稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第157回 「高橋秀樹の浅ダナヒゲトロセット釣り」

自他共に認めるダンゴマンのマルキユーインストラクター高橋秀樹。そんな彼をして両ダンゴでは何としても釣りきれない難時合に遭遇することも少なくないという近年のへら鮒管理釣り場。ならば、そうした釣り難しい釣況をどのようにして乗りきっているのだろうかという疑問は、記者ならずとも多くのへらアングラーが抱くところであろう。そうした疑問を高橋にぶつけてみると「ダンゴで釣れないときはヒゲトロセット一択!」と即答。もちろんバッグの中には「ヒゲトロ」がひと際存在感を放ち、今や遅しとその出番を待っている。そこで今回は盛期の食い渋り時の打開策として有効とされ、高橋自身の安心感のよりどころにもなっている浅ダナヒゲトロセット釣りをWakuWakuField 野田幸手園からお届けする。果たしてGW真っただなかに敢行された実釣取材は、混雑による食い渋り必至の難時合で高橋を待ち受けていた!
備えあれば憂いなし〟「ヒゲトロ」は予測不能な食い渋りの最後の砦!?
「この時季の私の釣りの〝軸〟はもちろん両ダンゴ。しかし野釣り場を含め魚影が薄い釣り場や極端に食い渋った状況下において、両ダンゴではアタリをだしきれないシーンもしばしば起こります。さらには両ダンゴで釣れていたにも関わらず何らかの理由で途中から口を使わなくなってしまう、いわゆる中弛みなどの現象が起こることも少なくありません。こうした予測不能な食い渋りはいつ何時遭遇するか分からず、そんなときにはくわせに『ヒゲトロ』を用いたセット釣りが有効であり、私自身盛期における釣りではこれ以外の選択肢はありません。」
およそ考え得るレベルの食い渋りであればその卓越したテクニックでダンゴを食わせ、確実に結果を残してみせる高橋。しかしそんな彼でも歯が立たないほどの難時合に遭遇した際は、安心を担保するためにバッグに忍ばせた「ヒゲトロ」の力を借りることも少なくないという。
「たとえ食い渋ったとしても、盛期の釣りは両ダンゴ釣りの延長線上となる接近戦が基本なので、バラケとくわせエサの距離をとるウドンセット釣りよりも、常にバラケの近くにくわせエサがあるヒゲトロセット釣りの方が適していると感じていますし、またバラケを構成する麩エサ自体が両ダンゴで使用するものと共通していることも、私がヒゲトロセット釣りを選択する理由なのです。」
季節的な状況を踏まえた考察に加え、利便性の面からも極めて合理的であるヒゲトロセット釣りのメリットを示した高橋。実釣の流れとしては、まずは両ダンゴに対するへら鮒の反応をみてからヒゲトロセット釣りに切り替えるというのが筋かもしれないが、今回はあえて混雑による食い渋りが予想される休日に加え、前日の降雨による悪影響も少なからずあるであろうと推測されたため、この日の釣りは始めからタナ1mの浅ダナヒゲトロセット釣りでスタート。さすがに魚影の濃さでは定評のある野田幸手園、開始間もなくへら鮒の寄りを示す動きがウキに現われると、その数投後には目の覚めるような消し込みアタリで難なくファーストヒット。しかしその後右肩あがりに釣況が上向くことはなく、ウキがナジんだりナジまなかったりアタリがでたりでなかったりと、不安定なウキの動きに翻弄される高橋。奇しくも朝から難しい時合になったことに期待(?)する記者の心を知ってか知らずか、その真剣な眼差しからは持てるテクニックをだし惜しみすることなく全力でへら鮒と対峙しようとする姿勢が窺い知れた。
取材時使用タックル
●サオ
がまかつ「がまへら 我楽」9尺
●ミチイト
サンライン「へら道糸 野釣り」1.0号
●ハリス
サンライン「へらハリス 野釣り」上0.8号10cm/下0.6号15cm
●ハリ
上=がまかつ「リフト」7号、下=がまかつ「ボトムマスター」6号
●ウキ
水幸作「H/Tロクゴーネオ」5番(後に6番→4番)
【1.2mm径テーパーパイプトップ10.5cm/6.5mm径二枚合わせ羽根ボディ6.5cm/1.2mm径カーボン足3.5cm/オモリ負荷量≒1.2g/エサ落ち目盛りは全8目盛り中4目盛りだし】
取材時使用エサ
●バラケブレンド①(基本ブレンドパターン)
「カクシン」400cc+「コウテン」200cc+「BBフラッシュ」200cc(軽く混ぜ合わせてから)+水200cc
水を注いだら五指を熊手状に開いてゆっくり丁寧にかき混ぜ、全体に水が回ったら手を止める。仕上がりはフワッとした軽めのボソタッチ。エサ付け時の圧加減でナジミをコントロールする。
●バラケブレンド②(当日決まりのブレンドパターン)
「カクシン」400cc+「バラケマッハ」200cc+「BBフラッシュ」200cc(軽く混ぜ合わせてから)+水230cc+「粒戦細粒」25cc
作り方は前述のとおり。ここに至るまで他に2パターンを試した高橋。詳細については後述するが、エサ合わせの基本は両ダンゴの釣りと同様であり、常にウキの動きからその日その時々に変化するへら鮒の嗜好(開き具合や重さなど)を読み解き、求めるバラケがどのようなタイプが良いのかを丁寧に探ることが重要だと力説する。
●くわせエサ(当日使用のトロロエサ)
「ヒゲトロ」
「ヒゲトロ」を開封して適量を取りだし、多めの水をかけて全体にゆきわたらせたらトレーに移して適度に水気を切ってから使用する。ハリ付けの際はトレーごと手に取り、ハリに掛けたら適宜長さを整えて打ち込む。標準的な量は長さ5~6cm×幅5~6mm。なお長いとサワリがでやすく、短いと無駄な動きがウキに現われず明確なアタリがでやすいという。