稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第149回 「時田光章のブレ(振れ)ないカッツケ両ダンゴ釣り」|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第149回 「時田光章のブレ(振れ)ないカッツケ両ダンゴ釣り」

この時季、季節ネタとして外せないのが浅ダナ両ダンゴの釣り。とりわけ水面直下に群がる口の肥えた超高難度のへら鮒を相手にするカッツケ両ダンゴ釣りは、そのスピード感と決まったときの圧倒的な釣果が魅力の、夏のへら鮒釣りを代表する釣り方だ。しかしへら鮒釣りのメッカといわれる関東圏の管理釣り場においてカッツケ釣りが楽しめる釣り場は思いのほか少なく、取材ともなると釣り場選定に難儀することもしばしば。しかしここならばカッツケ釣りはもちろんのこと、タナを気にせずどんな釣り方でも自由自在に楽しめると、一行が訪れたのは茨城県にある友部湯崎湖。アングラーは「釣技最前線」初登場のマルキユーフィールドテスター時田光章。数々のメジャータイトルホルダーであると同時にコテコテの野釣りにも造詣が深いオールラウンダーが、若さの中にも老獪さと奥深さが垣間見える珠玉のカッツケ釣りを初公開する!

水面直下の極狭レンジに〝遊び〟を持たせたタックルでタナを構築!

たとえ緩やかであっても流れは禁忌のカッツケ釣り。風向きを考慮した結果、2号桟橋60番座席に釣り座を構えた時田。今回の取材が決まった時点で、記者はキメキメの派手なハリスカッツケ釣りを披露してくれるものだと勝手に思い込んでいたのだが、釣り支度を進める時田のタックルを見たとき、その期待は見事に裏切られた。

「直結仕掛けのハリスカッツケ釣りは、ほとんどやりません。その理由はこのタナのへら鮒は気難しくムラッ気が激しいため、表層ダナに足止めしたうえでタックルやエサをピタリと決めて釣り込むことが難しいためです。基本的にサンデーアングラーの自分にとって混雑下での食い渋り時の釣りは当たり前のことですが、それに加えて陽が差したり陰ったり、さざ波立ったり凪いだりといった、天気や外的要因のちょっとした変化で時合いがコロコロと変化する状況下においては、キメキメの釣りはリスクが大きすぎるというのが正直なところです。」

改めて時田のカッツケ仕掛けを見ると遊動式の一般的な浅ダナ両ダンゴ釣り用のそれで、スタート時のタナは〝折り返し〟と呼ばれる、ウキ止めからオモリまでの距離がウキの全長と同じになっており、余程のことがない限り不動のタナだという。支度が整いエサ打ちを開始したのが午前6時半を少しまわったところ。基エサを摘まみ取り、強い圧をかけず適度に丸めたエサ玉の直径は約13mm。数投はほとんどナジミの入らない投が続いたが、間もなくサワリが現われるとみるやいなや適度に圧を加えてナジミをだすと、その直後に消し込みアタリがでて難なくファーストヒット。さすがに魚影の濃さとエサ追いのよさが際立つ友部湯崎湖。瞬く間に4~5枚を一気に釣り込む時田。しかし、ここで突然ウキの動きが途絶えた。

「これが近年のカッツケ釣りの実態です。ここまで釣れたのは決して大型と呼べるへら鮒ではありませんが、それでもかつてのカッツケ釣りで相手にしていたような中小べらとは比べようもないほどの良型のへら鮒です。当然ながら次から次へと簡単に釣れ続く相手ではないので、最初の数枚はあくまでモーニングサービス。ここから本格的な組み立てが始まるわけですが、あらかじめこうした急激な変化がいつ起きても当然と考え、ハリスカッツケよりも〝遊び〟をもたせたタナ設定としたうえでしっかりとタナに寄せきり、グラスムクトップウキの特性を生かしたナジミ際のエサを追わせて食わせるアプローチが自分流のスタイルなのです。」

アタリが消失した原因がエサのバラケ過ぎと判断した時田は、ボウルの中で小分けした基エサにごく少量の手水を加えたうえで押し練りを数回行い、水中落下中のエサの開きを抑えにかかる。すると直後にアタリが復活。徐々にペースを上げていくなかで、ウキの立ち上がり直後のウケ・トメが長くなり過ぎたのをみてハリスを上10cm/下16cmに詰めるとヒット率が格段に上昇。さらに釣り進むなかでエサはやわらかめが良いと分かると、次に作るエサからは水量を増やし、手水+押し練りを加えずともやわらかく仕上げることでカラツンを回避。さらにさらに釣り込んで行く過程で小エサが良いと分かると、ハリをサイズダウンして一気にたたみ掛ける。その勢いは最後まで衰えることなく〝遊び〟を生かした痛快なまでのカッツケ釣りをブレることなく貫いてみせた。

取材時使用タックル

●サオ
シマノ「普天元 独歩」7尺

●ミチイト
オーナーばり「白の道糸」1.0号

●ハリス
オーナーばり「ザイトSABAKIへらハリス」0.5号 上=15cm→10cm、下=21cm→16cm→14cm

●ハリ
上下=オーナーばり「バラサ」5号→4号

●ウキ
一志「アスリート グラス」2番
【グラスムクトップ7.8cm/一本取り羽根ボディ4.3cm/カーボン足5.5cm ※エサ落ち目盛り=全6目盛り中4目盛りだし】

取材時使用エサ

「バラケマッハ」400cc+カクシン」200cc+「GD」100cc+水250cc

3種の麩材をエサボウルに取り、水を注ぎこんだら五指を熊手状に開いて20回程度かき混ぜ、全体に水がゆきわたったら手を止めて完全に吸水が完了するまで数分間放置。使用する際はひとつかみ小分けし、寄せに徹するときはそのまま使用。開きを抑えるときは手水と押し練りをさらに加えるが、過度なネバリはエサの機能を損ない、へら鮒に嫌われる恐れがあるため要注意とのこと。

時田流 カッツケ両ダンゴ釣りのキモ その一:少量と侮るなかれ!司令塔 「GD」の開き抑制機能で整う時田ブレンド

釣り支度の最中に記者はあることに強く興味を抱いた。それは時田のエサバッグの傍に置かれた「GD」が目にとまり、それが最後にブレンドに加えられたことだ。もっとも「GD」自体は両ダンゴ釣り用に開発されたエサなので何の不思議もないのだが、なんとなく違和感を覚えたのは長いこと「釣技最前線」の取材をしてきて、カッツケ両ダンゴ釣りで「GD」が使われた記憶がなかったからだと気づいた。当然ながらすぐさま、彼に今回の釣りにおけるブレンドの狙いと個々の麩材の役割について問うてみた。それをまとめると、

●「バラケマッハ」はいわずと知れた両ダンゴの釣りには欠かせないベースエサ。その粒子感を含めた機能性は、昔も今もへら鮒の嗜好にマッチした最高峰の麩エサと考えている。特にカッツケ釣りでは、水面直下のへら鮒を無駄にはしゃがせることなく落ち着いた状態で集魚する性能に長けているので外すことは考えられない。

●「カクシン」は現代両ダンゴ釣りには必須のやわらかくても確実に残る芯、アタリ負けしない芯を作るための〝核〟となるエサ。

●「GD」は着水時の開きを抑えてタナへの入りをよくするために加えているが、同じような機能を果たすほかの麩材との違いはズバリ〝輪郭〟だ。たとえば芯を強化してエサ持ちをよくするのであればネバリが強い「カルネバ」や「BBフラッシュ」といった麩材でも構わないが、過度なネバリが嫌われやすい(と、時田は考えている)水面直下に群がるへら鮒に対しては、落下途中では開かない特性とは相反する「GD」のタナで膨らむ特性が極めて有効。

という明確な答えが即座に返ってきた。さらに時田は続ける。

「ブレンド量こそ少ないですが、このエサのキモは紛れもなく『GD』です。単にエサを持たせる芯を強くするだけであれば、ほかにもネバリが強い麩材がありますが、それではへら鮒に嫌われ、アタリを喪失することとなり、たとえアタリをだせたとしてもカラツンのオンパレードとなってしまう恐れもあります。また着水直後にエサを食わせるハリスカッツケ釣りでは、ボウルのなかであらかじめ完成度の高い食い頃のエサに仕上げておく必要がありますが、このブレンドは直水時から一定時間フォルムを維持した状態でナジむため、ハリスカッツケ特有の振れアタリはでにくく、タナに入る直前からエサがナジミきるまでの間に縦に強く入るアタリがでるようになる点も、スピードよりもヒット率に重点を置いている自分にとっては大きなメリットなのです。」

読者諸兄も知ってのとおり、カッツケ釣りには特徴的なアタリがある。その点については改めて次項で触れるとして、ここではエサの開くタイミングをコントロールする司令塔としての「GD」の役割とその必要性に留めておくが、その機能を熟知したうえで必須のブレンドとしたこともさることながら、釣り進めるなかで状況に応じて「GD」や「カクシン」を追い足し調整用として使い分ける老獪なテクニックは、地味ながらも絶大な効果を発揮。ややもすると急ブレーキが掛かりそうな局面を幾度となく乗りきると、周期的に訪れる好時合いを取りこぼすことなく見事に捉え、連チャン&ダブルヒットで決めて魅せた。

時田流 カッツケ両ダンゴ釣りのキモ その二:タナ+ウキ+エサ=ブレ(振れ)ない縦アタリ

先のエサの項と切っても切れないのが、不動のタナと時田が言いきった折り返しのタナとグラスムクトップの組み合わせだ。土日祝日釣行を基本とする時田にとって、混雑時におけるハイプレッシャーや集魚すらままならない難時合い下での釣りは日常茶飯事。当然ながら好条件での釣りは数少ないご褒美のようなものであり、スタンスとしては食いが悪くて当たり前という状況を常に意識しての釣りにならざるを得ない。従ってカッツケ釣りでは安定感に優る水面直下からやや距離をとった折り返しのタナを基本とし、その範囲のなかにおいて一回でも食いアタリを多くだそうと、たとえ短い距離であってもナジミ際から食いアタリを捉えるために、盛期におけるカッツケ釣りでは極めて少数派であろうグラスムクトップウキを常用している。

「ハリスカッツケの釣りはへら鮒のヤル気も含め、基本的には好条件が揃わないと成立しない釣り方です。さらに良い条件が揃ったとしてもコロコロと時合いが変化するのが現代カッツケ両ダンゴ釣りの傾向であり、そうした背景を考慮すると、より安定感のあるやや深めのタナを攻めるほかなく、そのなかで最も早い釣りが可能な折り返しのタナを攻めることで釣果を伸ばそうと辿り着いたのが、今やっているアプローチなのです。そしてこの狙いに適したエサを追い求めた結果、ベストなブレンドとして探り当てたのが前述のエサというわけです。」

数多のメジャータイトルを手にしてもなお、高みを目指し続ける時田。目指す先には誰にも負けない強い釣り、誰に見られても恥ずかしくない釣りがあるという。今回披露してくれたカッツケ両ダンゴ釣りもそうした思いが込められた、いわば時田スタイル。司令塔「GD」にコントロールされたブレンドに辿り着き、エサ+タナ+ウキによる三位一体のコラボレーションで、振れアタリのない縦に強く入るアタリの〝魅せられる〟釣りがいま、目の前で繰り広げられている。

時田流 カッツケ両ダンゴ釣りのキモ その三:すべては安定性(高ヒット率維持)のために

スピードが魅力のカッツケ両ダンゴ釣りだが、早いアタリばかりを狙っての無理な直結式ハリスカッツケ釣りや、スタイルばかりに気を取られた疎かなエサ合わせではかえってアタリがでにくくなり、アタリがでたとしてもスレやカラツンに終始し、早いどころかむしろ遅く数も釣れないといった悪循環に落ちってしまう恐れがある。

「気持ちとしてイケイケで攻めたいのはヤマヤマですが、決めたくても決められないのが現代のへら鮒釣りであり、なかでもカッツケ釣りのターゲットとなる水面直下のへら鮒は百戦錬磨のツワモノばかりなので、ある程度余裕を持たせたうえで時合いの変化に対してフレキシブルに対応できる態勢を整えておいた方がヒット率は高く、結果的に釣果が伸びると考えています。」

手返しやアタリのタイミング、さらにはヒットから取り込みと早さばかりがクローズアップされがちなカッツケ両ダンゴ釣りだが、そうした派手な見た目よりもむしろ目に見えない水面下の攻防こそがキモだと言いきる時田。エサに関してはへら鮒の反応に合わせ、ときに大きくエサのブレンドを替えたり、またあるときは傍目には分からない程度にエサ付けサイズを変えたり。タックルに関しては、下ハリスを一気に5cmも詰めることもあれば、肝心要の最後の詰めでは数cm単位で長さを変えるといった、大胆かつ繊細な対処方が時田の真骨頂であり、総じて浅ダナの釣りを得意とする彼にとって、それが如実に現われるのが今回のカッツケ両ダンゴ釣りであろう。

記者の目【カッツケ両ダンゴ釣りの新たな方向性を示した「GD」のポテンシャル!】

本来カッツケ両ダンゴ釣りはシンプルな釣り方を旨としている。しかし大型化が極まった水面直下に潜むへら鮒はシンプル一辺倒では攻略することが難しく、年を追う毎にその釣りは複雑化し、難易度を増している。釣れるまでのプロセスを楽しむことがへら鮒釣りの真髄だといわれるが、正直ここまで難しくなると、そのプロセスすら煩わしくなってくる。今回時田がみせてくれた彼流の釣りは「GD」のポテンシャルを生かした、まさに現代流カッツケ両ダンゴ釣りの新機軸。スピードや派手なロッドアクションには目もくれず、正攻法の浅ダナ両ダンゴ釣りの基本を踏襲する堅実な釣りであり、誰が見ても非の打ち所がない強く縦に入るアタリで釣り込む時田スタイルは、そのアタリのとおりまさに〝ブレ(振れ)ない〟釣りであった。