稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第101回 岡田 清の瞬殺!共エサカッツケ釣り|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第101回 岡田 清の瞬殺!共エサカッツケ釣り

今回のアングラーはいわずと知れたトーナメントモンスター、マルキユーインストラクター岡田 清。その卓越した釣技は読者諸兄もよく知るところだろう。釣技最前線では過去幾度となく登場いただいた名手であり、そのレパートリーはカッツケ・メーター・チョーチン・底釣り(段底)と多岐に渡るが、意外にも彼が最も得意とする浅ダナ(カッツケ含む)共エサの釣りは未だ披露してはもらっていない。ならばこの機会に余すことなくその技を見せていただこうと、スタッフが用意したステージは灼熱の太陽が降り注ぐ厚木へら鮒センター。その自由池は噂によるとへら鮒が山のように盛り上がり、エサが打ち込まれた瞬間沸騰するお湯のごとく沸き上がるらしい。もちろん釣りのテーマは浅ダナの共エサの釣りだが、今回は何の縛りもなく岡田自身納得のいく釣りを見せてもらおうとすべてを彼に委ねた。果たしてその顛末やいかに?

攻撃こそ最大の防御!? 攻めても攻めても崩れない岡田流カッツケ釣りは経験に裏付けられたセオリーとインスピレーションの賜だ!

「若い頃はもっと速く、もっとたくさん釣れたのですが、早いアタリに手が出ません…トシですかね(苦笑)。でもこうした釣りが今なお効く釣り場があることを知ってもらいたかったし、こんなに面白い盛期のカッツケ釣りをもっと多くのアングラーにやってもらいたかったので、それを披露できるチャンスをいただけたことは大変ありがたいことです。」

そう言いながらひとときも休むことなくエサを打ち込み、瞬時にへら鮒を掛け、一気に引き寄せて取り込む岡田。噂どおり釣っても釣ってもまったくへら鮒が減る気配はない。それどころか、たった1投空振るだけで寄りは一層激しさを増し、次投の打ち込みポイントに苦慮する始末。久し振りに激しい釣りを目の当たりにした記者は岡田の真の姿が見られると思い、何も問いただすことなく暫しその釣りに見入っていたが、かつては自らもこんなキレのあるスピーディーな釣りに没頭していた頃を思い出した。当時はひたすらアタリを追いかけ、ウキが動けばそのすべてが食いアタリと信じてアワセまくっていたが、年を重ねる毎にカッツケ釣りの何たるかが分かってくると、この釣りほどエサやタックルといったトータルバランスはもちろんのこと、アタリの取り方に至るまで完璧にマッチしないと釣り自体が成立しない難しい釣りであることを痛感させられたものである。その釣りがいま、目の前で繰り広げられている訳だが、そのアングラーが7度も全国制覇を成し遂げたトーナメントモンスター岡田 清というのは何と贅沢なことであろうか。

およそへら鮒釣りは確たる理論(セオリ-)を理解し、実践できなければ、決して安定した釣果を得ることはできない。そしてさらに人の上を行くためには、セオリー以外の何かを持っていなければならないと記者は常々思っている。それこそが経験に裏付けされたインスピレーション(閃き)であろう。もちろん岡田はそれを持っているアングラーのひとりだ。単なる思いつきとインスピレーションが異なるのは、その精度と結果(釣果)の違いに他ならない。思いつきで出せた結果は不安定であることが多く、濃密な釣り経験に基づくインスピレーションで得た結果は常に高釣果へとアングラーを導いてくれる。今回、岡田が披露してくれたカッツケ釣りは僅かな対策の選択ミスや切り替えタイミングの遅れが命取りとなることが少なくない。終始精度の高いアジャスティングを躊躇なく行わなければ結果が出ない、へら鮒釣りのなかでは最も厳しく疲れる釣り方なのだが、取材中の岡田はまるでそれらを楽しむがごとく実に生き生きとアタリを追い続けた。

使用タックル

●サオ
シマノ「普天元 獅子吼」7尺

●ミチイト
オーナー「白の道糸」1.0号

●ハリス
オーナー「ザイトSABAKIへらハリス」
上=0.6号-10cm→8cm、下=0.5号-15cm→13cm

●ハリ
上下=オーナー「バラサ」5号 ※ウキが動きすぎるときは「セッサ」5号

●ウキ
①一志「アスリート」5番

【パイプトップ7.0cm/ボディ6.0cm/オモリ負荷量≒0.7g/エサ落ち目盛りは全6目盛り中3目盛り出し】

②一志「浅ダナ用プロトタイプ」

【トップは「一志アスリート5番」よりも細く長いパイプトップで、オモリ負荷量は僅かに少ない程度でほぼ同等程度の浮力を持っている/エサ落ち目盛りは全6目盛り中3目盛り出し】

オモリ
内径0.6mm+内径0.4mmウレタンチューブ装着板オモリ1点巻き

ジョイント
オーナーばり「Wサルカン(ダルマ型)」

取材時決まりエサブレンドパターン

■両ダンゴブレンドパターン①

「コウテン」400cc+「カルネバ」200cc(2つの麩材を混ぜ合わせてから)+水200cc(五指を熊手状に開きザックリかき混ぜて全体に水を行き渡らせる)+「浅ダナ一本」100cc(まんべんなく混ざり合うよう丁寧にかき混ぜる)

■両ダンゴブレンドパターン②

「コウテン」200cc+「ペレ軽」200cc+「カルネバ」200cc(3つの麩材を混ぜ合わせてから)+水230cc(五指を熊手状に開きザックリかき混ぜて全体に水を行き渡らせる)+「浅ダナ一本」100cc(まんべんなく混ざり合うよう丁寧にかき混ぜる)

パターン①のブレンドでは釣り難しさを感じていた岡田。その原因を当初エサ持ちの悪さと思い押し練りで強化を図るも、この手法では芯が強すぎて肝心なところで食い頃にならずカラツンが増えてしまった。そこで次に考えたのが芯を強めることなく素材の重さ(比重)で持たせる方法。その重要な役割を果たしたのが「ペレ軽」だが、このブレンド変更により明らかにヒット率がアップすると共に、タナに入るタイミングがそれまでよりも早くなったことで縦に入るアタリも増え、見ている者にとってはある意味〝分かりやすい〟展開となった。

■両グルテンブレンドパターン

グルテン四季100cc+水140cc軽くかき混ぜて全体に水を行き渡らせ4~5分放置。吸水完了後軽く解してから+浅ダナ一本80ccまんべんなく混ざり合うよう丁寧にかき混ぜる。基本的な調整方法は両ダンゴのそれと同じ

ひと通りダンゴの釣りを披露した岡田が、次に披露してくれたのが両グルテンのカッツケ釣りであった。ここでもまた再開1投目から綺麗な消し込みアタリで釣れ始まると、両ダンゴのときのようにへら鮒が激しく沸き上がる様子もなく、落ち着いたアタリであっという間に連チャンモードに突入。両グルテンといえば秋の新べら向きの釣り方と思われがちだが、夏場であっても、いや夏だからこそ集魚力を抑えたグルテンが効果的だということは以前から気づいていたという岡田は、いつかこの釣り方を読者諸兄に披露したかったととても満足げであった。

■両トロロブレンドパターン

「極上とろろ」1分包+「極上とろろハード」1分包(袋から取出しエサボウルのなかで広げて繊維を解し、2種のトロロを軽く混ぜ合わせる)+水600cc

水は100ccのカップを使い、6回に分けて加えるのがポイント。まずカップ2杯(200cc)で表面に水を行き渡らせたらトロロをひっくり返し、さらに2杯(2000cc)で裏面に水を浸透させる。最後にトロロの繊維の塊をほぐしながらまだ吸水できていない箇所に2杯(200cc)を使って水を行き渡らせたら20~30分放置。トロロの吸水が完了すると、ボウルの隅に水が溜まってくるのでこれを目安とすると良い。

「とろスイミー」100cc+「段差バラケ」100cc+「とろ選」200cc

五指を立ててトロロのなかに麩材を差し込むように混ぜ合わせ、ある程度混ざった時点で塊をひっくり返しながら指の背側を使って丁寧に押し込む。これが基エサになる訳だが、麩材とトロロをなじませるためには釣行前夜に仕込んでおくことが肝心だと岡田は言う。そして釣行時、ビニール袋等に詰めた基エサをクーラーボックスに入れて持参し、使用時には野球ボールくらいの塊をボウルに取り、適宜水を加えてから『感嘆』1袋と『とろ選』1袋を合せたオリジナル麩材をひとつかみ差し込み、エサ付け時の容易性と釣り込む際の集魚性をアップさせる。

かつて一世を風靡した両トロロの釣りも、昨今めっきりやる機会が減ってしまった感があるが、ある条件さえ整えば、いまなお両ダンゴを凌ぐ釣りが可能だと岡田は言う。その条件とは、いままさに岡田自身が対峙しているシチュエーションに他ならない。つまりエサが自然落下できるスペースがないほどの魚影密度の濃さと、夏バテ知らずの十分に管理された食い気旺盛なへら鮒の存在だ。こうした条件が揃った釣り場は決して多くはないが、今回訪れた厚木へら鮒センターはそうした条件をすべて兼ね備えた貴重な釣り場であり、カッツケ釣りの腕を磨くには打ってつけの道場的な釣り場だと岡田は断言する。

取材時の釣りの流れ

まず岡田が基本とする両ダンゴ(ブレンドパターン①)でスタート。なんと、その1投目で消し込みアタリがでて、あろうことか一荷でハリ掛かり。これを幸先の良いスタートと思えるのはカッツケ釣りの怖さを知らない人のみで、次投からは予想通りの難しい展開にいきなり本気モードで立ち向かう岡田。ヒットはもちろん、ハリ掛かりすればたとえスレでも一瞬エサ打ちポイントからへら鮒の姿は消えるが、次投を打ち込む前に元の群れが形成されると、打ち込まれようと空中を移動するエサの影に反応して着水を待たずに我先にとポイントへ突進する。この異次元の釣りに真っ向勝負で挑む岡田は、とりあえずイケるところまで行こうと両ダンゴの釣りを貫くが、2ボウル目に入ったところでエサの動きを安定させるべくハリスを詰め、さらにハリを重くすることでエサ持ちと水中でのエサの動きの安定化を試みる。いずれの対策も変更直後はそれなりの効果が見られたが、さらにそれを上回るペースでへら鮒の動きが激しさを増し、群れが大きくなると、さすがに3ボウル目でブレンドパターン②に変更。この対策は効果絶大で、おそらくこのまま釣り続けてもかなりの釣果になったものと思われるが、岡田はここで大きく動いた。是非読者諸兄に見せたいエサ使いがあると、なんと両グルテンに替えたのだ。リスタート直後、水面からへら鮒の姿が消えたその1投目でも消し込みアタリでヒットを決めると、その後は両ダンゴのときとは打って変わって分かりやすい(アワセやすい)ウキの動きで連続ヒット。おそらくこの日のアタリパターンのなかで最も理想的な動きがこのときであり、これならカッツケ釣り初心者でもかなりの釣果となると思われた。そして、これもぜひ皆さんに見て頂きたい釣り方だといって、昨夜家で仕込んできたというトロロエサを取りだした。結果を先に言ってしまうと、この両トロロがこの日の決まりエサで、毎投ウキが立った直後に「チャッ」と鋭く決めるか、記者には理解不能・判別不能な止めアタリにアワせる岡田。こうなるともう止まらない、電光石火の瞬殺ショーのクライマックスと相成った。

岡田流共エサカッツケ釣りのキモ:其のⅠ 合理的な仕掛け作りと緻密なタックルアジャスティング

カッツケ釣りの定義は定かではないが、多くのへらアングラーは水面下1mよりも浅いタナを攻める釣り方の総称としてカッツケ釣りを認知しているだろう。なかでも数十cmの表層レンジを攻める釣りを〝折り返し〟(ウキの全長分のタナをとるカッツケ釣り)と称したり、さらにオモリとウキ止めゴムが近接しハリスの長さ分のタナしかとらない釣りを〝ハリスカッツケ〟と言うが、今回岡田は迷わずハリスカッツケを選択。このときの直結仕掛けにも岡田らしい工夫が凝らされているので写真とイラストをご覧いただきたい。

「〝折り返し〟を含めたカッツケ釣りは、ほかの釣り方同様に遊動式ウキゴムを使ったものが一般的ですが、ハリスカッツケに限ってはアタリのでるタイミングの早さはもちろんのこと、玉網に取り込んだ際にウキのトップが網に絡んで折れるといったトラブルを避けるためにも、直結式にした方がメリットは大きいと思います。」

 近年のカッツケ釣りは〝折り返し〟に代表されるように、ややタナをとった釣りが主流となっている。その背景にはへら鮒の大型化や魚影密度の低下があることは疑うべくもなく、ハリスカッツケをやりたくても往年のように爆釣できる釣り場がなくなってしまったことが最大の要因であろう。しかし、ここは魚影密度では関東で一二の濃さを誇る厚木へら鮒センター。しかも岡田のホームとも言える釣り場なので、何がベストであるかは既にリサーチ済みという訳なのだろう。その直結式仕掛けの最大の特徴は岡田が愛用しているへらウキ「一志」の脚の形状由来のもので、先端径が極めて細いために一般的なゴム製チューブでは役に立たず、オモリとの一体感を出すためにオモリを巻き付けるためにミチイトに被せた内径O.4㎜のウレタンチューブに、さらにウキゴムに代わる内径0.6㎜のウレタンチューブの端を被せてある。これによりウキの脚のすぐ下にオモリが位置することになり、直結式ならではの素早いウキの立ち上がり、そして間髪入れずにでる食いアタリを逃すことなくウキに伝えることが可能になるという訳だ。

さらに、今回の釣りで特徴的なのが短バリス。キモは取材冒頭で岡田が口にした「ここの釣りではエサをナジませるスペースがほとんどない」という言葉に隠されている。一般的にへら鮒の密集度合いがそれほど濃くなければ、20~30cmの長さのハリスを用いることが可能で、釣況に応じたアジャスティングの幅も必然的に広くとることが可能だが、そのスペースがなければ限られた長さで対処するしか方法はない。岡田は平日で空いていることを前提に、最高難度の濃さに密集することを想定した長さ(上10cm/下15cm)でスタート。途中でエサ持ちを強化するために上下共に2cm詰めたが、これ以上短くしては食いアタリがでにくくなると判断した時点で、それ以降はハリを「セッサ」5号に替えることにより重さで持たせる戦略を採った。もし、へら鮒の活性がピークの状態であれば上5cm/下10cmという通常では考えられないほどの短バリスで決まることがあるというから、厚木へら鮒センター恐るべし!である。

岡田流共エサカッツケ釣りのキモ:其のⅡ アタリの取り方=セオリー+α(インスピレーション)

今回、岡田には何の縛りもなく自由に釣りまくってもらったことで、本来の岡田らしいパフォーマンスが発揮できたのではないだろうか。ところがこの〝らしさ〟はある意味記者泣かせの釣りでもある。天才アングラーゆえの感性というか閃きで釣ることもしばしばで、まことに申し訳ないが、今回はアタリの見極め方においてどうしても表現しきれない部分があることをお許し願い、その箇所においては一応後述するが、動画のなかで岡田が解説する表現で推察していただきたい。いうまでもなくカッツケ釣りはスピーディーな釣りだ。エサを打ち込み、ウキが立った瞬間に勝負がつく、いわばまばたきしている暇もない瞬殺・秒殺の釣りである。

「釣果だけを考えたら無闇に速い勝負を挑むのではなく、可能な限り適切な寄りをキープしつつ縦に強くアタるアタリを主体に狙う方が得策でしょう。でも私の気持ちがそれをヨシとしないのです(笑)。実際のところ、難しい釣りに身を置く方がやっていて楽しいですし、他の釣りに生かせる様々なヒントやアイデアがこうした釣りから見えてくることがよくあるので、自分にとっては欠かせない釣り方でもあるのです。」

 こう言いながら「食った」と判断した動き(アタリ)には躊躇なくアワせていく岡田。基本的にはウキが立ち上がってから最初の食いアタリに狙いは絞っているものの、へら鮒の寄りや食い気によって止め・上げ・ツン・消し込み・戻し等々ヒットするアタリは様々だ。かつてカッツケ釣りでは「振れ(ブレ)アタリ」が主流であり、直結仕掛けの岡田のタックルを見る限りそれを狙ったものかと思っていたのだが、いざ釣りが始まるとそうした横の動きによるアタリは少なく、多くは縦の動きとして現われるアタリであった。特にエサ使いが両ダンゴブレンドパターン②に変わってから後、さらには両グルテンになってからはそのほとんどが明確な縦アタリとなり、分かりやすい釣りがしばらく続いたのだが、最後に〝伝家の宝刀〟とばかりに両トロロの釣りが繰り出されると、縦アタリに混じって摩訶不思議なアタリが…。岡田の口からは「いま食った」と自信の言葉がついてでるが、まったく分からない。これこそが記者泣かせの食いアタリなのだ。

「両トロロにするとへら鮒がエサを食って離しません。これはハリスが張る前に口に入るため、警戒感も違和感もなく居られからだと思われます。このため、ウキの動きとしてはナジミに入らずに静止しているように見えますが、自分にとってはこれもまた〝良いアタリ〟のうちのひとつなのです。」

記者の目【トップアングラーならではの感性が垣間見えた〝ホンモノ〟のカッツケ釣り】

カッツケ釣りは見た目のスピードや派手なアクションに目を奪われがちだが、高釣果を残すアングラーは常に最高難度の時合いのなかで最高精度のトータルバランスを保ち続けている。もちろんこうした釣況のなかでもエサをタナに入れ、ウキを深くナジませて釣る方法はあると岡田は言い、むしろそれを他のアングラーには推奨しているが、自身はあえて難しいウキの動きのなかに身を置き、それをこよなく愛している様子がうかがえた。そうしたスタイルを可能にしているのが長年培い磨き上げてきた彼一流の感性だ。おそらく今回動画に残された彼の釣りを一朝一夕に真似することはできないだろう。しかしそのポジティブマインドは大いに手本となるに違いない。釣り場が違えば釣れるアプローチも違って当然。彼と同じ土俵に上がりたければ、いまが旬の厚木へら鮒センターで腕を磨く他に道はないが、一度でもこの味を覚えてしまったら病みつきになるに違いない。