろうか。それも平均点レベルの堅実さではなく、トップトーナメンターのなかにあっていささかも引けをとらない、極めてハイレベルな堅実さと言っても過言ではないだろう。加えて特筆すべきはその幅の広さと奥の深さだ。今回紹介する競技仕様ともいえる管理釣り場での浅ダナウドンセット釣りは言うに及ばず、これから旬を迎える両グルテンの釣りから野釣りの底釣りまで何でもこなす。そんな彼が近年のセット釣りの傾向として口にしたのが、今回の釣りのキモともいえる「微粒子バラケ」というキーワードだ。

「多くのアングラーに攻め抜かれたせいか、以前ほど顆粒状ペレットへの反応は良くないですね。それに代わって最近良いと思うのが『バラケマッハ』に代表される、微粒子系麩材に対する反応ですね。安定して釣り込むためにはこの微粒子系バラケを上手く利用して、しっかりタナを作らなければ釣り込めません。なかでも重要な役割を担うのが『サナギパワー』や『セット専用バラケ』などの縦方向(直下)にバラける麩材の使い方がポイントになっていますね。」

今回取材フィールドとして選定したのは埼玉県羽生市にある椎の木湖。ターゲットとなるへら鮒は言わずと知れた1kg超級のランカーべらだ。しかも両ダンゴで釣れるほど活性が高い状況下で、果たして綿貫はどのように攻略するのであろうか。

使用タックル

●サオ
シマノ普天元 「独歩 」9尺

●ミチイト
ルック&ダクロン 「ナポレオン」1.0号

●ハリス
ルック&ダクロン 「ナポレオン」 上=0.6号-7cm、下=0.5号-30cm

●ハリ
上=ハヤブサ 鬼掛「極ヤラズ」7号、 下=ハヤブサ 鬼掛「喰わせヒネリ」4号

●ウキ
弥介「Bカスタム」五番
【1.2-0.8mm径テーパー細パイプトップ8.0cm/ 6.0mm径カヤボディ6.5㎝/ 1.0㎜径カーボン足7.0cm/オモリ負荷量≒0.7g ※エサ落ち目盛りはくわせを付けて全8目盛り中4目盛り出し】

●ウキ止め周辺
市販のウキゴム+ウキ止めストッパー

●オモリ
0.25mm厚 板オモリ一点巻き
※内径0.5mmウレタンチューブ&クッションゴム装着

●ジョイント
市販ヨリモドシ

綿貫流浅ダナウドンセット釣りのポイント 其の一:力ずくはNG。微粒子バラケを無理なくナジませナチュラルにタナを作ること!

この時期における浅ダナウドンセット釣りの最大のキモは何か?と綿貫に尋ねると、しっかりウキをナジませて無理なくタナを作ることだと即答だった。

「厳寒期の超食い渋り時にはゼロナジミの釣りも有効ですが、基本的には活性が高い時期のセット釣りでは、バラケを持たせ気味にしてウキを深くナジませることを最優先に考えます。その際、硬さやネバリを増強して無理にバラケを抑えるのはNGです。現在のタナ1m規定のある管理釣り場では、必ずと言っていいほど規定よりも上のタナにたくさんのへら鮒が寄ってしまいます。ところがこうした事態を避けようとして、開きを抑えたバラケを打ち込んでも狙いのタナにも寄せることはできません。その時々のへら鮒の活性にもよりますが、この時期の基本的な組み立て方としてはやや大きめのバラケを丁寧にエサ付けし、狙いのタナ1mの少し上から開かせることで、沈下する際のたなびく粒子の帯によってタナに引っ張り込むイメージで寄せるのです。」

つまりバラケをガッチリ固めたような力ずくでの深ナジミではなく、微粒子系麩材をふんだんにブレンドしたバラケを無理なくナジませることで、自然にしっかりした集魚層が構築できるという訳だ。それには「サナギパワー」の圧倒的ともいえる縦バラケ性能が不可欠で、万一早くバラケ過ぎてもウワズリのリスクが小さいというメリットも見逃せないと言う。

実釣時の綿貫のエサ付けを見ていると、極端にバラケのサイズを変えることはなく、傍目にはほぼ同じくらいのサイズのものを丁寧に上バリに抱かせ、ハリのチモトは毎投指先でしっかりと押えられていた。しかし、よく見るとバラケの下部はそれほど強くは押えられておらず、水中沈下中にこの部分からバラケの粒子がたなびき、それに摂餌欲求を刺激されたへら鮒が誘引され、気の早いものはナジミ際にバラケを食うこともしばしば見られた。

「こうした現象は、むしろ私にとってはウェルカム。バラケを頻繁に食われたからといって気にしません。ただし意図的にバラケを食わせる方向には進みません。早いアタリで上バリを食われるのはあくまでオマケのようなものですが、アタっても空振りとならない限りはそのまま続け、獲得できるアドバンテージは取れるだけ取るようにしています。」

綿貫流浅ダナウドンセット釣りのポイント 其の二:煮詰められたタックルセッティングの軸をぶらさず、必ずアタリでフィニッシュする!

バラケを力ずくでナジませないことが肝心だという綿貫の言葉を裏付けるのが、高度に煮詰められたタックルセッティングである。活性は総じて高いのだが、へら鮒の動きがめまぐるしく変化した取材時の難しい時合いのなかにあって、スタート時のタックルで調整が加えられたのが下ハリスの長さのみであったことからも、いかに煮詰められたセッティングであるかが覗えよう。

「ウキをしっかりナジませようとすると、浮力が大きくエサの重さを抱えきれる太めのボディ+太めのトップといったウキを使うと思われがちですが、それでは却ってナジまなくなるのが現在のセット釣りの難しいところで、色々試した結果、私は細めのパイプトップの方がエサをナジませやすいと感じ、現在ではそれを実践しています。また大型のへら鮒が多い椎の木湖などでは、カラツンが多発するからといってハリスを詰め過ぎるのも良くありません。〝遊び〟というか、多少余裕を持たせておいた方が、短いサイクルで変化する時合いにフレキシブルに対応できると思います。」

確かに綿貫が言うように同じエサ・同じタックルでありながら、何をする訳でもないのに突然アタリが飛ぶケースが度々見られた。実はこれが出口の見えない迷路に引きずり込まれる怖い現象であり、こうした変化に素早く対応しようとしてエサのタッチを変えたり、またハリスの長さを数投毎に数センチ単位で変えるなどしているうちに、次第にカラツンどころかアタリすら消失してしまったという経験を持つ読者も多いのではないだろうか。

「現在のセット釣りではまずアタリを持続させることが重要であり、たとえカラツンでヒットしなくても、その一投を必ずアタリでフィニッシュさせることを心掛けていると、多少の波こそあれ比較的コンスタントに釣れ続くと思っています。トップアングラーの中には、私のアプローチと真逆ともいえる複雑かつ、きめ細やかな対策を随時繰り出す釣り方で結果を残す方もいますが、できるだけシンプルに釣る方が私の性に合っていると思い、こうした攻め方を心掛けているのです。」

綿貫流浅ダナウドンセット釣りのポイント 其の三:アタリの選球眼を磨け!

ウキが動く(アタリが出る)からといって、何でも手を出すのは確かに良くないことではある。特に高活性時に複雑にウキが動いているときには、一体どのアタリに合わせれば良いのか分からなくなってしまい、スレや空振りを繰り返しているうちに、やがてアタリそのものを失うといった負のスパイラルに陥る危険性すらある。そこで綿貫が提唱するのがアタリの絞り込み。彼は取材中「アタリが多い時期はアタリの選球眼を磨くことも大切だ」と言っていたが、実釣中もそれを実践して見せていたので動画で確認して欲しい。

「私に限らずセット釣りでたくさん釣る人達は、出るアタリをすべてアワせている訳ではないと思います。とはいえ、アタリが出たときに、その都度食ったか食わないかを瞬時に判断してアワせたり見送ったりすることは不可能です。食いアタリである確立が高いウキの動きは、その直前の動きである程度絞り込めます。トップ先端まで深くナジんだウキがへら鮒のアオリでフワッと返し、一瞬の〝間〟の後スパッと水中に突き刺さるのが理想型ですが、これに加えてウキが立ち上がった直後に強く受けられてそのままズバッと消し込むのもヒット率が高いアタリです。このケースでは上バリのバラケを食っている確率が高いのですが、それも含めてアタリが出続けていればまったく問題ありません。こうしたアタリ以外にも食ったと思える動きには積極的にアワせますが、そうしたなかからその日のヒットパターンを掴み、できる限り乗るアタリを絞り込む方が良い方向に向かうことが多いですね。」

へら鮒の動きが活発であればあるほど、ウキの動きは複雑になりがちだ。ところがタナができる(タナに食い気のあるへら鮒が寄る)と自然にアタリはパターン化され、次第に釣りが簡単になると綿貫は言う。彼は常にここを目指しているのである。

総括

綿貫のアプローチは傍目には地味に映るが、これこそが端境期の難時合いを攻略するための、最強にして唯一の方法であると記者は断言しよう。短時間だけの釣りであれば細かく動くことも決して悪くはないだろう。しかし、安定した強い釣りを長時間維持しようと思ったら、これに勝るアプローチはあるまい。

「まだウキの動きが良く、両ダンゴかセットか迷うくらいの時期はイケイケで攻めてしまいがちですが、行き過ぎた攻めは逆効果になることの方が多いですね。私自身ウキの動きに夢中になっていると、つい勢いでそうした釣りになりがちなので、時々自分の気持ちを落ち着かせようと意識することがあります。でも分かりやすい釣り方が一番強いのはいつの時代でも同じことですので、これからもこのスタイルを続けていきますよ。」

メンタル面での未熟さを反省する綿貫だが、こうした謙虚な姿勢も彼が大勢のアングラーに支持され親しまれている所以なのであろう。是非読者諸兄も難しい端境期を、綿貫流の微粒子バラケでガッチリ釣り込んでみてはいかがであろうか。