稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第143回 「西田一知のカッツケウドンセット釣り」|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第143回 「西田一知のカッツケウドンセット釣り」

「ウドンセットなのに両ダンゴ感覚?そんなのあり得ない!」と、タイトルを見てお思いの読者諸兄へ。もちろん両ダンゴ釣りのように釣れるはずもなくあくまでイメージの話ではあるが、こうしたイメージを抱きながら理想のウキの動きを目指し、自らの釣りを組み立てるのもへら鮒釣りの醍醐味のひとつ。そしてその理想に一歩も二歩も近づいたと新エサ「ふぶき」を手に、自信に満ちた表情をみせるのはマルキユーインストラクター西田一知だ。現代ウドンセット釣りのキモはバラケとくわせの距離感といわれるなか、常に適切な距離を保ちつつ難易度の高いバラケの抜き差しを求められるアプローチとは異なる切り口で独自のセット釣りの世界観を確立している彼は、自身最も得意とする両ダンゴ釣りのような、追わせて引きつけて食わせるという攻めの釣りを身上とする。そんな西田にとって接近バラケ「ふぶき」の登場はまさに〝渡りに舟〟。その特性を最大限生かし、少しばかり深めにタナをとって新べらを狙うもヨシ!旧べらの活性が高まりタナが上がったらそのまま上で仕留めるもヨシ!そんな変幻自在のカッツケウドンセット釣りが今ベールを脱ぐ!

超微粒子バラケが可能にした両ダンゴ感覚の追わせて呼び込むアプローチ

今回の実釣フィールドは西田インストラクターが定期的に釣り教室を開催している、埼玉県飯能市にある平松へら鮒センター。この日は取材スタート時から強い風が吹きつけ、途中何度も強風に悩まされながらも辛うじて完遂することができたが、恐らく他の釣り場では竿をだすのもためらわれたことだろう。そんな悪天候の影響だろうか、いかに魚影密度が濃く高活性の平松へら鮒センターといえどもそう容易く釣らせてはくれなかった。

「少し前まではタナを深めにとると新べらが口を使ってくれたのでウキ下約70cmで始めたのですが、今日はやや動きだしが遅いようです。」

そう言いながら毎投トップ先端までウキを深くナジませ、比較的早いタイミングでバラケを抜ききるとすぐに打ち返して行く西田。この時季ウキの動きが悪いとついゼロナジミの釣りに舵を切りたくなるが、バラケ主導でへら鮒をタナに呼び込み、下ハリスの倒れ込みの早いタイミングで食わせることを狙っている西田にその選択肢はない。なぜなら多少時間はかかったとしても、こうして作り上げられたタナは分厚く時合いも崩れ難いことを彼自身が一番良く知っているからにほかならない。しかも釣りをより簡単にしようと、あえてタナをとって新べらを含めたコンディションの良いへら鮒をターゲットとしているため、ここは我慢のしどころと丁寧なエサ打ちを淡々と繰り返す。

「私自身そうであるように、セット釣りのアプローチには人それぞれの流儀があると思います。私はセット釣りでも両ダンゴ釣りのようなイメージで臨んでいますが、だからといって両ダンゴ釣りのようには釣れるわけではありません。あくまで両ダンゴ釣りのようにへら鮒を追わせてタナへと誘導しエサを口にさせるための、いわばプロセスとしてバラケを機能させることを理解していただきたいと思います。具体的にはバラケの開き加減で上層のへら鮒をタナへと呼び込み、さらにこれを繰り返すことでやがて下層からもへら鮒が接近し、完全に寄りきった状態ではバラケでもくわせでもどちらを食っても構わない(どちらも食える)理想的な状況を目指しているのです。」

こうした組み立て方をするのに「ふぶき」は実に好都合で、水中落下中に開く超微粒子が上層のへら鮒の気を引きつけやすく、さらにタナで広がった粒子も長い時間タナに留まるため、へら鮒の足止めに大きく寄与するという。西田の解説を聞きながらウキの動きに注目していると、スタートから30分ほど経過した頃に初めての生命反応が現われた。直後に小さいながらもアタリがでると、これをきっかけにウキの動きが活発化し、数回の空振りの後ようやくファーストヒット。その後はサワリが継続するなか、やや待ち気味でアタリを待つと新べら釣れ始め、序盤は概ね狙いどおりの展開で進んでいった。ところがスタートから2時間後、新べら混じりで7~8枚釣り込んだところで突然スイッチが切れたようにアタリが途切れてしまったのだ。

「普段は早朝のへら鮒のハシャギが一旦収まると落ち着いたアタリで釣れるようになるのですが、今日は深めのタナに入って来る新べらが少ないですし、旧べらの動きもやや鈍いようです。風もさらに強まってきましたし、このまま続けて食いが良くなるのを待っていては取材を完遂できなくなる恐れがあるので早めにシフトチェンジしましょう。」

そう言うと西田はウキをサイズダウン(L⇒M)し、バラケも後述の決まりブレンドパターンに切り替え、狙いを上層に寄る旧べら主体にシフトすべくタナをウキ下50cmに調整してリスタート。すると時折短竿ですら振り込みもままならないほどの強風が吹き荒れるなか、再びペースを上げ始めた。

使用タックル

●サオ
シマノ「普天元 獅子吼」9尺

●ミチイト
サンライン パワードへら道糸「奏」0.6号

●ハリス
サンライン パワードへらハリス「奏」 上=0.4号-8cm、下=0.3号-25〜38cm

●ハリ
上=オーナーばり「バラサ」5号、下=オーナーばり「軽玉鈎」3号

●ウキ
①忠相「ツアースペックアローP」L
【パイプトップ7cm /一本取り羽根ボディ4.5cm/カーボン6.5cm/オモリ負荷量≒0.55g/エサ落ち目盛り=全9目盛り中4目盛りだし】
②忠相「ツアースペックアローP」M
【パイプトップ6cm /一本取り羽根ボディ4cm/カーボン6cm/オモリ負荷量≒0.45g/エサ落ち目盛り=全7目盛り中4目盛りだし】

取材時使用エサ

バラケエサ(当日の決まりブレンドパターン)

「粒戦」50cc+「粒戦細粒」50cc+水200cc(吸水のため5~6分放置後)+ふぶき」300cc(ここで一旦ザックリとかき混ぜる)+「セット専用バラケ」100cc

五指を熊手状に開き、掘り起こすように大きくかき混ぜて全体に均等に行き渡らせる。「ふぶき」と「セット専用バラケ」を別々に混ぜ合わせることで、よりまとまり感のあるエサ付けしやすいタッチなるという西田。使用する際は別ボウルに半分ほど取り分けてそのままエサ付けし、タッチ調整はごく少量の手水と撹拌のみで行う。スタート時は表層に集まる旧べらの下に入ってくる新べら混じりで狙うことを意識してタナをやや深め(ウキ下=約70cm)にとり、より芯持ちの良いバラケに仕上がるように上記のうち「ふぶき」300ccを「ふぶき」200cc+「軽麸」100ccに入れ替えたブレンドで始めたが、当日は新べらの食いがいまひとつであったことから思うようにペースに乗り切れず、途中からターゲットを表層に寄った旧べら狙いに切り替え、より抜けの良い上記ブレンドで見事に軌道修正を果たして時合いを引き寄せた。

くわせエサ

「感嘆」(1袋に対し「粘力」スプーン3杯をあらかじめ添加しておく)8cc+水10cc

水と「感嘆」をカップに取り、木製の棒を使ってよくかき混ぜてからポンプに詰めて使用。近年へら鮒以外の雑魚が増えた釣り場が多いことから「さなぎ粉」の入った「感嘆」を使うことを控えているという西田。当日はこれら他魚種の動きを感じられることはほとんどなく、ウキのナジミが悪くなったりカラツンが続いたりしたときにやや大きめにエサ付けするなど、常にサイズ感に注意しながらハリスの張り具合を最適化することでコンスタントに釣り込んだ。

西田流 両ダンゴ感覚で攻めるカッツケウドンセット釣りのキモ その一:両ダンゴ感覚〟とは、常にエサを動かしながらへら鮒をタナへと呼び込むアプローチ

かれこれ10年以上前のことになるが、かつて西田には両ダンゴ感覚で釣りを組み立てるバラグルセットのチョーチン釣りを披露してもらったことがある。今回紹介してもらうのはくわせもタナも異なるカッツケウドンセット釣り方だが西田曰く、

「見た目に大きな違いはありますが、基本的な考え方は一緒です。いかにエサを動かしながらへら鮒に口を使わせるかが目的であり、現実的にバラケをメインに積極的に食わせることは困難ですが、あくまでイメージとして捉えたとき、こうした組み立て方の方が自分の性に合っており、釣れるものと確信しています。」

そもそも近年着水と同時にバラケを抜ききる完全ゼロナジミの釣りは成立しにくく、ましてやガッチリバラケを持たせてエサをぶら下げた状態でアタリを待つというアプローチはほぼ成立しない。いま、記者の目の前で繰り広げられている西田の釣りはそのいずれでもなく、ウキが立ったところで軽くウケさせ、さらにナジミ際にサワらせながらアタリまで持って行こうという理想型が想い描かれている。

「このアプローチでは落下中に適度に開きながらナジむタッチのバラケが必要不可欠なので、自然なエサの膨らみやバラケ性、さらに粒子感を阻害してしまうブレンドやエサ使い(おもに大きさ・形状・圧加減)はしないことが肝心です。またバラケは一旦タナまで持たせたうえで早めに抜いたりやや持たせたりと変化をつけて対応することも必要ですが、くれぐれもバラケを持たせるスタンスは崩すことなく、適度に開かせながらも必要なナジミ幅を常にキープすることを疎かにしてはいけません。」

いうまでもないが、これは繰り返しバラケで誘導し続けることで、やがてタナに滞留する「ふぶき」の超軽量微粒子によってへら鮒が足止めされたなかを、下ハリスがナジんでいく間にくわせを口にさせるというシステムを構築するために必要不可欠なこと。この状態ができあがると西田のイメージどおりに両ダンゴ感覚のセット釣りが可能になるという。

西田流 両ダンゴ感覚で攻めるカッツケウドンセット釣りのキモ その二:上でも下でもOK!2Wayアプローチを可能にした超軽量微粒子「ふぶき」の特性

西田は「ふぶき」の登場により、自らが理想とする両ダンゴ感覚のセット釣りが格段にやりやすくなり、発売以来様々なシチュエーションで使っているが結果も良好だという。彼が最も感じている「ふぶき」の特性はエサ付けがしやすいこと。それは単なるまとまり感ではなく、無理に持たせようとしなくても、また微妙な開き加減をコントロールしようとして繊細かつ高度なエサ付けテクニックを駆使しなくても、ほぼ自分のイメージどおりのバラケ方をしてくれる点にあると力説する。

「『持たない(持ち難い)バラケをいかにコントロールするか』皆さんはこの現代セット釣りの難問に悩まれていると思いますが、持たないバラケをしっかり付けて持たせることよりも、持つバラケを甘く付けて持ち加減をコントロールする方が簡単であることはいうまでもありません。『ふぶき』は単にまとめ役としてだけではなく、バラケの軸として集魚力や誘導力の点でも秀逸であり、加えてタナでのキープ力といった超軽量微粒子ならではの特性も兼ね備えているので、従来バラケよりも気軽に使えてしっかり機能させることができることが大きなメリットになっているのです。」

そのうえで西田はタナを深めにとったアプローチの場合、ウキを沈没気味にナジませてバラケをタナまで持つようにエサ付けしても、落下途中で適度に開くことで途中にいるへら鮒へのアピール力は十分発揮され、タナに入ってからも適度なスピードで膨らんでから抜けきるため、早めの臨戦態勢が整えられるという。さらに超軽量微粒子が長時間タナに滞留するため、へら鮒の足止めに寄与し、アタリの持続性に力を発揮するとも付け加えた。一方で表層近くの浅いタナを攻める場合、もちろんこのタナでもバラケを持たせることに変わりはないが、今回のように普段西田が愛用している定番ブレンドから「軽麸」を一品種抜くだけで芯持ち具合はマイルドになり、深いタナと何ら変わることなくへら鮒と対峙できると言い、さらにダンゴタッチともいえる手触り感が従来バラケよりも早いタイミングでアタックしてくるへら鮒のアタリを誘発する効果も期待できるとのこと。ちなみに西田のバラケの付け方はハリを上から差し込む両ダンゴのエサ付け方法とほぼ同じで、相違点はエサ玉のサイズ感のみ。さすがに小ウキのためか、この日のバラケのサイズは最大でも直径12mm程度で、釣り込んでいるときはさらに小さく直径は概ね10mm程となっていたが、このまとまりのよさはエサ付けの容易さ向上とストレス軽減に大いに寄与しているといえよう。

記者の目:見た目はソフト&マイルド、果たしてその実体はハード&パワフル

厳寒期におけるカッツケウドンセット釣りという極めて繊細な釣りを取材しているにもかかわらず、西田の釣りは「いま、目の前で繰り広げられているこの釣りは果たして繊細なのか?」と疑ってしまうほどハードでパワフルな釣りであった。もちろんウキをはじめとした厳寒期仕様のライトタックルといった、押えるべきところはキッチリと押えたうえでのアプローチの話だが、アタリ方を含めたウキの動きこそ小さく少ないものの、盛期のチョーチン両ダンゴ釣りを彷彿とさせる力強い組み立て方は、彼の言葉にもあったとおり「ふぶき」があってこその効果であることは十分理解できた。淡い桜色のパッケージに包まれた超軽量微粒子を手に取ると、そのソフトでマイルド感あふれるタッチに一瞬騙されてしまうが、その実体は彼の釣りと同様にハードでパワフルな特性を持った、いわば〝羊の皮を被った狼〟といった強烈な個性が裏には隠されている。取材に臨むまでに記者は「ふぶき」を使った他のアングラーの繊細なセット釣りも見てきたが、その多くは高精度にバラケとくわせをシンクロさせてアタリを引き出す従来の抜きバラケのアプローチであり、一方西田のそれは真逆とまでは行かないものの、それらとは一線を画す大胆かつ力感あふれるアプローチ。これこそがまさに〝両ダンゴ感覚〟たる所以であり、そうした意外(?)な釣り方までもカバーすることができる「ふぶき」のポテンシャルは、間もなく本格的に始まる春の釣り以降もさらに幅広く発揮されるに違いない。