稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第87回 萩野孝之が自信を持ってオススメする革新的ダンゴエサ「グルテンダンゴ」GD
前回の「釣技最前線」で紹介した新エサ「グルテンダンゴ」、通称GD(ジーディー、以下「GD」)。間もなく店頭に並ぶタイミングを迎えるということで、今回も新エサの最大の特徴である〝膨らみ〟を生かす効果的な使い方をレポートしよう。登場していただくアングラーはマルキユーインストラクター萩野孝之。彼もまた新エサの開発に関わったひとりだが、今回は彼が最も得意とする盛期の浅ダナ両ダンゴ釣りを通し、新エサの効果的な使い方を披露していただいた。取材フィールドは千葉県柏市にある管理釣り場、清遊湖。両ダンゴの季節を目前に控え、魚影の濃さでは屈指の同湖において新エサのポテンシャルを遺憾なく発揮する様をとくとご覧あれ!
切磋琢磨するシチュエーションが生み出した新エサ「GD」
新エサが誕生する背景には、例外なく釣りやすさや高釣果への飽くなき探究心が存在する。当然のことであるが、釣りやすさは結果として高釣果をもたらすようになる。そのためか具体的なエサの機能性や方向性といったコンセプトは最高峰のテクニックがしのぎを削る場、すなわち一切の妥協が許されない競技の釣りのなかから生まれるケースが多く、今回「GD」誕生に関するエピソードを訊ねた際にも、萩野自身の競技の釣りを通した要望が色濃く反映されていることが明らかになった。
「確かに競技の釣りで勝つためには高度なテクニックが必要ですが、同等レベルの釣技をもつアングラー同士が競い合うトーナメントシーンにおいて他を圧倒するには、個々のテクニック以上にエサのポテンシャルというか、アングラーが意図する働きをしてくれる性能を持つエサが作れるか否かに懸かっています。言い換えると狙い通りのエサが作れれば小手先のテクニックに頼った綱渡り的な神経戦ではなく、何の迷いもなく自信を持って臨むことができるのです。実際私自身の競技歴のなかでも、そうした迷いのないエサができたときには良い釣果で勝つことができましたし、そうしたトップレベルの競技で通用するエサは、むしろ普段皆さんが楽しまれている釣りで使うことで、より釣りやすさを感じられるものと信じています。今回の『GD』開発時にはそうした私の信念も含めた意見を伝えてありましたし、実際の仕上がりにも満足しているので自信を持ってお勧めできますね。」
数年来、両ダンゴの釣りで記者が感じている問題点がある。記者はそれを密かに「負(麩)のスパイラル」と称しているのだが、それは苦労して釣れるように調整したエサが次第に激しさを増すへら鮒の寄りに負けてタナまで持たなくなってしまい、やがて釣れなくなるという現象である。釣れなくなればそれを打開しようとしてエサを硬くしたりネバリを強めたりと、主にエサの調整に力を注いで何とかしようとするものだが、多くの場合アタリの大半がカラツンに終わるか、最悪の場合へら鮒がエサへの興味を失ってアタリを喪失してしまうことになる。こうなるともはや挽回は難しく、一旦原点に戻ってゼロベースでの見直しを余儀なくされるのだが、萩野らトップトーナメンターのなかにはうまくエサを合わせ、こうした苦境を乗り切ってしまうアングラーが少なからず存在する。しかし、そうした域に達するのは夢のまた夢…。
「私自身がそうであるように、現在両ダンゴでうまく釣っている人達に共通しているのは、無駄なへら鮒を寄せ過ぎていないこと。つまりバラケ性を抑えたエサで釣りきっている訳ですが、当然ながらバラケ性を抑えたエサではタナで持ち過ぎることがあり、その結果カラツンが増えたり反対にアタリが出難くなったりするケースが見られます。そこでカギとなるのがエサの〝膨らみ〟。タナまで持って狙い通りに膨らませることができれば、エサへの興味を削ぐことなく確実にへら鮒の摂餌欲求を刺激することができるのです。私自身こうしたエサの膨らみを強く意識するようになったのはここ数年のことで、ダンゴエサのブレンドに膨らむ特性を持つ『グルバラ』や『ダンゴの底釣り夏』を加えることで良い釣果を得ています。しかしいずれもやや比重が大きなエサであり、欲を言わせてもらえばさらに軽くて膨らみの良いエサがあればもっと楽に狙い通りの釣りができると思い、今回『GD』の開発に当たっては現場の意見として強く要望を伝えさせていただきましたので、今日はその成果を見ていただきたいと思います。」
自信たっぷりにこう言い放った萩野だが、その結果については動画をご覧になっていただければ一目瞭然。しかも今回は萩野自身が作ってくれた推奨ブレンドのエサを使い、記者も実釣を通してその威力のほどを体感させていただいているので、その所見についても後ほど紹介しよう。
使用タックル
●サオ
シマノ朱紋峰 「嵐月 」9尺
●ミチイト
オーナーばり「白の道糸」 1号
●ハリス
オーナーばりザイトSABAKIへらハリス 上=0.5号-35→30cm、下=0.5号-45→40cm
●ハリ
上下=オーナー「バラサ」6→5号
●ウキ
一志 D-ZONE (ディーゾーン) V3バージョン 四番
【細パイプトップ8.5cm/二枚合わせ羽根ボディ6.5cm/カーボン足5.5cm/オモリ負荷量≒1.00g ※エサ落ち目盛りは全8目盛り中6目盛り出し】
●ウキゴム
オーナーばり「強力一体ウキベスト」
●ウキ止め
オーナーばり「ピタッとストッパー」
●オモリ
内径0.3mmウレタンチューブ装着板オモリ1点巻き
●ジョイント
オーナーばり「Wサルカン(ダルマ型)」
新エサ「GD」の特徴&使い方のキモ 其の一:現代両ダンゴ釣りの問題をすべてクリアーできるハイポテンシャル
改めて新エサの特徴を萩野の釣りを通して紹介すると概ね以下のとおりとなる。
1.グルテンが麩を包み、落下途中のバラケを抑えタナまでエサを持たせる
現代両ダンゴの釣りにおける問題点のひとつとして挙げられる無駄なへら鮒の寄り過ぎとウワズリだが、いずれも原因は落下途中でエサの表面から糸を引くようにバラケる麩の粒子にあると萩野は言う。高いバラケ性は集魚には欠かせないものだが、盛期の釣りにおいては僅かな量でも意図する以上にへら鮒を刺激してしまい、適度を通り越した寄りやウワズリを招いてしまうことになる。このため萩野自身はエサ付けや振り込みに工夫を凝らし、着水直後のエサの開きに対しては十分な配慮を怠らなかったと振り返る。またタナに入れば食うエサが、こうした上層に群がる余分なへら鮒によって持たなくなるといった問題についても「GD」があれば簡単に対応でき、すべての悩みが解消できると断言する。なおこの特性によって無駄なウキの動きが減ることで、比較的落ち着いたウキの動きのなかから食いアタリが選別しやすくなることも、アングラーにとっては大きなアドバンテージだとも付け加えた。
2.ブレンドによりエサが軽く仕上がり、タナで膨らみへら鮒を誘い食わせる
軽めのエサが主流であることは先の萩野の言葉どおりだが、記者もこの意見には大いに共感できる。もちろん食いが良いときは重めのエサでも食って来るが、大抵は軽く適度にネバリのあるエサの方がへら鮒の反応が良く、多くのアングラーがそうしたタッチにエサを仕上げているのが実情であろう。ところがこうしたタッチのエサをタナまで持たせて食わせることは容易ではなく、従って軽いエサをいかにして持たせることができるかが現代両ダンゴ釣りでの最大のキーポイントと言える訳だが、この難問を解決するために生まれたのが「GD」なのである。素材そのものの軽さもさることながら、エサに含まれるグルテンによって、まとまり感が強いにもかかわらず適度なエアーをエサの内部に包含するため、水中での動きも従来のダンゴエサに比べてナチュラル感が増しているものと推察される。この特性を100%生かしきるためには、実釣で萩野が見せてくれたような手水と軽い押し練り程度のシンプルな調整方法をお勧めしたい。
3.膨らむことでエサの芯が柔らかくなりカラツンが減少する
へら鮒釣りではカラツンがつきものだが、エサを食いに来て食いきれないケースや、口にした際の違和感で吐き出すといった本来のカラツンに対しては、膨らんでエサの芯が柔らかくなるといった特性が、カラツンに悩むアングラーにとってまさに救世主となる。これは前述の記者の感じている「負(麩)のスパイラル」から脱却するためにも必要不可欠な要素であり、名手が苦労して調整しているエサ合わせのプロセスの一端を「GD」が担ってくれることで、アングラーはエサに対する不安感を抱くことなく釣りに集中できることだろう。
新エサ「GD」の特徴&使い方のキモ 其の二:誰もが扱いやすく確実に釣れるブレンドと使い方
取材直前の清遊湖では既に両ダンゴで高釣果が上がっていたが、ピークとなるまでには時期尚早であり、この時期は気象の変化や混雑状態によっては食い渋ることもよくあるものだ。新エサのパッケージの裏書きにある推奨ブレンドで実釣をスタートさせた萩野のウキも簡単には動き出さなかったが、時間の経過と共にへら鮒が寄り始めると次第に躍動感のある動きへと変わっていった。そしてこの時期としては十分とも思えるペースまで到達したのであるが、萩野自身「こんなものではない」という思いがあったのであろう、当初のエサを使い切ったタイミングで、2ボウル目以降やや水量を増したブレンドに変えたところ劇的な変化が現われ、その後ようやく納得の表情を見せた。
「この推奨ブレンドは自信作ですから(笑)。実は昨年のハイシーズンに、平均レベル以上の釣技をもつスタッフのひとりにこのブレンドで実釣してもらったところ、本人が経験したことのないくらい釣れたことから、このエサのポテンシャルとブレンドの完成度の高さを確信していたのです。今回もスタート時点では基本ブレンドの基エサで打ち始めたのですが、途中で少量の手水を加えてシットリさせたものに軽く押し練りを加えたもので良い感じになったことから、2回目以降基エサを作る際に加える水量を増やしただけで、狙い通りのタッチに仕上がりましたね。明らかにこちらの方が〝膨らむ〟タイミングがへら鮒の食い気にマッチしたのでしょう。決して早いアタリばかりではありませんが、エサ持ちが良い分、多少待ってからでも良いアタリが出ましたね。これこそが新エサ『GD』の真骨頂です。これから皆さんに使って頂くことで新たなブレンドが生まれる可能性は十分考えられますが、扱いやすく簡単に釣れるという点では間違いなく現時点でベストブレンドであり、無理に手を加えずとも状況にタッチを合わせられるのが最大のメリットであるといえますね。」
ブレンドに関して記者が感じた疑問がひとつある。それは「GD」を主役とし「カルネバ」を省いたブレンドの方が膨らみ具合は勝るのではないか?という点である。これについて萩野の答えは明快で、「GD」だけでは膨らみが早過ぎることもあり、余程扱い慣れないとエサ持ちが悪くなる恐れがあると正直に答えてくれた。記者はこの回答を得て確信した。それは現代両ダンゴ釣りでは欠かせない特性であるネバリと軽さという点において、マルキユー麩エサラインナップのなかでトップクラスの「カルネバ」の強烈な個性をややマイルド化しつつも、さらにその独特なタッチを苦手とするアングラーにもネバリを気にせず使って頂けるよう、十分な配慮が行き届いたエサであることを。
記者の目【新エサ初体験レポート】
新エサの発売を目前に控えた取材ということもあり、今回特別に萩野が作った基エサを使って試釣させていただける機会を得た記者のファーストインプレッションだが、まず驚いたのが当日ベストのブレンドとして萩野から手渡された基エサのタッチ。基本ブレンドよりも50ccほど水を多めにして作られた基エサは非常に柔らかく、共にブレンドされている「カルネバ」が入ったエサとは思えないほどアッサリしておりネバリが感じられない。指先で丸めたときに少々心許ない感じを受けたのだが、実際にハリに付けて打ち込むと普段自分が使い慣れたエサよりもゆっくりと沈むのだろうか、ナジミ際からナジミきるまでの時間がやや長いことに気づいた。そして徐々にへら鮒が寄り始めるとナジむ途中でトメが入るようになり、やがてアタリが出始めて釣れるようになると、そのアタリのタイミングに驚いた。自身の釣りではトップが深くナジミきる直前からがヒットチャンスであり、その後ナジミきったトップが僅かに戻すまでの数秒間という短い時間が勝負であるため、ウキが完全にナジミきってしまったらほぼ勝負は負けなのだが、へら鮒の活性がまだ十分ではないことを差し引いて考えても、かなり待ってもアタリが出ていたことからこのエサのヒットチャンスの広さを実感することができた。これはゆっくり沈むというエサの軽さに加え、ナジミ際で揉まれてもタナまで持ち、さらにナジミきって以降も確実にエサが膨らむことで、動きを止めたエサでもへら鮒の摂餌を刺激してアタリを引き出すことができるという証であろう。ここまでエサのポテンシャルが上がると無理に早いアタリを狙う必要がなくなり、むしろやや待ち気味にして深い位置でアタリをとり続けることでタナが安定し、より強い時合いが構築されることが見込まれる。まさに革新的なダンゴエサだと言えよう。